2018年11月5~9日、千葉県成田市と神奈川県横浜市鶴見区の曹洞宗大本山總持寺で開催された第29回WFB世界仏教徒会議、第20回WFBY世界仏教徒青年会議、第11回WBU世界仏教徒大学会議の日本大会。WFBYの日本センターである全日本仏教青年会(全日仏青、理事長=倉島隆行・全国曹洞宗青年会会長)はこれらの国際会議に合わせて、翌10日に大本山總持寺で「仏教×SDGs」をテーマとした全日仏青全国大会を盛大に開催した。
 

 全国大会前日の9日には、WFBY世界仏教徒青年会議に出席する海外の仏教者を対象に、全日仏青加盟12宗派・団体と真宗教団連合によるブースが展示された。翌10日の全国大会は、広く一般に向けたイベントを加え、青年僧侶により日本仏教の可能性をアピールするものとなった。
 
 三松閣での特別シンポジウム「仏教×SDGs」は仏教系のシンポではパネリストで4人の女性が登壇し、女性が創る新たなお寺像やジェンダー平等について考えた。

 大祖堂では「仏教音楽祭―流音月聲―」を開催。西川悟平さんによるピアノコンサートや各宗僧侶による仏教音楽の演奏、俳優・女形の早乙女太一さんが舞踊を披露。音楽監督は服部博之さん、総合司会を木佐彩子さんが務める豪華な一時となった。

 境内では、仏殿前の芝生で元「モーニング娘。」の藤本美貴さんの指導による「青空ヨガ」や伝説のパンクロックバンド「ブルーハーツ」の元ドラマー・梶原徹也さんが子どもたちのための太鼓ワークショップを実施。

 人気ラーメン店「麺屋武蔵」とコラボした「精進ラーメン」、全国のカレー好き僧侶が作った「精進カレーなどの出店も。

 SDGsに関連して、野村証券や貧困問題に取り組むグラミン銀行、NPO法人おてらおやつクラブなどの企業・団体ブースも数多く出店。1万個の紙コップに祈りや願いを込めて作る「紙コップのインスタレーション」や日本青年会議所が全面協力したバスケットボール「3×3」、東京パラリンピック正式種目「ボッチャ」体験など、終日人が絶えないイベントとなった。

仏教音楽祭 ―流音月聲―

宗派を超えて響き合う祈りの音色

 全日本仏教青年会全国大会のメインイベントであるコンサート「流音月聲」。指が動かなくなる難病「ジストニア」に冒されながらも、奇跡的に回復した数本の指で演奏を続けるピアニストの西川悟平さんが、どんな困難にも打ち勝つ希望を載せ、大祖堂に音色を響かせた。

 西川氏はトークでも盛り上げた。ニューヨークのマンションで2人組の強盗に襲われたが、その強盗の不幸な身の上話を聞くうちに「辛かっただろうね、君をハグしていいかい?」と応じ、そのまま泥棒とお茶を飲んでピアノを聞かせたというエピソードを披露。どんな相手にも善性があり理解し合えるという仏教にもつながる話に聴衆もしみじみと感じ入った。

 第2部は浄土宗大本山増上寺雅楽会による舞楽、真言宗豊山派仏教青年会の「豊山太鼓 千響」、醐山青年連合会の法螺、高野山金剛流御詠歌、天台仏教青年連盟と時宗の声明、そして三重県曹洞宗青年会の和太鼓集団「鼓司」という日本仏教の珠玉の音楽会。さらに友情出演とて俳優・女形の早乙女太一さんが登場し、中井智弥さんの筝、服部博之さん(音楽祭の総監督)の和太鼓に合わせて日本舞踊を披露。日舞のイメージを覆すような激情の美に惜しみない拍手が送られた。

特別シンポジウム「仏教×SDGs」

女性が創るお寺を議論 男僧に意識改革必要

 特別シンポジウムでは、臨済宗妙心寺派龍雲寺の細川晋輔住職をファシリテーターに女優の東ちづるさんら女性のパネリスト4人が「仏教×SDGs」を討議した。第一部はSDGsの目標の一つ「ジェンダー平等」に関連して「女性が創るお寺の新時代」がテーマとなった。
 
 寺院の女性たちがつながることができる「寺嫁さんの仏教カフェ」を各地で展開している(一社)未来の住職塾理事の松崎香織さんは、「僧侶に嫁いだ女性が認めてもらいづらい、抑圧された状況にある」と提起。その理由に、寺院の家族経営や、後継ぎのために男子が望まれること、檀信徒からいつも見られている感覚などを挙げ、寺院に嫁いだ女性たちの声を伝えた。

 誰もが自分らしく生きられる〝まぜこぜの社会〟を目指して女優以外にも幅広く活動している東さんも「女性らしく、長女らしく、妻らしくしないと評価されない」日本の現状も踏まえ、「女性とお寺というテーマは、男性とお寺ということでもある」と男性僧侶の意識改革も課題であることを示唆した。

 議論では、宗教における女性の役割が「女性の障り」「男性の修行の妨げになる」などの伝統的な部分に影響を受けているとする一方で、日本仏教で妻帯が広まったのは明治以降とまだ歴史が浅いとの指摘も。伝統を守りながら今後の世代が新しい寺院を創っていく必要性が共有されるなど、議論は深まりを見せた。

 (一社)SDGs市民社会ネットワーク業務執行理事の長島美紀さんは、最新の研究から組織が最も効率良く力を発揮できる男女比が「男性3:女性7」であると紹介。松崎さんも「日本の宗派組織にも多様な視点を入れることが重要」と伝統教団の組織改革を呼びかけた。 

 第二部では、寺院でSDGsをどう実践するかを議論。今年、グッドデザイン賞を受賞した貧困問題に取り組むNPO法人おてらおやつクラブが「仏教×SDGs」の事例として提示され、同法人の広報を務める松崎さんは「既存の人、物、場所を今の時代に合わせてつなぎ直すおやつクラブの仕組みが評価された」と寺院の潜在力と可能性に言及し、期待を示した。

 文化庁地域創生本部研究官で真宗高田派淨善寺次期坊守の朝倉由希さんは、寺院で育った自身の経験からも「隣近所の人の課題に取り組むことが大事。寺院は地域の拠点として、これまでの経済優先や拡大路線以外のものを提示できる」とした。

 東さんは、2030年のSDGsの期限より前に東京オリンピック・パラリンピックがあることに着目。それまでに「小さなウェーブを起こし続ける必要がある」と述べ、寺院からSDGsを発信することを提案した。手話や車いす用のスロープなどインフラ整備には資金と時間が足りないが、「私たちの心のバリアーは取り除くことができる」とし、福祉施設や障がい者施設と寺院が連携すれば「色々な人がお寺に集まる。お寺は本来そういう場所ではなかったか」と語った。

 長島さんは、SDGsの担い手として寺院での女性の役割に注目し、「お寺の嫁というだけでなく、住んでいる街で女性が地域の活動などに出ることがお寺のためにもなるのではないか」と指摘。朝倉さんは「苦しみに寄り添い続けるのが仏教」だとして、寺院とSDGsの親和性を話した。










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