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2021/6/17
仏教とキリスト教が漁業支援 魚網と船外機を寄贈


セレモニーに参加した(左から)青野さん、鎌田さん、佐藤市長、戸松氏、マキューン氏、東海林氏 仏教者やキリスト者が協同し、東日本大震災で被害の大きかった宮城県塩竈市の寒風沢島の漁業者に漁具が寄贈され、3日に同市マリンゲート塩釜でセレモニーが執り行われた。

 支援したのはWFB世界仏教徒連盟(パン・ワナメッティ会長)、全日本仏教会(全日仏/大谷光淳会長)、東北サンガ(東海林良昌代表=塩竃市雲上寺)、末日聖徒イエスキリスト教会アジア北地域(ガース・リード代表)で、漁業網と船外機(合わせて約150万円)が送られた。セレモニーにはWFB執行役員で全日仏の戸松義晴理事長、末日聖徒イエスキリスト教会のジョン・A・マキューン顧問、東海林代表、塩竈市の佐藤光樹市長、漁具を受け取った青野友樹さん、鎌田雄大さんらが参加した。

 寒風沢島をはじめとする浦戸諸島では現在も災害の復旧工事が続いており、基幹産業である漁業の後継者不足が喫緊の課題となっているため「地域おこし協力隊」制度を活用して青野さんと鎌田さんを受け入れて後継者として育成。青野さんは今年4月に卒隊し操業を始めている。支援を受けて「コロナのなかで需要が減ったことなどもあり、魚価が下がっている状況だったので、こういう寄付は非常に助かります」と感謝。さらに古い網を使って漁に出ていたが、「新しい網と古い網では、漁獲量が全然ちがう」といい、「先輩方にも優しく指導してもらってきたし、期待に応えられるように頑張りたい」と話した。

 協力隊として指導を受ける鎌田さんも「お礼の言葉しかない」と謝意。宗教者の支援に「菩提寺の住職さんにもお世話になってきたし、こうしたご縁は嬉しい」と話し、「魚を獲って自立した姿を見せていきたい。キリスト教の方が孤児の支援をしていると聞いた。将来は漁業体験などの受け入れなど、お返しもしたい」と展望した。

 東北サンガの東海林代表は今回の支援を通してキリスト教との交流を深め、末日聖徒イエスキリスト教会から「隣人の自立を促すことの大切さ」に重きを置いた人道支援を学んだと言い、「宗派や所属に拘わらず手を携えれば、もっと支援の可能性が広がる」と手応えを口にした。

2021/6/17
龍谷大学GRRCオンライン研究会 宗派のジェンダー格差を問う 尼僧や寺族に対し 根強い性差別と偏見


 龍谷大学のジェンダーと宗教研究センター(GRRC)のオンライン研究会「宗派運営におけるジェンダー格差―改善への道を模索する」が9日に開催された。女性と仏教・関東ネットワーク世話人で曹洞宗宗務庁に勤務する瀬野美佐氏と、浄土宗宗議会議員の稲岡春瑛氏(林宗院住職)が発表し、根強い性差別の意識や構造上の問題が共有された。

曹洞宗の問題について話す瀬野氏 寺院出身の瀬野氏は「宗内で一番性差別を受けてきたのが尼僧さん」とし、制度上の性差別が戦後の尼僧たちの撤廃運動で解消された経緯を紹介。一方で尼僧と男僧の経済格差や差別意識が残る現状にも言及。尼僧数が301人(全体の約3%)と減少し、70歳以上が65%(男僧32%)と高齢化が進む現状に「男女の非対称性が働く場にあるのは差別意識」と論じた。

 僧侶の結婚で世襲化が進み「寺族」の定義や保護の問題も生まれたが、お寺の仕事に従事する寺族は「寺院の責任役員会に入れるべき」と提起。この動きが進まない背景に差別や偏見、ミソジニー(女性嫌悪)があると指摘。そのうえで最近の出来事で若手僧侶グループから機関紙へのジェンダー問題の寄稿を依頼されたが、掲載が見送られた事例を紹介。「現代の寺院は寺族の無償の労働力によって支えられている」という一文に、「寺族はご本尊や仏様へのお勤めと思っているのではないか」という意見があったことが理由だという。瀬野氏は「不愉快な事実に目をつぶるのは、組織が駄目になる兆候」と青年僧の意識に落胆と危惧を重ね、「仏様へのお勤め、という言葉は思いやりかもしれないが、その言葉に男女平等が侵害される事実を穏便にすまそうとする気持ちが含まれていないか考えてほしい」と訴えた。

浄土宗の問題について話す稲岡氏 稲岡氏は女性教師として受けた差別の体験を吐露。学びのため宗内の「雅楽会」「式師会」の入会を希望したが前例がないことを理由に拒否された。「布教師会」には入会できたが、夫が住職だった当時、稲岡氏が「尼僧らしい法話ができるように」と自己紹介すると、講師に「本当の尼僧に失礼」「ご主人である住職の補佐でいい」と怒りを向けられた。宗内の差別を思い知らされた稲岡氏は女性教師の横のつながりを作るため、トランスジェンダーも受け入れる「ふたはたの会」を結成。「女性教師は一人前に見てもらえない。日常会話によくある〝跡取りの話〟では、男女共に後継者は男性が好ましいという考えが根強いが、おかしいこと」と意識改革を強く求めた。

 宗会議員として寺族問題にも取り組むが、住職認証の書類に寺族の署名と捺印が条件だったのが、数年前の改定で不要になった。寺族の権利が奪われたことに加え、寺庭婦人会への相談がなかったことを問題視。「宗幹部は寺庭婦人の会合で『お寺は奥さんでもっている。住職と寺庭婦人は車の両輪』とご挨拶をするが、表向きに必要と言いながら意見は聴かない。絶対に意見を聴くべきだった」と批判し、内なる差別や偏見への自覚を求めた。

分断される女性
 発表にコメントした川橋範子氏(国際日本文化研究センター客員教授)は「構造的な性差別を個人の心の問題のみに還元してはいけない。女性が教団の男性中心主義の制度や意識で分断されることは深刻」とし、「仏教界の女性たちに問題意識を持っている女性たちがいることを知らせていくことが重要だ」と提起。池田行信氏(浄土真宗本願寺派宗会議員)は「女性の幸せは結婚と子育てという女性像のうえにある寺族像を前提とする限り、女性たちは疎外感を感じたままだ」と指摘した。参加者からは「男性が圧倒的優位な状況で女性信徒にどう寄り添うことができるのか不思議でならない。女性が相談しようと思う相手になれるのか、仏教界では問題にならないのか」と仏教界の現状に疑問が投げかけられた。

2021/6/17

浄土宗教宣師会 自死者追悼 思い届ける 事前講習にのべ100人参加

法要はオンライン配信。画面の向こうに語りかけた山崎会長と僧侶 自死で亡くした人を悼む場をつくり、ともに手を合わせる浄土宗東京教区教宣師会(山崎聡志会長)の自死者追悼法要「倶会一処―ともに生き、ともに祈る」が「時の記念日」にあたる10日、東京都港区の大本山増上寺で執り行われた。新型コロナウイルスの影響で、約10人の僧侶だけで営み、法要の様子を動画共有サイト「ユーチューブ」で配信した。

 「悲しみで止まってしまった時間が再び動き出すきっかけになれば」。そんな思いを込め、毎年、時の記念日に営む。今年で12回目。感染防止対策で昨年に続き遺族らの参列を避け、法要の映像を申込者限定で配信した。

 自死でなくした大切な人を安心して悼んでほしいと始まった法要。希望者の宗派は問わない。今年は首都圏以外にも全国から約60件の申し込みがあり、50人以上が視聴。前年に比べ約20人増えた。山崎会長は「悲しく、つらい気持ちを抱える人がいる。中止は選択肢にありませんでした。コロナ前のように、お堂で一緒に手を合わせられる日が早く戻ってほしい」と願う。

 法要に出仕する僧侶は事前に、自死遺族のグリーフサポートについてなどの講習を受け準備する。コロナ禍で社会全体の自死リスクが高まっていることから、教宣師会の全メンバーなどにも案内を出したところ、のべ約100人が受講。寺庭婦人の参加もあった。講師はリヴオンの尾角光美代表理事や吉水岳彦光照院住職が務めた。

 この日午後6時から、山崎会長を導師に営んだ法要では、自死で亡くなった人の名を読み上げて回向した。僧侶たちは五体投地を繰り返し、念仏しながら祈った。

 法要後、山崎会長は「画面の前からの参加となりましたが、極楽にいる大切な人へ皆さまの思いは必ず届いています。そして私たちのことを見守ってくれているはずです」とカメラに向かって語りかけた。配信を希望しない人に配慮し、終了後に再び入堂して名前を読んだ。

2021/6/17

伝教大師1200年遠忌シリーズ 天台仏教とその展開<比叡山と各宗祖師編⑤>
日蓮にみる最澄と天台宗 法華教学継承者の系譜 布施義高(法華コモンズ仏教学林・学林長)


日蓮が晩年を過ごした身延山久遠寺の三門(山梨県身延町) 鎌倉時代の日蓮(1222~1282)は、仁治三年二十一歳の頃より、比叡山を拠点として京畿を遊学し、建長五年に故山・清澄寺で立教開宗した。その後、法華思想が弥々確立される時期において日蓮は、インドの釈尊、中国の天台大師智顗、日本の伝教大師最澄、そして自身へと連なる系譜こそが、釈尊の真意に適った法華経の正統流通史(「三国四師」〈『顕仏未来記』〉)と受け止めた。

 日蓮は、中国の天台三大部本末を法華経解釈の基本に位置づけ、最澄を自己以前における日本で唯一の正統法華教学継承者と捉えて教学を形成したのである。

 文永初期から晩年まで日蓮が天台大師講(毎月二十四日、佐渡流罪中は一時中断)を修して法華経や『摩訶止観』の談義を行ったことは、天台・伝教両大師への敬慕から比叡山の霜月会を踏襲したものであった。また、日蓮染筆の大曼荼羅の多くは、「南無天台大師」と対をなす形で「南無伝教大師」と勧請されている(北川前肇『日蓮教学研究』等参照)。

智顗の後身 最澄
 そして、日蓮は、中国天台の円定・円慧の継承に止まらない最澄が果たした功績として、大乗戒壇建立運動による円戒=「霊山の大戒」(『撰時抄』)の確立(最澄入寂一週間後建立)を挙げる。

 こうした日蓮の最澄鑽仰態度の根底には、霊鷲山の会座で法華経を聴聞した薬王菩薩が中国では智顗となって垂迹示現し、さらに智顗の後身(再誕)として日本の最澄が世に出現した、という信仰的認識(『法華題目鈔』『和漢王代記』)が存することを見逃せない。

 かくして日蓮は、独自の本門思想が樹立されるに至って、究極的に、次のような認識を提示する。(続きは紙面をご覧ください)

2021/6/10

伝教大師1200年 大遠忌祥当法要 宗祖に報恩感謝 〝最澄様は私たちの側に〟


御祥当法要で宗祖御影に合掌する森川座主(4日) 「誰もが仏になれる」という法華一乗の教えを説き、「日本仏教の母山」の礎を築いた天台宗の宗祖伝教大師最澄(766~822)。その入寂から1200年を迎えた4日、伝教大師1200年大遠忌御祥当法要が滋賀県大津市の総本山比叡山延暦寺で営まれた。法雨が叡岳の諸堂を洗う中、森川宏映天台座主が大導師を務め、天台宗・延暦寺両内局を含む一山の高僧20人が阿弥陀経読誦を中心とした常行三昧を厳修。本尊宝前に宗祖が灯した「不滅の法灯」を奉安し、報恩感謝の御宝号「南無根本伝教大師福聚金剛」を響かせた。

 伝教大師が「明らけく 後の仏の御世までも 光りつたへよ 法のともしび」と人々の安寧と平和を願って比叡山の一乗止観院(現在の根本中堂)に灯した「不滅の法灯」を分灯し、大講堂の本尊宝前に奉安。伝教大師最澄1200年魅力交流委員会委員で歌舞伎役者の市川猿之助さんがオンライン参加で聖句を奉読し、「一隅を照らす、此れ則ち国宝なり」「悪事を己に向かえ、好事を他に与え、己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」など伝教大師の教えを一つ一つ丁寧に読み上げた。

 森川座主が法則を読誦。「我等大師の心を体して、一乗菩薩の功力を励まし」ていくと誓った。そして宗祖御影の前に進んで合掌。焼香し、宗祖に報恩感謝の念を表した。

 最後に全員で、宗祖の生涯を綴った伝教大師和讃を力強く奉詠。「時に弘仁十三年 六月始めの四日にぞ 生年五十六にして 辰の刻にぞ終りける」と唱えながら、宗祖の「私のために仏を作ってはならない。私のために経を写してはならない。私の志を述べよ」という御遺誡を改めて胸に刻んだ。

 1200年魅力交流委員長の鳥井信吾サントリーホールディングス㈱代表取締役副会長がビデオメッセージ。「伝教大師の不滅の法灯が受け継がれているように、私たちも忘己利他の心を繋げていきたい」と述べた。

 阿部昌宏宗務総長は、大遠忌を機に「人々を救済するために最澄様は私たち、そして皆様の側におられる。共に正しい修行に努め、自らの心の中の仏性を磨いていこう」と呼びかけた。水尾寂芳延暦寺執行はコロナ禍に苦しむ世界に向け、「大師の国を思い人々を思う心を、その心を我が心としてこの困難を乗り越えていこう」と発信した。

 御祥当法要前の午前中には、宗祖御廟・浄土院で毎年営まれている伝教大師忌日(御命日)法要・長講会(ぢょうごうえ)を厳修。法華経の講経論義が行われ、一乗思想の深奥が説かれた。

国内外にライブ配信
 前日の3日午前には、大講堂で森川座主を大導師に大遠忌御祥当逮夜法要・伝教大師御影供を厳修。御祥当法要翌日の5日午前には、大講堂で大樹孝啓・書写山圓教寺住職(探題大僧正)を大導師に御祥当後法要・胎蔵界曼荼羅供を営んだ。

 緊急事態宣言発令を受け、全国宗務所長30人の法要出仕や宗内僧侶170人の随喜、交流のある関係各教宗派の招待や魅力交流委員20人の参列などを中止。法要は3日間を通してライブ配信され、宗内3千カ寺とその檀信徒や国内外の有縁の人々はインターネットを介して50年に一度の勝縁に結縁した。平成24年から始まった祖師先徳鑽仰大法会の伝教大師1200年大遠忌は、令和5年まで続けられる。

2021/6/10
ホワイトハウスでヴェサック バイデン大統領が祝福声明 大乗仏教から本願寺派参加 


献火する原田開教総長。右がエンホフ氏(ホワイトハウス公式写真 撮影:キャメロン・スミス) アメリカ合衆国の首都ワシントンDCのホワイトハウスで「ホワイトハウス・ヴェサック」が5月25日に開催され、テーラワーダ仏教、大乗仏教、チベット仏教の僧侶たちと米首脳が釈尊の誕生を共に祝った。バイデン大統領とジル夫人は公務のため出席できなかったが、祝福の声明を寄せ、多宗教国家アメリカが仏教徒も尊重していく意思を国内外に示した。

 大乗仏教代表として出席したのは浄土真宗本願寺派北米開教区開教総長のマービン原田氏。北米開教総長がホワイトハウスを公式に訪問するのは初めて。テーラワーダからはスリランカ僧のカツガストタ・ウパラタナ師、チベット仏教からはニンマ派のタータン・トゥーク師が出席した。ホワイトハウス・ヴェサックの実現を働きかけた2つの組織、仏法実践財団のシェカー・ナラシンハン代表とアメリカ国際仏教協会のワングモ・デクシー代表が参加。ホワイトハウスからはカマラ・ハリス副大統領の夫であるダグラス・エンホフ氏とスタッフのエリカ・モリツグ氏(ハワイ出身の日系人)が出席した。

 セレモニーは午後2時半から約30分間で、テーブルに設けられた祭壇で献火し、3人の僧侶がそれぞれ短い読経を行った。その後、ヴェサックの意味やアメリカ仏教について懇談した。原田開教総長は本願寺派がアメリカで最も古い仏教教団の一つであること、強制収容の苦難とその後の仏教会の再建、そして今日では日系人だけでなく多様な人種の教団になっていることを話した。

 原田開教総長は「このような歴史的イベントに参加できたこと、そしてホワイトハウスでヴェサックを祝うことでアメリカにおける仏教がこの政権によって認められたことは大変光栄なことです」とコメントし、他の宗派も仏教を広めるために精力的に活動していることを実感、学ぶべきことがたくさんあるとした。

 翌26日、バイデン大統領がヴェサックへの声明を発表(別掲)。カマラ・ハリス副大統領もツイッターで世界中の仏教徒にお祝いのメッセージを出した。

 ホワイトハウスでの仏教徒の集まりの前例としては、オバマ政権下での2015年5月に「全米仏教徒指導者会議」が開催されており、その時にも一環としてヴェサックの祈りがあったという。

バイデン大統領がヴェサックに寄せた声明(北米開教区訳)
 仏様のご誕生、成道、そして入滅をたたえる日であるヴェサックを祝うアメリカ合衆国と世界中の仏教徒の皆さんに、ジルと共に心よりお祝い申し上げます。

 2500年以上にもわたって行われてきたこのヴェサックを象徴するロウソクに火を灯すという儀式は、慈悲の心、謙虚さ、そして自己中心性からの脱却という仏教の教えを我々に思い起こさせてくれます。

 本日ここに、明るい未来へ向かって共に取り組んでいる我が国、そしてこの社会を豊かにしてくれるアメリカの仏教徒の方々の多大なる貢献を我々は深く心に刻みます。

2021/6/10

高野山総長選 今川泰伸氏が当選


今川次期総長 安藤尊仁・岡部観栄・今川泰伸の3氏が立候補していた高野山真言宗の次期宗務総長(総本山金剛峯寺執行長)選挙が9日に開票され、957票を得た前宗会議員の今川氏が当選した。安藤氏842票、岡部氏264票だった。今川氏は7月5日の就任に向け、直ちに組局人事に入る。

 全有権者(投票資格を有する全国正住職)は2487人で投票総数は2205票。白票11、無効票131。総長選初の一宗選挙の投票率は88・7%だった。

 投票は9日正午に締め切られ、午後1時から金剛峯寺内宗務所(和歌山県高野町)の3階大会議室で開票開始。選挙管理委員会の宮田永明委員長を選挙長に、長谷川祐宝、二上寛弘、安念清邦、坎宥行の各委員が立会人を務め、当選確定を確認する選挙会を経て午後4時半に終了した。

2021/6/10
伝教大師1200年遠忌シリーズ 天台仏教とその展開<比叡山と各宗祖師編④>
道元からみた最澄と比叡山 叡山修学時代の学びから 佐久間賢祐(東北福祉大学非常勤講師)

 
道元が開いた大本山永平寺の唐門(福井県永平寺町)。創建当初は大仏寺と号していた 叡山開祖最澄の気質受け継ぐ道元
 伝教大師最澄と禅の関わりは深い。十二歳で近江国分寺行表の弟子となり北宋禅を受けてより、叡山で山林修行、禅浄行を修し籠山行を行い、唐では翛然から牛頭禅を受け多くの禅籍を将来している。また延暦十六年(797)、三十二歳の時には内供奉十禅師となる等、幾重もの意味において禅師という立場であった。内供奉として官より供給を与えられるようになると、日毎六升の扶持米を資縁とし、南都七大寺の助援を得て『一切経』や鑑真将来典籍を書写し叡山に具える。

 この最澄の勤勉努力によって叡山学問所としての基盤が整う。最澄発願の書写本は信長の焼き討ちの時まで残っていたといわれるから、鎌倉期の祖師方も当然に最澄の一切経を参学していたはずである。

 最澄の天台教学の水準の高さ、完成度と総合性の高い教学は夙に知られるところとなり、最澄の稠密な学問への姿勢がその後の叡山教団に引き継がれている。道元(1200~1253)は叡山修学時代十代の頃一切経を二度通覧している。最澄の一切経を精読し仏教全体の知識を吸収した。最澄が「法華の宝車を日本に運らす」ために身命を賭して天台に参じた如く、道元は十四歳で座主公円に就いて得度してより、叡山教団の学風を一身に浴び学仏道を歩むこととなる。

 教学の超克と継承
 道元は仏教に特異な修行無用、「本覚倒れ」という自堕落な傾向をもつ本覚法門を超克するために自らの道を求めた。しかし道元の修証観を代表する語「本証妙修」は天台教学と微妙に交錯する。(続きは紙面でご覧下さい)

2021/6/3
第45回正力松太郎賞表彰式 個性豊かな活動讃える 


 正力賞本賞を受賞した中野代表と上村氏と奨励賞の伊藤理事長(右から) (公財)全国青少年教化協議会(全青協、鬼生田俊英理事長)は1日、東京・芝の東京グランドホテルで第45回正力松太郎賞の表彰式と祝賀会を開催した。本賞を受賞したさいたま市・真言宗智山派彌勒密寺の上村正剛住職と(一社)タンダバハダンスカンパニィ(東京都中野区)の中野真紀子代表(聖徳大学短期大学部教授)、および奨励賞のNPO法人日本語の美しさを伝える会(鎌倉市)の伊藤玄二郎氏(星槎大学教授)に賞状が贈られた。

 最初に主催者を代表して齋藤昭俊専務理事の挨拶に続いて、選考委員会の長谷川匡俊氏が選考経過を報告。「候補者のご活動は個性豊かで、白熱した審議が行われた」と説明してから、受賞者を紹介した。

 上村氏は50年にわたりみ魂ひな祭りや夏の日の子ども会一泊合宿などを実践。コロナ以後は疫病退散の経本や手作りマスクなどを配布している。「地域の方々に仏教情操の涵養と心の潤いを供する役を担っている」

 1926年に始まったタンダバハダンスカンパニィは、身体と心は一つであるという仏教思想に基づき、日本舞踊を中心に活動。賀来琢磨・良江氏親子2代(ともに故人)より続く、「継続、努力、くじけない」のモットーを継承。「子どもたちに忍耐、努力を伝えてきた」と評した。

 奨励賞の日本語の美しさを伝える会は2005年から鎌倉建長寺で毎週土曜日に行われ、昨年800回を迎えた。会の始まりには般若心経を唱え、坐禅を組む。「禅文化に触れる機会を提供し、建長寺の大切な教化活動の場となっている」

 受賞者には鬼生田理事長から賞状と副賞が贈呈された。また関係者から祝辞が述べられた。(続きは紙面でご覧下さい)

2021/6/3

妙心寺派内局認証式 緊縮と発信のバランス必要 野口総長が展望示す 


小倉管長から辞令を受け取る野口総長 臨済宗妙心寺派の内局認証式が5月26日、京都市右京区の大本山妙心寺小方丈で行われた。野口善敬新宗務総長と内局員、栗原正雄前宗務総長と前内局員が全員集合し、小倉宗俊管長からそれぞれ辞令を手渡された。

 小倉管長は前内局に心身の休息をとるようにいたわり、新内局には「このような状況でございます。皆さま方には大変ご苦労をお願いすることになろうとは思いますが、その類希なる力量をいかんなく発揮して、一派のため護持興隆に邁進していただけますよう」と期待した。

 その後、宗務本所前で全職員と新旧内局員が記念撮影。旧内局部長たちは花束を受け取り、笑顔で手を振って宗務本所を離れた。緊急事態宣言下ということもあり「祝儀」は中止とした。

 野口総長は式後に取材に応じ、丁寧に前内局の宗務を引き継ぎ、機構刷新会議の提言を取り入れていくと話した。「コロナのため行事はまだまだ行えない状況」と、ワクチンの接種が広まるであろう秋まで慎重な活動の姿勢をとるが「何もしていないからこそ考えられる」とこの時間を利用して難局を乗り越える思考を深めることを展望。宗門の課題として財政のスリム化を挙げるが「あまり緊縮ばかりでは発信する力が落ちていくかもしれない」と、バランスをとる必要性もあるとした。

 後継者育成も難問の一つで、「天衣寺(岐阜市)での尼僧の育成をどうやっていくか考えたい」と語った。

2021/6/3

浄土宗大本山清浄華院 新法主に飯田実雄氏推戴


飯田新法主 浄土宗は5月26日に京都宗務庁(東山区)で浄土門主・法主推戴委員会を開催し、大本山清浄華院(上京区)と協議の上で新法主に飯田実雄氏を推戴した。任期は4年。長期にわたる法主不在だったが、満場一致で新法主が推戴されたことで決着となった。

 飯田新法主は1949年5月8日生まれ。大正大学大学院文学研究科修了後、長野県駒ケ根市の安性寺、安楽寺の住職となった。宗内では長野教区教区議会副議長、常任布教師などを歴任。清浄華院では長野教区出張所長を務め、2011年の総本山知恩院における法然上人800年大遠忌大会の清浄華院法要では真野龍海前法主の右導師を務めた。2016年より清浄華院長老。

2021/6/3
伝教大師1200年遠忌シリーズ 天台仏教とその展開<比叡山と各宗祖師編③>
栄西は天台宗を離れたのか 禅と戒から両祖師をみる 大竹晋(仏教翻訳家・博士)


建仁寺境内にある栄西禅師入定塔(京都市東山区) 栄西(1141―1215)は天台宗の台密の大家であり、のちに入宋して臨済宗黄龍派の虚菴懐敞(生没年未詳)に嗣法し、現在の臨済宗建仁寺派の祖となった人物である。ただし、栄西は決して天台宗を脱して臨済宗を唱えたわけではなく、生涯にわたって天台僧の自覚を持ち、最澄の跡を慕った人物でもあった。

栄西と最澄の禅
 栄西は生涯に二回入宋している。
 第一回(1168)においては、出国前に博多において通訳から禅宗が宋に広まっていることを聞き、宋の明州(現在の浙江省)にある広恵寺において禅宗について訊ねたが、参禅しないまま半年で帰国した。

 第二回(1187―1191)においては、天台山において虚菴懐敞に参禅し、公案を用いて、早くに悟り体験を得た。『興禅護国論』(1198。以下、『論』)第七門に「幸いに祖令を提げ、夙(つと)に発明有り」とある。

 ただし、第二回の入宋の目的は、もともと、仏蹟巡礼にあった。北方民族の侵攻によってそれが危険となったため、代わりに禅を学んだのである。『入唐取経願文』(1178)に「志は秘密の教に在り」とあるように、栄西の志は密教にあり、この時すでに数え年四十七歳の大家であった。それが敢えて禅を学んだのはなぜか。(続きは紙面でご覧下さい)

2021/5/27

立正佼成会 ワクチン接種始まる 選定背景に広い駐車場 区に11月末まで提供


 
接種会場となっている法輪閣の第五会議室 新型コロナウイルス感染拡大防止のカギを握るワクチン接種。5月17日から東京都杉並区に法輪閣第五会議室を接種会場として提供している立正佼成会は19日の接種終了後、記者会見を開き、区の担当者は選定した最大ポイントに広い駐車場があったと述べた。

 会見した杉並保健所健康推進課長(新型コロナ予防接種担当)の渡邊秀則氏は、接種会場として駐車場を備えている区立施設などを探していたが、「区内にはほとんどない」。以前から駐車場がある集会施設として立正佼成会の存在を認識していた区の上層部が、使用できないかを提案。職員が同会に打診したところ、「ご快諾をいただいた。大変ありがたかった」と安堵するように振り返った。

 杉並区の人口は約50万人。そのうち65歳以上の高齢者が12万人。渡邊氏はこのうち7割が接種希望者だとしながら、「お年寄りには足の不自由な人もいる。できれば駐車場がある場所がいい。その点で広い駐車場は魅力的。区民からも、車で来られて良かったという声が届いている」と述べた。また別の区職員は「敷地の広さと、佼成会さんの心の広さのおかげだと勝手に思っている」と順調な滑り出しに感謝した。

 接種会場は駐車場からすぐの会議室。フロアには養生シートが敷かれ、医師が待機する4カ所の予診ブースとワクチンを打つ接種ブースおよび接種後の経過観察の場が設けられている。これまで1日に約240~300人がこの会場を利用した。今後の計画では最大480人にするという。「区内5会場の中では一番スムーズに進んでいる」(渡邊氏)は太鼓判を押した。

 政府は医療従事者に続いて65歳以上の高齢者の接種を進め、7月末までの完了を目指している。その後に一般接種が行われる。立正佼成会では11月末まで杉並区に会場を提供する。

2021/5/27

本願寺派 あそか診療所が移転・改称 あそか花屋町クリニック開院


2階建ての新クリニックと出口理事長 浄土真宗本願寺派の宗門関連病院「あそか花屋町クリニック」が6月1日、本山西本願寺から徒歩2分の京都教区教務所顕道会館の隣(京都市下京区)に開院する。運営にあたる(一財)本願寺ビハーラ医療福祉会の出口湛龍理事長は地域密着の運営を目指すとし、「心配なことがあったらここに来たら何かしてくれるという病院。裏には本願寺があるから安心して『かかりつけ』としていただければ」と話し、体の治療だけでなく心のケアもしていきたいと展望する。

 本山北側の門徒会館1階に構える「あそか診療所」が移転・改称するという形。本山から敷地を無償貸与されている。従来「本願寺の保健室」として僧侶や門徒の診察を中心に行っていたあそか診療所は、親鸞聖人750回遠忌宗門長期計画(2005~2015)で移転・拡充の方向が定められ、宗門総合振興計画でもより開かれた利用やビハーラ活動のさらなる展開が企画されていた。今年3月、2階建てで330平方㍍の建物が竣工。あそか診療所は床面積95平方㍍で、3倍以上の広さに拡充されたことになる。医師・看護師・職員も増員した。

 診療科目は内科で、診療時間は午前診(月~金)が朝9時半~12時30分、午後診(月・水・金)が3時~6時。病床は持たない。

 2階の多目的室には仏壇が設けられている。ここを会場に、火・木の午後にビハーラ僧が病気の悩みや不安を傾聴する会や、健康セミナーなども検討しているという。出口理事長は同法人が運営するあそかビハーラ病院(城陽市)と同様にがん緩和ケアにも力を入れるとし、「緩和ケアは、来てくれるならもっと早く来てくれればゆっくりいろいろなことを話せたのに、という人がほとんど。緩和ケアというとみんな怖いように思うが、そうではないということを色々な方法で伝えていきたい」とした。

 新型コロナウイルスのワクチン接種も行われる。

2021/5/27
伝教大師1200年遠忌シリーズ 天台仏教とその展開<比叡山と各宗祖師編②>
親鸞思想にみる比叡山と最澄の教え 四夷法顕(龍谷大学非常勤講師)


 
親鸞著『阿弥陀経註』。国宝、西本願寺蔵(『親鸞展:生涯とゆかりの名宝』より) 一、比叡山時代の学問的素養
 親鸞が九歳から二十九歳までの間、比叡山でどれほどの学問をおさめていたかは主著『教行信証』への引用文献から窺える。『教行信証』には多くの天台典籍が引用されており、中でも注目すべきは十世紀中頃に高麗沙門の諦観が著した『天台四教儀』である。今日では天台教学を学ぶ上での入門書となっているが、日本で一般に知られ始めたのは遥かに時代が下がった十五世紀初頭、必読書として用いられるのは十七世紀に入ってからで、親鸞こそ日本で初めて『天台四教儀』を引用した人物とされている。さらにその註釈書である神智の『天台四教儀集解』まで引用しており、親鸞は輸入されて間もない文献をいち早く学んでいたことがわかる。
 
 また、法然のもとで学んでいた頃の著述『観無量寿経註』『阿弥陀経註』にみられる経文の行間・上下・紙背の余白に細かく書き込まれた註釈は、在叡時代に身に付けた学問形態と考えられる。かつて比叡山で学んでいた日蓮の『注法華経』にも同様の書き込みがあり、当時の比叡山における学習方法だったのであろう。

 二、真の一乗とは
 教学面において天台との関わりで中心となるのは一乗思想である。「一乗」とは一切衆生がすべて仏に成ることができるという教えで、天台は『法華経』に拠って「法華一乗」の立場から一切皆成の教えを説く。それに対し、成仏できない存在を認める教えが「三乗」で、一乗家の天台最澄と三乗家の法相徳一との教義論争、「三一権実論争」は有名である。

 親鸞は比叡山で学んだ一乗の教えを承けつつ、『大無量寿経』に説かれる阿弥陀仏の本願念仏によって、すべての者が救われる「本願一乗」の教えを展開していく。その際に親鸞が重視した経典は『涅槃経』であった。天台教判によると『涅槃経』は天台正依の『法華経』と同時同味の経典とされ、『法華経』と同等に扱われている。親鸞は『涅槃経』を重視している一方で、『法華経』は『教行信証』に一度も正引していない事実を見る時、そこに明らかな意図が窺える。(続きは紙面でご覧下さい)