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新緑読書特集2020

新緑読書特集2020 掲載広告



『週刊佛教タイムス』2020年5月21日号の新緑読書特集では、20冊の仏教書、宗教や信仰をテーマにした書籍をご紹介しました

(各書評は紙面でご覧ください)

・仏教タイムス社編集部編『近現代日本仏教の歩み』仏教タイムス社 評者=塚田穂高(上越教育大学大学院助教)
・柳田由紀子『宿無し弘文』集英社インターナショナル
・寺川智祐編『広島大学仏教青年会110年の歩み』方丈堂出版
・ドナ・シャーマン『親と死別した子どもたちへ』佼成出版社
・嵩満也 吉永進一 碧海寿広編『日本仏教と西洋世界』法蔵館
・落合博史『寺院文献資料学の新展開 第5巻』臨川書店
・伊勢祥延著 上川泰憲監修『仏陀バンクの挑戦』集広舎
・山岸常人『日本建築の歴史的評価と保存』勉誠出版
・浄土真宗本願寺派総合研究所編『御伝鈔 御俗姓』本願寺出版社
・源淳子編著『いつまで続く女人禁制』解放出版社
・身延山大学仏教学部編『仏教芸術が創る世界』山喜房佛書林
・黒羽由紀子『かたみとて何か残さむ』考古堂
・白石凌海『維摩経の世界』講談社選書メチエ
・高山寺監修 土屋貴裕『高山寺の美術』吉川弘文館
・北村文雄『真宗ルネッサンス 日本真宗の黎明』永田文昌堂
・鈴木君代『声を聴くということ』自照社出版

疫病テーマの新旧4冊 災病、死の語り、共生への道とは

串田久治『天変地異はどう語られてきたか』東方書店
澤田瞳子『火定』PHP研究所
詫摩佳代『人類と病』中公新書
山本太郎『感染症と文明』岩波新書
 
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)は過去の疫病を学ぶ機会にもなった。その典型はカミュの小説『ペスト』がブームになっていることだろう。疫病に関する日本の新旧書籍に着目した。

 歴史・宗教研究者9人がアジア諸国の地震・火災・疫病・異常気象などの災禍の語りを読み解く『天変地異はどう語られてきたか』。その第二部「『日本』の誕生と疫病の発生」では、律令国家の誕生と疫病の関係を論じる。都市や交通網が発達したことで疫病が発生しやすくなった。この体験が人々の国家観や宗教観を変容させたことを示唆する。

 イスラームでは災害は「神の罰」と認識される一方で、スマトラ沖地震の証言からは、宗教的信仰が苦難に向きあう力や他者を助ける肯定的な働きを生むことを伝える。天変地異には禍・福の両義的な面がある。言い換えれば、人々はそうして悲劇を受容し、乗り越えてきたといえるだろう。

 天平9年(737)の疫病(天然痘説と麻疹説がある)は藤原四兄弟が亡くなり時の朝廷が壊滅状態になったことでも知られる。小説『火定』はこのパンデミックが題材だ。凄まじい勢いで広がる疫病が、人間の醜さや愚かさ、哀れみをあぶり出す。疫病封じの偽神を祀り上げて荒稼ぎする者、異国人への排斥を扇動されて暴走する民衆、死を悟る悲田院の子とそこに寄り添おうとする僧。必死で疫病を食い止めようとする医師たち。なぜ死にゆくものに寄り添うのか。施薬院で働く主人公・名代は、「死が終わりではない」と、その答えを見出していく。

 新型コロナウイルスが瞬く間に世界に広がったように、感染症は容易に国境を超え各国独自だけでは対処できない。『人類と病―国際政治から見る感染症と健康格差』は、19世紀に欧州から世界へと広がった国際保健医療の苦闘の歴史をたどる。世界は「病から人類を守る」という一つの目標に向けて協調していくことができるのか―。WHO(世界保健機構)への批判が集まるなか、進行形の問題を考える入門書となる。

 『感染症と文明』は9年前に刊行されたものだが、その内容は示唆に富む。麻疹は大きな犠牲を払い、長い年月をかけて免疫を獲得し、急性感染症から「小児感染症」へと押しやった。一方で、感染症を根絶しようとする努力は「破滅的な悲劇の幕開けの準備することになるかもしれない」と指摘する。

 医師としてアフリカやハイチで感染症対策に従事してきた著者は「小さな犠牲」を最小にしながら「心地よいとはいえない」妥協の産物としての「共生」を進むべき道として示す。