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2024/11/21
総本山醍醐寺 1150年慶讃大法要営む 次の50年へ法流を継承 上醍醐の復興も宣言
竪者(手前)を中心に厳しい教学問答が繰り広げられた 真言宗醍醐派総本山醍醐寺(京都市伏見区)で14日、開創1150年慶讃大法要が開白した。貞観16年(874)に聖宝理源大師により開創されて以来、三論と真言密教と修験道の3つの法流を護持し続けてきた醍醐寺。そのすべてによる法要が盛大に営まれ、次の50年へ法流を継承することを壁瀬宥雅座主を筆頭に一山、全宗侶で誓った。
初日は朝9時、下醍醐の清瀧宮拝殿で鎮守法楽大般若経転読が壁瀬座主を導師(大原弘敬執行長御手替)に営まれ、大原弘敬執行長を導師に総鎮守である清瀧権現に無魔成満を祈願した。続く竪義会(りゅうぎえ)平座理趣三昧法要は壁瀬座主を導師に金堂(国宝)で営まれた。
午後は約100人の修験者と大原執行長が上醍醐を登嶺した。修験者は「百螺祈願」の幟を掲げ、法螺貝の響きを山中に轟かせながら行脚。約3キロの道を踏破しながら理源大師の足跡を偲んだ。五大堂の前に設けられた結界の中では、理源大師が日本で初めて修法したという柴燈護摩供が営まれ、功徳ある煙がたなびき、燃え盛る浄炎の中に世界平和などあらゆる願いを込めた護摩木が投じられた。
大原執行長は「今日をもちまして聖宝理源大師様に上醍醐を再び復興させることを宣言させていただきます」と述べ、2008年に落雷で焼失した准胝堂の再建などに取り組むことを誓願。多くの人の「心のふるさと」である聖地を蘇らせると力強く挨拶した。
また上醍醐の開山堂では如意輪観音供ならびに醍醐寺第1世観賢大徳の1100年忌平座理趣三昧法要が大塚静遍大僧正を導師に営まれた。
顕教の法要竪義会営む
開白日の午後2時から、下醍醐の金堂では竪義会が営まれた。開創大法要に向けて、約400年前に途絶した三論宗の論義法要を華厳宗大本山東大寺(奈良市)の協力を得て復興。弘法大師諡号下賜1100年慶讃法要初日の令和3年11月26日、東大寺で三論宗を学んだ開山・聖宝理源大師以来の顕密兼学の伝統を蘇らせた。以後、毎年の厳修と研鑽を重ね、この日で4回目。招待客ら約120人が参列した。(続きは紙面でご覧ください)
2024/11/21
豊山派宗会 僧侶育成と布教を強化 川田内局初宗会 執務10目標を提示
施政方針を示した川田総長 真言宗豊山派(川田興聖宗務総長)の第164次宗会通常会が12・13日に東京都文京区の宗務所に招集された。7月に就任した川田内局の初の宗会となり、施政方針では「僧侶、檀信徒一人ひとりが『豊山派で良かった』と思える宗派を目指す」と基本理念を示したうえで、僧侶育成と布教の強化を目指す10の執務目標を掲げた。
川田宗務総長は基本理念として「豊山派の僧侶はもちろんのこと、檀信徒一人ひとりが『豊山派で良かった』と心より思っていただける宗派を目指すこと」と提示。弘法大師の『秘蔵宝鑰』、興教大師の「密厳院発露懺悔文」の内容に言及し、両大師の教えから「僧侶の育成」の重要性を導き、「大きな慈悲の心を持つ優れた僧侶によって御教えを弘めることにより、檀信徒に安寧と幸福をもたらすのだと確信している」と述べた。
これを踏まえた執務目標10項目を以下のように列挙。①布教方針の明確化。②教育制度・教師資格の検討③各種講習会の幅広い受講の促進とデジタル配信での受講の研究。④寺院の後継者ならびに「法縁のつどい」の再検討。⑤総合保障制度の更なる充実と新制度の研究。⑥事相専門道場の再検討。⑦青少年育成と豊山流大師講の講線拡張。⑧宗務所職員の待遇検討。⑨同和推進・人権擁護の研修会の積極的な取り組みと、昨今特に留意が必要なハラスメント問題の研究。⑩宗外寺院との包括関係の設定。(続きは紙面でご覧ください)
2024/11/21
徳島県海陽町城満寺 初開道場に歌碑を建立 曹洞宗が瑩山禅師遠忌記念で
梅花流詠讃歌を刻んだ歌碑の前で話す田村住職 今年迎えた太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌を記念し、曹洞宗は瑩山禅師初開道場・城満寺に梅花流詠讃歌を刻んだ歌碑を建立し、徳島県海陽町の現地で12日、除幕式を執り行った。全国各地の僧侶や檀信徒ら約150人が、四国に教えを伝えた太祖に報恩の誠を捧げた。
四国最古の禅寺・城満寺は正応4年(1291年)、瑩山禅師が阿波国の海部郡司から招かれて開山。授戒会を開き、曹洞宗の教えを初めて四国に伝えた。
歌碑は、境内の丘の上に建つ瑩山禅師墓所「御霊塔」への登り口付近に建立。大本山總持寺(横浜市鶴見区)の石附周行貫首の筆で、城満寺での授戒会を詠んだ「太祖常済大師瑩山禅師修行御和讃(菩提)」の4番を刻んだ。石は徳島県の銘石・青石で、国指定名勝の石庭で名高い国分寺(徳島市)が寄贈した。
この日、紅白幕の覆いが外されると、髙橋英寛伝道部長が筆を手に点眼を執行。「歌碑の建立によって皆さまが広く梅花流に関心を寄せ、瑩山禅師さまのみ教えを伝え、分かち合う機会を増やしてもらえたら」と挨拶し、城満寺の隆興を願った。
法要では、全国各地から参集した特派師範らと地元3カ寺の梅花講員が、厳かに詠讃歌の調べを響かせた。高野山金剛講の徳島宍喰支部の講員も特別に参列し、御詠歌を献詠した。
城満寺の田村航也住職は宗務庁や参列者に謝意を述べた上で、1925年の瑩山禅師600回大遠忌以降、50年ごとの大遠忌の節目に復興が進められてきたと回顧。「700回大遠忌には歌碑が建立され、私たちが集ったことを証明するものとなった」と力を込め、「瑩山禅師が城満寺に住持したことでつながったこのご縁をさらに広げ、仏法の光で全世界を照らしていきたい」と決意を語った。
2024/11/21
天台宗 性加害で懲戒審理開始へ 師僧の大阿闍梨も対象に
女性僧侶の叡敦(えいちょう)氏(50代)が四国の天台宗寺院の男性住職(60代)から性暴力などを14年間にわたって受けてきたと告発し、加害住職とその師僧である大僧正(80代・滋賀県内の男性住職)の僧籍剥奪を求めている問題。懲戒事犯を調査してきた天台宗務庁(阿部昌宏宗務総長/滋賀県大津市)は11日、宗内の司法機関である審理局に付託して加害住職と大僧正の審判を行うと発表した。
1月22日付で申し立てを受理した宗務庁は、双方からの聴き取りや現地訪問等による調査を実施。結果、「本宗の懲戒規程第11条による懲戒審理が相当と判断し、審理局に審理請求を行」った。
懲戒規程第11条には、最も重い処分である「擯斥(ひんせき)」(僧籍剥奪・除名)と「罷免」が下される「懲戒事由」を列記。今回の場合、「本宗の教義に異説を立てて信仰を惑乱した者」「教師の本分を忘れ非違の行為をした者」が該当する。叡敦氏の大僧正への信仰心を悪用して性暴力を続け、偽りの教義によって心身を束縛することで長期間抵抗不能の状態に陥らせる信仰(スピリチュアル)虐待(アビューズ)が、宗内司法の場(非公開)で審理される。
信仰虐待の鍵となる存在が、叡敦氏が子どもの頃から「生き仏」と尊崇してきた大僧正。叡敦氏の親族で日本仏教を代表する苦行・比叡山千日回峰行を成し遂げた数少ない北嶺大行満大阿闍梨の1人だが、繰り返し助けを求める叡敦氏を宗教的に恫喝した上で、弟子による性加害を助長させた責任が問われている。僧階最高位の大僧正が懲戒審理対象になるのは極めて異例で、北嶺大行満大阿闍梨は前代未聞の事態。
叡敦氏は、私は告発したことで何もかも失い、重い複雑性PTSDの症状だけが残りました。その上、180度違う生活を強いられています」と吐露。「けれど加害行為をした本人たちは、何一つ変わらずに今も僧侶としての威厳を保ち、参拝者の祈祷を続けています。この不条理で圧倒的な違いに苦しんでおりました」と胸中を明かし、「でも仏様の前では誰もが平等であることが伝わり、ようやくスタートラインに立たせてもらえました。審理局内でも同悲同苦の心で、天台宗は正しい判断を必ずして下さると信じています」と話した。
2024/11/14
インタビュー 全日本仏教会(第36期) 池田行信理事長に聞く コミュニティ復興 国際性発揮 仏陀の和の精神
いけだ・ぎょうしん/1953年生まれ。龍谷大学大学院文学研究科博士課程(真宗学)修了。浄土真宗本願寺派宗会議員(5期目)。総務・総長を歴任。自坊は栃木県那珂川町の慈願寺。 今年6月、(公財)全日本仏教会(全日仏)の第36期理事長に前浄土真宗本願寺派総長の池田行信氏が就任した。事務総長経験者(第27期)であり、伝統教団および宗務行政に通じている。全日仏の舵取り役となった池田氏にインタビューした。
――まずは能登半島地震被害に続き、9月には豪雨災害に見舞われた被災者や被災寺院に向けて。
池田 複合災害と言えるでしょうが、一日も早い復興を願っています。HPに加盟団体の災害対応を掲載していますが、合わせて全日仏としても日本宗教連盟(日宗連)を通じて政府に対して要望などを伝えています。
事前に頂いた質問に「被災寺院はコミュニティー復興にどのように関わっていくのか」というのがありました。
(編集部注 日宗連が石川県に提出した要望書の項目に「熊本地震の事例と同様に地域コミュニティ施設等再建補助金を復興基金の活用事業に含めること」とある。熊本県の場合、地域コミュニティ施設にはお寺や神社が含まれている)
池田 災害によって壊れたコミュニティ再建を議論する前に抑えておくことがある。皆さんが考えるコミュニティはどんなものなのか、と。寺院デザイン代表の薄井秀夫さんの著書『葬式仏教』(産経新聞出版社)が参考になります。もともと農耕を中心とした日本は定住社会で、お墓を維持管理できる環境にあった。一方、遊牧民などの非定住社会は1カ所にとどまらないのでお墓にこだわらない。日本は戦後、産業構造の変化もあって向都離村により定住社会から非定住社会に移行してきた。お墓の引っ越しがそれを表してもいる。
私は田舎で育ちましたが、小さい頃からよく言われたのが、あなたのおじいちゃんにお世話になりましたとか、おばあちゃんに裁縫を習いましたとか。門徒さんがお風呂を借りに来ることもありました。お醤油の貸し借りもあった。こうした付き合いは農耕型定住社会だからこそできるのであって、高齢化、過疎化が進み、プライバシー意識が高くなってきた現在では、田舎といえども難しい。
農耕型定住社会をモデルにコミュニティ復興をイメージしているとすれば、リバイバリズム(復古主義)でしかない。ある程度は可能でしょうが長くは続かない。ですから一口にコミュニティ復興と言っても、そのコミュニティとは何かを問い直す必要がある。
宗教界におけるコミュニティ復興は信仰だと思います。災害で故郷を離れたとしても菩提寺と門徒さんが信仰でつながっている関係性です。災害時に限りません。地縁・血縁とは異なる信仰を基盤としたコミュニティがあってもいい。(続きは紙面でご覧ください)
2024/11/14
大谷光真前門主『死刑制度を問う』刊行 一石投じ議論促進を期待 「命で償え」論は破綻
浄土真宗本願寺派(西本願寺)の大谷光真前門主がこのほど、『死刑制度を問う―仏教・浄土真宗の視点から』を春秋社(東京都千代田区)から刊行した(発行は11月20日)。釈尊の教えに言及した上で「死刑制度は怨みに報いるに怨みを以てする制度」と明記。賛成派が主張する「命で償え」論は破綻しているとも指摘した。全日本仏教会(全日仏)会長や全国教誨師連盟総裁を経験した前門主の同著は、仏教界・宗教界はじめ国民世論に一石を投じる形になりそうだ。
同著は、序論に釈尊の言葉を取り上げる。「生きものを(みずから)殺してはならぬ。また(他人をして)殺さしめてはならぬ。また他の人々が殺害するのを容認してはならぬ」(中村元『ブッダのことば スッタニパータ』)を掲げ、「仏教が示す倫理の根本」と位置付ける。
この釈尊の言葉に支えられながら死刑制度に対して「日本人として思考を深める必要があります」と議論の深化と促進を要望している。
なぜ「思考を深める必要」があるのか。同著の根幹をなす参考文献の一つに『死刑廃止論』がある。著者は刑法学者の故団藤重光氏(元最高裁判事・東大名誉教授)。その中で「積極的な廃止論者になったのは、最高裁判所に入って、実際に死刑事件を担当するようになってから」と述べている。前門主は「刑法の第一人者でさえ、そうなのですから、大半の日本人は実情を知らないまま、深く考えないまま、死刑制度を支えているということになるでしょう。それをよいことに、世論の支持を口実にして、政府が死刑制度を維持しているのではないでしょうか」と主張する。
「命を奪った者は命で償え」論には、▽実際には命で償っていない殺人犯が多い、▽一人で複数の命を奪った者と複数で一人の命を奪った場合、どの範囲まで命で償うのかを決めるのは裁判官の主観が大きい、▽国内殺人事件の約半数は親族縁故者によるもので、嬰児殺しや介護疲れ殺人の加害者に「命で償え」論は適用されていない――等を論拠に「自分の命で償えという論理は破綻している」とした。
そのほか(遺族)感情、憲法・刑法・警察・検察・裁判を含む刑事司法、実際に起きた冤罪事件、教誨師、人権、宗教倫理といった多角的な観点から死刑制度の問題性に論及している。
「おわりに」では、「死刑の本当の理由は、国家権力に逆らったことが根本ではないでしょうか。独裁国家で死刑が多いことを考えると、殺人に対して、命で償うということより、国家に反逆したから死刑になるということが主に見えます」と記し、死刑制度は国家権力保持のためにあるとの見方を示している。
大谷光真前門主は1945年生まれ。1977年から2014年まで第24代門主。全日仏会長や全国教誨師連盟総裁を歴任した教団トップが死刑制度について態度を明確にしたのは珍しい。
2024/11/14
曹洞宗関東管区講習会 平岡氏、妻帯禁止を提言 布教こそが僧侶の進む道
日本仏教の未来を巡って講演した平岡氏 曹洞宗関東管区教化センターの布教講習会が17・18の両日、東京・芝の檀信徒会館で開かれた。今年度のテーマは「未来を考える」。初日に京都文教大前学長の平岡聡・同大教授が日本仏教の前途を巡って講演した。妻帯禁止など戒律の復興を提言するなどし、出家と在家の境目となるのが利他の実践だと指摘。「布教をしなかったら坊さん失格だ」とこれからの僧侶が進むべき道を語った。
平岡氏は「日本仏教に未来はあるか」の題で登壇。特異な展開を遂げてきた日本仏教の問題点を提示し、戒律の不在についても取り上げた。
大乗戒壇の設立によって、戒体をもたらした鑑真以来の具足戒の伝統が途絶えたことで日本仏教から僧宝が消失したと述べ、「三宝が成立していない。異常事態だと言える」と強調。戒律の不在が教団の独自性につながって教祖信仰を生み出し、原理主義にも結び付くと懸念を示した。
僧侶の妻帯にも言及し、「守るべき家族がいる中でダルマを大事にする生き方ができるのか」と問題提起。エイズの末期患者が差し出すただれた手を前に、上座部の僧侶はためらいなく握り返した一方で、応じることができなかった浄土宗の高僧の例を挙げ、「家族を持つ僧侶には限界がある」と考えを語った。
独身であれば家庭を持つことに比べて生活費がかからず、生計のための法事を減らすことも可能になると主張し、「出家者の妻帯を段階的に禁止し、最終的に独身者の僧団を形成することはできないだろうか」と戒律復興に向けた教団の改革を訴え、聖性を担保する日本独自の律の導入も必要だとした。さらに妻帯禁止に伴う寺院のあり方について、世俗権力の及ばない「アジール」としての機能を提案した。
その上で、出家することの意味を巡って見解を提示。念仏往生には出家と在家の区別はないため、浄土宗にとっての出家の意味だと前置きしつつ、三聚浄戒の摂衆生戒に着目。「利他の実践を誓っている。ここが出家と在家のまさに境目になる」と布教が僧侶の条件になると話した。
相撲の阿武松親方のほか、総合研究センターの澤城邦生客員研究員も講演した。
2024/11/14
開宗850年記念 知恩院で合同音楽法要 浄土宗宗立学校 ともいき社会を誓う
真和中高を代表してアピールした栗山さん 浄土宗関係の12学園39校で構成される宗立宗門校教育振興会は10月31日、京都市東山区の浄土宗総本山知恩院で開宗850年記念の合同音楽法要を営んだ。知恩院には約千人の青少年が集い、さらにユーチューブを利用して全国の学校に配信、計2万5千人が法然上人の心と音楽を通して繋がった。
冒頭、「浄土宗から青少年へのメッセージ」として、振興会の平岡聡理事が「みなさんも、法然上人にならって、志を立て、自分の道を突き進んでください。ただし、自己と他者がともに生かしあう『ともいき社会』を実現させるには、自分の幸せだけでなく、他のみんなの幸せも思い、みんなと一緒に取り組める道を選び取ることも大事です」と読み上げた。法要で導師を務めたのは川中光敎宗務総長で、リード歌唱は女性僧侶で声楽家の寺西佐世さん。伴奏は東山中学高等学校(左京区)の安井渉教諭が務めた。宗歌「月かげ」をはじめ、「四弘誓願のうた」など7曲の歌声が御影堂に鳴り響いた。この間、16校の代表者が宝前に花を供え報恩の誠を捧げた。
代表者3人が、浄土宗からのメッセージへの応答としてアピールを宣言。酒田南高校(山形県酒田市)の三井ほのかさんは「南無阿弥陀仏と唱えることで心が落ち着き、どんな不完全な人間であっても無条件に受け入れてもらえます。だからこそいつも安心して前に進んでいくことができるのです」と宣言。鎮西高等学校(熊本市)の井優羽さんは「今、自分ができることを精一杯頑張り、将来子どもたちに道を示したり、夢を与えていけるような社会人になれるよう努力していきたい」と誓った。
真和中学高等学校(熊本市)の栗山莉一さんは「月かげ」の歌詞を踏まえ、「様々な価値観を認め尊重することで、私たちの言葉や行いが他の人々への光となることを願い、すべての人たちが幸せとなるともいき社会の実現に向け努めていきます」と生徒一同の思いを披瀝した。
ちなみに法然上人が比叡山で出家したのは通説では15歳。この法要に集った青少年とほぼ同年代だった。
2024/11/7
日中韓仏教友好交流会議 身延山大会 共栄社会へ「黄金の絆」深化 慈悲こそが世界平和の源
共同宣言に3国代表が署名した。中央が日本の武理事長 第24回日中韓仏教友好交流会議・日本身延山大会が10月30日、山梨県身延町の日蓮宗総本山身延山久遠寺(持田日勇法主)で3国から約300人が参集して開かれた。世界平和祈願法要や学術講演会などを通じて中国仏教協会元会長の趙樸初氏(1907~2000)が提唱した「黄金の絆」を深めた。採択された共同宣言文に3国代表が署名し、3国仏教徒が慈悲心を基に人々の安寧と平和構築に努力することを誓った。主催は日中韓国際仏教交流協議会(武覚超理事長)。
大会テーマ「共栄社会の構築における仏教精神の可能性―日中韓三国の共和(共生)を願って」は、久遠寺が掲げる「共栄運動」に連動。多年にわたり、特に日中友好宗教者懇話会の役員として仏教交流に尽力してきた持田法主の強い願いで久遠寺での開催となった。
開式にあたり日中韓協議会の伊藤唯眞会長(浄土門主)が挨拶(代読)。久遠寺を開いた日蓮が所依経典とした『法華経』の「化城喩品」にある「皆共成仏道(皆共に仏道を成ぜん)」に言及し、「これは時を超えて釈尊のみ教えと共に生きることで、共に在る世界で生きとし生けるものが『共に生き、共に栄える』ことに他ならない」と呼びかけた。
世界平和祈願法要は日本・中国・韓国の順で営まれた。日本は武理事長が導師を務め、「平和実現のため、共存・共生・共栄の道を提唱し、世界にその輪を力強く発信していく」と表白。全員で観音経を読誦した。
加山又造画伯による天井画『墨龍』の下で行われた身延山大会 中国代表の演覚氏(中国仏教協会会長)は法要に先立って挨拶し、「世界の人々が戦争から遠ざかり、人類社会が繁栄し、また一切衆生が和合共生することを祈る」と表明した。
韓国代表の眞愚氏(韓国仏教宗団協議会会長)は法要後、平和祈願メッセージを発表。世界各地で起きている戦争や暴力を憂慮しつつ、「私たちは今、視点を変える必要がある。縁起的な思考で世界を見つめ理解しなければならない」と訴えた。
記念撮影と昼食を挟んで午後からはテーマに即して学術講演会が行われた。日本からは身延山大学学長の望月海慧氏が登壇。日蓮と天台智顗の一念三千を解説した上で「『共に生き、共に栄える』とは、我々はすべての人々と平和な環境で安穏に生活をすることを意味している」と主張した。
共同宣言(要旨別掲)を武理事長が読み上げ、3国代表が署名し、固い握手を交わした。
共同宣言
日蓮宗総本山身延山久遠寺を会場とし、世界平和祈願法要を三国合同で奉修した。
「共栄社会の構築における仏教精神の可能性―日中韓三国の共和(共生)を願って」をテーマに各国が基調講演を行い、三国仏教の役割について活発な討議がなされた。
中国仏教協会元会長趙樸初先生が「黄金の絆」を提唱され、仏紀2539年(1995年)に第1回中韓日仏教友好交流会議が中国北京で開催されて29年目を迎える。多様化が進む世界は依然として混沌とし、世界平和への道のりはまだ果たされていない。そのような世界の中で、仏教の有する真理を求める智慧や、他を思いやる慈悲を基とした仏教徒の果たすべき役割は増す一方である。世界平和は人類共通の願いであり、その大きな一歩は各々の心から生まれるものである。排他的思想から心の安寧が生まれることはなく、互いに認め合い、共に助け合い、共に生き、共に栄える。この慈悲心こそが世界平和の源である。
今大会にて、三国仏教徒が理念、また実践の上で社会にむけて貢献出来得ることを話し合い、今後も「黄金の絆」を深め互いに協力し合いがら、釈迦牟尼世尊より連綿と続く仏法の慈悲心を基に、現代社会に即した形で人心に寄り添い、世界平和と人々の安寧のために、より一層努めていくことを誓い合い、ここに宣言するものである。(要旨)
2024/11/7
総本山教王護国寺 橋本尚信長者が晋山
本坊から金堂へと向かう橋本長者 京都市南区の真言宗総本山教王護国寺(東寺)で10月25日、橋本尚信第258世東寺長者(東寺住職・東寺真言宗第4世管長)の晋山式が営まれた。金堂大壇の猊座に着いた橋本長者(76)は堂内外の約400人が見守る中、本尊薬師如来坐像の宝前で晋山傳燈奉告文を奉読。1200年にわたって途切れることなく継承されてきた鎮護国家の祈りの歴史を振り返った上で、宗祖弘法大師に始まる歴代長者の系譜に連なり真言宗立教開宗の構想を「維持発展」させていくと力強く誓った。
朱の大傘を差し掛けられた橋本長者は式衆14人に続いて本坊を出発し、国内外の参拝者が憩う境内をゆっくりと進列。平安遷都を行った桓武天皇の創建による官立寺院の時代から存した金堂に入り、午前11時から晋山傳燈奉告法要を厳修した。
法要後の式典では、真言宗各派総大本山会を代表して瀬川大秀真言宗長者(御室派総本山仁和寺門跡)が祝辞。今年、宗団発足50周年を迎えた東寺真言宗の吉村増亮宗務総長は、宗是である「鎮護国家 広度衆生」のさらなる実践に向けて新長者の教導を懇請した。
晋山式を終えた橋本長者は、爽やかな秋の陽光を浴びながら先頭に立って還列。昨年10月に営まれた立教開宗1200年慶讃大法会に続き、1201年目の新たな東寺史の幕開けを象徴する慶事となった。
午後からJR京都駅に隣接したホテルグランヴィア京都で晋山祝賀会を開催。宗内外の高僧をはじめ、各界から約400人が参加した。
2024/11/7
第50回衆院選 推薦者数と当選者数 全日仏122人→98人 本願寺派53人→41人 日蓮宗15人→14人 立正佼成会187人→153人
第50回衆議院選挙(465議席)は10月27日に投開票が行われ、与党の自公は215議席で過半数に届かず、野党では立憲民主党が148議席を獲得し、全体で235席となった。宗教界は今回も候補者を推薦した。
全日本仏教会(全日仏)は122人を推薦し、98人が当選した。政党名および候補者名は公表しなかった。
浄土真宗本願寺派は53人を推薦し、41人が当選。政党別当選者数は自民党22人、立憲民主党13人、日本維新の会2人、無所属4人。
日蓮宗は15人を推薦し14人が当選。政党別当選者数は自民党7人、立憲民主党5人、国民民主党1人、日本維新の会1人。
立正佼成会は187人を推薦し、153人が当選。政党別当選者数は自民党31人、立憲民主党104人、国民民主党11人、日本維新の会3人、れいわ新選組1人、無所属3人。
公明党は8議席減 比例600万票切る
公示前、32議席だった公明党は8議席減らし24議席。小選挙区から出馬した石井啓一代表も落選した。小選挙区では11選挙区中、当選者は4人だった。比例の596万票は、2年前の参院選より22万票減らし、2001年以降の国政選挙では最少となった。
公明党は自民党と無所属を含めて255人を推薦した。そのうち175人が当選した(本紙調べ)。その中にはウラ金問題で自民党を離れ無所属になった候補も含まれる。自民党当選者191人のうち約9割が公明党の推薦を受けている。
2024/11/7
大谷大生考案 地域交通ゲーム 高齢社会の移動考える
チェックポイントの金刀比羅宮にて(同大提供) 大谷大学が京都府京丹後市と連携して取り組む「地域交通とモビリティプロジェクト」は、過疎・高齢社会における交通、特に自家用車に依存することの問題を考えながら持続可能な社会を作る試み。10月19日、同市一帯を舞台に、学生と市民による野外活動ゲーム「モビリティロゲイニング」が開催された。
このゲームは社会学部コミュニティデザイン学科の学生が考案した。バス、鉄道など公共交通を活用しながら、エリア内に設置されたチェックポイントをできるだけ多く回って得点を競うもの。同市に住む人々のうち、通勤・通学にバスや鉄道を利用している人はわずか6%。自家用車の利用が増加すると公共交通の利用者が減少し、結果的に路線の廃止を招く悪循環となる。そうなると後期高齢者、病人、障がい者といった社会的に弱い立場の人には厳しい社会となり、ひいては世の中全体の不利益になる。
学生と市民がチームを組んで「ロゲイニングマップ」を広げ、目的地に向かうにはバスか、鉄道か、タクシーか、あるいはここぞという場面では自家用車を使うか、を考えつつチェックポイントを回った。得点に応じ、地元特産品などの景品をプレゼント。楽しみながら地域の課題が理解できたことに学生たちも手応えを感じた。
3年生の堀正樹さんは「公共交通の減少は、運転手不足や利用客の減少など、様々な理由が複雑に絡み合っていますが、複雑だからこそ多様なアプローチの仕方がある」と見る。京丹後JCの協力も受けており、今後の産学官連携にも弾みとなりそうだ。
2024/10/31
宗門系大学サバイバル 大谷大学編 一楽真学長に聞く お釈迦さまに学び一つの価値観打破を!
「自己とは何ぞや。これ人世の根本的問題なり」と語ったのは大谷大学(京都市北区)の初代学長だった清沢満之だ。東本願寺の学寮が寛文5年(1665)にできたことを起源とする大谷大だが、近代的な大学としての始まりは明治34年(1901)に東京・巣鴨に真宗大学が設置された時。大正2年(1913)には現在地に移り、寺院子弟を育て、ひいては自己とは何かを考える人間を輩出してきた。その一人でもある一楽真学長に、仏教を立脚地とした教育の意味を聞いた。
令和3年(2021)に大谷大学が発表した長期計画「グランドビジョン130」には、目標として「仏教精神に基づき、社会を主体的に生きることのできる人物を育成する」を掲げる。主体的に生きるとはどういったことか。「人間は誰もが主体的に生きているつもりでも、その時代や国に応じた物の見方、考え方に左右されます。流行り、廃りもあるでしょう。一生懸命生きているつもりでも、世間の価値観に流されていることもある。本当に主体的に生きることを考えてみよう、という意味が込められています」と語る。「今の日本は結果主義や評価主義の社会ですが、それが一番正しいのかと問い直してほしい」。
そのための最大の智慧が仏教の価値観。「お釈迦さまをはじめ、仏教の歴史には、その時代の中で一生懸命生きてきた人がたくさんいる。そういう先達には安心して聞いていけるでしょう。お釈迦さまでも親鸞でも、生きた時代は違うので直接同じことはできないけれど、時代の中で自分はどう生きるか、を聞くのが大切」。聞くために力を発揮するのが、蔵書数が90万冊に近い大学図書館だ。「先達の智慧が残されているのが図書館ですが、それを読むにはどうしても、その智慧を生き方にしている人が近くにいることが必要でもある」。読み方、生き方を気づかせてくれる、尊敬できる先輩や友人との出遇いを重視する。
2024年9月、出遇いのためにアイデアを具現化した。図書館とエレベーターで直結する総合研究室がリニューアルされた。学生・院生・助教がフラットに学びあえる場所だ。「助教は一番近い先輩。本はこう開くのか、こう調べるのか、と生で見るのが大事。わからない時もすぐに聞ける。居心地が良くて質問もしやすければ、学生の居場所になるでしょう」と期待する。
こうした学風の基本も清沢満之だ。「清沢先生は、当時に流行った言葉でいえば自由討議を重んじたんです。『師匠と弟子』の関係でなく一人ひとりが人生や仏教を学ぶことを基本に据えている。本学はその心を大切にしたい。主体的というのは、誰かの答えを覚える勉強じゃなくて、自分が仏教に聞き入って真理をたずねるとともに現実にもたずねていくこと」。これが大学のスローガンになっている「Be Real」の深意である。
お寺の出身者だけでなく
もちろん寺院後継者についても主体的に生きる僧侶を育てているのだが「実は今、寺院子弟は1割を切っています。学生数が約3100人で、そのうち8%くらいが寺院子弟」と明かす。「お寺に生まれた人がお寺を継いでいくのが今までの通例だったかもしれませんが、もうそうはならない現実が始まっている。転換点でしょうね」と見る。「今までのようにお葬式など儀式だけしていればいい、という僧侶では誰もついてこない。儀式が悪いのではなく、やっていることの意味を何も話さないようなのはもう通用しません」。すなわち、この人に仏教の教えを聞きたい、生き方を学びたい、と思ってもらえる僧侶にならなければ、本当の寺院の維持にはならないのである。「お寺の出身者だけに特化して後継者を養成するわけではなく、お寺の出身者じゃなくても仏教に関心を持った人とお寺の出会いをセッティングできれば、問題の多い世界で生きていきたいと思うことも起きうる」。後継者養成は間口をなるべく広くして仏教に触れてもらうことから始まるとの意見は、男性長子相続が伝統として長く続いている大谷派寺院にとっては、少し踏み込んだ提言だ。「お寺を継ぐ、継がないよりも、仏教に触れて自分の道を見出してもらうことのほうが大切なのでは。結果的にお寺に入っても、違う仕事に行くにしても、それは本学で学んでもらった大切な成果だと思う」と、宗門大学の本質的な意味を説く。(続きは紙面でご覧ください)
2024/10/31
智山派代表会 災害救援金を大幅増額 全損、50万円から100万円へ
最初の代表会で答弁する三神総長 真言宗智山派の第139次定期教区代表会(深澤照生議長)が22・23日、京都市東山区の総本山智積院内宗務庁に招集された。初の総長一宗選挙御に就任して最初の代表会に臨んだ三神栄法宗務総長は、「全国3千カ寺の運営と興隆を多角的に支援することが根本」とする施政方針を表明。特に自然災害の頻発と甚大化を受けて「災害時における復興支援の一層の充実と備災防災への取り組み強化」を挙げ、災害対策に関する資金の積み増しと被災寺院への復興救援金等の増額を提示した。(続きは紙面をご覧ください)
2024/10/31
天台宗議会 根本中堂工期を大幅延長 台風被災 居士林の再建は凍結
厳しい表情を見せる延暦寺の獅子王執行 天台宗(阿部昌宏宗務総長)の第157回通常宗議会(大澤貫秀議長)が15〜17日、滋賀県大津市の宗務庁に招集された。総本山延暦寺の獅子王圓明執行は、比叡山の総本堂・国宝根本中堂の改修工事現場での7月6日深夜の出火(ボヤ)を陳謝。消防署等の検証結果を踏まえ、再発防止策を徹底するとした。(続きは紙面をご覧ください)
2024/10/31
第34回中村元東方学術賞授賞式 山下博司氏「目印の架け橋」に 奨励賞はオリオン・クラウタウ氏
本賞受賞の山下氏(右)と奨励賞のクラウタウ氏 (公財)中村元東方学術研究所(藤井教公理事長)は10日、東京・九段のインド大使館でシビ・ジョージ駐日大使臨席のもと、第34回中村元東方学術賞並びに第10回中村元東方学術奨励賞の授賞式を行った。本賞の山下博司氏(東北大学名誉教授)にはインド大使館からも賞状が贈られた。奨励賞のオリオン・クラウタウ氏(東北大学准教授)は対象となった『隠された聖徳太子―近現代日本の偽史とオカルト文化』(ちくま新書)が評価された。受賞者が同じ大学に属しているのは珍しい。
開会後、登壇したシビ・ジョージ駐日大使は「日本の学者の中でインド哲学やインド研究への関心が着実に高まっていることを満足に思っている」と歓迎し、受賞した山下氏には「インド思想、文学、宗教における卓越した貢献で広く知られており、ヒンドゥー哲学やヨガに関する研究をされている。審査委員会の皆さまがもっともふさわしい受賞者を選出された」と祝福した。
藤井理事長とシビ・ジョージ駐日大使から和文と英文の賞状および副賞が贈られた後、選考委員長でもある藤井理事長が審査について報告した。最終候補者2人のうち一人に絞ったと説明。「研究領域は大変広くインド哲学、仏教学、ヒンドゥー教、タミル古典文献学、ドラビダ語学、近現代のタミル文学、南アジア地域研究、インド移民研究からインド映画研究までを含んでいる」と述べ、『ヒンドゥー教とインド社会』『ヨーガの思想』など単著や編著、飜訳、監修など多彩な業績を紹介した。(続きは紙面をご覧ください)