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2024/11/7
日中韓仏教友好交流会議 身延山大会 共栄社会へ「黄金の絆」深化 慈悲こそが世界平和の源
共同宣言に3国代表が署名した。中央が日本の武理事長 第24回日中韓仏教友好交流会議・日本身延山大会が10月30日、山梨県身延町の日蓮宗総本山身延山久遠寺(持田日勇法主)で3国から約300人が参集して開かれた。世界平和祈願法要や学術講演会などを通じて中国仏教協会元会長の趙樸初氏(1907~2000)が提唱した「黄金の絆」を深めた。採択された共同宣言文に3国代表が署名し、3国仏教徒が慈悲心を基に人々の安寧と平和構築に努力することを誓った。主催は日中韓国際仏教交流協議会(武覚超理事長)。
大会テーマ「共栄社会の構築における仏教精神の可能性―日中韓三国の共和(共生)を願って」は、久遠寺が掲げる「共栄運動」に連動。多年にわたり、特に日中友好宗教者懇話会の役員として仏教交流に尽力してきた持田法主の強い願いで久遠寺での開催となった。
開式にあたり日中韓協議会の伊藤唯眞会長(浄土門主)が挨拶(代読)。久遠寺を開いた日蓮が所依経典とした『法華経』の「化城喩品」にある「皆共成仏道(皆共に仏道を成ぜん)」に言及し、「これは時を超えて釈尊のみ教えと共に生きることで、共に在る世界で生きとし生けるものが『共に生き、共に栄える』ことに他ならない」と呼びかけた。
世界平和祈願法要は日本・中国・韓国の順で営まれた。日本は武理事長が導師を務め、「平和実現のため、共存・共生・共栄の道を提唱し、世界にその輪を力強く発信していく」と表白。全員で観音経を読誦した。
加山又造画伯による天井画『墨龍』の下で行われた身延山大会 中国代表の演覚氏(中国仏教協会会長)は法要に先立って挨拶し、「世界の人々が戦争から遠ざかり、人類社会が繁栄し、また一切衆生が和合共生することを祈る」と表明した。
韓国代表の眞愚氏(韓国仏教宗団協議会会長)は法要後、平和祈願メッセージを発表。世界各地で起きている戦争や暴力を憂慮しつつ、「私たちは今、視点を変える必要がある。縁起的な思考で世界を見つめ理解しなければならない」と訴えた。
記念撮影と昼食を挟んで午後からはテーマに即して学術講演会が行われた。日本からは身延山大学学長の望月海慧氏が登壇。日蓮と天台智顗の一念三千を解説した上で「『共に生き、共に栄える』とは、我々はすべての人々と平和な環境で安穏に生活をすることを意味している」と主張した。
共同宣言(要旨別掲)を武理事長が読み上げ、3国代表が署名し、固い握手を交わした。
共同宣言
日蓮宗総本山身延山久遠寺を会場とし、世界平和祈願法要を三国合同で奉修した。
「共栄社会の構築における仏教精神の可能性―日中韓三国の共和(共生)を願って」をテーマに各国が基調講演を行い、三国仏教の役割について活発な討議がなされた。
中国仏教協会元会長趙樸初先生が「黄金の絆」を提唱され、仏紀2539年(1995年)に第1回中韓日仏教友好交流会議が中国北京で開催されて29年目を迎える。多様化が進む世界は依然として混沌とし、世界平和への道のりはまだ果たされていない。そのような世界の中で、仏教の有する真理を求める智慧や、他を思いやる慈悲を基とした仏教徒の果たすべき役割は増す一方である。世界平和は人類共通の願いであり、その大きな一歩は各々の心から生まれるものである。排他的思想から心の安寧が生まれることはなく、互いに認め合い、共に助け合い、共に生き、共に栄える。この慈悲心こそが世界平和の源である。
今大会にて、三国仏教徒が理念、また実践の上で社会にむけて貢献出来得ることを話し合い、今後も「黄金の絆」を深め互いに協力し合いがら、釈迦牟尼世尊より連綿と続く仏法の慈悲心を基に、現代社会に即した形で人心に寄り添い、世界平和と人々の安寧のために、より一層努めていくことを誓い合い、ここに宣言するものである。(要旨)
2024/11/7
総本山教王護国寺 橋本尚信長者が晋山
本坊から金堂へと向かう橋本長者 京都市南区の真言宗総本山教王護国寺(東寺)で10月25日、橋本尚信第258世東寺長者(東寺住職・東寺真言宗第4世管長)の晋山式が営まれた。金堂大壇の猊座に着いた橋本長者(76)は堂内外の約400人が見守る中、本尊薬師如来坐像の宝前で晋山傳燈奉告文を奉読。1200年にわたって途切れることなく継承されてきた鎮護国家の祈りの歴史を振り返った上で、宗祖弘法大師に始まる歴代長者の系譜に連なり真言宗立教開宗の構想を「維持発展」させていくと力強く誓った。
朱の大傘を差し掛けられた橋本長者は式衆14人に続いて本坊を出発し、国内外の参拝者が憩う境内をゆっくりと進列。平安遷都を行った桓武天皇の創建による官立寺院の時代から存した金堂に入り、午前11時から晋山傳燈奉告法要を厳修した。
法要後の式典では、真言宗各派総大本山会を代表して瀬川大秀真言宗長者(御室派総本山仁和寺門跡)が祝辞。今年、宗団発足50周年を迎えた東寺真言宗の吉村増亮宗務総長は、宗是である「鎮護国家 広度衆生」のさらなる実践に向けて新長者の教導を懇請した。
晋山式を終えた橋本長者は、爽やかな秋の陽光を浴びながら先頭に立って還列。昨年10月に営まれた立教開宗1200年慶讃大法会に続き、1201年目の新たな東寺史の幕開けを象徴する慶事となった。
午後からJR京都駅に隣接したホテルグランヴィア京都で晋山祝賀会を開催。宗内外の高僧をはじめ、各界から約400人が参加した。
2024/11/7
第50回衆院選 推薦者数と当選者数 全日仏122人→98人 本願寺派53人→41人 日蓮宗15人→14人 立正佼成会187人→153人
第50回衆議院選挙(465議席)は10月27日に投開票が行われ、与党の自公は215議席で過半数に届かず、野党では立憲民主党が148議席を獲得し、全体で235席となった。宗教界は今回も候補者を推薦した。
全日本仏教会(全日仏)は122人を推薦し、98人が当選した。政党名および候補者名は公表しなかった。
浄土真宗本願寺派は53人を推薦し、41人が当選。政党別当選者数は自民党22人、立憲民主党13人、日本維新の会2人、無所属4人。
日蓮宗は15人を推薦し14人が当選。政党別当選者数は自民党7人、立憲民主党5人、国民民主党1人、日本維新の会1人。
立正佼成会は187人を推薦し、153人が当選。政党別当選者数は自民党31人、立憲民主党104人、国民民主党11人、日本維新の会3人、れいわ新選組1人、無所属3人。
公明党は8議席減 比例600万票切る
公示前、32議席だった公明党は8議席減らし24議席。小選挙区から出馬した石井啓一代表も落選した。小選挙区では11選挙区中、当選者は4人だった。比例の596万票は、2年前の参院選より22万票減らし、2001年以降の国政選挙では最少となった。
公明党は自民党と無所属を含めて255人を推薦した。そのうち175人が当選した(本紙調べ)。その中にはウラ金問題で自民党を離れ無所属になった候補も含まれる。自民党当選者191人のうち約9割が公明党の推薦を受けている。
2024/11/7
大谷大生考案 地域交通ゲーム 高齢社会の移動考える
チェックポイントの金刀比羅宮にて(同大提供) 大谷大学が京都府京丹後市と連携して取り組む「地域交通とモビリティプロジェクト」は、過疎・高齢社会における交通、特に自家用車に依存することの問題を考えながら持続可能な社会を作る試み。10月19日、同市一帯を舞台に、学生と市民による野外活動ゲーム「モビリティロゲイニング」が開催された。
このゲームは社会学部コミュニティデザイン学科の学生が考案した。バス、鉄道など公共交通を活用しながら、エリア内に設置されたチェックポイントをできるだけ多く回って得点を競うもの。同市に住む人々のうち、通勤・通学にバスや鉄道を利用している人はわずか6%。自家用車の利用が増加すると公共交通の利用者が減少し、結果的に路線の廃止を招く悪循環となる。そうなると後期高齢者、病人、障がい者といった社会的に弱い立場の人には厳しい社会となり、ひいては世の中全体の不利益になる。
学生と市民がチームを組んで「ロゲイニングマップ」を広げ、目的地に向かうにはバスか、鉄道か、タクシーか、あるいはここぞという場面では自家用車を使うか、を考えつつチェックポイントを回った。得点に応じ、地元特産品などの景品をプレゼント。楽しみながら地域の課題が理解できたことに学生たちも手応えを感じた。
3年生の堀正樹さんは「公共交通の減少は、運転手不足や利用客の減少など、様々な理由が複雑に絡み合っていますが、複雑だからこそ多様なアプローチの仕方がある」と見る。京丹後JCの協力も受けており、今後の産学官連携にも弾みとなりそうだ。
2024/10/31
宗門系大学サバイバル 大谷大学編 一楽真学長に聞く お釈迦さまに学び一つの価値観打破を!
「自己とは何ぞや。これ人世の根本的問題なり」と語ったのは大谷大学(京都市北区)の初代学長だった清沢満之だ。東本願寺の学寮が寛文5年(1665)にできたことを起源とする大谷大だが、近代的な大学としての始まりは明治34年(1901)に東京・巣鴨に真宗大学が設置された時。大正2年(1913)には現在地に移り、寺院子弟を育て、ひいては自己とは何かを考える人間を輩出してきた。その一人でもある一楽真学長に、仏教を立脚地とした教育の意味を聞いた。
令和3年(2021)に大谷大学が発表した長期計画「グランドビジョン130」には、目標として「仏教精神に基づき、社会を主体的に生きることのできる人物を育成する」を掲げる。主体的に生きるとはどういったことか。「人間は誰もが主体的に生きているつもりでも、その時代や国に応じた物の見方、考え方に左右されます。流行り、廃りもあるでしょう。一生懸命生きているつもりでも、世間の価値観に流されていることもある。本当に主体的に生きることを考えてみよう、という意味が込められています」と語る。「今の日本は結果主義や評価主義の社会ですが、それが一番正しいのかと問い直してほしい」。
そのための最大の智慧が仏教の価値観。「お釈迦さまをはじめ、仏教の歴史には、その時代の中で一生懸命生きてきた人がたくさんいる。そういう先達には安心して聞いていけるでしょう。お釈迦さまでも親鸞でも、生きた時代は違うので直接同じことはできないけれど、時代の中で自分はどう生きるか、を聞くのが大切」。聞くために力を発揮するのが、蔵書数が90万冊に近い大学図書館だ。「先達の智慧が残されているのが図書館ですが、それを読むにはどうしても、その智慧を生き方にしている人が近くにいることが必要でもある」。読み方、生き方を気づかせてくれる、尊敬できる先輩や友人との出遇いを重視する。
2024年9月、出遇いのためにアイデアを具現化した。図書館とエレベーターで直結する総合研究室がリニューアルされた。学生・院生・助教がフラットに学びあえる場所だ。「助教は一番近い先輩。本はこう開くのか、こう調べるのか、と生で見るのが大事。わからない時もすぐに聞ける。居心地が良くて質問もしやすければ、学生の居場所になるでしょう」と期待する。
こうした学風の基本も清沢満之だ。「清沢先生は、当時に流行った言葉でいえば自由討議を重んじたんです。『師匠と弟子』の関係でなく一人ひとりが人生や仏教を学ぶことを基本に据えている。本学はその心を大切にしたい。主体的というのは、誰かの答えを覚える勉強じゃなくて、自分が仏教に聞き入って真理をたずねるとともに現実にもたずねていくこと」。これが大学のスローガンになっている「Be Real」の深意である。
お寺の出身者だけでなく
もちろん寺院後継者についても主体的に生きる僧侶を育てているのだが「実は今、寺院子弟は1割を切っています。学生数が約3100人で、そのうち8%くらいが寺院子弟」と明かす。「お寺に生まれた人がお寺を継いでいくのが今までの通例だったかもしれませんが、もうそうはならない現実が始まっている。転換点でしょうね」と見る。「今までのようにお葬式など儀式だけしていればいい、という僧侶では誰もついてこない。儀式が悪いのではなく、やっていることの意味を何も話さないようなのはもう通用しません」。すなわち、この人に仏教の教えを聞きたい、生き方を学びたい、と思ってもらえる僧侶にならなければ、本当の寺院の維持にはならないのである。「お寺の出身者だけに特化して後継者を養成するわけではなく、お寺の出身者じゃなくても仏教に関心を持った人とお寺の出会いをセッティングできれば、問題の多い世界で生きていきたいと思うことも起きうる」。後継者養成は間口をなるべく広くして仏教に触れてもらうことから始まるとの意見は、男性長子相続が伝統として長く続いている大谷派寺院にとっては、少し踏み込んだ提言だ。「お寺を継ぐ、継がないよりも、仏教に触れて自分の道を見出してもらうことのほうが大切なのでは。結果的にお寺に入っても、違う仕事に行くにしても、それは本学で学んでもらった大切な成果だと思う」と、宗門大学の本質的な意味を説く。(続きは紙面でご覧ください)
2024/10/31
智山派代表会 災害救援金を大幅増額 全損、50万円から100万円へ
最初の代表会で答弁する三神総長 真言宗智山派の第139次定期教区代表会(深澤照生議長)が22・23日、京都市東山区の総本山智積院内宗務庁に招集された。初の総長一宗選挙御に就任して最初の代表会に臨んだ三神栄法宗務総長は、「全国3千カ寺の運営と興隆を多角的に支援することが根本」とする施政方針を表明。特に自然災害の頻発と甚大化を受けて「災害時における復興支援の一層の充実と備災防災への取り組み強化」を挙げ、災害対策に関する資金の積み増しと被災寺院への復興救援金等の増額を提示した。(続きは紙面をご覧ください)
2024/10/31
天台宗議会 根本中堂工期を大幅延長 台風被災 居士林の再建は凍結
厳しい表情を見せる延暦寺の獅子王執行 天台宗(阿部昌宏宗務総長)の第157回通常宗議会(大澤貫秀議長)が15〜17日、滋賀県大津市の宗務庁に招集された。総本山延暦寺の獅子王圓明執行は、比叡山の総本堂・国宝根本中堂の改修工事現場での7月6日深夜の出火(ボヤ)を陳謝。消防署等の検証結果を踏まえ、再発防止策を徹底するとした。(続きは紙面をご覧ください)
2024/10/31
第34回中村元東方学術賞授賞式 山下博司氏「目印の架け橋」に 奨励賞はオリオン・クラウタウ氏
本賞受賞の山下氏(右)と奨励賞のクラウタウ氏 (公財)中村元東方学術研究所(藤井教公理事長)は10日、東京・九段のインド大使館でシビ・ジョージ駐日大使臨席のもと、第34回中村元東方学術賞並びに第10回中村元東方学術奨励賞の授賞式を行った。本賞の山下博司氏(東北大学名誉教授)にはインド大使館からも賞状が贈られた。奨励賞のオリオン・クラウタウ氏(東北大学准教授)は対象となった『隠された聖徳太子―近現代日本の偽史とオカルト文化』(ちくま新書)が評価された。受賞者が同じ大学に属しているのは珍しい。
開会後、登壇したシビ・ジョージ駐日大使は「日本の学者の中でインド哲学やインド研究への関心が着実に高まっていることを満足に思っている」と歓迎し、受賞した山下氏には「インド思想、文学、宗教における卓越した貢献で広く知られており、ヒンドゥー哲学やヨガに関する研究をされている。審査委員会の皆さまがもっともふさわしい受賞者を選出された」と祝福した。
藤井理事長とシビ・ジョージ駐日大使から和文と英文の賞状および副賞が贈られた後、選考委員長でもある藤井理事長が審査について報告した。最終候補者2人のうち一人に絞ったと説明。「研究領域は大変広くインド哲学、仏教学、ヒンドゥー教、タミル古典文献学、ドラビダ語学、近現代のタミル文学、南アジア地域研究、インド移民研究からインド映画研究までを含んでいる」と述べ、『ヒンドゥー教とインド社会』『ヨーガの思想』など単著や編著、飜訳、監修など多彩な業績を紹介した。(続きは紙面をご覧ください)
2024/10/31
長野・円福寺出版部 正月用ポスターと法話のセット制作 「幸せへの道」を説く
長野市篠ノ井の曹洞宗円福寺(藤本光世住職)の出版部は、令和7年正月用仏教ポスターを制作した。愛らしい観音菩薩像や地蔵菩薩像に「幸せへの道」「善き友 善き仲間 善き人々」の標語が入った2種類で、それぞれの文言に合わせた「仏教法話」のリーフレットも付く。ポスターが1枚35円、法話25円で、1組セットが60円(全て税込、送料別)。寺院の名入れもできる。
年始の挨拶回りでの檀信徒への贈り物として毎年正月用ポスター(縦52㌢×横18㌢)と仏教法話を作成している。今年のテーマである「幸せへの道」「善き友 善き仲間 善き人々」は、児童養護施設を運営する藤本住職が「子どもの幸せ」について考えるなかで、「幸せ」の意味を説く大切さを感じて選んだ言葉。スマホやタブレットで子どもたちが「秘密の空間」とつながる現代のネット社会においては、これまで以上に「心の柱」が重要となることから、それを育む宗教行事の重要性を説いている。
実親との縁遠い子どもたちの養育は困難も多い。一方で、何十年経ってもお寺や住職夫妻とのつながりを大切に思い訪ねてくる出身者もいる。その喜びは深い。「見返りを求めてはいけない」。藤本住職はそう覚悟を話す。
愛育園運営のために〝おっしゃん〟が設立
円福寺の先代住職、藤本幸邦氏は敗戦後に東京・上野駅から戦災孤児を連れ帰り、後に児童養護施設愛育園を開園し、〝おっしゃん〟の愛称で親しまれた。施設の運営費を賄うため昭和34年に出版部を設立。幸邦氏が執筆した「修証義」の解説文は檀信徒にもわかりやすいと好評で、それをまとめた「正法眼蔵 修証義(解説付)」は藤本住職が「珠玉の冊子」とおススメする一冊。出版部ホームぺージで一部立ち読みが出来る。お問い合わせは出版部(☏026―292―0381)。
2024/10/17・24合併号
日本被団協にノーベル平和賞 核なき世界 訴え続ける
2016年8月、WCRP軍縮公開シンポジウムで被爆体験を証言した被団協の田中熙巳氏 ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、今年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表した。「核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使われてはならないことを目撃証言を通じて示してきた」活動が評価された。(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は12日、戸松義晴理事長名で祝福のメッセージを発表した。日本被団協の田中熙巳代表委員(92)は2016年8月、WCRP主催の公開シンポジウムで被爆体験を証言している。
1954年3月のビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験を機に原水爆禁止運動が盛り上がり、1956年8月に被団協が結成された。被爆者による証言活動を展開し、2017年に国連で採択され、2021年に発効した核兵器禁止条約の成立を後押しした。同条約の前文には日本語の「ヒバクシャ(被爆者)」が用いられている。
長崎で13歳のときに被爆した日本被団協の田中氏は、WCRPシンポで体験を話すと共に、核廃絶に向けた署名活動の意義をこう語った。「数を望んでいるのではありません。賛同を得る過程で、核兵器がどんなものであるかということを、みなさんが話し合い、知っていただき、核兵器をなくす意志と行動に変えていただきたい。それを願っての署名活動なのです」
世界には1万5千発もの核弾頭がある。核保有国であるロシアとイスラエルは紛争の中で使用を示唆している。こうした世界的な核戦争の危機状態に対して、今回のノーベル賞は核なき時代を求める地球市民の声を集約したものと言える。
創刊者常光浩然と谷本清牧師
ノーモア・ヒロシマ誕生の場に
本紙は1946年7月25日、本願寺派僧侶の常光浩然(1891~1973)によって広島で創刊された。戦時中、東生まれ育った広島県三次市の覚善寺にいた常光は、そこで原爆を体験した。
〈八月六日は、私は、広島市から直線距離にして三十㍄もある三次町という人口二万位の町にある自分の寺にいた。朝八時ごろ自分の書斎にいて、フト何気なく立ち上がった瞬間に、黄金の光が目の前で光った。これがまさしく原爆の光であったのだ。それとは知らぬ自分は奇妙な光だナと思った。その時はそれきりですんだのであるが、正午頃になると、広島は大変なことになったという評判が伝わってきた〉(仏教タイムス1965年5月15日)
常光は東京で活動していたが、戦争が激しくなり、郷里の寺に疎開。そこで原爆の光を見たのだった。この体験が1年後の仏教タイムス創刊につながっていく。第1号に「敗戦はこの広島市街に投げられた原子爆弾から発生した」とあるように、原爆を強く意識していた。また一人の青年牧師との出会いが、有名なフレーズを生み出す。
〈この広島に、キリスト教の牧師で谷川清という人があった。アメリカの大学を出た人で、若くてなかなか元気のある人であった。この人と心やすくなっていろいろ話をしているうちに、「広島で世界宗教会議をやろうではないか」ということになり、二人で東京のマッカーサー司令部に来て宗教課長にあった。その時の話では、やるのは結構だが、ただ焼野原に場所があるかどうか、経費はどうするか、あらゆる便宜は供与するということであった。宿所は米軍使用の建物も一時借りられる。資金は谷川氏がアメリカで集めて来るということで、話しは非常に好都合に進んだ。そのとき宗教課長がUPか何かの新聞記者を紹介してくれ、その新聞記者が、何の目的で広島で宗教会議を開くのか、と聞いたので、「再びあんな惨事をくり返さぬためだ」といった。記者は、それをアメリカその他各国へ打電した。それがNo More Hiroshima(ノー・モア・ヒロシマ)という見出しで世界各国の新聞に出たのである。これも一寸、後世のために記しておくことも無駄ではあるまい〉(仏教タイムス1965年6月12日)
谷川清とあるのは谷本清(1909~86)の誤記。常光は戦前、汎太平洋仏教青年大会に参画するなど国際性を有していた。2人が取材を受けたのは1948年。世界宗教会議は実現しなかったが、先進的アイデアと言える。谷本牧師はヒロシマ・ピース・センターを設立し、被爆者救援や平和活動に尽力した。
2024/10/17・24合併号
大本で裏千家献茶式 丸い茶碗は地球、中はグリーン 101歳大宗匠が平和講演
全身全霊で茶を点てる千大宗匠 大本(出口紅教主)の聖地梅松苑(京都府綾部市)で6日、茶道裏千家の千玄室大宗匠による「長生殿献茶式」が営まれた。大宗匠は101歳の長寿だが、体は健康そのもので歩行も杖を使わず、かくしゃくとした所作で参集した茶人たちを驚かせた。
長生殿の祭壇下に設けられた点茶盤にゆっくりと大宗匠が進み、恭しく献茶之儀を執行。大宗匠が釜から湯を注ぎ、全身全霊で点てた茶を祭員が神前に運んだ。出口教主をはじめ、山崎善也綾部市長や仏教・神道の宗教者たちが玉串奉奠した。
ウクライナや中東などで起きる戦乱に心を痛めた大宗匠が「祈りと一盌のお茶」の題で平和講演をした。大宗匠は中東紛争が第三次世界大戦に発展することを危惧し、一方で我が国に目を向けても尖閣諸島や北方領土は「歴史的に絶対に日本の領土」と力を込め、武力による領土侵犯を断固として批判。またアメリカでの講演で原爆の悲惨さを訴えた時は、「ノー、あれを落としたから日本は戦争をやめたんだ」と反応があったため、「あんた戦争に行ったことがあるのか!」と一喝したエピソードも披瀝。「私は一遍死んできた男」とし、自身が海軍の特攻隊に所属していた戦争中の話も織り交ぜた。
知らない人同士でも「いかがですか、いただきます」とお茶を勧めあうピース・アンド・ハーモニーの精神が大切だと強調。「お茶碗は丸いんです、地球なんです。その中をご覧ください、グリーンがいっぱいある。この茂った緑がなかったらどうします?鳥も人間も獣も生きていけない。森林があるから本当に私たちは自然と共生できる。そのありがたさをもう一度感じていただきたい」と述べ、茶道精神が地球を救うカギになることを訴えた。
大本と裏千家は長い友好関係があり、大宗匠は1973年11月2日の梅松苑内みろく殿での献茶式以来たびたび献茶式を行っている。大宗匠は出口王仁三郎聖師が、美意識を開発することが平安な人間精神につながるという思想から茶道や和歌、能を実践したことを「稀に見る才能のある方です」と称えた。
講演の後は添釜席も設けられ、出口なお開祖のお筆先、王仁三郎聖師の書を鑑賞しつつ、出口教主と大宗匠が歓談した。
2024/10/17・24合併号
曹洞宗臨宗 ソートービル運営計画を白紙撤回 大和証券業務委託契約問題 服部総長が陳謝
会議中に「挨拶」の形で登壇した服部総長 曹洞宗の第145回臨時宗議会が7日、東京・芝の檀信徒会館で開かれた。内局の承認を得ずに大和証券と業務委託契約を結んでいた問題について、服部秀世宗務総長は「配慮を欠くものだった」とし、「あらためてお詫び申し上げる」と陳謝。大和証券との契約は解消し、ソートービルの運営計画を白紙撤回すると述べた。
服部総長は会議中に「挨拶」の形で演壇に立ち、両会派からの代表質問は受けなかった。大和証券との契約は、ソートービルなど宗門所有不動産の再開発計画に関して協力を受ける内容で、昨年8月に締結。今年8月下旬に明らかとなった。庁議(責任役員会)で承認を得ずに契約し、宗議会議員らにも知らされずに計画が進められていた。
ソートービルで運用する東京グランドホテルの赤字が続いていたことから、ホテルの運営を企業に委託する方針だったが、服部総長は「交渉自体に疑義が生じる状況に陥った」と計画を見直す意向を示し、大和証券との契約について「現内局の任期満了(20日)までに解約する」と明言。「私個人の責任において覚書に押印して、ほかの内局員には一切の責任を負わすものではない」と責任の所在を明確にした。
さらに、大和証券を通じて委託候補に挙がった3社のうち、貸会議室大手でホテル運営も行うティーケーピー(東京・市ヶ谷)と進めていた交渉も打ち切ると発表。ソートービルの建て替え構想などを含め、これまで積み上げてきた計画を白紙撤回する考えを示した。
その上で、今後のホテル運営やソートービル再開発計画について、「次期内局でも最重要課題として持ち越していくことになる」と引き続き取り組む姿勢を見せた。
宗議会後の記者会見で、服部総長は庁議にかけずに契約した理由について、ソートービルの運営計画を諮問した総合特別審議会の専門部会で使用する資料作成のために結んだ契約だったと釈明した上で、「庁議で決める事案ではなかったと認識しているが、内局に相談しなかったことを後悔している」と話した。
服部総長は計画を仕切り直すとしたが、「この間に総合特別審議会などの会議を開くためにかなりの費用がかかっている。そうした問題にどう責任をとるのか」などと、問題の解決には至っていないとの見方を示す宗議会議員もいた。
2024/10/17・24合併号
本門佛立宗 上座講師の住職が性加害 天台尼僧の姿見て決意 被害尼僧と弁護士が会見
千葉県東金市の本門佛立宗妙恩寺の住職(50代)が昨年7月7日頃、弟子の尼僧(Aさん・40代)に性加害をして準強制わいせつ罪で今年5月30日に緊急逮捕された。尼僧と國松里美弁護士が11日午後に会見し、信仰に基づく師弟の絶対的な上下関係を暴力的に強いた上で行われた密室での性被害(霊的虐待・信仰虐待〈スピリチュアル・アビューズ〉)を告発した。
Aさんは、性被害を告発した天台宗の尼僧叡敦氏(50代)の姿を見て決意。「自分と同じような被害に遭っている人の助けになりたい」という願いから記者会見に臨んだという。
加害住職は6月20日、千葉地裁八日市場支部に起訴され、当初は否認していたものの9月3日の第1回公判で罪状を認めた。今月29日午後3時からの公判で結審する。
本門佛立宗には直接身体に触れて罪障を消除するという教義はないが、加害住職は教義を偽ってAさんの信心と「師僧は絶対」という立場を利用して淫行。有罪が確定すれば、信仰心を悪用した信仰虐待を司法が裁く画期的な判決になる。
Aさんの父母は元々同宗の熱心な信者。シングルマザーとなっていたAさんも母親の勧めで令和3年3月頃に加害住職に相談するようになり、女人救済の教えに惹かれて翌年6月に得度。やがて加害住職と妻による理不尽な叱責や恫喝、無視等で心身共に絶対服従に追い込まれた。宗派の上座講師でもある加害住職は、「謗法人(教えに従わない者)は家族も含めてみんな地獄に落ちる」などと説いていたという。
逮捕に繋がった性加害は令和5年7月に発生したが、その前にもあり、昨年7月以降も同年11月頃まで継続。同月に東金警察署に相談した。
妙恩寺に送った還俗願が12月2日に加害住職に到着したが、同日と翌日に加害住職やその意を受けた信者らが自宅に複数回来訪。Aさんは、「加害者やその周りの人たちの言動と行動で身の危険を感じ、私や私の家族が報復を受けるのではと怖かった」と振り返った。
加害住職は、Aさんだけでなくその両親にも電話やメールで何度も連絡。Aさんは今年3月に警察署に被害届を出し受理された。
Aさんの還俗願は、宗務本庁で今も保留になっているという。Aさんは、「今後もできることなら佛立宗の僧侶として活動したい」と語った。
2024/10/10
増上寺からガザへ祈りの灯火 今すぐ停戦を
増上寺境内にキャンドルでGAZA。スマホのライトでの生活を余儀なくされているパレスチナへ連帯しスマホを掲げた パレスチナで人道支援活動をしているNGO団体は5日、東京都港区の浄土宗大本山増上寺で即時停戦を求める集いを開いた。共同声明「停戦を、今すぐに」を発表し、境内に「GAZA」の文字をキャンドルで灯し、犠牲者を追悼した。200人が参加した。
イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まって1年を迎えようとするなか、ガザでの死者は4万1802人、負傷者が9万6844人、国内避難民が190万人にのぼる。現地で活動するNGOは多くの子どもたちが飢餓や精神的な抑うつ状態にあること、過酷な状況でも懸命に生きるパレスチナ人の生の声を届けた。
国連決議や国際司法裁判所の勧告が無視されている状態に、パレスチナ子どものキャンペーンの手島正之氏は「市民が主役と思って行動するしかない」と主張。ヨルダン川西岸地区で活動するパルシックの高橋知里氏は、インターネットで日本での抗議行動などが現地の人にも伝わり力づけられているとし「一人ひとりのできることは小さいが、それが現地に伝わり、世界にも広まっている。それは力強いこと」と連帯の力に希望を見いだした。
集会にはガザの難民キャンプ出身で医師のイゼルディン・アブラエーシュ氏も参加し「行動が必要です。即時停戦をもっと広めて下さい」と訴えた。
実行委員会は「一人の市民として、一刻も早い恒久的な停戦と占領の終結、この理不尽な暴力の終息を強く訴え」る声明を発表。宗教者に求めることは何か、との問いに対し、セーブザチルドレンジャパンの金子由佳氏は「パレスチナ問題は宗教問題ではないが、宗教者の取り組みが重要になる側面がある」とし、「平和を訴えていない宗教はないと理解している。そこを宗教者は声を大にして言ってほしい」と要望した。パレスチナ子どものキャンペーン代表で浄土宗僧侶の大河内秀人氏は「尊厳、自由や人権、平和をテーマに連帯することが信念や信仰の妨げにはならないし、連帯していくことは可能なこと。憎しみや欲や無知が私たちの一番の障害。それを乗り越えるために、信仰の力を活かしたい」と話した。
2024/10/10
宗門系大学サバイバル 愛知学院大学編 木村文輝学長に聞く 広い視野持つ僧侶を育成
明治期の1876年に大光院(名古屋市中区)内に開設された曹洞宗専門学支校を源流とする愛知学院大学(本部・愛知県日進市)。再来年の2026年に学校法人愛知学院として創立150年の節目を迎える。現在、1万1千人超が学ぶ10学部16学科、9大学院研究科などからなる中部地区最大級の総合大学に発展し、県内の社長輩出数で最多を誇る大学としても知られる(全国で18位、2023年の東京商工リサーチ調査)。一方で宗門子弟が通う曹洞宗の宗門大学という役割を担い、木村文輝学長は教師養成機関でもある文学部宗教文化学科を大学の基幹に位置付ける。木村学長に、育成目標とする僧侶像や縮小社会での宗門大学のあり方を聞いた。
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文学部など4学部が設置される日進キャンパスの広さは約50万平方㍍。東京ドーム11個分という広大なキャンパスの中央には大学シンボルの100周年記念講堂が建つ。自然豊かな構内にはグラウンド4つのほか、強豪で知られる硬式野球部の野球場やサッカー場、ゴルフ練習場など運動施設も充実しているが、注目したいのは坐禅堂だ。
国内の大学が保有する最初の坐禅堂として1980年に開単。曹洞宗の様式に基づく本格的な僧堂で、同大の教育理念を具体化するもう一つのシンボルだ。前門に掲げられる「選佛場」の扁額は大光院17世・梅嶺大枝(1731~1794)の筆で、曹洞宗専門学支校時代の草創期を伝えている。
毎月第2火曜日に開く「火曜参禅会」は開単以来の伝統で、学外からも広く参加者を募って活動が続けられている。坐禅堂と廊下でつながる建物が大学付置研究所の禅研究所。「学内における私の本籍地です」と話すのは木村学長だ。禅研究所の研究員がキャリアのスタートだった。学長となった今も机が置かれ、所属する文学部日本文化学科の授業でゼミも行っている。
宗教を教育の基幹に
同大には仏教学部は設置されず、宗門子弟の育成は文学部宗教文化学科が担う。過去10年間の入学者数は、2017年に定員70人を下回る69人が一度あった以外は70~80人台で推移。今年度は88人だった。そのうち宗門子弟数は毎年10人前後となっている。
学科名が表すように、宗教一般の幅広い理解が得られるカリキュラムが特色。宗学や禅宗史を中心にしながらも、西洋思想や現代社会と宗教の関わりを探る授業も開講する。東日本大震災などを機に問われるようになった仏教者の社会的役割という見地も踏まえ、時代の変化に対応できる広い視野を持った僧侶の育成を目指している。
宗教文化・仏教文化・禅文化の3分野があり、3年生の進級時にコースを選択する。宗門子弟向けの授業もあり、法式を修得する「行持の基礎」や法話を学ぶ「教化布教特講」といった実習を伴う講義を行っている。
「中東の紛争や米大統領選、チベット問題など現在の世界情勢は、宗教を見取り図に眺めると理解が深まる。今はもっと宗教研究が注目されるべき時代だ。しかし、その受け皿となる大学は少なく、私立では宗学が中心となってしまう。その点、宗教という大きな枠の中で仏教を見ることができるのが、本学の強みと言える」
木村学長はそう述べ、現代に宗教研究は重要だと強調する。宗教が後景に退く時代にあって、大学案内の冊子では文学部5学科の掲載順で同学科が最後という立場となっている中、「今こそもう一度、宗教・仏教学を教育の中心に据えなければならない。禅研究所は本学の柱であり、宗教文化学科は基幹として位置付けられねばならない」と力を込める。(続きは紙面でご覧ください)
2024/10/10
武蔵野大学 次期学長に小西聖子副学長 初の女性学長誕生へ
小西次期学長 武蔵野大(東京・有明)は4日、任期満了を迎える西本照真学長の後任に、小西聖子副学長を選任したと発表した。任期は2025年4月から4年間。1924年の創立以来、初の女性学長となる。
小西氏は1954年生まれの69歳。愛知県出身。東京大教育学部卒。筑波大医学専門学群を卒業した1988年に医師免許取得。筑波大大学院博士課程医学研究科修了。1999年に武蔵野女子大(現武蔵野大学)人間関係学部の開設に合わせて教授に就任。2021年から現職。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療が専門で、トラウマを乗り越える治療・持続エクスポージャー法を施術できる数少ない精神科医。2021~23年に刑法の性犯罪規定の見直しを検討した法制審議会の刑事法部会の委員も務めた。