共生特集2023

2023/9/21 共生特集 「温暖化地獄」が現実化 提起から16年「地球沸騰化」の時代に


 今年の夏の暑さは例年以上だった。涼しいとされる北海道でも30度を超える日が続いた。世界的に見ても山火事が相次ぎ、一部では洪水が発生したりしている。まさに地球温暖化の時代に入ったのだ。16年前、こうした現象を予測した研究者がいた。山本良一・東京大学名誉教授である。著書はズバリ、『温暖化地獄』(ダイヤモンド社)。温暖化について山本氏のほか、4人の僧侶に体験メッセージなどをいただいた。

 こうした地球環境をはじめ、関心の高いSDGs(持続可能な開発目標)、平和構築など「共生特集2023」では宗教界の取り組みを追った。

 本来の自然の恵みに感謝を 山本良一・東京大学名誉教授

山本良一氏 今年7月の世界の平均気温は観測史上最高だった。7月27日、グテーレス国連事務総長は地球温暖化の時代は終わり地球沸騰化の時代が到来したと述べ、世界の平均気温の上昇を産業化前に比べて1・5℃以下に抑制するために直ちに劇的な温室効果ガスの排出削減策を実行するように呼び掛けた。グテーレス氏は“モンスーンの雨に流される子どもたち、炎から逃げる家族、そして灼熱のなかで倒れる労働者”と表現しているが、これは16年前に筆者が公表した『温暖化地獄』の本の中で考えたことと同じである。

 昨年9月には気候転換点(Climate Tipping Points)の新たな研究が公表されている。それによればグリーンランド氷床崩壊、西南極大陸氷床崩壊、熱帯サンゴ礁の枯死、北方永久凍土の突発的融解、ラブラドル海の対流崩壊が既に始まっている。これは人類による資源・エネルギーの大量消費が地球の気候や環境を変えているためでまさに因果応報、自業自得と言わなければならない。

 温暖化地獄から脱出するためには現在の気候危機を招いた原因を一つずつ取り除いていかなければならない。世界は2015年のパリ協定の約束に従って脱炭素社会の実現に向けて取り組みを進めているが、その歩みは遅々としている。気候転換点の玉突き衝突が始まってしまえば人類にはその巨大な変化を制御することは不可能になってしまう。

2007年に刊行された『温暖化地獄』(ダイヤモンド社) そこでポジティブな社会転換の玉突き衝突を人為的に引き起こして気候転換点の玉突き衝突が始まる前に脱炭素社会を実現しようという運動が起きている。気候非常事態や2050年ゼロカーボンシティ宣言をしたり、エコ技術開発、ESG投資、炭素税や排出権取引制度の導入など技術革新やその普及のための社会システムの革新策である。

 しかし最も重要なのは私たち一人ひとりが、この温暖化地獄のただなかにあって本来の自己に覚醒し、本来の自然の恵みに感謝し、それで充足し、社会的連帯経済によって助け合い、謙虚な心で先端科学技術を善用することであろう。それは仏教に基礎を置いた仏教経済にも通ずるものではないか。

※ESG投資 環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の単語の頭文字を取った略語。ESGに配慮した投資。

2023/9/21 共生特集 旭硝子財団 環境危機時計 4分戻る 中米・東欧などは20分進む


「環境危機時計」のイメージ(旭硝子財団の資料より) (公財)旭硝子財団(東京都千代田区)は6日、世界の環境有識者を対象とした「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の調査結果を発表した。地球環境への危機意識を示す「環境危機時計」は「極めて不安」の9時31分で、昨年より4分針が戻った。3年連続で針が戻ったものの、依然「極めて不安」に分類される。

 同財団では1992年に同アンケートを開始し、今年は日本を含む130カ国1805人から回答を得た。「地球環境時計」は、0時から3時を「殆ど不安はない」、3時から6時を「少し不安」、6時から9時が「かなり不安」、9時から12時を「極めて不安」として、地球環境への認識を表したもの。

 世界各地域の環境危機時刻を見ると、昨年に比べ南米、中東、西欧で10分以上針が戻ったが、メキシコ、中米、カリブ諸国、東欧、旧ソ連で20分以上針が進んだ。

 持続可能な開発目標(SDGs)に関する質問では、17ある目標の内、「気候変動に具体的な対策を」が最も関心が高い結果となった。

 2030年(SDGs期限)までの達成度が最も低いと思う目標は、「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」「人や国の不平等をなくそう」の三つが多かった。一方で、日本・韓国・中国の回答者では「ジェンダー平等を実現しよう」を挙げる回答が多かった。

 同財団が世界25カ国で実施した1万3500人(10~60代)に対して行った生活者の環境危機調査では、危機的だと思う項目第1位が「気候変動」。環境問題の意識や行動が進んでいると思う国は、1位日本、2位アメリカ、3位中国で、日本を選んだ理由は「人々が規律正しい」「優れた技術がある」など。日本は昨年も1位に選ばれている。

2023/9/21 共生特集 大阪大学×東光院 命の世界・仏教徒共同体 防災ワークショップ開催


車座で未来を展望する僧侶や研究者、行政職員ら 大阪大学の先導的学際研究機構「新たな防災」を軸とした命を大切にする未来社会研究部門は7日、豊中市の曹洞宗東光院(村山廣甫住職)でワークショップ「お寺で考える『新たな防災』」を開催した。昨年発足した阪大の同部門の知見と、お寺の持つ地域資源・社会貢献力を組み合わせ、震災やコロナ禍を超えた社会を豊かにする方法を考えた。阪大の研究者や大阪府佛教会の僧侶、豊中市や近隣自治体の職員・社会福祉協議会員など約30人が参加した。

 基調講演は同部門代表の堂目卓生経済学部教授(副学長)。近代において「私たちの社会には有能な人が中心に置かれ、そうでない高齢者や子ども、難病患者、被災者、外国人などは『弱者』として周辺に置かれてきた」が、そのように有能な人が弱者を包摂する社会は「有能な人のようになってください、生産に貢献してください」と要請し「助けられる側になったらもう駄目だ」と人間を追い詰める社会だったことを反省すべきだと提言。

 「助けられる人から、助ける人が受けているものがある」とし、ある災害で支援された人が、別の災害では逆に支援者になることもあるとする。生態系の世界・物理的世界・社会的関係の世界・デジタルの世界・共感や信仰や尊厳などの心の世界から「命の世界」が成立するが、それらの社会が分断されてしまったことを乗り越え、共助の社会を2100年までに目指したいとした。

 村山博雅副住職は、世界仏教徒青年連盟会長として「仏教徒共同体」という世界観を提示。「住職というのは一人で存在しているわけでなく、前の(歴代の)住職、関わった檀信徒や地域の人があってこそ成立する」とし、東光院も行基菩薩が開山した1300年を繋いできた多くの人が共同体を作ったとする。(続きは紙面でご覧ください)

2023/9/21 共生特集 144年ぶりの暑さだった 北海道根室市 細川大憲・真言宗智山派清隆寺副住職

 
 今年の北海道は確かに暑かった。例年根室はしのぎやすいのですが、地元紙によると144年ぶりの暑さだそうです。ということは当時を知る人はいませんので、初めてこの暑さを体験したわけです。7月下旬から8月上旬まで30度を超える日が続きました。

 根室のお盆は東京と同じ7月(網走と函館もそうです)。その頃はまだ過ごしやすくて、お盆が終わってから暑くなった。8月お盆のところも少しありますが、それはもう汗だくでした。

 私は京都に8年ほどいましたが、それと同じぐらい(苦笑)。1回法事をすると白衣と衣がベタベタになりました。とにかく湿気が多く蒸し暑い。

 暑さ対策はまったくしてませんね。この辺では大型扇風機が売り切れになりました。新築の家でもクーラー1台を設置するかどうか。市内街中に8カ寺ありますが、クーラーが付いているお寺は1カ寺もなし。あるお寺がクーラー1台を頼んだら来シーズンだとか。ただ風が6~7㍍吹く日もあるので、その時は過ごしやすい。

 例年8月のお盆の頃は、日中27~28度でも朝晩は17~18度。むしろ寒いぐらいです。それが今夏は夜も23度前後で推移していて、下がらない。この時期(9月1日)は涼しいはずなのに厳しい残暑が続いています。

 地球の資源は一定であるにも関わらず我先にとそれを奪い合ってきた人類の歴史。全ての人、社会が「足るを知る」をそれぞれ日々の生活の中で実践すること。言葉としては単純ですが遠回りでも結局のところそれしかないと思っています。
 
 話題になった斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』でも触れられているように社会が脱成長の方向に舵を切ることがなければ「地球温暖化」問題の解決への道は見えて来ないと思います。