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2025/10/17
曹洞宗臨宗 ホテル閉業 継続審査 再開発計画は足踏み状態に 補正予算案、審査未了で廃案
演説する服部総長 曹洞宗の第148回臨時宗議会が8・9の両日、東京・芝の檀信徒会館で開かれた。服部秀世宗務総長が閉業の方針を示している東京グランドホテルに関し、営業終了を2027年6月末で確定しようとする議案が提出されたが、説明不十分などとして継続審査となった。また、今会の運営費などに充てる補正予算案が審査未了で廃案となった。内局が提出した全議案が賛同を得られず、再開発計画は足踏み状態となった。
服部秀世宗務総長は2月の宗議会で東京グランドホテルを閉業する意向を示し、営業終了の時期については2027年3月末をめどとしていたが、毎年6月に開催する宗議会の議場確保や再開発の想定スケジュールを考慮し、同年6月末に引き延ばした。
営業終了の確定を求める議案の一部に、ソートービル解体工事の開始時期が記載されていたことが問題視されるなど特別委員会は紛糾。予算委員会では、再開発のコンサルティングを担う企業向けに宗務庁が用意した募集要項に、「既定事項」としてホテル廃業や宿泊施設建設など未決定の事柄が盛り込まれていたことが判明し、批判が集中した。午後10時になっても決着はつかず、審議はいずれも翌日に持ち越された。
特別委員会の小島𣳾道委員長はホテルの営業終了は全員一致で認められたが、「議案と説明に対しては多くの疑義と懸念が示された」と報告。残務整理に関する計画を出していないことも問題に挙げた。さらに「宗議会議員や寺院、檀信徒など関係者に丁寧な経過説明を行い、理解を得る努力が必要だ」と指摘。その上で、「審議するには十全を期せない」として継続審査を求めた。
予算委員会の浅川信隆委員長は「今会の緊急開催について十分な説明がなされていない」などとして審査未了となったと報告。今会の運営費約1500万円を含む1700万円を増額する補正予算案は廃案となった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/17
京都・総本山智積院 吉田宏晢化主が晋山 新義教学の研鑽と興隆誓う
秋の陽光を浴びながら、輿に乗って金堂に向かう吉田化主 真言宗智山派総本山智積院(京都市東山区)で8日、吉田宏晢(こうせき)第73世化主(同派管長)の晋山傳燈奉告法要が勤修され、宗内外の要職者や関係者ら409人が参加した。「法流相承之儀」を終えた吉田化主(90)は、本坊大玄関から輿に乗って、集議・菩提院結衆、役職者ら宗内高僧約50人と境内参道を進列。金堂に入り、本尊大日如来の宝前で、弘法大師から興教大師、玄宥僧正へと受け継がれてきた新義教学の研鑽と仏法興隆を誓う傳燈奉告文を奉読した。
式典では各山会を代表して、真言宗長者の長谷部真道・高野山真言宗総本山金剛峯寺座主(同宗管長)が祝辞。自身と同世代であることから、「猊下は戦争の悲惨を身をもって知っている最後の世代」と語りかけ、「混迷の極」にある世界情勢に言及した上で、「戦争と平和、これは人類の永遠のテーマだが、文明が進化するほど、その規模が大きくなり、命の存在は軽くなる」として、仏教学・密教学界に「輝かしい足跡」を印す吉田化主に「真言密教の教学を世界に向けて」発信してほしいと要請した。(続きは紙面をご覧ください)
2025/10/17
公明党の政権離脱を読む 兆候は9月の参院選総括あたり?
「党存亡の危機」学会も同様か
創価学会を支持母体とする公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党新総裁の高市早苗氏との党首会談で連立離脱を表明した。1999年から続いた自公蜜月は26年で終わりを告げた。学会本部は正式な見解を発表していないが(14日現在)、事前に了解があったと見られる。
離脱理由は、「政治とカネ」の問題が大きいと斉藤代表は言明。高市氏が新総裁に選出された4日、公明党を訪ねた高市新総裁に①「政治とカネ」のけじめ、②靖国神社参拝と歴史認識、③外国人との共生―を要請。7日の自公政策協議でも再提示した。高市総裁とは②③について認識を共有したものの、①については隔たりがあった。10日の党首会談で具体的な回答がなかった。
あるジャーナリストは、遅くとも9月にはその兆候らしきものがあったとみる。9月11日に発表された公明党参院選挙の「選挙総括」(公明党HP掲載)である。地方から「自民党との協力関係のあり方」が提出されたことや、「現状認識と敗因の分析」では自民党支持層からの信任不足があると分析している。その上で「党存亡の危機」と厳しい認識を示した。創価・公明一体体制にあって、この「党存亡の危機」は学会組織の危機でもあると解説する。
20年前の衆院選で最多の898万票を得た公明党票は、今夏の参院選で521万票と377万票減らした。活動家会員の減少や高齢化が明らかになり、以前のような運動量は期待できなくなった。平和や福祉など自民党の政策と異にしながらも公明党が自民党候補を推薦してきたことに矛盾を感じている学会員は少なくない。それらは総括からもうかがえる。
別の識者は、学会組織の立て直しを考えてのことだろうと推し測る。学会の象徴的存在だった池田大作氏が死去してから求心力を欠き、幹部が叱咤し続けても昨年の衆院選、今夏の都議選と参院選で負けが続いた。宗教学者の島田裕巳氏は「創価学会は、その歴史的使命を終えようとしている」(『FORUM21』9月号)と分析したが、その通りだとみる。
政権与党からの離脱。公明党は政治とカネの問題が大きいと主張しているが、学会本部は組織に対する危機意識があるのだろう。今後の創価学会・公明党の宗教と政治路線が注目される。
2025/10/17
西国32番霊場 観音正寺で晋山式 新宗派「繖観世音宗」立教
参道を練り歩く岡村學導新住職 西国三十三所32番の観音正寺(滋賀県近江八幡市)で1日、岡村學導住職(前副住職)の晋山式が営まれた。同日、新宗派「繖(さん)観世音宗」の立教開宗も宣言され、岡村遍導管長(前住職)と新住職が揃って本尊千手観音に奉告の法要を行った。戦後に天台宗から独立し単立となった観音正寺だが、一宗としての歩みを新たに踏み出した。
副住職時代は少し伸ばしていた髪を剃った學導住職は、3代前の住職(曽祖父)の時代に仕立てた素絹と五条袈裟を身につけ、緊張した面持ちで参道をお練りして本堂に入った。法要は裏千家による献茶で始まり、本尊の胎内仏が取り出され、學導住職は本尊裏の宮殿の前で包みを解き奉安、読経。住職としての最初の大きな仏事となった。なお、この胎内仏は12月12日までの特別公開となる。
遍導管長は開創者・聖徳太子の肖像の前で立教開宗を宣言。「当宗は大恩教主釈迦牟尼世尊の御教えと繖山(きぬがさやま)の観音聖地、観音正寺を開かれた日本教主聖徳法王の和の御教えを宗とす」とし、原始仏典ならびに法華経・勝鬘経・維摩経を所依の経典とすること、四弘誓願を指針とすることなどを述べた。
一カ月ほど前から晋山式の儀礼の所作の練習をしていた學導住職は、「代々の住職が見えない形で後押ししてくれたと思います」と無事に奉告できたことに安堵し、体全体でこの日を記憶に残せたことと、支えてくれた信徒に感謝した。
遍導管長は立教開宗について「ブッダのお言葉を噛み締め、当宗も皆様とともに徳を積み重ね人生を歩み香りを漂わせたい。それが私どもの宗の大切な源です」としている。なお、宗教法人法上の包括法人とするわけではないという。
2025/10/14
仏教伝道協会60周年シンポジウム 古舘氏、喋る瞑想披露 「安心して不安がれる場」を提言
仏教の話三昧で90分喋り続けた古舘氏 (公財)仏教伝道協会(BDK)は9月27日、東京都中央区の築地本願寺とオンラインを併用して創立60周年記念シンポジウム「だいすき仏教」を開催。仏教好きを公言するフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏や豪華ゲストが仏教の魅力を語り、仏教界に対して「困っている人に寄り添う」「安心して不安がれる場所を」と提言した。会場300人、オンライン200人が参加した。
釈迦の教えに魅せられたという古舘氏が特別講演。仏教について喋り続けていたため、あるスタッフから「お願いだから帰らせて下さい」と懇願されたエピソードを紹介。「人類史上初の仏教ハラスメント第一号です」と笑いを誘った。
仏教に触れるきっかけは「今も売れたいと思っている」という欲望を押さえるため。もう一つ決定的だったのが「6つ上の姉が42歳で亡くなったこと」。姉の死と向き合った父、母や自身の体験と感情を語りながら、「死ぬのが怖いと痛切に感じた」と回想した。
釈迦の悟りを「メタ認知」と表現した古舘氏は「自分を苦しめ迷わせる根本を取り除いて生きる作法を悟った」と持論を展開。諸行無常や縁起の教えなど「あられもないこの世の真理を言うのが仏教」とその魅力を示し、諸行無常や縁起の教えによって「欲望や邪悪な気持ちを抑えて良い加減になる」と仏教を活かした生き方を話した。諸法無我を説きつつ、自分自身を実況する古舘氏ならではの「喋る瞑想」を披露すると拍手が沸き起こった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/9
ガザに食料を!即時停戦を!増上寺でキャンドルアクション
キャンドルでGAZAへ支援をアピールした パレスチナ自治区ガザを支援するNGOらが「停戦を、食料を、今すぐに」と訴え、10月4日に東京都港区の聖アンデレ教会で報告会、増上寺の境内でキャンドルアクションを行った。「Let GAZA Live」の文字と、緑と赤のライトでパレスチナを象徴するスイカのイメージをキャンドルで描き、即時の停戦と食料支援を呼びかけた。250人が参加し、犠牲者を追悼する祈りを捧げた。
報告会では国境なき医師団の中嶋優子医師が2023年11月からのガザでの過酷な医療活動を報告。「こんなにも極限の酷い状況は数カ月で終わると思っていた。2年も続くとは信じがたい。状況は悪化している」と未曾有の人道危機を訴えた。NGOからは避難が続く過酷な状況や深刻な水や食料の不足を訴える現地職員や市民の悲痛な声が伝えられた。
日本国際ボランティアセンターやアーユス仏教国際協力ネットワーク、パレスチナ子どものキャンペーンなどの12団体が共同声明を発出。ガザでの生活が破壊されて6万5千人以上が犠牲になり、今年8月には飢饉の発生が国連から発表されたことに言及。ガザへの支援物資の搬入が止められていることから、飢餓が意図的に起こされた人災であるとし、「封鎖を解除し、十分な量の食料・医療物資をガザに届けて」と求めている。
2025/10/9
庭野平和財団「社会貢献」調査 宗教への期待 全体的に減少 社会貢献認知度も低下
左から丹羽氏、寺田氏、庭野理事長 (公財)庭野平和財団の第4回「宗教団体の社会貢献活動に関する調査」の結果発表が9月26日に京都市内で開催された。庭野浩士理事長と分析を担当した寺田喜朗氏(大正大学教授)、丹羽宣子氏(立教大学助教)が出席し解説。社会からの宗教に対する期待が全面的に下がっていることが強く推定できる結果となった。
調査は中央調査社が担当。層化三段方式で、今年6月6日から16日まで全国の20歳以上の男女4千人に個別面接調査を行い1184人から有効回答を得た(29・6%)。
知っている宗教者・宗教団体の社会貢献活動についての問いでは、小中高・大学などの「教育機関の経営」が32・8%と最も高いがそれでも前回の2016年調査に比べ3・3%の減。老人ホームなど「老人の扶助事業」は高齢化社会にも関わらず11・5%(前回比6・6%減)など、社会貢献活動への認知がされていない実態が浮き彫りになった。寺田氏が懸念を示すのは「在留外国人の生活支援や交流活動」が5・1%(新設項目につき前回は質問していない)で、「もうちょっと知ってもらわなければいけない。排外的なことを言って問題が解決するわけでもないし、公共に限界がある以上、善意の機関には協力していただかなければならない」とした。
一方、期待する宗教の社会貢献については「期待する活動はない」が35・8%(前回比7・8%増)。「平和の増進に関する活動」の25・1%(前回比11・7%減)をはじめほぼ全項目で期待する人が少なくなっている。「政治への積極的な参加や発言」は2・8%(前回比1・2%減)で、寺田氏は旧統一教会の問題により政治と宗教の関わりに不信感が高まったための減少と見ている。
大規模災害における宗教者の支援活動の認知は、能登半島地震などがあったにも関わらず低下した。宗教施設が避難場所になっていたことを知っている人は18・2%(前回比8・0%減)。災害時に宗教がどのような活動をしたらいいかの問いは「義援金を集める」が微増して26・5%(前回比1・0%増)になった以外はほぼ減少し、「葬儀や慰霊」も14・7%(前回比7・2%減)となった。丹羽氏は「衝撃的だったのは北陸ブロック、東北ブロックの人々は全国平均より認知度が低く、むしろ関東圏の人のほうが宗教者・宗教団体の活動を知っている傾向があった」。被災地での認知の低さは、さまざまなことが起こりすぎていたために宗教による支援だとわからなかった可能性も考えられるという。(続きは紙面をご覧ください)
2025/10/9
浄土宗宗議会 公金不正流用の債権放棄 外部監査の指摘受け
演壇に立つ川中総長 浄土宗は9月30日から10月3日まで、第135次定期宗議会(宮林雄彦議長)を京都市東山区の宗務庁に招集し全議案が可決された。宗派のコンプライアンス向上に力を入れる川中光敎宗務総長は事務報告で、宗務庁として初めて会計士による外部監査を導入し、令和6年度決算は「概ね適正」とされた上で長期貸付金の整理など改善点も示されたとした。一般会計経常部は歳入約25億1千万円に対し歳出約22億1千万円。
このほか、京都SDGsパートナー制度に登録したことや、情報セキュリティマネジメントシステム認証取得の準備などコンプライアンス向上政策を説明。伝宗伝戒道場では総本山知恩院・大本山増上寺で身体障がい者が成満し教師資格を取得できたことに「関係各位の尽力に心からお礼申し上げ、引き続き検討していく」と述べた。
2006年に発覚した、宗務庁財務局(当時)の課長補佐による公金約7億円不正流用事件に関連し、元課長補佐が今年1月に死亡したことを受けて約1億9400万円の債権放棄の承認を求める件も上程された。吉水仙昭宗務役員は「顧問弁護士、事件対策委員会、宗内関係者の尽力で損失回復の手立てが講じられたが、すべての回復には至らなかった。残りは長期貸付金として会計処理を行った」とし、元課長補佐が返済を続けていたが、死去により債権回収の見込みが全くなくなったため放棄をすると説明。
宗議会で設置された事件対策委員会は「長期貸付金の管理は返還すべき者が生存中とし、その後は公益法人の会計として適正に処理すること」を提言していた。前述の外部監査では、回収の見込みがない巨額の長期貸付金が財務諸表に載り続けるのは不健全であるという指摘があったという。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/9
武蔵野大 「日本で学べたこと幸運」 ウクライナ避難院生が修了
今後日本で働くモルスカさん(右)と小西学長 戦火から逃れ、武蔵野大に留学したウクライナ人のリリア・モルスカさん(24)が大学院を修了し、東京・有明の同大で9月19日にセレモニーが開かれた。モルスカさんは今後、日本で広報の仕事をしながら、自身が運営するオンライン日本語教室も続ける。
モルスカさんは2022年6月にキーウ国立大を卒業。村上春樹などの小説を読んで日本に関心を持ち、大学では日本語を専攻した。大学院進学を志望していたが、ロシアの侵攻で断念。ウクライナの避難民学生受け入れを表明していた武蔵野大が使命に掲げる「世界の幸せをカタチにする。」に共感し、同大への留学を決めた。
母国で日本語学校を開く夢に向け、学内のランゲージセンターで1年間学び、2023年9月に言語文化研究科に進学。ロシア侵攻下でいかに日本語学校を運営していくかをテーマに研究を進めた。在学中にはウクライナの文化を紹介する冊子を作り、大学周辺の施設などで配布した。
前日の修了式に出席し、この日を迎えたモルスカさんは「この3年間、爆撃の音を聞かずに日本で学べたことは幸運でした」と述べ、「一人では何もできなかった。人とのつながりこそが財産だと学びました」と感謝の気持ちを語った。また、「戦争の前では自分は小さな存在でしかない。日本が再び戦争を経験しないよう心から願っています」と話した。
花束を手渡した小西聖子学長は「慣れない環境の中、国のことも心配だったでしょう。大変なところを乗り越えて大学院を修了された。強い意志と努力があったのだと思う」と祝意を伝えた。「この3年間で培った経験と行動力はかけがえのない財産になる。両国の交流に貢献してもらえたら」と激励した。
モルスカさんは今後、日本の一般企業で広報の仕事をしながら、日本に来た避難者ら向けに自身が運営するオンライン日本語教室も続ける。
2025/10/6
先進文化都市 京都に生きる(上)
門川大作氏に聞く 4期16年 前京都市長・金光教押小路教会長
観光が平和な世界を創出 戦争の反対語「文化交流」で違いを超える
市長退任後、宗教者として新たな道を歩む門川氏 世界屈指の観光地・京都の市長を4期16年間務め、昨年2月に退任した門川大作氏(74)。現在は金光教押小路教会(京都市中京区)の教会長として、宗教者の道を歩んでいる。門川氏は、「国内外から大勢が集う京都には、人々が共に生きる平和な世界を創出する文化力がある」と言う。市長在任中の取り組みや、諸政策に込めた思いについて語ってもらった。
「人類は歴史から何を学んだか。人類は歴史から学ばないことを学んだ」という哲学者の言葉がある。これは〝歴史に学べ〟という痛烈な警句だ。第2次世界大戦から80年しか経っていないのに、平和・人権・環境の世紀になると期待された21世紀が、再び戦争の世紀になろうとしている。自国中心主義が台頭し、対立や分断、環境破壊による気候危機、貧困と格差の拡大など、人類の難儀が一気に噴出している。世界各国は今、防衛費をいかに増やしていくかという流れの中にある。
SDGsに代表される共生社会を求める動きは、この潮流に勝てるのか。私は市民の皆さんと共に市長在任中、「SDGsの17目標+1(ワン)」を掲げた。国際的な基準で一人ひとりの生き方を見つめ直し、「誰一人取り残さない」と謳うSDGsは、非常に意義がある。だが、平和のために最も重要な文化が含まれていない。「文化の多様性を尊重するため」等の理由が述べられているが、納得できない。
戦争の具体的な反対語とは何だろうか。政治においては、政府間の平和外交や自治体間の都市交流がある。京都市は「世界歴史都市会議」を主催し、姉妹都市やパートナーシティの協定を1950年代から世界の各都市と結んでいる。ウクライナのキーウも半世紀以上前から姉妹都市だ。キーウには2回行ったが、京都公園と京都通りがあり、470本の枝垂れ桜が植樹されている。戦禍の中でも、きれいな花を咲かせている。私は常時、同国のバッジを胸に着け、戦争終結を祈念している。
交流で生き合う力を
市民レベルでは、文化と観光による交流がある。文化とは一人ひとりの生き方と関わり方の総体であり、文化交流とは生き合い方と言っていい。平和を築くには、文化の交流によって育まれた生き合う力が必要だ。多様性・包摂性に富む「おかげ様」「お互い様」の心は、京都の生活文化の土台だ。即ち戦争の反対語は、文化と交流。交流には観光が大きな役割を果たす。21世紀を、文化と観光で平和を維持・創出する時代にしたいものである。
ただ京都は、いわゆる観光都市ではない。京都の文化は観光のためにできたものではない。京都の人たちが1200年、大切にしてきた文化が、観光的な魅力を放っているということだ。文化なしに観光はない。京都は文化と観光で、世界の平和と人々の幸せに貢献することを目指している。
京都は精神文化に立脚した、「ものづくり都市」だと思う。仏教や神道等の精神文化が新たなものづくりを求め、優れたものづくりが精神文化を高める。その継承・発展の過程で「ひとづくり」が行われ、それが魅力的な「まちづくり」に繋がる。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
全日本仏教尼僧法団75周年祝典挙行
世界平和を祈願 団員物故者と災害犠牲者追悼も
世界平和と物故者追悼の法要を厳修した 全日本仏教尼僧法団(鷹司誓玉総裁、笹川悦導理事長)は9月17日、東京会館(千代田区丸の内)で結成75周年記念祝典を挙行した。団員や来賓100人が参集し75周年を祝した。
1950年に超宗派の尼僧たちが集い「釈尊在世のときのような純一清澄な尼僧の教団をつくりましょう」との呼びかけで結成された全日本仏教尼僧法団。翌年、日比谷公会堂で300余名の尼僧が集い結成式が行われた。国内外の戦災や自然災害の犠牲者追悼や支援活動、国際交流に取り組み、平成25年(2013)に公益財団法人へと以降。近年は尼僧の高齢化や団員減少があり、令和4年(2022)に理念を共にするシャンティ国際ボランティア会(SVA)と合併し法人を解散したが、現在も花まつり茶会などを行っている。
記念式典では川名観恵・浄土宗大本山善光寺大本願法主を導師に法要を厳修。結成75周年を慶祝し、世界平和を祈願すると共に団員・賛助団員物故者と自然災害犠牲物故者を追悼した。次いで青山俊董氏が記念法話を行った。
祝宴では来賓の高野山真言宗金剛院名誉住職の山田一眞氏が結成当時の思い出を披瀝し、「75年の歴史を現在に繋げていることに敬意を表します」と祝した。乾杯の発声は曹洞宗大本山永平寺の西田正法副監院。「世の中は分断と対立の様相を呈していますが、仏教徒こそが平和という確かな道を示していかなければいけない。そのなかで住持三宝の先端にいる僧宝という自覚のもと、一歩一歩自らの生き方として歩む尼僧法団のような在り方を世に示していくことが平和への確かな一歩ではないかと思います」と敬意を表した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/10/2
韓国統一教会 韓総裁逮捕受けて2弁護団が声明 日韓組織の実態解明要請
統一教会(現世界平和統一家庭連合)韓国本部の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が9月23日、政治資金法違反、不正請託禁止法違反等の容疑で韓国の特別検察官によって逮捕された。これを受けて同日、全国霊感商法対策弁護士連絡会と、全国統一教会(世界平和統一家庭連合)被害対策弁護団が声明を発表した。
霊感商法弁連声明では、韓総裁逮捕にいたる経緯に言及した上で、「日本の霊感商法や違法な献金勧誘等の被害者から得た資金が韓国本部において不当な利得や私欲のために支出されてきた実態までが解明されることになると期待し、今後の捜査、公判の推移を注視していきたい」とした。
さらに日本での霊感商法や違法な献金勧誘等が40年以上にわたって行われ、多数の被害者が出ていると指摘。これらを背景に「政治家に不当な手段で影響力を行使しようとしていた実態を解明しようとするもの」と韓国当局の捜査に理解を示す一方で、日本では統一教会と自民党議員の関係について「徹底した実態解明がなされたとは到底言えない」とし、第三者機関による徹底調査を要請している。
被害対策弁護団も「韓国だけでなく、日本からの資金の流れや日本法人への指示なども含め、統一教会の日韓両組織の実態や違法・不正行為の内実についても徹底的に解明していただくよう強く期待します」と表明した。
日本の統一教会に対しては今年3月、東京地裁が宗教法人法の規定に基づいて解散命令を出した。教団側は抗告し、東京高裁で審理されている。高裁が地裁に続いて解散命令を出せば、解散手続きが始まる。
2025/10/2
宗教者核燃裁判 原発問題 裁判から学ぶ 裁判官の使命「社会の一隅照らす」こと
聖アンデレ教会で行われた学習会。井戸弁護士と樋口氏、岡田住職(右から) 全国の宗教者258人が原告となり、日本原燃株式会社を相手に青森県六ケ所村の原子力施設(再処理工場)の運転差止を求める「宗教者核燃裁判」の第8回口頭弁論が9月18日に東京地裁で開かれた。その後、聖アンデレ教会(港区)で行われた学習会では井戸謙一弁護士と元裁判官の樋口英明氏が司法の役割や裁判官の使命を論じた。樋口氏は「一つひとつの仕事が社会の一隅を照らす」とその意義を示した。
井戸弁護士と樋口氏は裁判官時代に原発の運転差し止めの判決を出し、今年6月に共著『司法が原発を止める』(旬報社)を刊行した。宗教者核燃裁判では樋口氏が差し止め判決で提起した「樋口理論」を軸に再処理工場の脆弱な耐震性を訴えている。井戸弁護士は原告弁護団の一人。
共著の刊行について井戸弁護士は「今の裁判官の在りように危機感を持った」と明かした。動機となったのが「6・17最高裁判決」。福島原発事故の国家賠償を求めた訴訟で最高裁は国の責任を認めなかった。井戸弁護士は「非常にレベルの低い判決」と批判し、「(裁判官が)大きな機械の歯車になっている印象がある」と危惧。「裁判官は裁判することで自らが裁かれる」「過去の紛争を解決することで未来のあるべき社会を示すクリエイティブな仕事だ」と矜持を示し、「意欲を持ってほしい」と現職裁判官にエールを送った。
樋口氏は同書から「裁判所に与えられた権能を行使しないことは、権能を乱用することよりさらに有害で無責任」「裁判官の本分は、その一つひとつの仕事が社会の一隅を照らすことにあるかもしれない。ごく希には社会全体が進むべき道を照らす仕事が与えられる」を引用し、「本分を尽くす」ことを求めた。(続きは紙面でご覧ください)