2020/8/6

第54回仏教伝道文化賞 本賞に前田専學氏 印度哲学の発展、人材育成に寄与 奨励賞は該当者なし

 (公財)仏教伝道協会(木村清孝会長)は7月29日、第54回仏教伝道文化賞選定委員会(大久保良峻委員長)を開催し、仏教伝道文化賞に前田専學氏(89、東京大学名誉教授、中村元東方研究所理事長・東方学院長)を選定した。贈呈式は10月8日午前11時から、東京都港区の仏教伝道センタービルで行われる。なお本年度の沼田奨励賞は該当者なし。

 仏教伝道文化賞は国内外で仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践者など、幅広い分野で仏教精神と仏教文化の振興と発展に貢献した人物や団体に贈られる。

 前田氏は昭和6年(1931)生まれ。印度哲学の世界的権威である中村元氏の後継者として東京大学で教鞭を執り、東方研究会、日本印度学仏教学会理事長として学界の発展、人材育成に寄与した功績が認められた。また兄にあたる仏教学者の前田惠學氏(1926~2010)は平成17年(2005)に功労賞を受賞。兄弟による受賞は初めてとみられる。

 受賞した前田氏には500万円の賞金と記念品が贈られる。

コロナに悩んでいるさ中の朗報
前田氏の受賞コメント
 
 長い伝統のある仏教伝道文化賞を私に下さるという知らせを受けて大変に光栄に存じております。
 
 実は新型コロナウイルスの影響で、三密を避けられない状況下、中村元先生ならばどうされるであろうか、と考えながら、さる5月12日に東方学院は今年度の全講義を休講とする通知を全講師と全研究会員に出して、その後の(公財)中村元東方研究所と東方学院の運営について悩んでいたところでした。
 
 新型コロナウイルスとの共生を考えざるを得ない中でのこの朗報は、大きな活力を与えます。まことに有り難うございました。

2020/8/6
寺族が体験したコロナ禍のお盆 神保まこ氏(東京都台東区日蓮宗佛心寺寺族)

 

 7月は東京のお盆。コロナ禍で規模を縮小したところは多い。お寺では消毒液の配置や三密を避けるなど対応しながら法要を営んでいる。コロナ後のお寺の取り組みと7月お盆について寺族の立場から神保まこさんに寄稿いただいた。


感染防止のため玄関には消毒液を置く 堂々とマスクをせずに来寺する人は皆無に近いが、なかなか表情を読むことが難しい。寺族としてお檀家さまと会話するとき、殊に人生の諸先輩方に失礼のないように立ち居振る舞っているつもりでも多少伝わり難いこともある。マスクによって声が聞こえにくかったり、感情が伝わりにくかったりと、意思の疎通が難しいことに気付く。

 数多く寺が密集する東京・谷中の一寺院に嫁いでかれこれ30年余り。さまざまな体験を積んできたつもりで居たが新型コロナウイルスには驚いた。寝耳に水である。全ての生活習慣が覆される現状。人は、辛い体験を成長へのステージと受け止めて生きているが、新型コロナウイルスばかりは答えが遠い。

 拙寺では新型コロナウイルスの感染者が増え始めた2月下旬から本堂と客殿の椅子の配置を変えた。席は向かい合うことを止め、間隔を空けて座る。ご法事は大人数でのご参加をなるべく避けて頂き、少人数を徹底した。御齋の席も拙寺で設けることはご遠慮頂くなど出来得る限りの対策を講じている。

 緊急事態宣言が4月上旬に発令され、5月下旬に解除される中、住職は得意の機械を利用してお檀家さまにリモートでご法事をお伝えし読経するという試みに出た。

 元来、お祖師さま・お釈迦さまに額ずき、お側で教えを頂き帰依しご先祖さまと向き合うご法事。新型コロナウィルスという厄介な相手とどう対峙したら良いのか…「リモートのご法事」…違和感満載だ。

 住職ともディスカッションの嵐の日々。出た答えは「方便」。リモートはあくまでも「方便」であるという結論に至った。そして解除された翌週のこと、お檀家さまが徐々に普段と変わらない様子でお参りされるようになり、危惧していたことはある意味払拭された。ご法事のお申し込みも墓参の足も途絶えたりはしないのである。

 人は一人で生きてきたわけもなく、ご先祖さまあっての自分という本当に大切なことに対する心は消えないという証しを逆に見せて頂くことになった。もちろん寺としての努力は続けていかねばならないことは当たり前の責務だ。お檀家さまには常に教えて戴くことが多い。

 7月19日、拙寺はお施餓鬼法要日だった。密を避け、会食を避け、消毒を徹底し、マスクは当たり前という通知にも関わらず例年の3分の2のお檀家さまが参加された。ご先祖さまご供養を厳修し、現世の我々の在り方と必然の構えを改めて実感する大切な時間となった。

 先日、こんなお檀家さまが墓参にいらした。「私は太平洋戦争が終結したとき、10歳でした。その時の大人達の会話を鮮明に覚えていますが、世の中が非常から抜け出すことは容易ではないんだと子ども心に痛感し震えたものです…。だけどね、奥さん、今回の新型コロナウイルスはどうでしょうねー、なんせ敵が見えない…こんなことは長く生きてきた私等ですら経験がない。怖くて仕方ないねー」と裏玄関でお線香を点けて差し上げたときの会話。

 確かに見えない敵という言葉に引っ掛かりはしたが、太平洋戦争のときも東日本大震災も各地の豪雨地震等の災害も新型コロナウイルスも…恐怖は何れにせよ突然やって来て全ての日常を奪う。だけど人は前を見て生きる選択を余儀なくされるのである。こうして繰り返される人災・天災と向き合いながら、ご先祖さまから繋がる命に感謝して生きている。

 東京は、7月がお盆だが、全国的には8月がお盆。東京から他県へ引っ越したお檀家さまは8月に行事としてのお盆を迎えることから、拙寺では7月・8月とお経廻りが続く。これまでに「ウイルスが怖いからお盆のお経はご遠慮します」とお檀家さまから言われたのは5%程度。その5%を危惧するより95%のお檀家さまが「ご住職いついらっしゃいますか」と言って下さることのありがたさを受け止め、日々是精進である。

 それにしても、新型コロナウイルスが蔓延する前と蔓延したあと…寺族である私の法務はそれほど大差ない。住職は各地を飛び廻るが私は寺に居ることが当たり前だからである。今回ばかりは住職も子どもも寺に引き籠もり家族が皆で居ることが多くなった。一家総出で庭木の剪定を毎日行い、境内は綺麗になるし一石二鳥の新しい習慣が生まれた。

 お釈迦さまの御言葉『四十二章経』にある「志がどんなに高くても、それは一歩一歩到達されなければならない。道は、その日その日の生活の中にあることを忘れてはならない」のである。 

じんぼ・まこ/立正大学仏教学部卒業。日蓮宗新聞社勤務を経て、東京・谷中の日蓮宗佛心寺に嫁す。

2020/8/6

真宗の教えに垣根なし 東本願寺 大谷暢裕門首が就任会見 ブラジル国籍変更せず


会見する暢裕門首と裕新門。「『南無阿弥陀仏』を世界中に届けたい」(門首) 真宗大谷派本山東本願寺(真宗本廟・京都市下京区)の宮御殿で7月30日、1日に就任した大谷暢裕第26代門首(68)の就任会見が開かれた。暢裕門首は、「門首の重責のプレッシャーと同時にありがたいことだと思っている」と述懐。「親鸞聖人の教えを門徒の皆様と一緒に膝を交えながら聞いていきたい。800年の月日、大事に守られてきた浄土真宗の教えが尽きぬよう一生懸命尽くしていきたい」と表明した。門首継承式は11月20日に営まれる予定。

 暢裕門首は京都市で生まれ、1歳でブラジルに渡った。国籍もブラジルだが、「〝ブラジル育ち、ブラジル国籍だから〟というカテゴリーでの特別な目標はない。浄土真宗の教えは国や人種、性別、年齢などにかかわりなく、差別のない平等な世界を説いている」と強調。「『南無阿弥陀仏』を世界中に届ける道を辿り、言葉や文化が違っても『生きとし生けるものは皆平等』というお念仏を届けていきたい」と話した。

 暢裕門首の長男で、1日に就任した裕新門(34)も同席。門首後継者となる新門職について、「門首の補佐として精一杯頑張っていきたい」と述べ、「開教司教にも就任したので海外の門徒との交流も深め、開教に尽力していきたい。私はブラジル育ちであり、教団外部の視点も少しは持ち合わせていると思う。それを活かし、価値観を問い直しながら海外布教に尽力し、同朋社会の実現に尽くしたい」と抱負を語った。(続きは紙面でご覧下さい)

2020/8/6

豊山派鈴木内局が記者会見 長谷寺総登嶺を計画 3年後の生誕1250年事業


 7月5日に発足した真言宗豊山派の新内局(鈴木常英宗務総長)は同27日、東京・大塚の宗務所で記者会見を開いた。施政方針について説明した鈴木総長は、令和5年に迎える弘法大師ご生誕1250年記念事業として総本山長谷寺(奈良県桜井市)への「総登嶺」を挙げ、全国檀信徒の団参計画を示した。星野前内局から引き継ぐ長谷寺伽藍修復や機構改革にも言及した。

 生誕1250年の記念事業について鈴木総長は、「ご本山に上っていただき、お檀家のみなさんと共に弘法大師の誕生をお祝いして法要をする。これを全国展開したい」と説明。現在、準備委員会で検討しており、来年4月には記念事業の委員会を発足する予定とした。

 前内局から引き続き長谷寺伽藍修復事業にも取り組む。特別賦課金を財源にした本堂(国宝)と本坊(重文)の修復の他に、各寺院からの志納金を活用し、「昭和寮」の修復に臨む考えを示した。

 機構改革については、宗派規則の細かな見直しを行うと説明。今回の新型コロナウイルスの影響で委員会や行事の延期・中止の措置がとられ、文書会議等の対応をとってきたが、「完全にやらないといけない委員会、一緒にしてもいい委員会ということが見えてきた。そういうものも考えていきたい」との方向性も示した。9月には制度調査会の全体委員会も予定しているが「東京の感染者数などを考えて当たっていきたい。ただ、色々な委員会を中止にしているが中止のままでは何もできない。できるだけ先に進みたい」とし、今後の委員会の在り方を模索していることも明かした。

 前内局が約40年ぶりに実施した総合(宗勢)調査の報告書も完成したが「資料を分析して、宗内においてどういう活用の仕方があるかを検討する委員会を作り上げていかないといけない」との考えを示した。

2020/7/23-30合併号

宗祖に学ぶコロナ禍を生きる智慧 祈りと共に苦難を乗り越える 橋本真人氏

 国などから「新しい生活様式」が示されたが、緊急事態宣言の反動で「緩み」が起こり、再び感染拡大の危機にある。歴史上、疫病は繰り返し発生し、各宗派の祖師も厳しい時代を生き抜いてきた。橋本真人・高野山真言宗教学部長に、苦難の中にあっても自身の行動を律しながら暮らす智慧を提言いただいた。


 橋本真人部長人生の苦難は、いつどのような形で私たちに襲いかかってくるかわかりません。新型コロナウイルスが猛威をふるい、感染の恐怖におびえながら生活することは、誰もが予想できなかったことです。

 仏教の開祖である釈尊は「四苦」をお説きになっています。四苦とは「生苦・老苦・病苦・死苦」です。漢字で「苦」と書くと一般的に苦しいこと、つらいことをイメージしますが、本来、釈尊が説かれた苦はサンスクリット語の「ドゥッカ」で、「自分の思い通りにならない」と解釈します。

 生まれることも思い通りにはなりません。老いることも、病気になることも、そして死ぬことも自分の思い通りにはならないものです。しかし、私たちはその思い通りにならない様々な苦難を乗り越えてゆかねばなりません。仏教とは、「自分に与えられた命を精一杯生きる」教えです。

 仏教では苦行を認めないという説もありますが、少なくとも弘法大師は若き頃より晩年における高野山の生活においても、当然のように行(ぎょう)をなさる様子を詩文に残されています。

 「寸陰是れ競いて、心仏を摂観(しょうかん)す、夢中の俗事、坐忘(ざぼう)するを貴しとす」(『高野雑筆集』)

 寸時を惜しんで、ただひたすらに、心を仏におさめ修禅観法にいそしんでいます。夢に見るような世間の俗事は、すべて忘れることを善しとしています。他にもいくつか紹介します。

 「澗水一坏(かんすいいっぱい)、朝(あした)に命(めい)を支え、山霞一咽(さんかいちいん)、夕(ゆうべ)に神(しん)を谷(やしな)う」(『性霊集』一)【現代語訳】朝には谷川の水を一杯飲みて命をつなぎ、夕には山の霞を一吞みしてたましいを養う。

 「空海弱冠より知命(ちめい)に及ぶまで、山藪(さんそう)を宅(いえ)とし禅黙(ぜんもく)を心とす」(『性霊集』四)【現代語訳】私は、二十歳の時から五十歳まで、山林を自分の家とし、坐して仏と向き合うを心としてきた。

 「厳冬の深雪には藤衣(とうえ)を被(き)て精進の道を顕わし、炎夏の極熱には穀漿(こくしょう)を断絶して朝暮に懺悔(さんげ)すること二十年に及べり」(『御遺告二十五箇条』)【現代語訳】厳しい冬の深い雪の中でも、粗末な葛(くず)で作った衣を着て精進を重ね、炎暑には穀類や飲み物を断って朝夕自己を見つめることを二十歳の時まで続けた。

 弘法大師が全国各地を巡って悩める人に法を説き、伝説に語り継がれる程多くの井戸を掘り、また薬草の効果を伝えられた超人的な行動と精神力は、それを裏付ける行(祈り)によって培われた身心の備えがあったからに違いありません。

 祖師の姿に立ち返る

 人生の苦難を乗り越えるためには、日々行じなければならないことを、当たり前に弛まず行じることが大切です。それを弘法大師のお姿より知ることができます。以前、布教研究所の所員として天理教本部と西本願寺で研修を行った際、「布教の第一歩は、お祖師さまの伝記を誰にでもわかるように平易に説くことである。そのためには、自らが謙虚な心でお祖師さまのお姿と教えに道を求めなければならない」と教えていただきました。

 つまり真言宗徒であれば、「迷った時こそ弘法大師のお姿と教えに道を尋ねよ」ということです。その観点に立つと、『般若心経秘鍵』には苦難を乗り越える方法が明確に説かれています。『般若心経秘鍵』は真言密教のエッセンスが充満した書物で、弘法大師が行学共に円熟なされた最晩年に『般若心経』を説き明かされた著作です。その一文をご紹介いたします。

 「(般若心経を)誦持講供(じゅじこうく)すれば、則ち苦を抜き楽を與(あた)へ修習思惟(しゅじゅうしい)すれば道(どう)を得通(えつう)を起(おこ)す。甚深の称(しょう)誠に宜(よろ)しく然(しか)る可(べ)し」【現代語訳】般若心経には、仏教のあらゆる教えが詰まっていて、この経を大切にし心をこめて唱え、さらにその功徳を説き、供養に勤めれば、世間の様々な苦しみをのがれ、安らぎを得ることができる。さらにこの経の教えを深く身心で習い修めるならば、さとりを得て神通力を起こす。この真実の智慧の深さが称賛されるのは誠にもっともなことである。

 弘法大師が前述のごとく、「苦を抜き楽を与える」と讃嘆なされた教えに則り、『般若心経』の読誦と、その功徳の深さを実践的に伝える布教教化、即ち般若心経写経の推進に努めることが、コロナ禍を生きる真言宗徒の智慧と考えます。その弛まぬ祈りの積み重ねが、いつしか量り知れない大きな生命力となって、苦難を乗り越える行動と精神力が自ずと養われることになるでしょう。

 「毎日新聞」(7月17日付)の余録に、「コロナ禍で対局のない五十日間、巣ごもりで自らの将棋を振り返ったという。授かった時間を自分の充実に注ぎ…」と、今話題の藤井聡太新棋聖について記されていました。菩薩十善戒の一つに「不邪見(ふじゃけん)」(間違ったものの見方をしない)がありますが、コロナ禍というマイナスの環境にあっても、その人の生き方に応じた行の積み重ね次第で、プラスに転じる正しい判断力が養われるのでしょう。

 コロナ禍という未曽有の苦難の中で、日本仏教各宗を開いたお祖師さまのお姿と教えに立ち返る。ご自身の信仰する宗旨に則ってお祖師さまの伝えた行を実践することが、自らの心と生活を律することになり、結果として感染拡大を防ぐことになるのではないでしょうか。
…………………………
はしもと・しんにん/昭和37年(1962)2月生まれ。高野山大学卒。昭和60年から平成16年まで高野山高等学校教諭。高野山大学非常勤講師、専修学院能化、教学部次長などを経て平成29年から現職。自坊は和歌山県紀美野町の醫王寺。

2020/7/23-30合併号

終戦75周年企画・お寺の戦伝遺産を歩く① 中野区・成願寺防空壕跡

 
 成願寺境内にある防空壕跡。もともと素掘りだったが、20年ほど前に補強工事が施された。全長約30メートル。山手通り拡張前は50メートル以上あったという思ったよりも大きく広い。高さは2㍍あまりある。梅雨のためかジメジメと湿気を感じる。防空壕と言うよりはトンネルに近い。全長はおよそ30メートルだ。

 戦争末期、B29の襲来を知らせる警報のサイレンが鳴ると、近隣の檀家や住民がこの防空壕を目指した。檀家の一人は「空襲のたびに大きな荷物を抱え、子どもの手をひいて、成願寺の防空壕へ逃げ込みました。足は震え、中に入っている人たちは、誰も口をきくことさえしません。恐ろしくて、じっとサイレンの音の止むのを待つばかりでした」と証言している(「成願寺季報」1994年7月)。

 成願寺とは、東京都中野区本町にある曹洞禅多宝山成願寺のことで、600年余の歴史を有する名刹である。「中野長者の寺」として親しまれている。

 山手通り(環状6号)に面し、中野坂上駅に近い。近年は再開発が進み大江戸線が開通。道路も拡幅され、高層ビルが増えた。都会そのままだが、かつては田畑があり、成願寺の裏山には牧場があった。それほどのどかな場所だった。成願寺の寺領も広大で自然とともにあった。

 山手通りからみた成願寺。竹塀の内側奥に防空壕がある日本軍は昭和19年(1944)6月以降のマリアナ諸島の戦いで敗れ、日本が握っていた制空権を失うことになった。それから日本本土に対する空襲は激しくなり、この頃から自宅の床下や庭、校庭などの防空壕も増えていった。成願寺の防空壕もこの時期で、都心の疎開児童63人を受け入れるため大規模な掘削が行われた。地下ではなく丘を横に掘っている。そのため戦後、防空壕は埋め戻されたが、横穴式防空壕はその必要もなくそのまま残された。

 「小学三の時に日米開戦、中一の時に無条件降伏」と語る小林貢人住職(88)は、「モノ不足の戦時下、スコップだけは不自由なしでした」と回想する。

 素掘りだった防空壕は頑丈だった。豪内には6畳ほどの部屋がある。ここに本尊をはじめ寺宝を移した。5月24日と25日の山手大空襲では、3千人以上が犠牲になった。中野周辺も火の海となり、成願寺の伽藍は灰燼と帰した。だが、防空壕のお陰で本尊は焼失を免れた。戦後、防空壕は戦争を伝える遺産となった。平和教育や社会教育の一環として来訪する見学者は多い。(続きは紙面でご覧ください。また、武蔵村山市・禅昌寺「少飛の塔」、同市「揺籃の地」碑、増上寺「阿波丸事件殉難者之碑」の記事も掲載しています)

2020/7/23-30合併号

インサイドレポート コロナ禍・増加する宗教法人売買 仲介サイトに延べ100法人

 
 宗教法人売買仲介サイトの一例。コロナ禍で増加しているという近年、運営難に陥った宗教法人の売買が問題になり、伝統仏教教団の各宗派では不活動法人の整理・統合などを行ってきた。だが今、コロナ禍で秘密裏に売りに出される宗教法人が増加。西口竜司弁護士(神戸市垂水区・神戸マリン綜合法律事務所)は、「宗教法人売買を仲介するサイトが増え、7月中旬時点で、すぐに確認できるだけでも(寺や神社など)延べ100法人ほどが売られている」と指摘する。資金繰りで万策尽きた住職が寺を売りに出すことを未然に防ぐには、宗派の共助体制の構築が重要になりそうだ。

 宗教法人格を所有する寺院を売買するには、一般的に以下の手順を踏むという。①資金繰りで万策尽きた住職が法人売買の仲介業者に相談②業者の指示に従い、宗派から離脱して単立寺院にする③単立化したら仲介サイトに掲示して買い手を募る―。西口弁護士は、「コロナ禍で運営難に陥る寺院が増えている。今後、持続化給付金も給付されず金融機関からの融資も受けられずに、さらに困窮する寺院が増えるのではないか」と憂慮する。

 一連の手順はシンプルだが、宗教法人格は平均2~3億円程度で売買され、2~3割が仲介業者の手数料になるという。中には総額数十億に達する取引もあるようだ。

 買い手の多くは納骨堂業者で都市部が中心だという。「ある業者は『檀家は少ないほどいい。簡単に乗っ取れる』と言っていた。狙い目は信者寺のようだった」(西口弁護士)。そしてひと度、単立宗教法人にしてしまえば既存の宗派の規則には縛られなくなるため、「法人格さえあれば納骨堂業者が自前の〝雇われ僧侶〟を入れてきたり、形だけの僧侶に管理をさせたりできる。どんな形でも宗教活動をしていれば法的には問題ない」(同)。

 しかし、こうした売買は違法になる可能性が高いという。「寺を売った住職が受け取る額は20~30%の仲介手数料を引いても巨額になる。だが税務上の問題があるため、買い手と売り手は領収書なしの現金取引を行う場合が多い。完全に脱税行為だ」(同)

 田村実貴雄特定行政書士(同区・田村行政書士事務所)も、「そもそも、こうした宗教法人の売買は本来認められない」と指摘。「株式会社の株主とは異なり、寺(宗教法人)は元々、住職の所有物ではない。したがって法人売却で得たお金も住職の物にはならない。檀家が元住職らを債務不履行で訴えれば、寺院内の決議自体が無効になる可能性がある」と話す。(続きは紙面でご覧ください)

2020/7/23-30合併号
大本 次期本部長に特許庁出身の小林龍雄氏

小林次期本部長 大本(出口紅教主)は7日、亀岡市の本部で第168回総代会を開催し、次期本部長(代表役員)に小林龍雄氏を選任した。7月末日で鈴木穎一本部長が任期満了することに伴う人事で、任期は8月1日から3年間。外郭団体の人類愛善会会長も兼務する。

 小林氏は63歳。新潟県柏崎市出身。駒澤大学を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)特許庁に入庁し、中小企業庁、新エネルギー・産業技術総合開発機構勤務、特許庁審査業務課長を最後に退職した。大本宣伝使、神奈川主会長、人類愛善会理事、人類愛善会インターナショナル理事、世界連邦運動協会執行理事を歴任。

 宗教法人大本の新役員は以下の通り(敬称略)本部長=小林龍雄、総務=四方道広、西永真、宮城聡、成尾陽、浅井清高、山田歌、山本哲、阿比留健次。

2020/7/23-30合併号
薄田東仙住職が刻字個展 「歓喜」テーマに新作42点

大作「People 2020C」と薄田氏曹洞宗延命寺(新潟市)の薄田東仙住職(72)の個展「刻字展―People 人間賛歌・陽はまた昇る」が15~22日、東京都中央区の和光ホールで開かれた。

 刻字は、造形的に捉えた文字を木材などに刻むもので、書とは異なりレリーフ状の立体的な作品となる。薄田氏は和光での初めての個展に臨み、依頼のあった昨夏から準備を開始。展示した45作品中、42点もの新作を精力的に造り上げた。

 テーマは「人々の歓喜」。ここ10年ほど取り組むシリーズ「People」からは、両手を掲げた多くの人を描いた躍動感あふれる新作「People2020C」(横215・5センチ、縦40センチ)などを出品した。

 中国の少数民族ナシ族が用いる象形文字、トンパ文字の「人」をモチーフにしたというこの作品。「書を解説されて理解するのでなく、直感的に分かってもらうことで、海外の人を含めてよりたくさんの人に魅力を知ってほしい」と薄田氏。「書を世界のアートに」との目標に向かって制作に打ち込んでいる。

 ほかにも、地元新潟の大栄寺専門僧堂(新潟市)の五十嵐紀典堂長が選んだ文章を刻んだ、道場に掲げる予定の「聯」(縦330センチ、横30センチ)を出展。篆書体の「花」から着想したユリをイメージした「花束」、禅語の「日々是好日」を5つの輪に見立てた作品なども展示した。

 薄田氏は同宗が主催する「青少年書道展」の審査委員長を務める書家で、日本刻字協会会長。文化庁文化交流使、国際刻字聯盟会長としてもイスラエルやイタリア、ポーランドなど各国の美術館や大学で刻字の魅力を伝えている。

2020/7/23-30合併号

浄土真宗本願寺派で4カ月ぶりに得度式再開 18人が僧侶の道を歩み出す

俗袴を着け、読経を練習し得度式に臨んだ 浄土真宗本願寺派の得度式が15日に京都市下京区の本山本願寺で行われた。4カ月ぶりに得度式の再開となった。

同派で得度式に先立つ講習「得度習礼」は通常、西山別院(西京区)で10日間をかけて行われ るが、3月は新型コロナウイルスの影響により在宅のレポート形式に変更されていた。さらに3月・6月の得度式は中止され、3月にレポート形式で得度習礼を修了した57人は度牒を授けられていなかった。このうち18人がこの日、待望の得度をし、お坊さんとしての第一歩を踏み出すことになった。

 最年少は15歳、最年長は72歳で、男性11人と女性7人が朝8時に聞法会館に集合。僧侶養成部職員から、着替えや経本の持ち方など基礎から指導があり、波佐谷兼真・教師養成部長からは僧侶になって以後の学習の心得や、得度誓約の再確認の講義を受けた。午後は読経や塗香の受け方などを練習し、万全の態勢でおかみそりに臨んだ。

 高岡教区教念寺の高桑景寿さん(19)は金沢大学人文学類に在学中。「今回はレポート形式だったので、文献への理解は深まったと思うのですが、先生から直に(儀礼や所作を)教わったわけではないので、そういう意味では少し知識が異なってくるのかなと」とわずかに不安そうな様子も見せつつ「紀元前5世紀の釈尊の教えを、さらに未来に伝えていけるような僧侶になりたい」と期待を膨らませた。

 西山別院での得度習礼は7月から再開されたが、ウイルス対策のため定員を50人に絞って行っている。教師教修の定員も50人になっており、第2派の到来も危惧される中、当面は「密」を避けるため人数を減らして各種講習が行われる見通しだ。

2020/7/16
妙心寺派所長会 花園会館すでに1億減収 寺班調査はスケジュール変更

 
ZOOMを利用して参加した宗務所長もいた 臨済宗妙心寺派(栗原正雄宗務総長)は8日、京都市右京区の花園会館で臨時宗務所長会を開催した。6月に改選されたばかりの宗務所長に、寺班調査のスケジュールや新型コロナウイルスの宗門への影響などが内局から説明された。

 栗原総長は、誰も予測できなかったコロナ禍の中、「できることはやり、延ばすことは延ばす、そういった判断が求められる時期になってきた」と述べ、臨機応変な対応の必要性を呼び掛けた。

 花園会館部からコロナの影響の甚大さが報告された。今年1月から12月までに入っていた予約が7月3日時点で延べ1万6667人キャンセルとなっており、損失額は1億円を超えているという。例年は修学旅行生の利用2万人のうち、1万人がキャンセルしており、残りの1万人分も実施されるかは不透明で、危機的状況があらわになった。

 総務部からはコロナ対応として4月から5月にかけて職員の交替勤務と完全閉所を行い、休業した職員・パートの給金については政府の雇用調整助成金を申請したことが報告された。今後の会議はビデオ会議と出席の併用を進めていくことも述べられた。今宗務所長会も27人の宗務所長のうち会場出席は23人、4人はオンラインで自坊からの参加となった。

 現在進められている10年に1度の寺班調査は5月20日に各教区調査会会長に第1次査定が通知されており、教区調査委員会での調査・審議はコロナ禍を受け予定を延期して9月末日までに本部調査会に結果を提出することになった。このため不服申し立てと審査の期間が短くなったが、寺院の不利益を最小限にするため、不服申し立てがあるかもしれない寺院に対しては第2次査定を各寺院に提示する前に寺班を開示して説明しても良いとする細則が出された。

 明るい話題としては花園学園から、花園大学の全学科で入学生が定員を超えることになったと報告された。16年ぶりの快挙で、仏教学科も今年は35人の定員に対し新入生40人、編入生6人が入学。150周年(2022年)記念事業のキャンパス整備も順調で、8月には新学生会館「楽道館」が竣工する。

2020/7/16
持続可能な脱炭素社会目指せ 竹本了悟氏(テラエナジー株式会社代表取締役・本願寺派僧侶)

 

新型コロナウイルスは様々な問いを地球や人類に投げかけた。経済活動が休止し、大気汚染が一時的に改善した報告もあった。すでに経済活動が再開され、今後地球はどうなるのか。2年前に「テラエナジー」を仲間の僧侶たちと始めた竹本了悟氏(本願寺派僧侶)に地球環境の視点から、提起いただいた。


テラエナジー設立時の記者発表。中央が竹本氏(2018年10月、京都) 起業当初からリモートを積極的に活用してきましたが、新型コロナウイルスによって、より一層リモート化が進みました。私自身、普段は奈良の自坊にいます。ここからリモートで仕事をして、週に1回ほど京都の事務所に出勤しています。営業面では、これまで、直接お会いして顔の見える関係を作ることを大切にしてきましたが、今はそうできないので、オンラインで顔の見える関係を作れるよう、様々な仕組みを模索しています。

 新型コロナウイルス禍で会社として何ができるのか。お客さんたちと話をする中で、飲食店やホテル業はかなりご苦労されているのがわかりました。

 しかしながら、当初、私たちには何もできないという無力感しかありませんでした。そんな時、取締役の霍野廣由さん(福岡・本願寺派覚円寺副住職)から連絡がありました。飲食店を営む友人たちが売り上げもなく困っていることを肌身で感じ、テラエナジーとして何かしましょう、と直談判してきたのです。みんなが困っている時に何もできないのであれば、僧侶として起業している意味がない、とまで言い切りました。

 電気料金を値下げすれば、困っている方々の生活費や固定費の削減に貢献できる。それに、私たちが具体的に動くことが、一緒に困難に向かっていこうという応援のメッセージにもなる。その様な想いから「困ったときはお互い様 電気料金値下げキャンペーン」を実施することにしました。

 こうした身近な支え合いが今こそ大切だと思っています。さらに、マクロな面では、気候危機について気になる事があります。

 新型コロナウイルスの影響で世界的に経済活動が控えられたことにより、数カ月にわたり地球温室化ガスのCO2(二酸化炭素)の排出量が大きく減少しました。ただし、この変化には注意せねばなりません。

 リーマンショックに伴い2009年度には温室効果ガス排出量が大幅に減少し、過去最低を記録しました。ところが、素早い経済回復を求めたため、4年後には以前よりCO2の排出量が増えたのです。以前と同じ生活を取り戻そうと躍起になれば、人類にとって喫緊の課題である気候危機を加速させてしまうのではないかと危惧します。

 すでに世界の多くの国々では、元の生活に戻るのではなく、持続可能で環境に配慮した新たな生活を模索しようという気運が高まっています。実際、近年注目を集めているSDGs(持続可能な開発目標)やサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の考え方は、この災禍を受けて加速しており、様々な制度やビジネスの大前提となっています。

 ところが日本の場合は全く反対のことが起こっています。新型コロナウイルス禍以前は、SDGsや環境に配慮したビジネスや組織のあり方が志向されつつありました。それがこの災禍以後、大きく後退してしまっている様に感じます。

 この相違は、他国と日本とのSDGsや環境への配慮に対するイメージの違いがあるのではないかと思います。参考になる、興味深い調査結果があります。世界市民会議の「気候変動とエネルギー」開催報告書(2015)によると、「温暖化対策が生活の質を高める」と考える人が世界全体では66%に対して、日本ではわずか17%だったのです。今後、私たちが積極的に持続可能な脱炭素社会を目指すためには、まずもって、こうしたイメージを変えることが必要なのかもしれません。

 恥ずかしながら、私は、テラエナジーを起業する以前、環境問題への関心を持っていませんでした。共同経営者の本多真さん(本願寺派僧侶)に教えられてから、気候危機は人類の最重要課題だという意識に変えられました。2人の共通認識として、情報を届ける役割をお寺こそ担わなければならないと思うようになりました。環境問題を根本から解決するには、仏教の考え方がとても有効です。仏教の考えには、サスティナビリティ(持続可能性)やエコ(自然環境保全)を包括する思想があると思います。

 例えば、精進料理です。地球温暖化の一因に肉食が挙げられますから、精進料理はまさに地球温暖化対策にピッタリの食事です。さらに、化学肥料は石油が原料なので多くのCO2を排出しますから、精進料理のお野菜を仏教の考え方を基礎とした自然農法で栽培することで、環境負荷のない持続可能な食を提案することもできそうです。ここに、美味しく、安全で、低コスト、さらにオシャレな食事として広めることができれば、地球温暖化対策として、力強い取り組みになり得ます。この様にして、脱炭素で生活が豊かになるんだよというような物語を、私たち仏教者が提示する事ができるのではないかと考えています。

 今回の災禍により、欲望に煽られるようなこれまでのあり方に、大きくブレーキが踏まれたように感じています。世界の価値観やルールが大きく変化する今こそ、様々な場面で仏教の考え方やあり方が求められています。

たけもと・りょうご/1977年広島生まれ。防衛大学校卒。龍谷大学大学院修士課程修了(真宗学)。2010年京都自死・自殺相談センターを立ち上げ代表を務める。2018年にテラエナジーを設立し、代表取締役に。自坊は奈良県葛城市の西照寺。

2020/7/16
曹洞宗大本山永平寺 南澤道人氏が次期貫首に

 
 曹洞宗大本山永平寺(福井県永平寺町)の福山諦法79世貫首(87)が退董の意思を固め、南澤道人副貫首(92)が次期貫首に就任することが6日、同寺顧問会で決まった。

 退董と就任は9月29日付。次期副貫首はそれ以降に決まる。

 南澤氏は昭和2年(1927)長野県生まれ。駒澤大専門部仏教科卒。同27年(1952)に長野県千曲市の龍洞院住職。平成16年(2004)から札幌市の中央寺住職。曹洞宗宗議会議員、永平寺監院などを経て、同20年(2008)から現職。監院時代、道元禅師750回大遠忌の奉修に尽力した。

2020/7/16

平泉・天台宗中尊寺 新貫首に奥山元照氏


奥山貫首 岩手県平泉町の天台宗東北大本山中尊寺で3日、奥山元照(げんしょう)・中興第29世貫首(61)が就任した。晋山式の日程は後日発表される。

 昭和34年、埼玉県生まれ。大正大学仏教学部卒。昭和57~61年、天台宗海外開教使としてハワイ別院に赴任。平成22年、埼玉県川越市・西福寺住職。現職として天台宗海外伝道事業団常任理事・天台宗書道連盟理事・埼玉教区法儀研究会会長・埼玉県教誨師会理事・全日本仏教会国際交流審議会委員など。

 奥山貫首は就任コメントを発表。「この度はからずも中尊寺一山の推挙により前貫首山田俊和大僧正より法統を継承致し、天台座主猊下より中尊寺貫首職を拝命致しました。明年は宗祖伝教大師1200年大遠忌に祥当し、中尊寺におきましては『平泉』世界遺産登録10周年、また東日本大震災から10年を数える大きな節目の年となります。中尊寺開山慈覚大師、大壇越藤原清衡公の中尊寺開創への願いはそのまま宗祖大師の御志に他ならないものと受けとめ、世情定まりない現代に『浄仏国土』を建設すべく努めてまいる所存です」