終戦75年企画 お寺の戦伝遺産を歩く

宗教施設が持つ戦争を伝える遺産

 戦争を伝える遺産を有する宗教施設は少なくない。終戦75年企画として弊紙ではそれらを「お寺の戦伝遺産」として紹介する。もともとお寺にあったものや、戦後に持ち込まれた遺産、あるいは怨親平等の追悼碑など形はさまざまである。寺院や宗教施設に関係ある戦伝遺産を掘り起こしながら、戦争とは何か、平和とは何かを考えたい。(詳しい内容はぜひ紙面でご覧ください)

中野区成願寺の防空壕跡


 東京都中野区成願寺「防空壕」跡。写真は防空壕の中ほどにある一室。ここに本尊や寺宝が運ばれ、難を逃れた。(2020年7月23日・30日合併号)


 東京都武蔵村山市禅昌寺「少飛の塔」。少年飛行兵を供養する慰霊塔。毎年11月第2日曜日に慰霊祭が営まれる。(2020年7月23日・30日合併号)


 東京都港区増上寺「阿波丸事件殉難者之碑」。2千人余が乗船していた阿波丸が米国潜水艦に撃沈された阿波丸事件。タイタニック号沈没を上回る海難史上最大の事故とされる。(2020年7月23日・30日合併号)


神奈川県藤沢市龍口寺「陣地跡」。米軍との本土決戦に備えて作られたとみられる。(2020年8月6日号)


 東京都世田谷区立正佼成会世田谷教会「旧東条邸」跡。東條英機首相が自決を図った東條邸は戦後史に刻まれた場所。現在も標柱が残る。(2020年8月6日号)

 神奈川県鎌倉市龍寶寺「特攻碑」。寺院生まれの特攻隊員の辞世の歌が刻まれている。同寺には米兵位牌や戦跡霊石などもあり、寺の歴史、地域の歴史、戦争の歴史を伝えている。(2020年8月20日号)


東京都文京区源覚寺「汎太平洋の鐘」。サイパン島激戦の銃弾跡や傷跡が残る。戦後は米国の所有者の下にあったが、善意により米国本土から日本に戻った。(2020年9月3日号)

 岐阜県北方町西順寺「報国塔」。靖国神社に合祀されない地元傷痍軍人を祀っている。今年5月の塔内調査で「戦傷病死者法号」と記された軸物を発見。第1号は西南戦争の戦死者だった。(2020年9月17日号)


1945年に広島で被爆した浄土真宗の開祖親鸞聖人の銅像。赤く焼けている箇所が被爆を物語る。1955年に日本から渡航し、米国NY(ニューヨーク)仏教会に寄贈された。(2020年10月8日号)


東京都葛飾区蓮昌寺「コンクリート梵鐘」。戦時中、多くの寺院で梵鐘を供出し、代替となる石やコンクリートの梵鐘が作られた。同寺のものはその中でもかなり精巧に造られている。(2020年10月8日号)

 
 東京都文京区の真言宗豊山派大本山護国寺の「音羽陸軍埋葬地英霊之塔」。「復員省」「東京都」「大蔵省」へと移管され最終的に護国寺に返還。戦争のあった激動の近現代史が墓地にも物語られている。(2020年11月19日号)


 兵庫県神戸市中央区大龍寺の「怨親平等」プレート。神戸大空襲で戦闘機でB-29に体当たりした緒方大尉の「戦死之地」碑と共にある、戦死したB-29乗組員を弔う「怨親平等」の碑。(2021年3月11日号)


神奈川県川崎市遍照寺の「半鐘」と坂本住職。戦後75年の節目となった昨年、戦中に金属供出した「半鐘」が帰還した。川崎市の文化財課によりデジタル技術で銘文を分析し、寺院の特定につながった。(2021年4月15日号)


武蔵野市八幡町・真言宗智山派延命寺の250㌔爆弾の破片。境内には空襲犠牲者や戦没者らの名前を刻む「平和観音菩薩」、長崎平和祈念像の作者である北村西望の「平和の女神」レリーフを鋳造した「平和の鐘」もあり、同寺は地域の平和学習のコースになっている。(2021年4月29日・5月6日合併号)


土浦市法泉寺「航空隊碑」と山岡英嗣住職。土浦海軍航空隊に操縦士を養成するために設けられた海軍飛行予科練習生(予科練)を戦争末期の昭和20年6月10日、B29などの爆撃機が襲った。同寺では4代にわたり予科練生や教官を供養し続けている。(2021年6月3日号)

京都府宇治市の靖国寺は、靖国神社から分霊を受けた戦没者を祀っている。〝勤王僧〟中井祖門が時の内閣総理大臣・田中義一に直談判して建立した。(2021年7月8日号)


熱海市興亜観音。怨親平等の精神で松井石根により昭和15年に建てられた。興亜観音境内にはA級戦犯の「殉国七士の碑」が存在する。(2021年7月22・29日合併号 A級戦犯遺骨の行方㊤)


愛知県名古屋市真言宗智山派長福寺〝七寺〟の「つぎはぎ大日如来」。名古屋大空襲の被害を象徴する。その目からは涙が流れているかのようにも見える。(2021年11月4日号)


 和歌山県有田市ウエノ公園の「豊龍山無縁寺」の無縁塔。太平洋戦争中に海外で死没した人の、引き取り手がなかった遺骨3736柱を弔うために建立された。護持団体「無縁講」と有田市仏教会による大祭が毎年4月・7月に営まれる(2021年12月2日号)