仏書・良書に親しむ
春の新緑読書特集2018

新緑読書特集 掲載広告




『週刊佛教タイムス』2018年5月17日号の新緑の読書特集では、27の仏教書・宗教書やDVDをご紹介しました(各書評は紙面でご覧ください)。

・大竹晋『大乗起信論成立問題の研究』国書刊行会 評者=末木文美士
・赤松徹眞編著『「反省会雑誌」とその周辺』法藏館
・山本義隆『近代日本一五〇年―科学技術総力体制の破綻』岩波書店
・吉田裕『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』中央公論社
・井上寿一『戦争調査会―幻の政府文書を読み解く』講談社
・小峯和明・金英順・目黒将史編『奈良絵本 釈迦の本地』勉誠出版
・さいとうじゅん『はしるおじぞうさん』仏教伝道協会
・増記隆介・皿井舞・佐々木守俊『天皇の美術史1 古代国家と仏教美術』吉川弘文館
・山折哲雄『死者と先祖の話』KADOKAWA
・田中利典『よく生き、よく死ぬための仏教入門』扶桑社
・小倉慈司・三上喜孝編『古代日本と朝鮮の石碑文化』朝倉書店
・松長有慶『訳注 般若心経秘鍵』春秋社
・小川一乗監修『シリーズ親鸞(草野顕之『親鸞の伝記』延塚知道『親鸞の説法』安冨信哉『近代日本と親鸞』池田勇諦『親鸞から蓮如へ』本多弘之『現代と親鸞』)』東本願寺出版
・鍵主良敬『近代真宗教学往生論の真髄』方丈堂出版
・エィミー・ツジモト『満州天理村「生琉里」の記憶―天理教と七三一部隊』えにし書房
・高橋典史・白波瀬達也・星野壮編著『現代日本の宗教と多文化共生―移民と地域社会の関係性を探る』明石書店
・今井雅晴『六十三歳の親鸞』自照社出版
・伊藤真宏『法然さま二十三のお歌』浄土宗出版
・鈴木岩弓・磯前順一・佐藤弘夫編著『〈死者/生者〉論―傾聴・鎮魂・翻訳』ぺりかん社
・角田泰隆『道元のことば―正法眼蔵随聞記にきく』NHKエンタープライズ ※DVD

玉川貴子『葬儀業界の戦後史』青弓社
現代の葬儀を考える僧侶の会監修『お坊さんがイチから教える!葬儀・法要・お墓・仏壇のすべて』主婦の友社
碑文谷創『四訂 葬儀概論』葬祭ディレクター技能審査協会


火葬場で済ます直葬や身内のみの家族葬という表現が日常化し、改葬ではなくお墓の引っ越しという言い方も出てきた。過疎化や少子高齢化、継承者不在で墓終いは新たな現象となってきている。さらにネットによる僧侶派遣や葬儀、法事の費用明示など枚挙にいとまがない。

 言うまでもなく葬儀をめぐる環境の変化は著しい。それを示すかのように、ここに挙げた3冊は四訂の『葬儀概論』を含めてこの3月に出たばかりだ。資格取得のための教科書的な『概論』、葬儀業界の変遷を描いた『戦後史』、僧侶・仏教の立場から仏事全般を解説する『すべて』(監修は札幌市仏教連合会の有志)。それぞれ特色ある内容だ。

 そもそも葬儀とは何かを尋ねることにしよう。『概論』では、「臨終から死後の喪に至るまでの、死別に出合った人が営む、悲しみ、葬り、そして悼む一連の儀礼」とする。さらに葬儀を行う理由について①社会的な処理、②遺体の処理、③霊の処理、④悲嘆の処理、⑤さまざまな感情の処理――を掲げる。

 『戦後史』では、東日本大震災の事例から「曖昧な生と死の境界線を引くものの一つが葬儀である」とか、「葬儀は、死を定点として、道徳、消費、相互扶助などの諸行為で構成する宗教的な現象でもある」などと位置づける。

 『すべて』では、葬儀の目的として①亡くなった人の生前の遺徳を偲び、感謝する、②亡くなった人との仏縁を感じ、それを相続する、③遺された人が、別れを行うことで心の整理をする――と仏教の視点から提示。

 一般向けであるため悲嘆の処理と心の整理など重なる部分は少なくない。こんどは僧侶自身が、なぜ葬儀に関わるのかを自問する必要があるだろう。減少してきたとはいえ、葬儀において仏式が占める割合は高い。そのうえ僧侶(住職)のスケジュールが最優先された時代や地域もあった(いまも残っていると思われる)。

 なぜ僧侶が関わり重視されるのかと言えば、葬儀には故人を仏弟子とする授戒があるからだ。授戒ができるのは戒をいただいている僧侶である(真宗は異なる)。故人に戒名が付与されるのもそのためだ。最近は聞かれなくなった没後作僧(もつごさそう)である。僧侶監修の『すべて』にこのあたりの解説がないのは惜しい。

 対して『概論』では各宗派ごとに詳述され、例えば臨済宗の解説では「死者が仏弟子となるための授戒と、仏性に目覚めるための引導が葬儀式の中心」と記述。真宗以外はほぼ同じである。
 換言すれば、僧侶(住職)側は慣習的に葬儀を執り行うのではなく、諸儀式の意味を積極的に喪主や遺族に説明する責任があるということだ。

聞く力が必要
 儀式だけではない。遺族へのケアという重要な役割が葬儀に関わる人たちにはある。意外なのは、1996年から始まった葬祭ディレクター(制度)の変化である。当初は幕張りなど設営面に比重が置かれていたが、後には「お客様への接遇・相談業務」に移行してきたという(『戦後史』)。『戦後史』著者は、実際に葬儀社で仕事をした複数にインタビューし、その語りを紹介し分析。遺族に感情移入する人がいる一方で、あえて機械的に対応する人まで、まちまちである。「営業と(遺族の)ケア」のはざまで苦悩する様子もうかがえる。

 僧侶もまた遺族に寄り添う存在である。阪神淡路大震災後、被災者のメンタルケアが注目され、その経験は東日本大震災などで生かされている。葬儀においての傾聴もしかりである。『概論』では「葬式が意味のあるものとして行われるためには遺族の心の中にある想いを聴く力が必要ですし、せめて聴こうとする態度、耳を傾ける態度こそ必要とされるのです」と葬儀関係者に呼びかけている。そのまま「葬式仏教」界へのエールと受け止めたい。

 しばしば“困った時は原点に帰れ”と言われる。僧侶(住職)は原点に帰ったうえで、今日の葬儀を再点検せよ、との暗示が3書から滲み出てくる。
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『概論』(B5判・343頁・価9524円+税)、『戦後史』(A5判・242頁・価2600円+税)、『すべて』(A5判・223頁・価1400円+税)