2020/3/26
障がい者19人殺害 やまゆり事件 植松被告に死刑判決 専門家のコメント


事件直後のやまゆり園には献花する市民が相次いだ(2016年7月30日撮影)。現在は取り壊されて建物は存在しない  平成28年(2016)7月26日、神奈川県相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」で障がい者19人を殺害し、職員を含む26人が重軽傷を負った事件。犯行に及んだ植松聖(さとし)被告(30)に横浜地方裁判所(青沼潔裁判長)は16日、求刑通り死刑判決を言い渡した。植松被告は公判中、障がい者への偏見を持ち続けた。今回の事件と判決は宗教者にとってどのような意味を持つのか。仏教福祉の専門家と障がい者施設を運営する僧侶にコメントをいただいた。


類似事件の予防にならず 他者を尊重できる社会を
清水海隆氏(立正大学社会福祉学部教授・日蓮宗僧侶)

 3月16日、相模原市・やまゆり園事件に判決が言い渡された。3年半前に障がい者施設の入所者・職員45名を殺傷した元職員の植松被告に対し、横浜地方裁判所は求刑通り死刑判決を言い渡したのである。しかし、この事件を何とも気の重い事件と考えるのは、筆者のみではないであろう。と言うのも、人の生命を殺傷したという事実に加えて、被告が裁判を通して障がい者を差別するような言説を連ね、障がい者の人権や生命までもを否定するような言葉を発し続けていたからである。

 このような状況の中で、裁判長は「酌量の余地は全くない」として、死刑判決を出しているが、これについては、多くの人々が望んでいた判決であるとの関係者のインタビューコメントも伝えられている。

 死刑制度の是非を別にすれば、45名の人命を殺傷したという事件の重大さはもちろん、逮捕後に被告が継続的に見せた無反省な態度からは、極刑もやむを得ないという思いは、大多数の国民の懲罰感情にかなう結果と言って差し支えないであろう。

 しかし、死刑判決は植松被告に対する懲罰であり、類似事件を予防することにはならないことは容易に予想することができよう。このような悲惨な事件が2度と起きないようにするためには、他者をいかにとらえるか、さらには多くの異質な存在をいかに受容していくのかを日常的に考えることが大切であり、近年の言葉で言えば多様性を尊重できる社会となるべく努力しなくてはならない。個々人がさまざまな存在を認めあう社会の実現にむけて、特に宗教者には折に触れて声をあげ、説教をするなど、大きな役割を担ってほしい。

 そして、一歩一歩の積み重ねによって個々人の考え方が変わった時、社会全体が多様性尊重型社会へと変化し、今回のような独りよがりの事件の起こらない社会となるではないだろうか。その道のりは遠い。まず一歩から始めたいものである。

極端な考え 理解できず 損得勘定と無縁な人たち
住田福祉氏(障がい者支援施設「尚恵学園」理事長・豊山派僧侶)

 植松被告は何故あんな人間になったのか。施設で働こうと考える人は自分ができることで役に立ちたい、という前向きな気持ちで始める人が多い。彼が極端な考えを持つようになり多数の障がいのある人たちを殺傷したのは、全く理解できない。

 今の社会は損得勘定ばかりが目立ち、心の問題が蔑ろにされている。障がい者や高齢者を社会の負担と捉え、長生きを「社会問題」として考えていないだろうか?

 斯様な社会が植松被告のような考えの人間を生み出したように私は思う。日本人は政治への関心は薄く、総じて選挙の投票率は低い。ちなみに私の施設の利用者は必ず選挙には行き、今までに棄権をしたことがない。たとえ字が書けなくても白票で投票する。これは国民としての権利と義務だと思うからだ。 

 被告は障がいの重い人の順から殺害したと聞いた、障がいの軽重をどう判断するのだろうか。日本では、まだまだ障がい者への差別や偏見があります。今もって障がい者施設を建設しようとすると住民の反対運動が起こることがある。だから辺鄙な場所に施設を造ることになる。やまゆり園の入所者は事件後、やまゆり園から出て神奈川県内の他のグループホームに分かれて生活を始めました。すると表情が穏やかに変わったと受け入れをした施設の友人から聞いた。

 日本は経済大国となった割に、世界の幸福度ランキングは低いまま。「先立つものはカネ」だと思っている人が多過ぎる。本当にそうだろうか?

 私の師に障がい者福祉の父と言われる糸賀一雄先生がいる。先生は「この子ら世の光」ではなく「この子ら世の光」にするべきだと説き続けた。《を》と《に》の位置を変えただけなのに思いは真逆だ。この仕事を続けてきて48年が経つ今もその言葉は新鮮に響き、迷えばそこに立ち返る。

 仏教は身につけてきた余計なものを一枚ずつ剥がしていくことを教えている。私は純粋無垢で損得勘定など無縁な彼らと毎日接していますが、彼らから学ぶことが本当に多い。 

 皆さんにはこの問題に関心を持ち続けてほしい。やまゆり園事件をどう感じるのか、考え続けてほしい。自分には関係のない話と思っていてはいけない。将来、いや、いつ当事者になってもおかしくないのだから。(茨城県土浦市、観音寺・神宮寺住職)

2020/3/26

何度も使えるマスク配布 念法眞教女子寮で修道生らが手作り

 
       マスクを手に取る信徒 新型コロナウイルス感染拡大の影響でマスク不足が続く中、大阪市鶴見区の念法眞教総本山金剛寺(桶屋良祐燈主)では、洗えて何度でも使えるマスクの配布を始めた。女子修道生と縫製奉仕の信徒らの手作りで、不安の中にある信徒に向けた手書きのメッセージや感染防止に役立つイラストも添えている。

 桶屋燈主からの「新型コロナウイルスの薬はなく、マスクがなかなか出回らないので、信徒さんは不安に思っていらっしゃる。少しでも安心してもらえるように、マスクを作って、頂いてもらいなさい」という指示を受け、15日夜から女子修道生がマスク作りを開始。教務本庁での勤務後、女子寮で1日平均3時間、12人が参加して作成し始め、縫製奉仕の信徒も加わるようになった。

 女子修道生らはまず親先生(開祖小倉霊現初代燈主)に、「このマスクを使ってくださる信徒さんが、いつも明るく元気で過ごしていただけますように」と祈願。念法眞言を唱えてから作業を始めている。

 初めに型紙を作成して、ガーゼ生地の布を裁断。ひと針ひと針、眞言を唱えながら心を込めて縫う。出来上がったら、100度の熱湯消毒を10分。干して乾燥させてからアイロンを当て、耳にかけるゴムを一つずつ付ける。その後、マスクを透明な袋に入れて密封。メッセージカードと共にラッピングして完成となる。

 メッセージカードには、繰り返し使ってもらえるように熱湯消毒の仕方を可愛いイラストで添え書きしてあり、手書きのメッセージも同封している。

 手作りマスクは20日午前、祈願本堂の本尊宝前にお供えした後、寺務所前と本山教区事務所に置いて配布。計83個が30分でなくなった。

 女子寮では今後も制作を継続。本山教区信徒からも「本山に参拝できなくても、自宅でできるので、ぜひお手伝いさせていただきたい」という声が上がっているという。本山ではマスクの型紙と裁断した布を渡し、作業の輪を広げていく方針だ。

2020/3/26

緊急寄稿 新型コロナ 宗教者の姿が見えず 困窮者に寄り添い、献身者に激励を ワンチームに宗教者も 天谷忠央氏(元新日本宗教連合会事務局長)

  
 東日本大震災やオウム事件を思い出す。突然の新型コロナウイルスの来襲。右往左往する人と社会。まだ有効な治療法も見つからず、感染症の拡大も止まらず先が見えない状況。そんな中で、身の危険も顧みずに防護服を着て闘っている医療従事者たち。危機感をつのらせた安倍政権がついに特措法を成立させた。国民の行動にさまざまな制限をかけたことで、国民生活や経済活動に大きな影響が出始めている。

 目にも見えず触って確かめることもできないウイルスの正体。今のところはお手上げ状態である。こうした地上の有様を神仏はどうご覧になっているのか。まさか、寺や教会に閉じこもり、嵐が過ぎるのを待っているわけではないだろうが、それにしても、神の愛や仏の慈悲を説く宗教者の姿が見えないのはなぜだろう。感染症が起きても、政治の側も医療の側も、また一般の国民も、宗教の必要性を感じてはいない。しかしそんな議論はともかく、反省を込めて、宗教者は行動に出る時ではないか。

 新型コロナウイルスによって突き付けられているのは、人と社会における信頼の問題である。ほんらい社会は、信頼と共同で成り立つはずなのに、このままでは不信感が増大し、たがいに支え合い助け合うという、当たり前の倫理が失われるだろう。いや、すでに人と社会は、善き倫理を喪失していたのかも知れない。今が大切な時である。分岐点である。

 ウイルスが悪いのではない。将来とも絶滅することもない。病気感染よりもっと恐ろしいのは、不信感の増大拡散が、社会を崩壊させる事態に発展することである。

 宗教団体は、人びとの尊い布施と国の法律で支えられている。それが何のためなのか、宗教者は知っているだろう。困った人に寄り添い、心の痛み悩みを救うのは、宗教者の責務であり、使命である。それぞれの宗教には、檀家の人や信者がいる。その中から感染症の患者さんが出たかも知れない。そんな人たちの心の嘆きや悲しみ、怒りにも耳を傾けねばならない。

 また、医療従事者も政治家もいるし、中小企業の経営者もいるはずで、かれらの努力や献身を称え激励の声をかけたい。それこそが、人としての宗教者の真心である。

 ラグビーが教えてくれたワンチームの精神、すなわち信頼と共同参画社会に、宗教者も参加しようではないか。祈りだけでは、新型コロナ感染を断つことはできない。

2020/3/19
新型コロナ 議会を短縮化 各宗派議会 限られた時間で審議 


 4月から始まる新年度予算や事業を審議する各宗派の宗会・宗議会・代表会。宗政のなかで最も重要な会議であるが、2月~3月に集中する各宗議会は新型コロナウイルスで短縮の傾向がみられた。2月26日に安倍首相が感染拡大防止のため今後2週間、全国的なスポーツや文化イベントの自粛を要請。翌27日には3月2日からの公立学校休校を要請し、学校は休みに入った。こうした経緯もあり、各宗議会は短縮されたりした。高野山真言宗は延期を発表したが、日程は決まっていない。

 新型コロナに関する情報は日々更新されているが、2月中頃までは各教団とも大きな行事等の見直しはなかった。しかし感染拡大が明らかになるに連れ対応に迫られた。

10 日に招集された日蓮宗宗議会でマスクを着用して登壇した中川法政宗務総長マスク姿で登壇した浄土真宗本願寺派の石上智康総長 議会をみると2月18日招集日の天台宗・妙心寺派・智山派ではほぼ例年通りの日程となった。やや事態が見えてきた2月24日招集の曹洞宗宗議会は例年より1日短縮したほか、5月に北海道で予定していた梅花流全国大会の中止を鬼生田俊英宗務総長が発表した。

 首相からの自粛要請後の招集となった本願寺派は全員がマスク姿で議場に入り、1日で閉会。今月2日招集の浄土宗と、10日招集の日蓮宗と豊山派も期間を短縮して閉会した。

 新型コロナの特性から密閉空間や飛沫感染の恐れがある対面的なあり方は避けなければならず、議会や委員会は限られた時間と空間での審議となった。すべての教団に影響を与えた今回のようなケースは極めて珍しい。

2020/3/19
緊急寄稿 寺院は今できることを 真言宗智山派薬王寺 倉松俊弘(住職・医師)


 3月13日、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症をパンデミックと表明しました(現地時間)。3月15日現在で、世界116カ国・地域に広がり患者数は14万人以上、死者は5300人を上回ります。

 また、日本では14日に新型コロナウイルス感染症に関して「緊急事態宣言」を出せる改正特別措置法が13日に成立し、14日から施行されました。世界中が何とかして拡散を防ぐために様々な手段を取っています。

 我々僧侶も現実的に葬儀・法事・宗教行事などをどうしたらよいか悩みます。実際に寺院や檀信徒からも相談を受けます。

 この新型コロナウイルスの感染様式は、飛沫感染と接触感染であり、特にクラスターを起こすには、①換気の悪い密封空間、②人が集中する場所、③近距離での会話――この三つの条件が揃うことにあります。我々の職場はこの条件に当てはまるところも多くあります。

 私はこの三つの条件を逆手に取ることで感染の危険性を少なくすることができるのではないかと考えます。一つには、可能な限り窓、ドアを開放して換気を行うこと。二つには、檀信徒の席間隔を可能な限り十分に取ること(飛沫感染の場合、約2㍍といわれています)。職衆の間隔も十分に取ることです。三つ目は、皆さんで心経など経典を読誦するときには鼻音あるいは黙読をすることです。

 客殿や待合室などでは、接触感染が起こる可能性があります。感染者や不顕性感染の方がいた場合は、テーブル、椅子、ドアなどにウイルスが付着します。新型コロナウイルスは付着物上でも2日間以上、9日も生存したとの報告もあり清拭消毒をよくすることが大切です(麻疹ウイルスなどは数時間で死滅します)。感染者(潜伏期間は1―12・5日で多くは5―6日とされており注意を要しますが)や不顕性感染者の診断が十分にできない今は、感染疑いの方、体調がすぐれない方にはご遠慮をして頂くことも考えないといけません。いずれにしても粛々と心を込めて檀務を行うことです。

 このパンデミック状態が落ち着くには、この感染症の治療法が確立すること、あるいは予防ワクチンが開発されることであり、しばらくはこの状態が続くので、うまく付き合うことしかできません。いろいろな社会的、精神的問題も生じてきます。この状況下では我々宗教家に何が出来るのかその真価を問われることにもなります。

 四法印(諸行無常、諸法無我、一切皆苦、涅槃寂静)、今改めてその意味を考えさせられています。 合掌(栃木県鹿沼市)

2020/3/19 
宗会シーズン 日蓮宗・真言宗豊山派


【日蓮宗】  
 日蓮宗の第116定期宗会が10・11日、東京都大田区の宗務院に招集された。新型コロナウィルスの感染防止に努め、4日間の会期を短縮。中川法政宗務総長は宗門として新型コロナ対策を講じる必要性に言及した。修法・加行所について恒常的検討を行う修法会議の設置をする修法規程中改正案や令和2年度予算案など全議案が可決・承認された。(続きは紙面をご覧ください)

【真言宗豊山派】 
 真言宗豊山派(星野英紀宗務総長)の第152次宗会通常会(川田興聖議長)が10・11日、東京都文京区の宗務所に招集された。宗派予算関連など7議案が承認されたほか、緊急動議により議員提案の発議第一号「真言宗豊山派規則規程検討の件」が上程された。(続きは紙面をご覧ください)

※紙面では、大覚寺派、醍醐派の宗会記事も掲載しています。ぜひ紙面をご覧ください。

2020/3/19
金沢大乗寺から日立鏡徳寺へ 仏舎利奉安法要を厳修


東山主㊧から仏舎利を受け取る山田住職 石川県金沢市の曹洞宗大乘寺(東隆眞山主)で11日、恪護する仏舎利を茨城県日立市の鏡徳寺(山田崇三住職)に譲り渡す「仏舎利奉呈式」が執り行われた。仏舎利は京都市の平安佛所で彫像中の鏡徳寺の本尊釈迦牟尼仏の胎内に納められる予定。

 この仏舎利は1992年7月、東山主が大学の同窓である故・黒田武志氏(横浜善光寺住職)とタイのワット・パクナムを拝登した時に特別に譲られた真骨15粒のうち3粒。鏡徳寺の大野徹史副住職が大乘寺で長年修行し役寮を務めている縁からこのたびの譲渡が実現した。

 東山主は「茨城県でも有数の立派なお寺である鏡徳寺様のご本尊として、現代日本の大仏師である江里康慧先生により仏像ができる、その胎内に仏舎利をお納めし遺徳を追称えするのは、こんなに嬉しい、ありがたいことはありません」と喜んだ。タイと大乘寺をつないだ功労者である黒田氏の行動力も賞賛した。

 山田住職は「ご本尊として釈迦牟尼仏を新しくお迎えするのは先代住職からの念願でした。そこに仏舎利が納められることになるとは本当に望むべくもないことで、嬉しくてびっくりしています」と東山主に感謝。「浪江町など、被災地の方で(避難・移住して)檀家になりたいと仰ってくれている方もいるので、そういう方々の願いや祈りを大切にしてお祀りしていきたい」と、東日本大震災が発生した日に奉呈された仏縁にも感慨ひとしおの様子だった。

 本来は鏡徳寺からも多数の檀家が参列するはずだったが、新型コロナウイルスの影響で鈴木邦壽氏、今橋武久氏の2人の総代が代表して参列した。鈴木氏は「国宝級になれる仏様ができて感激しています」、今橋氏は「檀信徒として本当に誇りに思います」と感激していた。

 江里氏は「仏教がインドから広まり世界宗教になったのは仏舎利が分けられていったから。ずっとそのことに思いを馳せて参列させていただきました」と語った。仏舎利は23日に平安佛所で胎内に納められる。完成は秋ごろで、その後、来年1月から京都伊勢丹の中にある美術館「えき」で一般公開される。

2020/3/12
核燃料サイクル停止求め提訴 宗教者211人「命をつなぐ権利」主張 

東京地裁に向かう原告団と弁護団 核といのちは共存できないとして、仏教・キリスト教・神道などの諸宗教者・信仰者211人が青森県六ヶ所村にある再処理工場(核燃料サイクル事業)の運転停止を求めて9日、東京地方裁判所に提訴した(宗教者核燃裁判)。訴状では、過酷事故の際の多大な影響のほか、幸福追求権の重要事項として「いのちをつなぐ権利」を明記し、使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物といった核のゴミを将来世代に押しつけてはならないと主張している。

 原告団は「原子力行政を問い直す宗教者の会」(宗教者の会)のメンバーら。仏教96人、キリスト教109人、神道1人、無所属5人の211人。原告団共同代表は、長年にわたり原発問題に取り組んでいる中嶌哲演氏(福井県、真言宗御室派明通寺住職)と岩田雅一氏(青森県、日本キリスト教団牧師)。

 東京地裁前には原告団と弁護団が揃い集会を開き、今裁判への決意と意気込みを語った。訴状提出後には司法記者クラブで会見を開き、続いて参院議員会館で意見交換会を催した。

 原告団共同代表の中嶌氏は、核燃料サイクル事業の主体である日本原燃株式会社(本社・青森県六ヶ所村)を被告としていることに「日本原燃は、沖縄電力をのぞく日本の9大手電力会社と日本原子力発電会社が出資した会社」だと説明。「日本の原発は北海道から四国、九州まで例外なく過疎地に押しつけられている。電力はそのブロックの大都市圏で消費され、電力会社が産みだした放射能の固まりをすべて青森県の六ヶ所村に押しつけている。この有り様を東京地裁で解明して頂きたいと思っている」と、原発が不均衡な地域格差のうえで成り立っていることを告発した。

 弁護団長の河合弘之氏は、原発推進理論の中心にある核燃料サイクル(永久燃料)論の要(かなめ)である再処理工場に異議を唱えることは非常に重要だと指摘。破綻している論理だとも述べた。河合氏は「日本の核燃料サイクル構想の肝にナタを打ち込む、非常に重要な訴訟だと思っている」と解説した。

 原発は東電福島第一原発事故が証明したように過酷事故が起きた場合には、「国を滅ぼしかねない大惨事になり、多くの国民が苦しむことになる」(河合氏)とした。こうした観点から宗教者による原発訴訟を評価。「宗教者が立ち上がったことに意義がある。現世の人の幸せだけでなく、後世の人たちの幸せも祈り実現させる義務が宗教者にはある。もちろん、神仏に祈るのも大切だが、将来世代のことを考えて裁判所に請求することも大事」と話した。

 同じく弁護団の井戸謙一氏は、今訴訟の特色である「命をつなぐ権利」について説明。訴状では「人類の一員として次世代に生命をつなぎその幸福を実現する権利」(自分のDNAを子孫に残すことを含むが、それに限られず人間社会を持続可能な状態で引き継いでいくこと)と定義している。

 井戸氏は「生命の本質は、DNA(=いのち)を次世代につないでいくことにある。つないでいった将来のDNAが使用済み核燃料によって危機に瀕してしまうことは、私たちのDNAをつないでいく権利を侵害するもの。裁判ではこれを主張していく」と述べた。

 「宗教者の会」では、2年前の松山全国集会で司法への働きかけが必要ではないかとの意見が提起された。これまで行政や電力会社などに働きかけてきたが、司法に対してはなされていなかった。その後、他の団体や弁護士とも意見交換した上で今回の提訴となった。

2020/3/12
静岡市・一乗寺が休校対応 読書やゲーム 本堂を開放 地域住民から差し入れも

  
開放的な本堂に多彩な本やゲームが揃う 学校が急に休みになって、遊ぶ場所もなくて寂しい。そんな子どもたちはお寺においで―新型コロナウイルス対策として、全国の公立学校に休校要請が出されたことを受け、静岡市清水区の曹洞宗一乗寺(丹羽崇元住職)は4日から「臨時の寺子屋」として本堂・境内を開放し、無償での一時預かりを実施している。

 急な休校に保護者が戸惑い、図書館や映画館などの施設も休館する中、お寺が預かるのは大好評。初日、2日目こそ少なかったが、多い日には10人を超える子どもが訪れ、ゲームやお絵かきなどで遊びまわり、読書や映画鑑賞をしている。読書家の丹羽住職の趣味を反映し、本は絵本、漫画から哲学書まで多彩に揃う。簡単なおやつも用意した。

 丹羽住職は行政が通知するように「自宅待機」が基本的には最善策としつつも、共働きやシングルのように自宅待機が難しい家庭もあるため、一時預かりを決断。当初は午後1時から5時半までの時間だったが、保育士の友人の協力もあり午前中から受け入いれるよう拡大。また小学生限定のつもりではあったが、勉強をさせてほしいとやってきた中学生の女子も受け入れた。もちろん感染症対策に配慮し、医師や保育士などの協力で一時預かりの「ガイドライン」を作成。問診票の記入や手洗い、消毒、うがいは義務付け、体調不良あるいは感染症の疑いがある児童は利用できない。

 昨年、一乗寺は本堂の修復工事を終えた。丹羽住職は「何かあった時の避難所、サードプレイスとなることで、地域に恩返しをしたかった」という。これまでも寺フェス、寺カフェなどで広く檀信徒や地域住民に寺を開放してきたが、丹羽住職は「そういう時だけ『開かれたお寺』をアピールしても、こういう時に沈黙していては整合性がないと思いました」と語る。幸い、檀信徒から反対もなく、「それどころかパン屋さんが焼き立てのパンを差し入れてくれたり、美容師さんが消毒液を提供してくれたりと、皆さんが助けてくれて感動しています」。

 ちなみに一乗寺の3代前の住職は曹洞宗管長を務めた故・丹羽廉芳禅師。「廉芳禅師も70年前、このお寺に学童疎開の子どもたちを受け入れたんです。その志を継ぎたかったというのもあります」と、丹羽住職は微笑む。

2020/3/12

東日本大震災から9年 山元町・徳本寺 大般若転読で復興祈願“法要が毎年のスタート”

 
徳本寺で大般若経転読による復興祈願法要 東日本大震災から9年を前に、宮城県亘理郡山元町坂元の曹洞宗徳本寺(早坂文明住職)で8日、復興祈願と慰霊法要が営まれた。約25人の檀信徒が供養と復興への祈りを捧げた。

 徳本寺では檀信徒が143人、兼務する徳泉寺では74人の217人が犠牲になった。法要は震災発生時刻となる午後2時46分に梵鐘を9回鳴らして始まった。大般若経600巻を転読して復興を祈願し、檀信徒は香を手向けて供養した。

 法要後に挨拶にたった早坂住職は「多くの尊い命が失われました。幸い私たちは何とか命をいただき、復興に向かって一生懸命力を尽くしております。お寺の掲示板にも書きましたが『死ぬこと以外はかすり傷』、そのぐらいの思いで9年間を尽くして来られたと思う」と振り返り、「9年の節目ではあるが、我々の日常は続いていきます。それぞれの場でご精進し、亡くなった人から『よくやっているな』と言ってもらえるよう過ごしていただきたい」と語りかけた。

 津波で夫を亡くした女性は毎年法要に参加し、「ここからスタートなのだという気持ちになる。心を支えていただき震災から生き抜いてこられた」と感謝し、「主人と共に亡くなった方のご冥福をお祈りしたい。自分もまた(お寺の行事に)参加することで一歩でも二歩でも進みたい」と話した。

 法要に先立ち「やまもと語りベの会」の渡辺修次会長が講演。当時、中学校校長だった渡辺さんは生徒4人が亡くなったことに無念さを滲ませ、「今日は4つのお寺で線香をあげてきた。同じようなことが起きても死者を出さないような取り組みをしたい」とし、防災知識、災害の怖さを次世代へ伝えようと呼びかけた。
 
 本堂・庫裡等が全て流失した徳泉寺(山元町笠野)の本堂(25坪)・客殿(48坪)が再建された。毎年徳本寺と合同で復興法要を行ってきたが、今年は3月11日から15日まで、落慶法要を含む「徳泉寺復興感謝祭5DAYS」を開催する。

再建された徳泉寺。11日から復興感謝祭を執行 早坂住職は建物が全て流出した中で奇跡的に発見された本尊を「一心本尊」と名付け、震災翌年から一心本尊への納経として「はがき一文字写経」(一口5千円の納経料)を呼びかけて寺院再建を始動。「はがき写経」には8年間で全国47都道府県の全てから延べ2270人の志納があった。「徳泉寺のことも私のことも知らない方が託してくれた。その方たちに応えていかないといけない」と心を新たにする。

 徳泉寺が建つ地は災害危険区域で居住ができない地域となり、新たな寺院の在り方も模索する。「今までのこと(法務)もちゃんとやる。それとは別なこともできればいい」。その試みとして復興感謝祭では音楽コンサートや写経会・坐禅会、ボランティア体験などの催しを企画した。11日には、早坂住職が作詞した復興支援の歌「まけないタオル」の作曲・歌を担当した本願寺派僧侶で歌手のやなせななさんのコンサートも行われる。

 「明日という日が続いていくと思いながら淡々と粛々とやっていく。1年目や2年目には言えなかったこと。そういう言葉がいえるようになった9年の歳月がある」と早坂住職。「毎年が節目であり、毎年がスタート」と話す。

2020/3/12
緊急寄稿 コロナ「歴史的緊急事態」を受けて 富田富士也氏(教育・心理カウンセラー)

 
 恐怖や不安に襲われる悩みは固有なものです。他人や過去と比べたりするものではなく常に「今、ここ」でじたばたしたくなるのが「未曽有の苦しみ」です。

 新型コロナウイルスの感染状況について安倍首相は9日の国会で「歴史的緊急事態」と耳慣れない言葉を答弁されました。それこそ11日には満9年になる東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の日々が、常磐沿線に住み続けている私にはよみがえってきます。また戦中・戦後を生きぬいてきた高齢者には75年前の10日が東京大空襲であったことを改めて想起されることでしょう。

 そして「歴史的緊急事態」から逃れる手立ても、特権も専門的知識も持たない庶民の私たちはどのようにその渦中を生きのびてきたのでしょうか。自分たちの「生命の安全」も頭に入れて負託したはずの国や政府から「不要不急」「濃厚接触」の自粛生活を「要請」されても事態が鎮まなければいつまでも「あなた任せ」にしているわけにもいきません。国や政府や専門家の人たちも本をただせば私たち庶民と同じ“業”に揺れる一人の人間だったのです。

 凡夫の私たちが万策尽きた時に避け難い「未曽有の苦しみ」といかに向きあえばいいのか。良寛さんの“極意”の一言が浮かんできます。

 「災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。是はこれ災難をのがるる妙法にて候。」

 なるほど。心に覚悟ができそうです。ところが襲ってくる「未曽有の苦しみ」にまたじたばたしてうつ的にもなるのです。ただこの苦悩を深めると人とのつながりを感じとれない寂しさ、孤独感にあたったりするのです。つまり「人は一人では生きていない」という感覚をわずかでも取り戻すことが「歴史的緊急事態」を機縁にしてじたばたする心を鎮める“妙法”と受けとめたいのです。互いにじたばたする関係を通して人は人とつながり「今、ここ」に思いやる心を育てていくのです。「陽性」「陰性」と人の存在まで分けたとき、それは自ら排除の心を生み出し、あらゆる縁者とのつながりを見失っていくことになるのではないでしょうか。

 「家族も参加をやめたら、と言うので次のワークショップは見合わせます」。こんな受講者からの連絡もあったので面接も延期することにしました。“家族の歴史的緊急事態”にある母親に電話をしました。母親が驚嘆します。

 「夫も私も子どもも外出自由です。家族間の濃厚接触も本からないので気にしていませんでした。私たち家族は互いに気になる関係になっていなかったのですね。子どもの不登校にじたばたしている私でよかったのですね」

 「未曽有の苦しみ」を「時節」と受けとめて、じたばたする胸の内を対話で鎮めている母親です。

2020/3/5

新型コロナ 高野山 異例の宗会延期

 
  新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。安倍首相が3月2日から公立学校の一斉休校を要請したこともあり、教団行事の中止や延期が広がった。高野山真言宗は異例の春季宗会延期を発表した。(3月3日現在)

【高野山真言宗】
 高野山真言宗は2月28日、2日の耆宿会と3~7日の春季宗会の延期を決定。3・4月中の行事や会議、巡回布教などはほぼ延期・中止にした。4月3日の得度式は執行。同24~26日の東京別院結縁灌頂は中止。5月3~5日の高野山結縁灌頂は3月中に判断する。

※紙面では各宗派の対応を掲載(続きは紙面をご覧ください)。