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2024/7/25
宗門系大学サバイバル 立正大学編 安中尚史仏教学部長に聞く 現代的課題に対応する僧階講座


 日蓮宗の宗門校の一つである立正大学(東京都品川区大崎)は、日蓮宗僧侶の教育機関であった飯高檀林を淵源とし、僧侶養成機関としては450年近い歴史がある。大学としては2022年に開学・開校150周年を迎え、9学部16学科、大学院7研究科を擁する総合大学として発展してきた。少子化など時代の変化の中で僧侶養成を担う仏教学部はどのように対応しているのか、安中尚史学部長に話を聞いた。

 歴史ある同大にも少子化という時代の波は訪れている。仏教学部の学生数も国の政策などに影響を受けつつ、近年減少傾向が続いている。

 同大仏教学部の学生数の推移を見ると、2020年度は定員105人に対し入学者105人と充足率100%だったが、その後、充足率90%(21年度)、79%(22年度)と減少。国が私立大学の定員厳格化を緩和した影響もあり、23年度は58%にまで下がった。24年度は65%まで上昇したが、依然として厳しい状況となっている。

 安中学部長は、「特に2020、2021年は国が首都圏の大学の定員管理を非常に厳しくした2年間だった。いわゆる上位の大学が人数を厳しく制限し、受験者が目標を下げる傾向がありました。それにより多くの大学では志願者が増える傾向にあったのですが、それが22年度に元通りに緩和されたので、23年度は大きく減少してしまった」という。

 もちろん、少子化や教育政策など環境のせいだけにしてはいない。「原因は少子化にもありますが、学部としての努力不足であり、反省する必要があると考えています」

 20年度から、仏教学部は学科から学部での募集に切り替えた。来年度からは、さらに新コース制をスタートさせる。1・2年次は仏教学部生全員が共通のプログラムで仏教全般にわたる基礎を幅広く学び、3・4年次に学科(コース)を決定する。「歴史・思想」「文化遺産・芸術」「日本宗教・文化」「法華仏教」に分かれ、興味に沿って専攻分野の学びを深めることができる。学生のための学びやすさを考えた改編だろう。

「定員割れはしているのですが、逆に仏教学部を第一志望にして入学する人が増えている。学内の志望順位は3番目、4番目。他大学との関連もありますが、他大学や他学部志望の学生の入学が減り、元々仏教学部を志望する学生が増えています。去年、今年に入学した学生は、特に意識が高いと先生方からも聞いています」

 僧侶を目指す者の多くが選ぶのが宗学科「法華仏教コース」だ。宗祖日蓮聖人の思想や行動をたどり、法華経の教えを受け継ぐ担い手を育成している。

 僧侶を目指す学生が全単位を修得することを目標とする僧階講座(全50単位)は、科目等履修生の制度により他大生にも学ぶ機会を提供している。修得単位数や学部学科、他大生などの所属等により条件は異なるが、日蓮宗僧侶となるための信行道場の入場資格や叙任規程に基づいた僧階を受けることができるようになっている。これにより、他大に通う宗門子弟にも僧侶となる道が開かれている。

 この僧階講座は、同大の歴史ある僧侶育成の積み重ねが生んだ学びの結晶だ。シラバスには「日蓮聖人伝」や「開目抄講義」「観心本尊抄講義」「法華経概論」など伝統的な教学を学ぶものや、「法要実習」「宗教法人法」「現代宗教研究」といった僧侶、宗教者に関する科目が並ぶ。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/25
旧統一教会訴訟 念書「無効」と判断 最高裁、高裁へ差し戻し 不当寄付勧誘防止法に言及

 
 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の元信者女性が違法な勧誘によって献金を支払ったとして損害賠償を求めた裁判で最高裁第一小法廷は11日、返金を求める訴訟は起こさないとする元信者の念書が「公序良俗に反し、無効」であると判断した。教団への献金について最高裁が判断を示すのは初めてで、同種の訴訟に影響を与えるとみられる。

 裁判官5人全員一致の意見だった。最高裁は、不起訴合意に関する念書の有効性について経緯や趣旨、目的、対象となる権利など、「当事者が被る不利益の程度その他諸般の事情を総合考慮して決すべき」との判断枠組みを示し、教団勝訴とした一審、二審判決を破棄して審理を東京高裁に差し戻した。

 「念書」について、裁判所に訴えないことを明記していることに対し「裁判を受ける権利を制約するもの」とし、「その有効性は慎重に判断すべき」と判示している。

 元信者は平成17年(2005)以降、1億円を超える献金を行い、平成20年(2008)以降は所有する土地を売却してまで献金を続けた。残った資産も信徒会に預けた上で献金し、信徒会から生活費を交付される形となっており、生活に大きな影響がある「このような献金の態様は異例のもの」とした。

 元信者は平成27年(2015)8月、長女に高額献金した事実を告白。旧統一教会側は同年11月、不起訴合意の念書を作成。元信者は86歳で、半年後にアルツハイマー型認知症と診断された。判決では、元信者は旧統一教会の「心理的な影響の下」にあり、「当否を冷静に判断することが困難な状態にあった」とし、「一方的に不利益を与えるもの」として念書を無効と判断した。

 また安倍首相狙撃事件後に提起され、2023年1月に施行された不当寄附勧誘防止法(法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律)の第3条に言及したうえで、寄附者への十分な配慮が求められるべきだとした。

 判決に対して、教団側は「本件判決は,私的自治の原則や、原審による事実認定の尊重などの、当然遵守すべき法理を曲げてまで下した『結論先にありき』の判断」と批判する見解を発表している。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/25
神戸市佛文化講座 神田神父、震災30年を語る 諸宗教協力が信仰深める トレードマーク タオルも健在


タオルにまつわる秘話も明かした神田神父 神戸市佛教連合会(善本秀樹会長)は17日、中央区の浄土真宗本願寺派神戸別院で第110回仏教文化講座を開催した。講師は阪神淡路大震災において被災者支援に尽力したカトリック神父の神田裕氏(兵庫県三田市・三田教会)。当時、協働した僧侶たちも含め、約100人が聴講した。

 神田神父はトレードマークの首掛けタオル姿で講演。阪神淡路大震災直後から、当時神田神父が勤めていたたかとり教会(長田区)は大きな被害を受けながらも、ボランティアの拠点となった。タオル姿で働く神田神父の姿はテレビでも放映されたが、ある日、遠方からタオルの支援物資が届いた。「これが自分にとって一番印象深い物資。手紙に、ちゃんと(タオルを)洗ってますか?って書いてあった。ああ、見ていてくれる人がいるんだなって励まされて」と回想し、それからずっと輪袈裟のように着けていると話した。ちなみに1997年の全日本仏教徒会議兵庫大会にもこのタオル姿で登壇している。

 神田神父の両親は真面目なカトリック信徒。「カトリックの中に育った私は、震災があった36歳の時まで、仏教のお坊さんや神道の宮司さんにはほぼ出会ったことがなかった」という。ボランティア活動の中で僧侶や宮司、プロテスタントの牧師たちと協働し、お寺や神社や教会を訪れ食事して酒を飲んで話をして交流が深まっていった。「仲良くなればなるほど、自分の気持ちの中でカトリックに向き合うことができた」とし、僧侶も宮司も牧師もそれぞれの信仰生活と社会活動の中で輝いている姿を見たことが信仰を深めることに繋がったと、他を排斥しない諸宗教協力の精神的な果実を語った。

 毎年1月17日にたかとり教会で震災慰霊追悼式が営まれており、全日本仏教青年会も参加している。神田神父は、震災から3年後の1998年に発表した「宗教者による神戸メッセージ」を読み上げ、「最後の一人が震災から立ち直るまで地震は終わらない」という思いを告白。震災30年に当たる来年の追悼式でも再びこのメッセージを発したいとした。

2024/7/25
全葬連 石井時明会長インタビュー 全葬連が要望する法制化とは 届出制で葬儀業界全体の資質向上


石井時明(いしい・ときあき)/1956年生まれ。富士見斎場株式会社会長(神奈川県秦野市)。高校在学中、父の急逝により創業間もないさがみ葬儀社(当時)を継ぐ。2018年から全葬連会長 今年5月末の理事会で再任され4期目に入った全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の石井時明会長(68)。「責任と使命感」を強調し、業界全体の健全化と消費者保護の立場から進めている法制化への意欲を示した。10年以上にわたり法制化を要請してきた意図についてインタビューした。

 全葬連が主張している法制化の内容は、2点(別掲)。事業者の届出制と講習を受講した管理者の設置である。新型コロナ禍を例に説明する。「コロナ禍では感染症のリスクを避けるため経済産業省と厚生労働省がガイドラインを作成し、われわれはそれに添って、例えば納体袋を用いるなどして対応してきた。葬儀業界は約5~6千社あるとされていて、実は誰も実数を把握できていない。全葬連1200社、互助会200社、農協400社。これで約1800社。5千社とした場合、残りの3200社にはガイドラインの通知が届かない。その結果、納体袋を使っていなかったり、普通に参列者を入れているケースがありました」

 全葬連はガイドラインの情報をキャッチすると同時に加盟社に通知。しかし組織に入っていない事業者はよほどアンテナを張っていないと気づかない。担当省庁が事業者に連絡しようにも名簿すらない。一方で法制化には別の背景がある。

 「わかり易く言うと、病院で亡くなるまでは医師法(死亡診断書等)がある。そして○月○日○時にA火葬場で火葬にしますというのは墓埋法(火葬・埋葬の許可等)。病院から火葬場までの間、ご遺体の保全や管理に関する法律はありません。われわれに関係するのは24時間以内の火葬・埋葬を禁止する墓埋法の規定だけです」

 死亡から火葬・埋葬までの間に葬儀がある。この間、遺体をどのように扱うのかという法的な規定はない。石井会長によると、川崎市では廃工場の中に棺が並べられていたり、大阪では民泊施設に棺が預けられていた。愛知では葬儀社が棺(2体)をしばらく放置していた。「病院の手を離れて火葬されるまではモノ扱い」となるため、事件とはならない。こうした死者(遺体)への尊厳を欠いた行為が相次いでいることに石井会長は嘆息する。

 以前は、いったん自宅に安置することもあったが、それもなくなってきた。石井会長の会社では安置室で管理する。「遺族の方がいつ顔を見に来られてもいいようにしています。地元で密着して仕事をしていますからしっかりと対応しています」。他方、ネットを介すと安置場所が遺族の自宅から遠く離れていたり、明かされないケースもある。

  意外なのは遺体の取り違え。「かなり気をつけているはずですが、男性と女性を取り違えたり、火葬した後に、お父さんはこっちにいるとか…。現在の年間死者数が158万人。2040年が167万人のピークを迎え、多死社会は続く。そうするとさらに増えかねません」

 葬儀費用をめぐるトラブルも絶えない。消費者生活センターが発表した事例は、広告では「家族葬約40万円」としながらも、担当者からオプションが次々に追加され合計額が300万円近くに上ったというものだ。石井会長は「毎年のことなら知識も積み重なり対応できます。しかし葬儀は何十年に1回です。親の葬儀が初めてという人は多い」と言い、だからこそ消費者保護の意味でも法制化は必要だと訴える。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/18
広島でAI倫理国際会議 ローマに応答 平和利用推進 WCRP日本委杉谷義純会長ら署名


法律家、科学者や企業重役なども参加した会議 国際会議「平和のためのAI倫理―ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」が8~10日、広島市の広島国際会議場で開催され、宣言を採択した。急速に進むAI技術の野放図な使用により人間の尊厳や民主主義が破壊され、時には軍事技術、核兵器にまで悪用されることを危惧し、倫理観を持った平和利用を促進するもの。世界中の宗教者や法律家、IT企業重役など約150人が直接参加した(このほかオンライン参加約50人)。

 2020年2月、ローマ教皇庁生命アカデミーから発された「AI倫理のためのローマからの呼びかけ」(ローマコール)。これに対し23年にはイスラムのアブダビ平和フォーラム、ユダヤ教のイスラエル首席ラビ委員会が同意署名をしている。この国際会議は「アブラハムの宗教」以外の宗教による応答として世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会がホスト役を務め、4団体の共催として開催された。

 9日の開会式で教皇庁のヴィンチェンツォ・パリア大司教は「広島こそ、テクノロジーが最も暴力的で破壊的な顔を見せた場所です。ここ広島で人類は初めて、技術が人類を破壊する力になることを知り、その悪の面に触れた」と原子爆弾の暴力性を指摘。そして、宗教者たちの知性は破壊ではなく創造のために科学技術を導くと論じ、アルゴリズム(演算)とエシックス(倫理)を複合させた「アルゴエシックス」が求められるとした。岸田文雄首相もビデオメッセージを寄せた。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/18
宗門系大学サバイバル 大正大学編 神達知純学長に聞く 実習は各宗派本山とも連携


 天台宗・真言宗豊山派・真言宗智山派・浄土宗の設立4宗派と時宗が運営する大正大学(東京都豊島区)は、世界でもまれな仏教総合大学である。2年後には創立100周年を迎える。宗門子弟教育の現状や今後の展望を神達知純学長(天台宗)に聞いた。

 仏教学部仏教学科の全学生数(約400人)のうち、寺院子弟が6割ほどを占める。かつては埼玉校舎にあった道心寮で「同じ釜のメシを食いながら」各宗派の僧堂教育が行われていた。現在はすべて巣鴨キャンパスで実施されている。「大正大学は複数宗派による大学なので宗派によって僧侶養成が異なるところがあります。なので大正大学として一括りにして答えるのは難しいのです」と神達学長。

 カギとなるのは宗派や本山との連携だという。「各宗派のカリキュラムを見ていくと、〈座学×実習〉という形は共通しており、これを崩してはいけない。なぜか。宗門子弟教育は、単に知識と技能を身につけるだけのものではなく、ましてや資格取得のためだけ のものでもない。人間性を涵養する教育であるべきだと私は思っています。将来、慕われ、敬われ、人の思いに寄り添う僧侶であってほしい――そう願って僧侶教育をしてきています」

 〈座学×実習〉は守るべき伝統であり、「慕われ、敬われ、人に寄り添う僧侶であって欲しい」という思い は、仏教界の願いでもある。〈座学×実習〉はどのようになされているのか。「座学は、学生が教室で教員から歴史や教学などを学ぶもの。その先に法儀研究があります。巣鴨キャンパスの13号館に各宗派の勤行室があり1~2年生が受講する。これ以外にも本山等での学外実習が各宗派で行われています。2~3年時ですが、それが宗派の(僧階に必要な)加行とつながっている。こうした実践的な僧侶教育は大正大の特色だろうと思います」

 実習は大学のみで完結するのではなく、宗派本山の加行と連動しているとの指摘である。神達学長は他大学で学んだため、比叡山の行院に入って僧侶の基本を修習した。「私は学生時代、いきなり行院に入りました。当時大正大には道心寮があり、大正大生たちは作法もきちんとしている。そして団結力がありました。かといって私のような学外生を受け入れてくれる。いい仲間に恵まれました」

 一方で、保護者(住職世代)から、早く資格をとか、お寺のためになる勉強をといった即戦力を期待する声がしばしばあがる。これについて神達学長は「お寺の事情ですぐに入らなければならないケースはやむを得ないでしょうが、若い時に人生経験を積み重ねることで人間としての深みが増していくと思うのです。一見無駄と思われるような経験が人生を豊かにする。学ぶ意欲を芽生えさせるのは大学の役割でもある」と大学生活の意義を強調する。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/18

新宗連や日宗連 理事長人事決まる


新宗連 石倉理事長を再任


(公財)新日本宗教団体連合会(新宗連)は6月26日、東京・代々木の新宗連会館でオンラインを併用して評議員会と理事会を開催。任期(2年)満了に伴う役員改選を行い、石倉寿一氏(大慧會教団会長)が理事長に再任された。

 また常務理事の宮本惠司(妙智會教団法嗣)江口陽一(大法輪台意光妙教会理事長)庭野光祥(立正佼成会次代会長)力久道臣(善隣教教主)4氏も再任された。

 石倉理事長は1960年4月生まれ。大阪・堺市の大慧會教団の第3代会長。



日宗連理事長に石倉氏
 
 (公財)日本宗教連盟(日宗連)は6月28日、書面表決による理事会で新理事長に新宗連の石倉寿一理事長を選任した。

 日宗連理事長は、傘下の教派神道連合会(教派連)、全日本仏教会(全日仏)、日本キリスト教連合会(日キ連)、神社本庁、新日本宗教団体連合会(新宗連)5団体代表が1年交替で就任。

2024/7/18

本願寺派「宗門の明日を考える会」 大谷派の宗憲改正に学ぶ 超法規的存在を認めず


 
宗教組織の諸問題を考察した社会学者の宮部氏 浄土真宗本願寺派の有志団体「宗門の明日を考える会」(武田達城・梯良彦共同代表)の研修会「真宗大谷派の『宗憲』改正の願いに学ぶ」が10日、大阪市中央区の本願寺津村別院で開かれた。立命館アジア太平洋大学助教の宮部峻(たかし)氏(社会学者)が、1981年の大谷派宗憲改正を事例に宗教組織の諸問題を考察した。

 多くの仏教教団が都市化と共に、教団の基盤の見直しと都市開教の必要性から組織改革を迫られたと指摘。「大谷派の改革運動の大きな特徴は信仰運動と組織改革運動が一体になって行われた点にある」とし、「家」制度によって成り立っている教団構造から同朋会運動などによって教学に基づいた組織の近代化を志向したと述べた。

 「改革派から見た大谷派の法制度的課題」として、1929年に制定された宗憲の問題を分析。聖なる面として教義解釈をめぐる条項、俗なる面として組織運営をめぐる事項が規定されていることで信仰共同体と行政組織の葛藤が生じるとし、それが顕在化したのが1981年の宗憲改正に繋がる事態だったと位置付けた。

 宗教的権威である法主の地位に関する教学上の見解の違いだけでなく、宗教法人の代表上の地位をめぐる論争が勃発。「法律上の地位は教学論争では解決できない」とした。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/11

臨済宗妙心寺派 フランス人僧侶が垂示式



太心住職(右から3人目)と内局部長、宿院住職 フランス唯一の臨済宗妙心寺派寺院である正法寺の太心宗明住職(フランス名クリストフ・セルジュ・フィリップ)が1日、京都市右京区の大本山妙心寺で「垂示式」を挙行した。妙心寺派で外国籍僧侶が垂示式を行い正式に前堂職となるのは極めて珍しく、フランス人としては初。

 太心住職は1968年生まれ。若い頃から禅に関心が深く、兵庫県神戸市の祥福寺僧堂で10年ほど修行をしたこともある。フランスの正法寺はリヨンから南に70キロほどのサン・ローラン・ドゥ・パプ村に所在し、2004年に妙心寺派寺院として包括関係を結んでいる。太心住職は2020年から沙弥として住職を務めていた。日本の場合、前堂以上の法階がなければ住職にはなれないが、「海外寺院の場合はその辺りは柔軟に対応していた」と宗務本所担当者。宗務本所から垂示式のすすめを受けた太心住職は、本格的に住職となって弟子を育てたいとの熱望を伝え、垂示式に至った。

 太心住職は垂示式における問答や、修行中のエピソードや禅の哲学を巧みに織り交ぜた法話もすべて日本語で実施し、日本人禅僧と同じ行程を完了。無事前堂職に任命された。筆記レポートも日本語で提出した。ちなみに正法寺には現在、日本人スタッフはおらず、現地人により運営されているという。

 垂示式後に各部長から激励を受けた太心住職は、フランスでの臨済禅の受容はまだまだこれからといった現況を話しつつ、寺門興隆への情熱をみなぎらせた。

2024/7/11

第41回日韓・韓日仏教交流大会 増上寺で世界平和祈願 「一即多、多即一」 平和共存へ韓国会長説示

 
内陣で世界平和祈願法要に臨む日韓・韓日仏教の役職者 第41回日韓・韓日仏教文化交流大会が6月27日、東京・芝公園の浄土宗大本山増上寺で開かれた。韓国側の韓日仏教文化交流協議会(会長=眞愚・曹渓宗総務院長)から約100人が参加し、日本側の日韓仏教交流協議会(会長=藤田隆乗・真言宗智山派川崎大師平間寺貫首)から約60人が参じた。世界平和祈願法要や「激変する世界秩序と仏教の可能性」をテーマにした学術会議を通じて、両国親善と共に世界の平和を願った。

 同日午前、増上寺大本堂で小沢憲珠法主を導師に世界平和祈願法要が営まれた。両国の役職者は内陣に参座し、会員らは外陣で法要に臨んだ。日本を代表して柴田哲彦副会長(浄土宗大本山鎌倉光明寺法主)が表白文を読み上げ、「日韓・韓日の文化交流に勤しみ、以て真の世界平和実現と人類和合共生を祈願し奉る」と奏上した。

 法要後、両国会長が挨拶。日本の藤田会長は韓国の訪問団を歓迎しつつ、今日の世界が直面している紛争や頻発する自然災害に言及し、「現代的苦境が生起している今、私たち宗教者は人々の心に寄り添う力を養い、いかにして解決方法を見出すのか、その術を模索することが大きな課題」と述べ、仏教者の取り組みを促した。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/11
東京都仏教連合会 火葬料金値上げ問題を研修 公共性より利益優先懸念


東京博善の火葬料問題を論じた濵名会長 東京都仏教連合会(東仏)は6月27日に台東区の聖観音宗総本山浅草寺(田中昭德貫首=東仏会長)で総会を開き、研修会で東京都葬祭業協同組合の濵名雅一理事長(㈱オリハラ=墨田区)が、都内の火葬場を運営する㈱東京博善の火葬料金値上げ問題を取り上げた。公共性の高い事業を担いながら利益を追求する同社の姿勢を問題視した。

 東京23区内には9つの火葬場があり㈱東京博善(港区)は6場を所有する。その他は都営の瑞江葬儀所(江戸川区)、公営の臨海斎場(大田区)、民営の戸田葬祭場(板橋区)。東京博善と親会社の㈱廣済堂(港区)は、2021年1月に火葬料金を5万9千円から7万5千円に値上げし、翌2022年6月からは燃料サーチャージを導入して料金に上乗せ。その後2カ月毎に燃料サーチャージを見直ししては値上げを行ってきた。今年6月から燃料サーチャージを取りやめ一律9万円とする料金改定を実施した。火葬は公共性が高く、都以外では基本的に自治体が火葬場を運営し、住民は無料から数千円程度で火葬できる。

 濵名氏は23区内の火葬の75%を東京博善が占める状況下で、業界関係者への相談もなく、都民生活に負担を及ぼす同社の運営に「独占状態のなかで経済的な追求のもとに制限なく値上げを繰り返している」と批判。東京都や23区の各自治体に「是正を求める申し入れ」を行っている一方で、「墓地埋葬法」では、墓地や火葬場を「許可する権限はあるが罰する権限がない」と述べ、法律の不備も指摘した。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/11
宗門系大学サバイバル 僧侶養成と少子化の狭間で 龍谷大学編 入澤崇学長に聞く 総合大学ならではの全人的育成


学生がプレゼントしてくれたアクリルの似顔絵を持つ入澤学長 浄土真宗本願寺派の宗門校である龍谷大学(本部=京都市伏見区)は3つのキャンパスに10の学部を擁し、約2万人の学生が学ぶ。近年は「仏教SDGs」を掲げ、地球規模の問題を仏教の視点から解決するための全人的な教育にも取り組む。その原点は1639年に西本願寺の僧侶養成のために設立された「学寮」だ。現在でも多くの本願寺派僧侶はここで学んでいるが、入澤崇学長は「子弟教育という面では危機的な状況」と語る。

 「寺の子ども自身が自分の人生をどういう風に見ているか、今どういう気持ちでいるか、を考えなければならないと思います。私も寺院子弟ですが、若い頃はいかに寺を出るかということしか考えていなかった。結果として住職をやっていますが。今はお寺の子がすんなり真宗学科、仏教学科に入っている状況ではない」と見る。真宗学科の学生は寺院子弟が半分を切っているといい、打開するためには学科や専科で子弟教育や学問のあり方を問い直す必要があるとする。「寺院子弟が真宗学や仏教学に背を向けているのはどうしてか。私はずばり言って、魅力がないからだと思うのです」と厳しく分析する。

 原点を見つめる

 「僧侶になるということは仏教者として生きることですから、仏教の根本に向き合い原点を見つめることが大切」であり、ただお寺の跡を継ぐために教師資格を取り、門徒だけを相手に細々とやっていく僧侶になるだけならその人の未来も危うく、仏教界の先はないと憂慮。「お釈迦さまの時代に檀家がありましたか?命をかけて伝道に志す人たちが生きていた。私はもう一度、僧侶はその志を持たなければならないと思う」

 では、どのようなことが必要か。「龍大の場合だと、寺院子弟は政策学部や国際学部などまず自分の関心領域に行って、卒業後に大学院で真宗学や仏教学を学ぶ人、あるいは本願寺派の中央仏教学院に行ったりする人がいる。そうした、他の領域を学んでから仏教の世界に入る人をもっと増やしていきたい。社会に目を向けた人が宗門の中に入っていき、伝統教学に欠けているものを補っていく。私は伝統仏教は社会性を見失っていると思うのです」。伝統的な僧侶養成のカリキュラムは大切だが、そこにもうひと工夫の実践的、学際的な学びが必要だという考えだ。

 視点を逆にすれば、それは真宗学・仏教学を学ぶ人が他の領域に目を向ける必要性でもある。龍大には、他大学に類例のない「実践真宗学研究科」が2009年に設置され、真宗教義に基づく社会実践を研究しているが、入澤学長はむしろ真宗学・仏教学と実践との交叉は「恥ずかしながらうちの大学の遅れている部分かと思う」と意外な悩みを吐露する。

 コロナ禍の際、教職員や学生が協力して困窮する学生に食料配布の支援をしたことがあった。「その時に手伝ってくれた実践真宗学の院生がいたのですが、『こういうことを自分はやりたかったんです』と切々と訴えられました。理論のほうが中心でなかなか実践ができていないというのですね。そういう学生のニーズを捉えきれていない。コロナ禍では実践真宗学こそが立ち上がることを期待したのですが」。とはいうものの「しかしそこで学んだ学生は少数でも非常に優秀。その人たちと話をすると宗門の未来は明るいなと思います」と微笑む。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/4
曹洞宗宗議会 ホテル事業に3社名乗り 賃貸借契約の方向で交渉 能登支援 半損以上の寺院に250万円


交渉の条件についても説明した服部総長 曹洞宗の第144回通常宗議会(浅川信隆議長)が6月24~28日の5日間、東京・芝の檀信徒会館で開かれ、ホテル事業に名乗りを上げた企業3社が発表された。服部秀世宗務総長は交渉の条件として、宗務庁が入るフロアを契約対象としないことなどを盛り込むとし、「候補になる運営業者を1社に絞れれば、契約締結を見据えて交渉を進めていく」と述べた。

 候補となったのは、ホテル運営・リゾート開発のリソルホールディングス(東京・西新宿)、貸会議室大手でホテル運営も行うティーケーピー(東京・市ヶ谷)、檀信徒会館運営委員会専門部会にも加わっていたホテル再生を手掛けるシャンテ(岡山県矢掛町)の3社。大和証券を通じて決まった。ホテルの内覧会を実施するなど交渉を始めていて、企業側の質問に応じる協議会には有道会・總和会の両幹事長らも出席した。

服部総長は契約交渉の条件として、▽現在のホテル職員の雇用を継続する▽宗務庁や研修道場が入るフロアは契約の対象外とし、宗議会などに使う会議室を優先的に利用できる▽東京グランドホテルの名称を保持する▽建物のランニングコストは使用面積に応じて案分する―の4点を企業側に提示した。

 契約には賃貸と業務委託、事業譲渡のいずれかが考えられるとした上で、服部総長は賃貸の方向性で進めると主張。貸与先の企業がホテル事業を担うと説明し、「経過は逐一、議員と情報を共有しながら交渉に臨みたい」と話した。候補の3社が提案を行うプレゼンテーションが7月9日に予定されている。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/4
真言宗豊山派 新総長に川田興聖氏 今月5日に新内局発足


川田新総長 真言宗豊山派(鈴木常英宗務総長)の次期宗務 総長候補者を選出する第163次宗会臨時会(佐藤眞隆議長)が6月28日、東京都文京区の宗務所で開かれ、川田興聖氏(菩提院結衆、茨城県桜川市・雨引山楽法寺住職)を選出した。川田氏は7月5日に就任し、新内局を発足させる。

 岩脇彰信総務部長が総長候補選出の議案第一号の補足説明として「現内局の意思を継続発展させ、真言宗豊山派を輝ける宗団に導くことができる素晴らしい候補者を選出いただきたい」と要請した。議案は全宗会議員から成る特別委員会(平手徳彦委員長/愛知・安楽寺)に付託されて審議。その後、本会議が再開され、平手委員長が「川田興聖氏が全員一致で選出された」と報告した。

 青木博芳議員(埼玉三号・金仙寺)が推薦の演説を行い、大きな転換期を迎える現状にあって「宗政の先頭に立って重責を担われる宗務総長には学徳兼備にして識見豊かなる川田興聖僧正が最適任だと存じます」と支持。宗団の充実した基盤作りと活性化、災害対策や危機管理、教化宗団として布教教化の推進、子弟教育の充実と後継者育成、宗派財政の安定確立、総本山長谷寺の護持整備等の推進等々の課題をあげたうえで「川田総長によって構成される内局であれば、必ずや随時適正な決断と果敢な行動力で推進されるものと確信します。宗会をあげて支援協力する」と期待感を示した。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/4
日本仏教看護・ビハーラ学会 設立発起人が20年を振り返る ビハーラはどこでも可能


田宮氏㊨と藤腹氏。左は司会の郷堀ヨゼフ氏 日本仏教看護・ビハーラ学会は6月22・23日に京都市の龍谷大学大宮学舎で第20回年次大会を開催した。周年大会ということでテーマは「ビハーラの原点に返って未来へ」。初日には設立時の発起人代表である田宮仁氏がこれまでを振り返る講演を行い、同じく発起人代表の藤腹明子氏と未来を展望する対談をした。

 田宮氏は1981年に「浄土教思想にみる末期患者ケア」と題した発表を日本社会福祉学会で行った。実はこの頃は仏教界は看取りの問題にはほとんど関心を示していなかったと回顧。「仏教系のある学会でビハーラケアについて発表しようとしたら『うちには馴染まない』と拒否されたので、当時は何でもありだった日本社会福祉学会で発表した」と打ち明けた。その翌年に看護師だった藤腹氏と出会い、以後、二人三脚で仏教看護やビハーラの啓蒙に邁進。85年に「ビハーラ」の概念を提唱し、2004年に仏教看護・ビハーラ学会を設立。その後、日本仏教看護・ビハーラ学会と名前を変えて今に至る。

 田宮氏は仏教看護とビハーラの関係は並列的なものではないと改めて整理。仏教看護とは仏教を元にした看護論であり、その中の一つとしてビハーラという「看取りの場」でのケア(ビハーラケア)があるとした。「それはビハーラ病棟でなければやれない代物ではなく、どこででもやれるものだ」とし、一般病院や自宅での看取りへのビハーラケアの応用を示唆した。(続きは紙面でご覧ください)

2024/7/4
善通寺派臨宗 上原雅明新総長を承認 賛否同数 議長が判断


所信表明する上原総長 真言宗善通寺派の第123次・124次臨時宗会(生駒琢一議長)が6月27日午後、香川県善通寺市の総本山善通寺内宗務庁に招集された。菅智潤管長(善通寺法主)は、2期目の任期(4年間)の半ばで5月15日に宗務総長(善通寺執行長)を辞任した齋藤弘道氏(68)の後任に、上原雅明氏(68・京都市山科区小野御霊町・大乗院住職)を指名。採決の結果、全議員13人中賛成7・反対6となり、過半数による承認となった。任期は前任者の残任期間で令和8年3月まで。

 内局総辞職による新総長承認の議案は第123次臨宗で審議され、菅管長が上原氏の推薦理由を説明。平成25年から善通寺責任役員を務めるなどした経験と幼児教育分野での実績を挙げた上で、「いろいろと困難な状態にある善通寺と善通寺派を導いていただけると期待している」と紹介した。

 1度目の採決では賛成5・反対6・保留1で、賛否共に過半数に至らず。議場に緊張が走ったが、報道陣退席の場での協議に入り賛否同数に。議事が再開され、最後の1票を持つ議長の賛成で承認となった。議長判断にまで賛否が拮抗するのは極めて異例という。

 上原総長は直ちに組局。久保田法修総務部長(53)と長谷川恵淳教学部長(49)を再任し、新たに安藤誠啓財務部長(52)を加えた。安藤財務部長は引き続き、善通寺の広報・信徒主任も兼ねる。(続きは紙面でご覧ください)

2024/6/27
全日本仏教会 新理事長に池田行信氏(本願寺派) 第36期執行部 取り組み課題多く 事務総長は和田学英氏(曹洞宗)


池田理事長和田事務総長 (公財)全日本仏教会(全日仏)は19日、京都市内で理事会を開き、第36期理事長に浄土真宗本願寺派前総長の池田行信氏(71)を選出した。事務総長には全日仏元財務部長で曹洞宗の和田学英氏(58)が就任した。任期は2年。新執行部は、能登半島復興のほか、来年9月に開催される第47回全日本仏教徒会議大阪大会(大阪府佛教会主催)や来年10月までに行われる衆院選への対応が迫られる。また前期答申に対する具体化も課題となりそうだ。

 全日仏は世界仏教徒日本連盟(WFB日本センター)と仏教連合会が昭和29年(1954)6月25日に合同して設立された。「全日本仏教会」の名付け親は友松円諦とされる。3年後の昭和32年(1957)8月23日に財団法人として認可された。今年は設立から70周年にあたるが、全日仏は30周年以降、財団法人化年を軸に周年行事を企画・実施している。

 その財団創立70周年は3年後の2027年となるが、翌年にはWFB日本大会を受け入れる可能性が高い。2月の理事会で「法人創立周年記念事業計画基本規程」および「法人創立70周年記念事業実行委員会内規」がそれぞれ承認されており、今執行部によって70周年事業が具体化されるとみられる。

 前期(第35期)答申では、大蔵経運営事業支援を「大蔵経事業」と位置付けて、公益目的事業として推進するべきとしており、事業体制の構築も必要となる。

 さらに第33期で諮問された「死刑廃止」について、答申では「仏教の教義と死刑は相いれないことは明白である」としつつ、犯罪被害者への支援にも取り組むべきだとした。続く第34期答申でも犯罪被害者支援に言及。さらに第35期では諮問項目に「死刑及び犯罪被害者支援」と明記。犯罪被害者支援についても今執行部の取り組み課題となる。

 【第36期理事長・事務総長略歴】
 池田行信(いけだ・ぎょうしん)理事長/昭和28年(1953)5月生まれ。2006年から2年間(第27期)全日仏事務総長を務め、財団創立50周年事業を推進した。2005年4月から本願寺派宗会議員。現在5期目。2023年5月31日から今年3月27日まで本願寺派総長。自坊は栃木県那珂川町の慈眼寺。

 和田学英(わだ・がくえい)事務総長/昭和40年(1965)10月生まれ。曹洞宗からの出向として2016年全日仏財務部長(第32期)、2019年同社会・人権部長(第33期)を歴任。自坊は神奈川県川崎市の大乘院。


 4宗派体制と淵源
 
 今期も慣例によって負担金の大きい曹洞宗・本願寺派・大谷派・浄土宗の上位4宗派体制が維持された。事務総局は加盟団体のうち上位10宗派からの出向だが(ほかに職員2名)、4宗派以外から理事長・事務総長は選出されていない。定款では「理事長は、理事会の決議によって理事の中から選定する」と規定しているのみで宗派を特定してはいない。近年、加盟団体の中からこの体制に風穴を開けようとする動きがあるが、進展していない。会長は10宗派に広げられている。

 昨年秋、『岩波仏教辞典第3版』に「全日本仏教会」の項目が設けられた。それによると明治45年(1912)に設立された仏教各宗派懇話会が後の仏教連合会などとなり、現在の全日仏だとしている。他方、全日仏HPでは「1900(明治33)年、国家の宗教統制に反対して結成された『仏教懇話会』に淵源を持ち―」としている。正しいのは辞典か全日仏か。近代仏教史研究の進展もあり、全日仏として主体的な歴史検証が迫られそうだ。

2024/6/27
WCRP日本委 新会長に杉谷義純氏 庭野氏退任「印象深いのは小泉首相参加の第8回京都大会」


握手を交わす新旧の会長(公財)世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は19日、京都市の立正佼成会京都教会で第28回評議員会を開催した。退任の意向を示していた庭野日鑛会長が後任に杉谷義純氏を推薦、三宅光雄評議員も同様に杉谷氏を推し、満場一致で杉谷氏の就任に同意。「つなぎとしてしばらくお手伝いを務めさせていただく」と受諾した。会長は評議員会議長を兼ねる。任期は4年。

 評議員会終了後に庭野前会長、杉谷新会長、戸松義晴理事長、篠原祥哲事務局長が記者会見に臨んだ。庭野前会長(立正佼成会会長)は「杉谷先生は豊かな見識と判断力をお持ちで、理事会や評議員会の運営でも常に中心的な働きをしている。国際的な諸宗教対話でもリーダーシップを発揮しており、杉谷先生ほど適任な方はない」と評価。杉谷会長・戸松理事長の新体制で日本委が再出発することを喜び、「諸宗教者の活動で思いやりの溢れる社会、調和のある世界が実現することを心から願っています」と挨拶した。

 杉谷新会長(天台宗妙法院門跡門主)は「庭野先生のリーダーシップがあったからこそ私も務めさせていただけた」と謝意を示した。現代の宗教界には「(仏や神の)正しい教えを受け止める人の考えが本当に正しいか、という問題が横たわっている」とし、教えの受け止め方に常に疑問を持ち、本当にこれでいいのかと考え続けなければ「場合によっては誤った解釈を説き、実践してしまうかもしれない」。これが戦争などになることを危惧した上で、自己を絶対視するのではなく、他者から学び反省してさまざまな問題に取り組んでいく諸宗教対話の必要性を呼びかけた。(続きは紙面でご覧ください)