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2025/5/15
天台宗 藤座主が比叡山御拝堂 座主職継承を宗祖に奉告 6月10日に傳燈相承式
浄土院・宗祖御廟に参拝する藤座主 天台宗総本山比叡山延暦寺(滋賀県大津市)は2日、藤光賢第259世天台座主(93)が比叡山全域(東塔・西塔・横川)の諸堂を巡る「御拝堂」を執り行った。2月1日に上任した藤座主は、宗祖伝教大師や諸仏諸菩薩に座主職の継承を奉告。宗派・本山の両内局や宗本僧侶らと祈りを捧げた。天台座主の就任に際して営まれる伝統厳儀に偶然居合わせた参拝者も、心を合わせて結縁した。
藤座主は午前9時40分、宗祖伝教大師が約1200年前に全ての命の平和を願って灯した「不滅の法灯」を護持する延暦寺一山の総本堂・根本中堂に入堂。絶対秘仏である宗祖謹刻の薬師如来像を奉安する内陣中央の壇へと進み、仏法興隆と宗祖の本願成就に努めると誓う諷誦文を奉読した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/5/15
都宗連×東京都 防災力向上協定を締結 平時から情報共有へ
都宗連と防災力の向上のための協定書を手にする佐原理事長と小池知事(©新宗連) 東京都宗教連盟(都宗連、佐原透修理事長)は4月28日、小池百合子都知事臨席の下、東京都庁第一本庁舎で「東京の防災力の向上のための連携協力に関する協定締結式」を実施した。都宗連から役員と関係者ら14人が出席した。
締結式では、都宗連の佐原理事長と小池知事が協定書に署名し、相互の信頼と防災意識の共有を確認。続いて、佐原理事長と小池知事がそれぞれあいさつを述べ、防災連携の意義を強調した。
佐原理事長は約4千の宗教法人を擁していることに触れ、「この度の協定により一時避難施設の設置のみならず、井戸水や緊急車両の駐車スペースの提供など、宗教施設が可能なあらゆる救援活動を迅速に開始するために、東京都と施設情報を共有し、日頃から対策を協議することが最重要」と語った。
小池知事は「宗教団体の皆さま方は地域に根差した活動を通じて、被災者に安心をもたらしている。大規模震災時に帰宅困難者の受け入れが大きな課題だが、様々な形での連携が可能かと思う。今回の協定をきっかけに、数々の取り組みをより具体化し、『備えよ、常に』の精神で首都の強靭化、首都防衛を進めてまいりたい」と前向きに応じた。
協定では災害発生時に一時滞在施設、災害時帰宅支援ステーション、避難所などとして機能する宗教施設の情報を共有し、平時から両者が防災連絡会等を活用して協議を行うことが定められている。さらに災害時には物資提供や人的支援などについても相互連携を進めていくことになっている。
協定の有効期間は令和8年(2026)3月31日までとし、自動更新の仕組みも盛り込まれた。
2025/5/15
新学長インタビュー 鶴見大学 高田信敬学長に聞く
大学資産を社会へ/仏教精神を医療に
学長となっても教員時代と変わらぬ白衣姿の高田学長 母体とする曹洞宗大本山總持寺の境内に建つ鶴見大(横浜市鶴見区)の学長に就任した高田信敬氏。「鶴見の町を門前町に」――大学と鶴見の町を長く見てきた経験から、大学活性化への目標をそう語る。「おもしろがることが大切。そんな気持ちを育んでいけたら」
34年間勤めた同大を退職後、大本山總持寺宝蔵館「嫡々庵」の館長を務めていた。学長室でも教員や館長だった頃と変わらぬ白衣姿で過ごしている。白衣から想像される学者像とは異なり、嫡々庵では来館者に展示品を解説して回る現場の人だった。
館長となってからは展示企画を季節ごとの開催に増やし、精力的に文化を発信。館長セレクトの併設展も注目を集めた。就任したのはコロナ禍の2022年。来館者用のスリッパなど館内のアルコール消毒も自ら進んで行っていた。
「館長だからと、椅子に座っていればいいわけじゃない。スリッパふきだってどんどん上達しておもしろくなる。嫌なことだってまずは身体を動かしてみる。動いた先に好奇心が発見されるのであって、その逆でない。研究者の仕事も一緒だ」。年季が入ったように見える白衣はそうした実践の証だ。
本山・大学・町の連携 移転後果たすべき願い
長く大学と鶴見の町を見続け、温めてきたアイデアがある。鶴見の町を門前町とすること。總持寺は明治期の火災で、1911年に開山の地・能登から移転してきた。近代に入ってからのことだったため、旧寺地のようには門前町が形成されなかった。
「それでも御移転から1世紀以上経つ。地域社会とともにある寺院の意義という観点からも果たすべき願いではないか。門前町化は、本山が創立した大学との関係からもアプローチ可能だ。大学がある学生街として振興を図る余地がある。本山と大学、町の連携は三者にとって価値があることだ。そのためにも本山との協力関係を強めていきたい」(続きは紙面でご覧ください)
2025/5/15
日本香堂が護国寺で記念香会 創業450年プロジェクト 香りの過去・現在・未来を聞く
三條西宗家が創作した組香「麗春香」を体験した香席 創業450年を迎えて「450プロジェクト 〝聞く〜awake your spirit〜〟」を始動した日本香堂グループは4月17日、東京都文京区の真言宗豊山派大本山護国寺で記念香会を開催。関係者を招待し「香の歴史・今・あした」をテーマにした贅沢な設えの香席で香りを聞く特別なひと時へと誘った。
小仲正克社長は日本の香文化への感謝の想いを表し「1日で日本の過去・現在・未来の香文化をお楽しみいただけるお席をご用意させていただいた」と歓迎。華道家の杉健太郎氏による室礼で雅な世界を創出。御家流香道の師範が香元をつとめ、裏千家による呈茶席で招待客をもてなした。
メインは重文の月光殿を会場にした「今を聞く」香席。御家流香道23世の三條西堯水宗家が創作した令和の組香「麗春香」がお披露目され、招待客がこれを体験。6つの香炉が順々に巡り、この香りを聞き分けるという遊びで、三條西宗家は「桜の花がちらちらと散っていく様子を思い浮かべてほしい」と語り、香りを聞き分けるコツなどもアドバイスした。450年を記念し、三條西宗家が同社保有の名香木から選出した銘々香『羅国しらべ』の香りも今回の組香に組み込まれ、その繊細で奥深い香りにふれる好機にもなった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/5/1
大本山室生寺 豊山派と室生寺派 合同で正御影供
川俣管長を導師に執行 豊山派、室生寺独立後初の公式参拝
室生寺本堂で川俣管長を導師に営まれた正御影供 奈良県宇陀市の真言宗室生寺派大本山室生寺(下村聖登座主)で4月21日、真言宗豊山派の川俣海淳管長・総本山長谷寺化主を大導師に正御影供が営まれた。同派の川田興聖宗務総長と内局ら12人も随喜し、室生寺派と合同で宗祖弘法大師に報恩感謝の誠を捧げた。豊山派管長と宗務総長が揃って公式に参拝するのは同寺が豊山派から独立した昭和39以来、初めてとみられる。
晴天の下、華やかな衣装を纏うお稚児さんを先頭に、室生寺派と豊山派の僧侶が境内をお練りし、正御影供を営む金堂・本堂・奥之院へと入堂した。本堂では川俣管長が導師を務め、金堂では室生寺派の網代智明前座主、奥之院では小田修史執事長がそれぞれ導師を務めた。川俣管長は表白で室生寺の縁起を紐解き、宗祖弘法大師への報恩謝徳の誠を捧げた。重ねて長谷寺と室生寺の古からの縁の隆盛を祈念し、弘法利人の決意を新たにした。
川俣管長㊨と下村座主 法要を終えた川俣管長は感謝の言葉と共に、室生寺座主を務めた祖父の丸山貫長師、「法類の大先輩」という慶雲海量師(豊山派初代管長)らの名前を挙げ、「大変思い出のある場所で、伺うのを楽しみにしており、懐かしい思いがします。本日を迎えられたことは誠に有難く、一生の宝になった」と感慨深く話した。下村座主も「新緑が目に鮮やかな好機。本日の晴天は正御影供のお祝いをして下さっているのではないかと感激致しました」と喜びを表した。
今回の法要は室生寺派から豊山派に依頼して実現した。昨年、奈良県宗務支所から85年ぶりに川俣管長が推戴されたことから、室生寺の山岡淳雄教化広報執事は「ご就任のお祝いとして、御導師をお願いしたところお受けいただけた」と説明。かつて真言宗豊山派に所属していたことや、川俣管長の自坊である岡寺と長谷寺、室生寺、安倍文殊院による「奈良大和四寺巡礼」を通した親交もあった。
昭和39年に豊山派から室生寺が独立するまでは、歴代の豊山派管長が任期中に室生寺の正御影供の導師を務めていた歴史もある。川田総長は今回の合同法要に「伝法院流の流れをくんでいるのでお経も所作も同じ。これまでも様々に交流があったが、これからも互いに良い関係を保っていきたい」と展望した。
2025/5/1
日蓮宗所長会議 グランドデザインを提示 11分野31項目 宗門再生と興隆の道へ
挨拶を述べる田中総長 日蓮宗(田中恵紳宗務総長)は4月23・24日、東京都大田区の宗務院で全国宗務所長会議を開催した。全74管区の宗務所長に「日蓮宗長期総合計画―グランドデザイン」を提示した。田中総長は、グランドデザインに基づいて各々の立場で諸課題に取り組むことで「日蓮宗の再生、興隆の道が拓かれるものと信じている」と述べ、闔宗に向けて危機感の共有と宗門存続の努力を呼びかけた。
グランドデザインは、「漠然とした危機感では漠然とした対策しか取ることができない」との考えから、数字にこだわった。少子高齢化にともなう檀信徒の減少などが宗門に及ぼす影響を数値化。将来の教師数や檀家数の著しい減少を予測し、機構改革の必要性にまで言及した提案書を昨年『宗報』11月号に掲載した。
提案書を受けて、「宗門再生」のための布教伝道と組織機構の指針を『宗報』3月号に同封。宗務行政の場では今回の所長会議でお披露目となった。今後、宗門、寺院教会結社、教師がそれぞれの立場で考え、取り組むべき指針とする。
提示されたグランドデザインは、布教伝道と組織機構の2部門で計11分野31項目を設定。布教伝道では宗義や法華経・御題目を分かりやすく伝える活動、立正平和、国際伝道計画(グローバルブランディング)など5分野14項目。組織機構では宗門行財政改革、DX推進、教育指導者の養成、在家出家の推奨や支援、危機管理体制の構築など6分野17項目を提示した。関係委員会などで個別の目標設定を検討し、具体的な施策を実行に移していく。
所管説明で総長室の秋山文裕室長は「今後、このグランデザインに基づき取り組むべき課題を検討し、策を講じていく」と述べ、5月1日の宗門機構検討委員会から議論を始めると話した。(続きは紙面でご覧ください)
2025/5/1
第3回庭野平和賞奨励賞贈呈式 コロンビアのモレーノ氏に 〝私たちの活動が認められた〟
法輪閣の十一面千手千眼観音菩薩像の前で行われた贈呈式 第3回庭野平和賞奨励賞を受賞したコロンビアの人権擁護活動家、エリサベット・モレーノ・バルコ氏を迎えての贈呈式が4月12日、東京・杉並の立正佼成会法輪閣で挙行された。主催団体である(公財)庭野平和財団の庭野浩士理事長から表彰状と副賞(200万円)が手渡された。
法輪閣の十一面千手千眼観音菩薩像の前で行われた。庭野理事長は「宗教的精神を基盤とした平和のための実践を通し、地域に根ざしつつ、人々の生活にとって身近で具体的な課題に取り組み、人々の幸福と平和な社会を創出するためにたゆまぬ努力を続けておられます」と読み上げ、表彰状を贈った。
受賞者挨拶でモレーノ氏は、出自であるアフロ・コロンビア(黒人奴隷をルーツとする人々)はじめ先住民、農民など虐げられてきた人々の歴史を「抵抗の歴史であり、自分たちの領土を愛する者たちの歴史だった」と説明。武装勢力や麻薬組織により人道的危機に直面していると明かし、「私たちは民族や文化的アイデンティティーにも力を入れている。というのも、平和は単に武器が存在しない状態だけではなく、すべての人が尊厳ある生活をできることにあると考えているからです。それには自分たちの歴史をきちんと認識でき、希望を持って将来の生活を設計できるようにしなければなりません」と主張した。
今回の受賞には、「私たちの活動を認めていただけたことは、私たちがあげた声が人々にとって重要であり、私たちの闘いが国境を越えているとわかった。私たちが歩んできた道が意味を持っていることも理解できた。これで道が終わるわけではない」と活動に自信を深めた。
モレーノ氏は1968年生まれ。「チャバ」の愛称で住民たちから慕われ、地元チョコ県の「チョコ連帯民族間フォーラム」のコーディネーターを務める。カトリック。今回、初来日し、広島にも足を運んだ。
なお、第3回奨励賞はタイの人権擁護組織、ムスリム弁護士センターも受賞している。
2025/4/28
茨城 雨引山楽法寺でマダラ鬼神祭 鬼神に感謝し、息災祈願
石段を駆け上がる白馬とマダラ鬼神 茨城県桜川市の真言宗豊山派雨引山楽法寺(川田興聖住職)で13日、日本二大鬼祭の一つ「マダラ鬼神祭」が行われ、鬼神への感謝と参拝者の家内安全や無病息災が祈念された。雨模様だったが多くの人が参拝し、福をもたらす破魔矢や撒き餅を持ち帰った。
戦国時代に兵火で寺が焼失した時に、マダラ鬼神が大勢の鬼たちを引き連れて仮本堂を再建したとという故事から鬼神に感謝を捧げる「マダラ鬼神祭」が始まった。
花火の音が祭りの始まりを告げると、マダラ鬼神を乗せた白馬と鬼たち、華やかな衣装を纏ったお稚児さんや寺侍、川田住職をはじめとする僧侶がお練り。祭りの大きな見どころの一つ、マダラ鬼神が跨る白馬が薬医門をくぐり本堂へと続く145段の石段を一気に駆け上がると参拝者からも「すごい!」「かっこいい!」と歓声が上がった。(続きは紙面でご覧ください)
2025/4/28
ほとけのファッション① ライフスタイルに仏教盛り込む 新作は千手観音の手にスイーツ 静岡県曹洞宗浄元寺 服部満瑛さん・Buddhism Designs創設者
春の新作「南無大悲観世音」ロングTシャツを着る服部さん 仏足石をフロントに配したパーカー。痴猪・瞋蛇・貪鶏が互いに喰らいあっているワイルドな絵がたまらなくかっこいいロングTシャツ。これら仏教的意匠をファッションに斬新に取り込んだブランドが、「Buddhism Designs」だ。創設者の服部満瑛さん(36)は曹洞宗僧侶。「日常に溢れている仏教をもっとみんなに知ってほしい」との思いから、ライフスタイルとしての仏教を服飾から追求する。
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服部さんは静岡市の浄元寺に生まれた。「師父からはお坊さんになれなんて言われたことはなかったけれど」檀家との巡礼などで仏教に親しんでおり、駒澤大学に進学した。元々ファッションを趣味としていた服部さんは、勉学やスポーツの傍らそちらの方面にも熱中。「原宿とかにはよく行きましたよ」と懐かしむ。この頃の友人が後にブランドを立ち上げてからも助けてくれている。
大学を卒業し、大本山永平寺に上山したのが2011年2月。5年の修業の間には、同安居の仲間の下山を何度も見送った。正直、寂しかった。だが師父から手紙で諭された「一人になってからが本当の修行である」との言葉が支えになった。
ある日、自坊からの手紙の中に入っていた、地元青年会の活動冊子を読んだ。市街地のテナントを借りて坐禅や写経、法話などをしている、お寺を飛び出て生活に密着した布教をする先輩たちの姿があった。自分に何かこうした活動ができるだろうかと考えると、ファッションが結びついた。「毎日着る服に仏教がデザインされていたら、仏教がライフスタイルになるんじゃないか?」だが、修行中の身、もちろんそれを即実践に移すわけにはいかなかった。
永平寺では、最後は承陽殿(高祖祖廟)の護持を任された。道元禅師の遺徳を肌身で体得し、感極まって福井から静岡までの333キロの道を歩いて帰坊。僧衣で網代笠の青年が歩いていると、ちょっと気になる人も多かったようで「道中、まったく知らないお婆さんが『ご飯食べてきなさい』と家に上げてくれたり、ヒッチハイクに乗せてくれる人もいたり。優しさが心に染みました」。(続きは紙面でご覧ください)―不定期連載―
2025/4/24
同宗連でハラスメント発生 戸田議長「慚愧に堪えない」
議長報告でハラスメント事案を明らかにした戸田議長 「同和問題」にとりくむ宗教教団連帯会議(同宗連)の第45回総会が15日、東京・芝の曹洞宗檀信徒会館で開かれた。戸田光隆議長(曹洞宗)が昨年の研修会中にハラスメント事案が発生したと報告し、「主催者責任は議長である私にあり、人権学習会として万全の責務を果たせなかったことは誠に慙愧に堪えない」と述べた。
同宗連事務局は詳細を明らかにしなかったが、関係者によると、男性僧侶が女性の参加者に対しハラスメントにあたる不適切な言動を行った。男性僧侶は所属教団の人権啓発部門のトップで、11月30日付で辞任している。
戸田議長は昨年度の事業に関する議長報告の中で、ハラスメント事案の発生を明らかにした。現在も被害者に対して心のケアを続けているとし、「このことは決して風化や形骸化させるべきではない」と強調。「再発防止策を講じるとともに、ハラスメントに関する学びを互いに深めることを、ここにあらためて強く要望したい」と話した。
総会では次期(23期)の役員が選出され、議長教団は高野山真言宗に決まった。議長は藤本善光氏(同宗社会人権局長)、事務局長は雨貝覚樹氏(同局人権課長)が務める。
藤本氏は「重要な役目を担うことになり、身が引き締まる思い」と述べ、「多様化する差別問題に対し、活動を一層推進していかねばならない。さらなる連帯をもって協力いただきたい」と語った。
開会にあたって、「狭山事件」の冤罪を訴え、再審を求めてきた石川一雄氏が3月11日に亡くなったことを受け、参加者一同で黙祷が捧げられた。戸田議長は「志半ばで逝去され、誠に痛惜の念に堪えない」と無念の思いを述べ、「第4次再審請求に向けて私たちも改めて心を一つに取り組んでいかねばならない」と力を込めた。
2025/4/24
真言宗豊山派大本山護国寺 第55世貫首に関本隆人氏
奉告法要に臨む関本新貫首 真言宗豊山派大本山護国寺(東京都文京区)の第55世貫首に関本隆人氏が就任した。4月11日に宗派から任命され、本尊の如意輪観世音菩薩の月次開帳日である18日には晋山奉告法要が営まれた。
関本新貫首を導師に営まれた法要で、新貫首はご本尊に法灯継承を奉告し、両祖大師をはじめ歴代先師に報恩の誠を捧げた。居合わせた参詣者も手を合わせて新貫首の晋山を見守った。法要後には、歴代貫首が眠るお墓に参拝した。
昨年11月28日に逝去した小林大康54世貫首の後を継いだ関本新貫首は昭和29年(1954)5月9日生まれ、70歳。自坊は千葉県船橋市の圓蔵院。大正大学仏教学部卒業後の昭和51年に護国寺に奉職し、以来、各部部長や院代を務め、先代の小林貫首就任と共に執事に就いた。本山特派布教師、千葉5号支所教区長や船橋市仏教会会長などを歴任。
奉告法要を終えた関本新貫首は「うれしいというよりは、歴代住職が築き上げてきた尊い本山をこれから守っていかないといけないという重圧の方が強い。それでも、指名をいただいた以上は、山内僧侶の力を借りながら守り通していく。次の世代につなげるようにするのが私の役目」と抱負を述べた。本尊の開帳日に合わせた奉告法要となったが、「山内の皆がやりましょうということで準備してくれた」と感謝した。
2025/4/24
増上寺三大蔵「世界の記憶」に ユネスコが正式登録 デジタル公開が後押しか
会見で「大変うれしい」と語る川中総長(中央) ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」国際登録を目指し、浄土宗と大本山増上寺が共同申請していた「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」(増上寺三大蔵)が17日、パリで開かれたユネスコの執行委員会で正式に決定した。18日には東京・芝公園の増上寺で記者会見が開かれ、関係者が喜びを語った。決定日は三大蔵を収集し寄進した徳川家康の命日だった。
申請者である浄土宗の川中光敎宗務総長は、「大変うれしく思っている。法然上人による浄土宗開宗850年が昨年だった。それを迎えるために三大蔵をウェブ公開しようと電子化してきた。そのことも後押ししたのではないか。仏教の中心となる大蔵経。仏教が全世界に広がることを願っている」と述べた。
小林正道増上寺執事長は三大蔵を収集し寄進した徳川家康の命日が前日(4月17日)であることを紹介し、「昨日は、家康公のご命日。この日に正式決定がなされたことに何かご縁があると深く感じている」と感慨深げに語った。(続きは紙面でご覧ください)
重文、『大正蔵』の定本に
「世界の記憶」となった増上寺三大蔵
17世紀初頭、徳川家康が日本全国から収集して大本山増上寺に寄進した三種の木版印刷の大蔵経。その総数は以下の約1万2千点に及ぶ。
①中国、南宋時代(12世紀)に開版された思渓版大蔵経5342帖
②中国、元時代(13世紀)に開版された普寧寺版大蔵経5228帖
③朝鮮、高麗時代(13世紀)に開版された高麗版大蔵経1357冊
異なる時代と地域の大蔵経三種が一カ所にあるのは世界でも増上寺だけ。漢字文化と印刷文化の面からも高い価値を有している。いずれも国の重要文化財。
これらを定本・校本として明治時代には『大日本校訂大蔵経』が編纂され、大正から昭和にかけては『大正新脩大蔵経』が出版され、全世界の仏教研究の基礎をなしている。増上寺三大蔵と『大正新脩大蔵経』はウェブ公開されている。
2025/4/24
沖縄に吹いた曹洞の門風 43年前「禅センター」開設
5月15日 沖縄で梅花流大会と終戦80年法要
禅センターがあったあさのうら保育園(浦添市)。9年前まで玄関横に掲げられていた看板を手にする安里巧園長終戦80年となる今年、戦争末期に地上戦が行われた沖縄県で初めて、曹洞宗は梅花流全国奉詠大会を開催する。曹洞禅を伝えようとかつて設立された「曹洞沖縄禅センター」の願いを継ぐあさのうら保育園の子どもたちも詠讃歌を奉詠する。
奉詠大会は、沖縄が本土復帰を果たした5月15日に沖縄アリーナ(沖縄市)で開く。大会総裁の南澤道人管長(大本山永平寺貫首)を導師に、「終戦80周年平和祈念法要」も合わせて執り行う。各管区と海外梅花講の発表後、園児約20人が「彼岸御和讃」を奉詠し、念仏踊りが起源とされる沖縄の伝統芸能エイサーも披露する。
沖縄戦では、住民を巻き込む激しい地上戦で日米合わせて20万人以上が犠牲となった。奉詠大会の前日には、服部秀世宗務総長や梅花流正伝師範らが沖縄平和祈念堂(糸満市)で献花し、追悼の祈りを捧げる。
園長が布教を志す
あさのうら保育園(浦添市)は曹洞宗保育連合会の加盟園。曹洞宗との関係が始まったのは、現在2カ寺ある沖縄県に宗門寺院が初めて設立された1994年を遡ること12年。1982年7月17日、同園内に布教拠点となる「曹洞沖縄禅センター」が開設され、沖縄に曹洞の門風が吹いたときだった。
翌年の1983年8月の宗報に、その経緯を語った故・無着成恭氏の記事がある。沖縄戦の戦没者を弔うため、「わが宗門としては、どうしても曹洞宗の寺院を沖縄にもたなければいけないと考えていた」と当時、沖縄県内に1カ寺もなかった曹洞宗の願いを説明。各宗派が沖縄で教線を張る中、「沖縄における曹洞宗の原点が欲しい! これが宗門の願いでした」と強い思いを述べている。
そうした中、曹洞禅を沖縄に広めたいと宗務庁を訪ねてきたのが安里学園(現あさのうら保育園)の安里弘園長だった。凄惨な地上戦を経験した沖縄には、宗教に基づく教育が必要だと道を求め、曹洞禅に行き着いたのだという。(続きは紙面でご覧ください)
2025/4/21
日本香堂グループ450年 香り〝聞く〟プロジェクト始動
グループアイデンティティ発表 香りと旅する
篠原さんらゲストを招いて行われた発表会 お線香・お香・フレグランスブランドを国内外で展開する日本香堂ホールディングス(本社:東京都中央区/小仲正克社長)。今年、日本香堂グループ450年を迎え4月8日より「450プロジェクト〝聞く~awake your spirit~〟」を始動した。同日に東京会館(千代田区丸の内)でプレス発表会を行い、小仲社長は「『香りと旅する』という理念のもと、『世界のホームフレグランスをリードする』という経営ビジョンを実践していく」と抱負を語った。
450年の歴史を重ねてきた香の名跡「香十」を継承し、薫香技術と香りの歴史を担い、文化を守り続けてきた日本香堂グループ。小仲社長は「日本の香文化そのものにも感謝を込め、多くの方々が香文化を深く理解し、業界の発展につながる一年にしたい」と意欲を示し、プロジェクトの概要を説明。来年3月まで1年をかけ「聞く」をテーマに過去・現在・未来の3つの視点で新事業や新製品を発表する。精神的な価値や心の充足が求められる今、「香りを聞く」という体験を通じて感性を深く研ぎ澄ます機会を提案する。
創業以来の精神「アドベンチャー精神」「価値創造」「美質」を受け継ぎ、世界を見据える企業としての新たなグループアイデンティティ『香りと旅する』やロゴも発表。ロゴはグローバルかつ長期にわたって通用するものをめざし60年ぶりにリニューアルされた。
新たなロゴ 450プロジェクトの第一弾は「過去」への視点をテーマに、日本の香文化の歴史をたどる書籍『日本の香』(誠文堂新光社)を刊行するほか、平安時代の香りを再現した〝六種の薫物〟や香十の新作お香『高井十右衛門』などを発表。沈香の薫りの最上位ブランド「伽羅富嶽」から『雲』と『円』も発売する。
発表会では新たなロゴを手掛けたアートディレクターの葛西薫さん、デザイナーでアーティストの篠原ともえさん、日本香堂調香師の堀田龍志さんのトークセッションも。葛西さんはロゴデザインについて、日本香堂社員と話し合うなかで「アドベンチャー精神と美しさが共存すると言われている気がした」と回想。「目に見えるものだけでなく、見えないもの、それが醸すものを感じることがデザインや香りの力かもしれない」との気づきを話した。堀田さんも調香を「絵を描くこと」に譬えながらデザインとの共通性に言及。「頭の中のパレットに1千品の原料情報が詰まっている」と奥深い香りの世界を紹介した。
2025/4/21
法華宗本門流 終戦80年/昭和法難84年 今年も千鳥ヶ淵で追悼法要
金井総長(中央)を導師に営まれた追悼法要 終戦80年を迎え、法華宗本門流は11日午前、東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑で先の大戦の戦没者・殉難者および万国戦没者の諸精霊を供養する追悼法要を金井孝顕宗務総長を導師に、内局5部長が出仕して厳修した。
六角堂前に曼荼羅本尊を安置。雨天対策のテントが設営されたものの、穏やかな天候のもとで行われた。法華経を読誦し、指名焼香の後、宗門僧侶や檀信徒ら約50人が順次焼香し、戦争殉難者を悼んだ。一般参加者が飛び入りで焼香する場面も見られた。
法要後、金井総長が挨拶。宗務総長に就いてからウクライナとロシアの戦争が始まったとして、「足かけ4年となったが、まだ続いている。収束の目処は付かず、米国が停戦にむけて苦労しているが進展していない。それにまた別のところで戦争が始まっている。いつまで経っても戦争が終わらない。一般の人たちも大勢亡くなっている」と嘆いた。
そして戦争が終わらない背景に「親や家族を思う心が欠けているのではないか」と問いかけ、「親を思い、先祖を敬う気持ちを持てば、戦争がなくなり、平和になるのではないか」と身近なところからの実践を主張した。
法要開始前には伝道隊の7人が団扇太鼓を手に墓苑周辺を唱題行脚。桜の名所を訪れていた外国人観光客たちは珍しそうに眺めていた。
法華宗(当時は本門法華宗)は昭和16年(1941)4月11日、いわゆる「曼陀羅国神不敬事件」で幹部6人が兵庫県警の特高課に検挙された。同宗では「昭和法難」として、毎年この日に千鳥ヶ淵で追悼法要を営んでいる。今年は昭和法難84年にあたる。