2019/10/10
庭野財団が世論調査結果を発表 宗教への評価高まるも 教団との関係は希薄化


20年間の継続調査の分析結果を発表する石井教授 立正佼成会の外郭団体である(公財)庭野平和財団(庭野浩士理事長、東京都新宿区)は9月30日、京都市内で世論調査「日本人の宗教団体への関与・認知・評価の20年―1999年・2004年・2009年・2019年の世論調査から」の分析結果を発表した。20年間の継続調査から、「宗教団体への評価やイメージが高まった」一方で、「進行する宗教離れ」が明確化。特に「神棚・仏壇の保有率」が大幅に低下し、「神棚はない」が50%台から62・3%に、「仏壇はない」が40%台から50%になった。

 2019年調査は6月に実施。満20歳~70歳代の男女4千人から、個別面談で1203人の有効回答を得た。

宗教への容認と無関心

 国學院大学の石井研士教授(宗教学)が、分析結果を発表。「『寺社への参拝』(29・8%)『お守りやお札』(27・8%)が微妙ではあるが、増加傾向にある。特に伝統的な宗教行動が残っている町村ではなく、人口の多い東京都特別区で増えている。一方で都市部での檀家・氏子意識ははっきりと低下している」と指摘し、「この(一見、矛盾する)傾向には注意しておきたい」と述べた。

 「易や占い」への関心は微減(6・8%)で、「(十数年前の細木数子ブームなどは)易ではなく違うものへの関心だったのだろう」との見解を示した。

 「具体的な宗教団体との関わりは」との問いでは、過去70%台だった「(宗教団体の奉仕・慈善活動、政治活動などに)『参加したことはない』」が81・3%に達した。

 「寺社、新宗教団体が持つ社会的役割」では「地域社会の交流や安定に貢献している」が20年前の21・5%から33・6%、「災害時の救援・ボランティア活動」が10・7%から19・1%に増加。「宗教団体の政治活動」では「宗教団体が特定政党を支持する」ことなどを容認する回答が増えた。

 「宗教団体への税制上の特別措置」では、「特別措置は必要ない」が20年前の53・8%から40・5%に大きく減少するなど「容認」が増えた。

 さらに石井教授は「宗教に対する評価や認知はかなり良くなったが、宗教団体が関わる宗教活動とは別の社会貢献活動に(一般市民が)参加するかというと、〝関わりたくない〟という意向が強い」と指摘。容認層増加の背景に、宗教団体への無関心層の増加を読み取った。

 その上で、「本当の深い宗教文化が拡散し、希薄化していくことを危惧している」と憂慮。「情報の中から自分に合ったものを集め、都合のいいように解釈する(宗教者を介在させない)宗教の自己理解(が蔓延している)。これは情報と消費に大きく左右されている」と分析した。
 
 調査の詳細は財団HP(https://www.npf.or.jp/)に掲載されている。

2019/10/10
手塚「ブッダ」紙芝居に 仏教伝道協会が制作し配布 全国の幼保2425園に無償で


紙芝居『ブッダ』後編の表紙 (公財)仏教伝道協会(BDK/木村清孝会長)が漫画の神様・手塚治虫の名作『ブッダ』の紙芝居を制作。全国の仏教系幼稚園・保育園に無償配布することになり、1日に東京都港区の仏教伝道センタービルで紙芝居の寄贈式と紙芝居ショーが行われた。

 幼児や小学生にブッダの一生をわかりやすく理解してもらうことを目的に手塚治虫の名作漫画『ブッダ』を紙芝居化。BDKが保有する野生司香雪画伯の『釈尊絵伝』のパズルも作成し、全国の仏教系幼稚園と保育園2425園に無償で配布する。紙芝居の制作は㈱漫画家学会、監修は手塚プロダクションが行い、前編・後編(各15枚)の二部構成で完成した。

渋谷画劇団による紙芝居『ブッダ』ショーも行われた贈呈式 贈呈式では桂紹隆理事長が「素晴らしい紙芝居を作成いただいた。日常の保育や仏教教育に活用されることを期待している」と挨拶。(公社)日本仏教保育協会(日仏保)、浄土真宗本願寺派保育連盟、(公社)大谷保育協会、浄土宗保育協会、曹洞宗保育連合会、高野山真言宗保育連盟、日蓮宗保育連盟へ、紙芝居とパズルが贈呈された。

 日仏保の髙山久照理事長は「子どもは環境に働きかけながら色々なものを獲得していくが、視聴覚教材は子どもにとって大変に大事な環境の一つ」とし、「仏教保育を通じて、子どもたちにいのちの大事さを伝えることを使命としている。紙芝居とパズルを充分に活用し、命を大事にし、思いやりのある豊かの心を持った仏の子を育ててまいりたい」と謝意を示した。

 監修した㈱手塚プロダクションの内藤出さんは、手塚治虫が『ブッダ』を描いた際に、「宗教を描くことは精神的に辛く、ブッダを描くのは一つの修行だったと言っていた」というエピソードを紹介。現在では多くの小学校図書館にも所蔵され「小学校へ仏教を普及」する一助になったことから、「手塚治虫は亡くなるまで漫画は子どものために描いていると言っていた、と聞いている。今回の紙芝居化もきっと草場の陰で喜んでいると思う」と話した。

 贈呈式後には渋谷画劇団による『ブッダ』紙芝居ショーも行われた。

2019/10/10

希望は寺院と墓の存続 日蓮宗が山梨県で過疎地調査 

 
檀信徒に聞き取り調査を行う学生 日蓮宗現代宗教研究所(現宗研、三原正資所長)は9月25日から27日まで、山梨県南巨摩郡早川町で過疎地域寺院に対する檀信徒の調査を実施した。静岡大学地理学研究室の協力により町内の3集落で学生が檀信徒に聞き取り調査を行い、檀信徒から寺院への思いを聞いた。多くの檀信徒が菩提寺の存続を望み護持に協力する一方で、墓の継承者が決まっておらず、集落の外へ移転を検討する世帯も出始めており、寺院護持と信仰継承の課題が明らかになった。

 昨年3月の定期宗会で中川法政宗務総長が過疎地域寺院対策に言及したことを受け、同年9月に広島県で調査方法などを試行するパイロット調査を実施し、過疎地域寺院の調査に着手した。

 現宗研は1989年に過疎地寺院に関する調査報告書『ここまで来ている過疎地寺院 あなたは知っていますか?』を発表。当時の調査でも近隣に総本山身延山久遠寺があり、〝祖山のおひざもと〟と言われる早川町を対象地域の一つとしており、約30年ぶりの調査となった。

 昨年に続き、過疎地域の研究で知られる中條曉仁・静岡大学准教授(日蓮宗僧侶・現宗研嘱託)が協力し、ゼミ生9人が参加。約30人の檀信徒から世帯構成や住職・寺院の役割、墓や仏壇の継承者はいるか、など19項目について聞き取り調査を行った。

 茂倉集落の檀家男性は「人が少なくなれば、護持は大変になるが、残った者でやるしかない」と語り、「住職はよくしてくれているが、自分もいずれは甲府かどこかの町に移り住むかもしれない。お墓を移すことも考えなくてはいけないと思っている」という。

 総代を務める雨畑集落の檀家男性も集落から外へ出た住民がおり、「私の代だけでも3、4軒が墓じまいをした。なるべく集落に墓を置いておくように話している。この規模の集落では(転出は)まだ少ない方だと思うが…」と現状を話した。

 調査に協力した檀信徒は70代から90代と高齢者が多く、子や孫の世代は他の地域に転出している。中條准教授は全ての過疎地の共通課題として、親と子の世代が離れて生活する〝家族の空間的分散〟を挙げ、寺院との関わりでは「これを克服できないとこれから寺院は厳しい。次世代の檀信徒と寺院・住職がどうつながっていくか。今後は信仰の継承がより重要になる」と指摘する。

 現宗研では、他地域に転出した子の世代について、スマートフォンでも調査に回答できるシステムを採用し、調査の協力を呼びかけている。今月25日には、東京都大田区の宗務院で開催される教化学研究発表大会で、中條准教授が調査の中間報告を行う予定だ。

 日蓮宗では宗会議員などで構成される過疎地寺院対策委員会でも先日、石川県で調査を実施しており、過疎地寺院の現状把握に努めている。

2019/10/3
日本学術会議が緊急メッセージ 「地球温暖化」に迅速対応迫る 


 日本学術会議は9月19日、「『地球温暖化』への取組に関する緊急メッセージ」を山極壽一会長(京都大学総長)談話として発表。二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの早急な削減が必要だと訴える一方、日本や世界の取り組みのスピードが遅いと嘆いている。9 月 23 日に開かれる国連気候行動サミットに合わせて、発表した。

 談話は「国民の皆さま」で始まり日本国民全体に向けられている。科学的な知見をもとに5項目の緊急メッセージを発表し、地球温暖化対策を訴えている。

 5項目のメッセージにはそれぞれ解説を付し、これまでの研究成果と報告を踏まえて具体的に論述。いくつかの要素によって気候システムの平衡状態急激に変化する「転換点」に達し、1500万年前の超高温の気候に遷移する可能性があるとして、「超高温の気候を人類は未だ経験したことがなく、極めて深刻な影響を被る可能性がある」と警告している。

 2015年12月に採択されたパリ協定では、世界平均気温を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1・5℃に抑える努力をするとしている。 21世紀末の上昇音温度を1・5℃に抑えることで影響が大幅に軽減されることから、「1・5℃目標」達成のために、国際連携に加え、「国・自治体・企業などが、この目標に向けて、今、率先して取り組む必要がある」と訴えている。

 SDGs(持続可能な開発目標)や将来世代のための取り組みにも言及しているものの、宗教的・倫理的な面からの発言は含まれておらず、こうした点などは宗教界の課題になりそうだ。


「地球温暖化」への取組に関する緊急メッセージ

国民の皆さま
 私たちが享受してきた近代文明は、今、大きな分かれ道に立っています。 現状の道を進めば、2040 年前後には地球温暖化が産業革命以前に比べて「1.5℃」を 超え、気象・水災害がさらに増加し、生態系の損失が進み、私たちの生活、健康や安全が脅かされます。これを避けるには、世界のCO2排出量を今すぐ減らしはじめ、今世紀半ばまでに実質ゼロにする道に大きく舵を切る必要があります。

 しかし、私たちには、ただ「我慢や負担」をするのではなく、エネルギー、交通、都 市、農業などの経済と社会のシステムを変えることで、豊かになりながらこれを実現する道が、まだ残されています。世界でそのための取組は始まっていますが、わが国を含め世界の現状はスピードが遅すぎます。

 少しでも多くの皆さんが、生産、消費、投資、分配といった経済行為における選択を通じて、そして積極的な発言と行動を通じて、変化を加速してくださることを切に願います。我々科学者も国民の皆さまと強く協働していく覚悟です。

緊急メッセージ
1 人類生存の危機をもたらしうる「地球温暖化」は確実に進行しています
2 「地球温暖化」抑制のための国際・国内の連携強化を迅速に進めねばなりません
3 「地球温暖化」抑制には人類の生存基盤としての大気保全と水・エネルギー・食料の統合的管理が必須です
4 陸域・海洋の生態系は人類を含む生命圏維持の前提であり、生態系の保全は「地球温暖化」抑制にも重要な役割を果たしています
5 将来世代のための新しい経済・社会システムへの変革が、早急に必要です
(以下略)
                                  令和元年9月19日
                                  日本学術会議会長
                                      山極 壽一

 
 ライフスタイル 転換も重要要素
 
仏教学者で「宗教・研究者エコイニシアチブ(RSE)」会長の竹村牧男東洋大学学長のコメント

 今、世界では、多くの国家や地域自治体、学会や大学などで、「環境と気候の非常事態宣言」が続々採択されているが、日本ではまだまだこの取り組みが遅れている。そうした中、日本学術会議が先導的な役割を果たしてくれたことは歓迎したい。その緊急メッセージの内容を見ると、科学・技術を駆使することや社会システムの変革を通じて問題の解決に導こうとしているが、消費行動への反省などは含まれていないようである。

 環境問題への対応策として、未来世代への責任を自覚しての、ライフスタイルの転換も問題解決への重要な要素であり、また社会システムの変革の前提に、人文学に基づく人間存在への深い省察が欠かせないのではなかろうか。 

2019/10/3
指導的立場の修行僧(評席)が集い研修会 臨済5宗派12僧堂が参加


僧堂運営について話し合った評席ら 僧堂の運営にあたり、修行僧の中で指導的立場にある臨済宗の評席が集まる「専門道場評席研修会」が9月26・27両日、京都市右京区の大本山妙心寺で開かれた。全国から5宗派の12人が参加し、修行僧の人権について学ぶとともに、各僧堂の課題などに関し意見を交わした。

 妙心寺派の8僧堂と円覚寺派・方広寺派・永源寺派・天龍寺派の4僧堂が参加。研修会は妙心寺派の主催で年一回開く。臨済宗では各派の僧堂に掛搭できるため、宗門全体で課題が共有できるよう各派に参加を呼び掛けている。

 栗原正雄宗務総長は開会式で、寺院を取り巻く環境は大きく変わりつつあるとし、「僧侶に対して厳しい目が向けられ、その存在意義も問われている」と強調。「修行に励みながらも、社会と乖離してはならない。研修の中で意見交換し、各僧堂に持ち帰ってほしい」と、僧堂間の交流に期待を寄せた。

 僧堂の運営は師家に任され独立性が高いが、修行僧の指導にあたる評席が集まり情報交換する貴重な機会となる。近年、修行僧の在錫期間が短くなっているのもあり、今回参加したのも22~32歳の比較的若い評席となった。

 経済的に疲弊する兼務寺院の状況などについて講義し、檀家制度だけに頼った寺院運営の課題も述べた上沼雅龍総務部長は、「地域の人と積極的につながり、葬儀以外に必要とされることも大切」と伝えた。さらに、「僧堂はかつて差別の世界とされた時代もあったが、堂々と平等を説き、社会に通じる僧侶の育成を考えてほしい」と語った。

 妙心寺派人権擁護推進委員長で、傾聴活動を行う成徳寺(兵庫県丹波市)の河合宗徹住職は「僧堂での人権」をテーマに講義。かつて僧堂で起きた暴行事件に対し、釈尊が唱えた「天上天下唯我独尊」の言葉を挙げ、「人権宣言そのもの。仏教の基本となる思想だ」と戒めた。

 パワハラやいじめの実態などの説明を受けた上で、「節度ある僧堂運営」に関し評席たちは4人一組のグループに分かれて話し合った。

 「パワハラや暴力は避けるべき」との見解で一致したが、問題につながる感情的な指導を抑制するために、「一人で感情をコントロールするのは難しい。問題が起きると、老師に伝えた上でみんなで解決策を話し合っている」との平林僧堂の対策も紹介された。

 河合住職は「感情に流されそうになったときに、なぜ怒りがあるのか自分を見つめ、頭ごなしに否定せずに相手の苦しみに目を向け、悩みを聞いてあげてほしい」と助言を送った。

 また、高齢者や障がい者への接し方について、「習熟度合いの把握に努め、軋轢が起こらないような指導を心掛けたい」などの意見が出た。性的少数者に対しては、「事前に申告してもらった上で、問題が起きた場合の対処を説明する」「尼僧堂を利用する方法もある」などの考えがあがった。

 参加者らは「ほかの僧堂の実情を知ることができ収穫があった」などと感想を述べ、円覚僧堂の草野彰元氏は「課題が各僧堂で共有でき、いい方向に向かっていると感じる。今後、全体の方針も考えられるよう話し合いを深められたら」と話した。

2019/10/3
京都市北区誠心寺 女性2人で名刹を護持 いろいろな家族の〝今〟に立ち会う


今年の秋彼岸供養。美しい念仏のハーモニーが堂内を荘厳した 観光客で賑わう金閣寺からほど近い京都市北区大北山鏡石町の真宗高田派誠心寺(じょうしんじ)は、女性2人が護持する隠れた名刹だ。副住職の釋(とき)(旧姓・立石)明日香さん(42)は一般家庭の出身。15年前、陶芸の専門学校に通うため同寺に下宿したのが縁で、いつしかお寺を手伝うようになった。昨年1月、子どものいない釋恵子住職(72)の養女に。「まだまだわからないことだらけ」と話しながら、住職と共にお寺を盛り立てている。

 約400年の歴史を持つ誠心寺は、52年前に現在地に移転。本山専修寺京都別院の移転に伴い、別院の塔頭だった同寺も中京区河原町二条から移らざるを得なくなった。

 当時、恵子住職の母親が僧侶となり、寺を切り盛りしていた。だが「女性住職が宗派から事実上認められていなかった時代。30代後半で未亡人となった母は、信頼できる隣のお寺に何十年も代務住職になってもらっていた」(恵子住職)。

 「移転の時、私は中学生。母は苦労していた。200軒以上の墓も移さなければならなかった」。個人から山林を買って、寺を再建。檀家も現在地に墓地を移転した。「母が墓地も一緒に移転しないと檀家は離れていってしまうと言っていた。先見の明があった」

 35年前、「私が九州のお寺の生まれの人と結婚し、夫が住職になった。夫が15年前(平成16年)に亡くなったので、それからは私が住職をしている」。時代は大きく変わり、平成15年の高田派宗議会での承認後、女性も住職になれるようになっていた。

 その頃、明日香さん(当時27歳)が陶芸の専門学校に通うために同寺で下宿を開始。明日香さんは、「釋さん(恵子住職)と私の父の共通の知人である陶芸家から、ここを紹介されたのが縁。それまで特に意識して仏教に触れたことはなかった」と振り返る。(続きは紙面でご覧ください)

2019/9/26
僧籍持つ従軍画家 小早川秋聲展、関東圏で初開催

陸軍省が受け取りを拒否した「國之楯」。戦後には改作も 真宗大谷派の僧籍を持ち、戦時中は従軍画家として活動した小早川秋聲(1885~1974)の関東圏で初となる展覧会「無限のひろがりと寂けさと」が8月31日から9月16日まで加島美術(東京都中央区)で開催された。陸軍省の依頼で描いたものの、受け取りを拒否された『國之楯』、東本願寺の大谷光暢第24代法主と久邇宮智子女王の成婚に際し、東本願寺の委嘱で制作した六曲金屛風『薫風』など約40点が展示された。

 鳥取県日野町の光徳寺、小早川鐵僲住職の長男として生まれ、9歳で東本願寺の僧籍に入った秋聲。画家になるためお寺を飛び出し、京都画壇を中心に活躍。国内外の旅行にも数多く出かけ、幅広い見識を持つ異色の画家でもあった。1931年に満州事変が勃発すると、いち早く戦地に赴き、終戦近くまで従軍を繰り返し戦争画を描いた。

 1944年完成の『國之楯』は、戦死した日本兵の顔を日の丸が覆う。完成当時は秋聲作品の特徴でもある金泥や金粉がふんだんに使われ、死を美しく荘厳するかのように桜が描かれていた。日本兵の活躍を描く戦争画とは対照的に、その死を描いた同作は厭戦感につながると受け取りを拒否される。1968年には秋聲によって桜の花などを黒く塗りつぶすなど改作された。秋聲の心境の変化、戦中から戦後という社会の変わりようを映したような作品と言えよう。

 戦意高揚の戦争画ではなく、兵士の生活や、過酷な戦況下における日本人の強靭な精神性を表現したとも評される秋聲。戦後は多くの仏画も手がけた。

2019/9/26

身延山久遠寺「共栄運動」を開始 題目・法華経の聖地へ

共栄運動の発足を宣言する持田総務 日蓮宗総本山身延山久遠寺(内野日総法主)は16日、同寺本堂で共栄運動発足式を執り行った。身延山に関わるあらゆる人々との「共生共栄」を打ち出し、立正安国・世界平和の具現化を目指す。同運動は、祖山全域が世界中に認知される題目・法華経の聖地となることを目指し、短期・中期・長期の計画を策定。2年毎に点検・評価し、計画の実効性を高めていきたい考えだ。

 スローガン「共に生き、共に栄える」は、岩間日勇・第90世法主が常々口にしていた言葉で、現在の内野法主も大切にしてきた言葉。発足式に先立ち営まれた立正安国世界平和祈願会で内野法主は「世界中の祈りのエネルギーで互いに敬い合い、協力し合い、助け合いながら誰もが心豊かでいられる安穏な社会を築くことが共生共栄」と説示した。
その上で「今こそ、共に生き、共に栄えるという久遠実成の仏陀釈尊の時空を超えた世界が実現されますよう努力していこうではありませんか」と約600人の参拝者を前に呼びかけた。

 発足式では、持田日勇・久遠寺総務が発足宣言。持田総務は「あらゆる人々を受け入れ、共に幸せになる仏の智慧をいただく。変えていくことを恐れない、変わっていくことにも驚きません。それには勇気がいる。皆さんどうか勇気をもって共栄運動を始めましょう」と運動の開始を表明した。

 共栄部長の浜島典彦副総務は、国内外・宗内外の諸問題を指摘し、「身延山ではこの現状を打破すべく共栄運動を推進していくことに決した。共栄運動は、信仰運動であり、宗門運動と連携、連動するもの」と説明した。

 さらに「身延山に関わるあらゆる有縁無縁の方々とともに栄え、お題目の聖地、法華経の聖地としてすべての人々の心の拠り所として常に開かれた場として存在することを目指す」と門下連合や題目系教団、新宗教など、さらなる交流を通じて協力関係を模索していくことを語った。

 中川法政宗務総長は、「身延山は日蓮大聖人にご縁のある、法華経に縁のあるすべての人にとっての祖山。今日、世界に向けて高らかに発信された。これは日蓮宗だけでなく門下連合、新宗教の各諸団体、そして世界に縁をもっておられる人すべての人の祖山であるということ。参詣に来ていただいた人々をこれまで以上にお迎えしていただきたい」と祖山の発展を願った。

 井上日修参与、法華一乗会副会長の逢沢一郎・衆議院議員、長崎幸太郎・山梨県知事、檀家総代の堀内光一郎・富士急行社長が祝辞を述べ、運動への期待を示した。

 次世代からのメッセージとして、身延山高等学校の生徒2人が感謝や思いやりから「共に生き、共に栄える」の精神を受け継いでいく、素直な思いを読み上げた。最後は武見敬三・参議院議員による万歳三唱で運動の成功を祈った。

 清興では、共栄運動の短期計画にも盛り込まれているオペラ『日蓮の宇宙~曼荼羅世界』の一部が披露された。

2019/9/26

台風15号 千葉県内に被害集中 復旧と支援 被災寺院動く

 
水浸しになった浄蓮寺本堂は畳を全て取り払った。ブルーシートの中には支援物資がある(鋸南町) 9月9日、関東地方を襲った台風15号は、千葉県南部を中心に大きな被害をもたらした。強烈な風と雨によって広範囲にわたり家屋が損壊し、電柱倒壊に加え倒木によって電線にも被害を与え、2週間経っても一部では停電が続いた。強風が直撃した寺院も相次いでいる。一方で地域の避難場所に指定されている寺院には、支援物資を求める被災住民たちがひっきりなしに訪れた。復旧と支援に取り組む被災寺院を彼岸入りの20日、取材した。(特別取材班)

鋸南町
 千葉県南部の鋸南町では多くの家屋にビニールシートがかけられ、復旧作業が続いていた。

 浄土宗浄蓮寺(郡嶋晨定住職)は本堂屋根瓦の大半が吹き飛んだ。木組みの上に大きなブルーシートがかかる。入口のサッシも吹き飛び水浸しになった。畳が全て搬出された本堂には、各地から寄せられた飲料水や食料、手ぬぐいなどの物資が置かれていた。壁に突き刺さった瓦礫が、強烈な暴風の爪痕を残す。

 境内の墓地では石材店が墓石の復旧作業にあたっている。お彼岸を迎えたこの日、供えたての花があちこちに見られた。

 浄蓮寺から海側に近い臨済宗建長寺派大智庵(丸山全法住職)でも、本堂や庫裏の屋根半分が落ち、壁の一部も飛来物で破られた。入口のサッシ4枚のうち2枚が吹き飛び、堂内に暴風雨が吹き荒れた。大きなブルーシートが屋根や壁面を覆う。

本堂や庫裡全体に雨漏りがあった高徳院。地域の避難場所に指定されており、本堂前には支援物資が置かれた(南房総市) 本堂の前には3日間かけて片づけたという、墓地に散乱した瓦礫やガラスの破片が山になっていた。本堂内は、濡れた畳が立てかけられ、大量の木材や工事用具が並ぶ。「待っていたらいつになるかわからない」と丸山住職。自力で復旧作業を進めている。
   
南房総市
 南房総市千倉町の真言宗智山派高徳院(星孝芳住職)では、本堂・庫裡共に建物全体に著しい雨漏り被害を受けた。内陣天井も雨漏りが激しく、堂内はブルーシートで覆われたままだ。地域の一時避難所に指定されており、同寺を中心に復旧に向けた活動が行われた。

 研修で東京にいた星住職は、宗門僧侶の協力で板氷などの支援物資を購入しながら車で帰宅。冷やした飲み物をリヤカーで地域に配り、地域住民の安否確認を行った。

勢國寺境内の大木が倒壊。間一髪で本堂直撃を免れた(いすみ市) 同寺のある川口区では停電も多い。同寺では発電機でエアコンを動かし、雨漏りを免れた客間で近隣住民に涼を提供した。電力復旧には1週間ほどかかった。復旧後に漏電が判明した。

 通信状況が悪い中、星住職は護持会や自坊の地域行事、子ども会、青年会などのネットワークを基に地域の復旧に向けた活動を開始。寄せられた物資の集配や被災住民のニーズを聞いて回り、地域の復旧に努めた。
   
いすみ市
 内陸地域にあるいすみ市山間部の萩原地域にある曹洞宗勢國寺(小黒澤信行住職)では境内の斜面に立つ杉の巨木が根元から倒れた。高さ十数㍍、幹も直径1メートル以上あり、衝撃でコンクリートの地面は激しくひび割れた。(続きは紙面でご覧ください)

2019/9/19
旧嵯峨御所・大本山大覚寺 尾池泰道門跡が晋山 心経信仰の宣揚誓う

 
田代弘興・真言宗長者の祝辞を聞く尾池門跡 京都市右京区の旧嵯峨御所・真言宗大覚寺派大本山大覚寺で9日、5月9日に就任した尾池泰道第64世門跡(同派管長・嵯峨御流華道総司所総裁)の晋山奉告法会が営まれた。真言宗各派総大本山の山主をはじめ宗内外から約160人が参列。尾池門跡(79)は御影堂で晋山奉告文を読誦し、「只々、仏祖の冥助を仰ぎ、先徳の洪業に学び、一意精進を以て、罔(もう)極(きょく)の聖恩に奉答せんことを誓い、寺門興隆・宗団発展、併せて嵯峨御流華道の隆昌に寄与せんとす」と法灯継承の思いを語った。

 真言宗長者の田代弘興・豊山派総本山長谷寺化主が、「共に大師信仰と真言教学の宣揚に尽くさんことを」と祝辞。尾池門跡の自坊、延命寺(香川県観音寺市)の原田信彦総代長は「私ども檀信徒は尾池名誉住職を大変誇りに思っている」と感慨深そうに呼びかけ、伊勢俊雄執行長(大覚寺派宗務総長)は「宗祖弘法大師・ご始祖嵯峨天皇のみ教え、心経信仰の宣揚をお示しいただき、私どもをお導きくださいますように」と懇請した。

 続いて市内ホテルで祝賀会が開かれ、仏教界内外から約600人が参加。尾池門跡は、「大覚寺の法流と伝統の護持、心経信仰の宣揚」を誓った。

 嵯峨御流華道総司所の辻井ミカ華務長が、流麗な祝挿花を奉納。大覚寺の隣山である御室派総本山仁和寺の瀬川大秀門跡が、「猊下のもと、平和で優しい思いやりのある社会にお導きくださいますことを」と祝辞を述べた。

 嘉原唱光宗会議長は、「全国末寺・檀信徒に一層のご指導を」。京都府の西脇隆俊知事も、「京都からの新しい文化政策にお力添えを」と懇請した。

 孫である守谷美咲さん、尾池里奈さん、尾池里沙さんから尾池門跡に花束を贈呈。嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学の佐々木正子学長は同大名誉学長でもある尾池門跡に、「嵯峨天皇が築いた文化と美意識、弘法大師の思想の伝統を継承し、社会に貢献できる人材育成に精進してまいりたい。どうか若い学生たちを温かくお見守りくださいますように」と願い、乾杯の発声を行った。

2019/9/19

第29回中村元東方学術賞 及川・村上両氏に授与 共著『パーリ仏教辞典』を評価


 (公財)中村元東方研究所(前田専学理事長)はこのほど、インド大使館との共同事業である第29回中村元東方学術賞に、及川眞介(日蓮仏教研究所所長・文学博士)村上真完(東北大学名誉教授・文学博士)両氏に授与すると発表した。若手研究者を対象とした第5回中村元東方学術奨励賞は齋藤公太氏(国学院大学研究開発推進機構日本文化研究所助教)に決まった。授与式は10月10日午後5時から、東京・九段のインド大使館で行われる。

 及川氏は1932年生まれ。東北大学文学部印度学仏教史専攻卒、東京大学大学院人文科学研究科修士課程印度哲学専攻修了。日蓮宗常圓寺院主。

 村上氏は1932年生まれ。東北大学文学部印度学仏教史専攻卒業、同大学院文学研究科博士課程印度学仏教史学専攻退学。東北大学名誉教授。

 齋藤氏は1986年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専攻は日本思想史・宗教史。

本賞の授賞理由
 村上真完・及川真介両博士の共著『パーリ仏教辞典』(仏のことば註――パラマッタ・ジョーティカー――付篇 パーリ聖典スッタ・ニパータ註索引・辞典)[2009年出版]は四半世紀にわたるお二人の協力の結晶で、今や原始仏教研究者には不可欠な辞典となっております。

 既刊の辞書から洩れた語彙や既刊の辞書では理解できない語彙をも含んでいるばかりではなく、用例の豊富な辞典であり、本辞典は原始仏教研究にとって、ひいては仏教研究にとっては画期的な貢献であります。

 本辞典の完成には、その基礎となった共訳註『仏のことば註 パラマッタ・ジョーティカー』に対して翻訳文化賞を贈られた中村元先生もさぞお喜びの事と推察し、村上真完・及川真介両博士が中村元東方学術賞に相応しいと判断し、令和元年度の授賞者と決定しました。(選考委員会)

2019/9/19

教団におけるSDGsアンケート 基本理念「誰一人取り残さない」 5教団がすでに活用

 
 2015年9月、国連サミットで採択された 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)。2016年から2030年までの国際目標である。「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」とも呼ばれる。その前のミレニアム開発目標(MDGs)は、主に発展途上国を対象としていたが、SDGsは先進国も含まれる。日本でもNGOのみならす市民団体や民間企業でも取り組みが見られる。宗教界も同様で、共生特集にあたり教団アンケートを実施した。

 SDGsは17の目標と169のターゲットで構成。その第1は「貧困をなくそう」。ターゲットの最初には「2030年までに、現在1日1・25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」とある。このように17目標のもとに具体的なターゲットが明示されている。MDGsが8項目21ターゲットだったことからすれば、大きく増加し、明確にもなった。そのうえMDGsに環境への取り組みがあったが、より具体化されてもいる。

 昨今の宗教関連の国際会議でもSDGsへの取り組みが表明されている。例えば昨年のWFB世界仏教徒会議日本大会の東京宣言では「私たちは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現を支援します。例えば、貧困集落が生活の質を改善し、収入を増やすことができるような実用技術を身に付ける手助けをします」と言明した。

 先月開催された第10回WCRP/RfP(世界宗教者平和会議)リンダウ大会の宣言では、「我々は持続可能な開発目標(SDGs)に明記された人間開発に取り組んでいく」と明記している。

 こうした状況を背景に仏教タイムスでは教団アンケートを実施した。質問は4項目で、シンプルなものにした。14教団にアンケートを依頼し、11教団から回答が寄せられた。最初の質問は「教団のSDGsへの認識について該当するものをお選び下さい」(別掲)。すでに活用しているとしたのは5教団で、全体的に関心を示している。

 一方、SDGsと教団の活動に関する質問「SDGsが設定している17のゴール(目標)で教団が特に重視するものを3つ選んでください」(別掲)では、目標16の「平和と公正をすべての人に」の回答が9教団ともっとも多かった。ほか、目標1「貧困をなくそう」が4教団、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」が4教団となった。選択を3つと限定したため、回答以外の取り組みもあるとみられる。

 目標5「ジェンダー平等」には本願寺派、目標7「エネルギー」には妙心寺派、目標11「まちづくり」には日蓮宗、目標15「陸の豊かさ」には大本と、それぞれ1教団のみで教団の特色がみられた。

 SDGsの基本理念は「誰一人取り残さない」である。これに着目する教団は多い。(各教団のアンケートの回答は紙面をご覧ください)