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2026/2/16
悲願の本堂建立に着手 和歌山県橋本市 妙楽寺
檀家ゼロ 地区の力を結集/経費圧縮 昨秋地鎮祭


基礎ができた新本堂の前に立つ岩西住職(1月24日) 大雨被害と老朽化で失われた本堂の再建を目指してきた高野山麓・和歌山県橋本市東家(とうげ)の真言律宗妙楽寺(岩西彰真住職)で、悲願の新本堂建立工事が始まった。経費を大幅に抑えるため、当初想定していた本格的な寺院建築ではなく、一般住宅の工法を選択。岩西住職(47)は、「十数年間、本堂再建のために尽力してくださっている役員さんたちも高齢になってきた。皆さんに早く喜んでいただきたい」と話す。

 平成23年10月の大雨で老朽化が進んでいた本堂の屋根が崩落し、翌年取り壊しに。だが妙楽寺は、檀家ゼロ軒の信者寺。そこで岩西住職は信徒でもある住民有志と本堂再建・伽藍再興を発願し、地元東家地区を毎年回る歳末托鉢を始めた。

 托鉢の目的は、各家の除災招福を祈願しながら妙楽寺の活動を知ってもらうこと。さらに今では、空き家が増えて独居や高齢世帯も多くなった地区の見守りも兼ねた交流活動になっている。高野山真言宗総本山金剛峯寺に勤務する岩西住職は、母親の康子さんの協力を得て誰もが参加しやすい行事を開くなど、自坊活性化の工夫を重ねてきた。

 令和4年7月に、境内を囲む土地(旧農地)を地元の地主から「奉納に近い値段で購入」(岩西住職)。まず、道路に接する参道と駐車場を作った。

 境内裏の広大な敷地には一昨年10月、「百八十八ヶ所お砂踏み霊場」を開創。地区内外から多くの札所石柱の奉納を受け、「四国八十八ヶ所」「西国三十三ヶ所」「紀伊西国三十三ヶ所」「嵯峨天皇勅願寺三十四ヶ所」が一度に巡れる「日本一の霊場」が完成した。(続きは紙面でご覧下さい)

2026/2/12
臨済宗妙心寺派無住寺院対策委 解散補助金180万円超を検討
少ない尼僧 育成策を提言


答申書を野口宗務総長に手渡す樋口委員長(左) 臨済宗妙心寺派の令和7年度無住寺院対策委員会(樋口顕龍委員長)が1月26日に京都市右京区の宗務本所で開催された。同派の特徴的な制度「寺院解散補助金」について2カ寺から宗務本所に申請があり、その実情を検討。また宗門活性化推進局と総務部が解散を検討している寺院を視察した状況も報告された。

 今年度寺院解散補助金の申請があったのは岐阜西教区の千手寺と三重教区の平安寺で、いずれも申請人は兼務住職。千手寺は被兼務寺院となって久しく、宗教活動を行うのが憚られるほど庫裡兼本堂の老朽化が進んでおり、梁が折れて屋根が落ちている危険な状況。檀家も少なく、新築はおろか改修することも不可能であり解散を決定した。残余財産だけでは解体費用の捻出が不可能であり、同教区の兼務住職の自坊が多大な負担をすることになるため、150万円の補助金を申請することになったという。今後、岐阜県に合併による解散の認証申請を行う見通し。

 平安寺も被兼務寺院になってから久しく、檀家もなければ法要もない寺院だった。同教区の兼務住職が普段の維持管理費用をすべて負担してきたため預貯金はゼロ。官報公告や登記手続きなどにかかった諸費用約32万円を申請した。土地を解体業者に譲渡し建物の解体費用を相殺する形を取っている。なお、すでに三重県からの解散認証は受けている。2カ寺ともやむを得ない事情があるとして適当な申請であると委員会は野口善敬宗務総長に答申した。(続きは紙面でご覧ください)

2026/2/12
全日仏青 佐賀関大火災を見舞う 大分県庁と地元仏教会に義援金


県庁担当者に目録を手渡した全日仏青役員(全日仏青提供) 昨年11月に発生した大分市佐賀関の大火災は死者1名、被災家屋194棟の甚大な被害となっており、復興は緒についたばかり。その支援のため全日本仏教青年会(全日仏青)は1月28日、加盟団体が托鉢した義援金を県庁と被災寺院に届けた。来馬司龍理事長、瀧藤康教救援委員長ら7人の役員が現地を訪れ、被害状況を視察。復興まで長い時間がかかりそうなことを確認すると共に、息の長い支援活動を展望している。

 全日仏青は大火災発生後から情報収集し、県庁や赤十字等の義援金受け入れの締切が12月中旬となっていたことで12月11日に救援基金から10万円を拠出して義援金として県庁に送った。瀧藤氏によると「その後、本当はボランティアに行きたかった。だが、状況を確認する限り素人の我々では手が付けられない状況」であり、加盟団体に托鉢を呼びかけて現地に直接届けることを提案。約70万円の浄財が集まった。

 28日にはこのうち、県庁に50万円を目録として手渡した(先行送金分と合わせて計60万円)。県庁担当者は深く感謝。全国からの義援金を公平に配分する委員会を設置し、全焼被災者には1世帯に280万円が支給されることや、2年後をめどに復興のための集合住宅を建設する予定などの説明があった。(続きは紙面でご覧ください)

2026/2/12
節分会スケッチ 高幡不動尊金剛寺 キティちゃんに大歓声


福豆をまくキティちゃん 東京・日野市の真言宗智山派別格本山高幡不動尊金剛寺(杉田純一貫主)では3日、午前2回と午後3回にわたって「節分豆撒式」を行った。

 暖かな陽光のもと、境内を年男年女がお練り行列。この日のゲスト、俳優の菊川怜さん、寺泉憲さん、ミュージシャンのつのだ☆ひろさんらもこの列に加わり、集まった参拝者に福豆を手渡しながら練り歩いた。

 不動堂では杉田貫主を導師に法要を厳修。その後、宝輪閣2階からゲスト陣やはかま姿の年男と年女、日野市の古賀壮志市長らが「福は内!」の掛け声と共に福豆をまいた。大人気のサンリオキャラクターのキティちゃんが登場すると老若男女から「キティちゃーん!」の大きな歓声。「お子様優先位置」が設けられ、近隣の園児たちも訪れた。

2026/2/12
築地本願寺×仏教伝道協会
新パイプオルガンでニューイヤーコンサート 満員の1100人が来場 


新しいパイプオルガンで初となるコンサートは満席となった 東京都中央区の浄土真宗本願寺派築地本願寺で1月30日、ニューイヤーコンサートが行われ、昨年上納された新しいパイプオルガンがクラシックや仏教讃歌が奏でられた。昼の部は1100人が訪れ、立ち見で本堂が一杯となった。

 1970年に(公財)仏教伝道協会が仏教音楽の振興と芸術文化の発信のために同寺にパイプオルガンを寄贈し、以来、音楽礼拝やランチタイムコンサート等が行われてきたが、老朽化に伴って二代目となるパイプオルガンが昨年11月に上納された。ニューイヤーコンサ―トは同会と築地本願寺が共催し、昼・夜の2回行われた。昼の部は1100人、夜の部も321人が来場し、新たなオルガンの音色を楽しんだ。

 コンサートの第一部は「トッカータとフーガ」(J・S・バッハ)や「ソワソン大聖堂のカリヨンの主題によるフーガ」(M・デュルフレ)などのクラシック、第二部は一転して「ドラゴンクエスト」やジブリ作品などのアニメやゲーム音楽。第三部は組曲〈浄土讃〉から「仏説無量寿経讃」「慶ばしいかな」をはじめ、「弥陀の名号となえつつ」「ひかりあふれて」「散華」といった仏教讃歌を、声楽家の安藤常光さん、米山茉莉子さん、築地本願寺合唱団楽友会の歌とオルガンの音色で響かせた。

 コンサートに先立ち、パイプオルガンを上納した仏教伝道協会に対して感謝状と記念品で初代オルガンのパイプ18本を並べたモニュメント。

2026/2/9
宗教2世訴訟/原告が意見陳述
「人間の尊厳」剥奪された 弁護士 親も子も統一教会の被害者


公判後、記者会見する全国統一教会被害対策弁護団。前列中央が村越進弁護団長 宗教2世8人が昨年7月、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合、東京都渋谷区)に対して約3億2千万円の損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴。その第1回口頭弁論が1月28日に行われ、原告の1人である野浪行彦氏が意見陳述し、「人間としての尊厳」が生まれつき剥奪されてきたと訴えた。原告代理人の久保内浩嗣弁護士も教団の人権侵害や不法行為を認めるよう主張した。

 東京地裁103号法廷。正面に裁判長と左右陪席の裁判官3人。原告と20人余りの弁護団が左側に陣取るも、被告の旧統一教会側からは1人の出廷もなかった。傍聴席には20代と思われる若い人たちの姿もあった。(続きは紙面でご覧下さい)

2026/2/5
WCRP日本委員会理事会・評議員会 タスクフォース3部門に再編
平和構築 持続可能な開発 人道支援


理事会で挨拶する戸松理事長(正面左から2人目) (公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(杉谷義純会長、戸松義晴理事長)は1月29日、東京・杉並の立正佼成会法輪閣で理事会と評議員会をオンラインを併用して相次いで開き、4月からの新年度事業や予算案などを審議。活動部門である5つのタスクフォースを3つに再編することが決まった。また創設50周年を迎えるACRP(アジア宗教者平和会議)は11月にシンガポールで第10回大会を開催し、期間中の11月25日に記念式典を挙行すると報告した。(続きは紙面でご覧下さい)

 次年度資産運用 1060万円の利益見込む

 理事会・評議員会では、昨年9月理事会で承認された投資信託3600万円の資産運用により約724万円の運用益を得たと報告された。次年度は投資信託額を1400万円増の5千万円にするほか、EB債(他社株転換債)に1千万円を投じる。日本委のポートフォリオ(金融資産構成)は4種から5種となったが、総額1億6800万円はそのまま。

 新たなポートフォリオは、日本国債6千万円、信託銀行2千万円、投資信託5千万円、普通預金4600万円、EB債1千万円。年間約1060万円の運用益を見込んでいるが、その9割にあたる950万円は「インベスコ・世界のベスト」への投資による。

 事務局側は「リスクが伴うため、専門家と連携して資産の変動を随時確認し、金融状況が悪化した場合には資産運用規程に基づいて速やかにポートフォリオを変更することもあり得る」と対応を説明した。

 理事・評議員から慎重を求める声が上がる一方、評価する意見が寄せられ、ドル建てによる運用提案もあった。

2026/2/5
全日仏新年懇親会 伊藤会長「唯仏是眞」説く
持田次期会長は「共栄」を提唱

 
挨拶する持田次期会長。右は伊藤会長 (公財)全日本仏教会は1月29日、恒例の新年懇親会を京都市内のホテルで開催。加盟宗派・団体の要職をはじめ政界などから約200人が参加し、設立の理念「時代に即応する活発な全一仏教の展開」に邁進することを確認した。3月末までの任期となっている第36期現会長・副会長の慰労の日と、かつ4月からの第37期新会長・副会長のお披露目にもなった。

 伊藤唯眞会長(浄土門主)の導師による三帰依文の唱和で開会。伊藤会長は1931年生まれで、自分の名前は「唯仏是眞」から取られたものだと自己紹介。敗戦で天皇主義から自由主義になり、教育制度も国家体制も変わったことに混乱した中学3年生の頃を回想しつつ「仏教のことは変わりません。唯仏是眞ということだけは変わりません」と断言。「和をもって貴しとせよと、小学生の時に聖徳太子の言葉を習いました。我々の会もこの精神でやっていってほしい。それを受け継いでいただければ幸いです」と今後の全日仏を寿いだ。(続きは紙面でご覧ください)

2026/2/5

最高裁 大谷派難波別院 山門一体型ホテル訴訟で 参道部分に課税判決


御堂筋に面する山門。非課税判決から逆転敗訴となった 大阪市中央区の南御堂・真宗大谷派難波別院に建てられた山門一体型ホテルの参道部分への課税をめぐる裁判で1月26日、最高裁第二小法廷は課税を認める上告審判決を出した。2審の大阪高裁判決では参道部分に課された484万4400円の非課税が認容されたが、1審の大阪地裁判決が確定。難波別院側の逆転敗訴となった。判決は裁判官4人中3人の多数意見で決定し、1人が反対した。

 難波別院は大阪市から令和2年度の固定資産税と都市計画税の合計3億1847万4千円の賦課決定を受けたため、その一部の取り消しを求め提訴。課税された山門一体型ホテルの参道部分が、宗教法人の境内地に当たるか否かが争点となった。(続きは紙面でご覧ください)

2026/2/5
浅草・仙蔵寺 ろう者が寺院で修行体験 手話で僧侶が手ほどき


手話で写経の説明をする青龍寺住職 東京都台東区の真言宗智山派仙蔵寺で1月17日、ろう者が修行体験する催しがあった。手話やろう文化を伝える「ともろう倶楽部」(杉並区)の会員ら16人が、青龍寺空芳住職の手話による手ほどきを受け写経に向き合うなどし、仏の教えに触れた。

 青龍寺住職は耳の聞こえにくい子どもを持つ父親。昨年末、同寺を会場に開催された「東京浅草手話映像祭」で審査員を務めたともろう倶楽部の吉岡昌子代表が手話のできる青龍寺住職の存在を知り、修行体験を申し込んだ。

 午前中は本堂で、ろう者の小林早苗さんが手話で指導するヨガが行われた。ともろう倶楽部は耳の聞こえる人も参加する団体。本尊の大日如来像が見守る中、気持ちを一つに汗を流した。

 昼食は和食料理人だった榊原正蔵副住職(埼玉県川口市・同派歓喜院)が腕を振るい、精進料理を提供。「木の子と牛蒡の茶飯」のほか、「車麩の角煮擬き」などおかず5品をつめた弁当を用意した。榊原副住職は地元の地域包括支援センター主催の「男の料理教室」で講師を務めている。

 午後からは客殿で心静かに般若心経を書写。手話を使って仏の教えを伝えた青龍寺住職は「写経を通して学んだことを日常生活でも意識してもらえたら。今日の経験をきっかけに、お寺や仏教を身近に感じてもらえるようになればうれしい」と語った。

 吉岡代表は「お寺の落ち着いた空間で心からリラックスできました」と手話で感想を述べ、「聞こえない人にとって宗教は縁遠いもの。お寺にも入る機会がないと諦めていましたが、もっと話を聞きたくなりました」と話した。

2026/2/2
すぐれた女性史研究を顕彰「青山なを賞」
『無外如大尼 生涯と伝承』受賞
中近世の尼僧の姿を発掘


森本学長(左)からベーテ氏、フィスター氏、原田氏に表彰状が贈られた 女性史研究のすぐれた業績に贈られる「女性史青山なを賞」の2025年度(第40回)受賞作に中世日本研究所編『無外如大尼 生涯と伝承―中近世の女性と仏教』(思文閣出版)が決まり、14日に東京女子大学(杉並区善福寺)の女性学研究所(矢ヶ崎紀子所長)で授賞式が行われた。

 円覚寺開山・無学祖元の法を嗣いだ高僧で、後世の尼僧たちにも多大な影響を与えた無外如大禅尼(1223―1298)。近世に編まれた伝記は禅宗と関わる複数の女性の伝承が混在した形で伝えられたが、本書は如大に関わる確実とみられる史料を分析し、その事績や人物像を明らかにした。日本と米国の6人の研究者がその成果をまとめ、日本語・英語の完全バイリンガルで紹介する。

 授賞式には執筆者のモニカ・ベーテ氏(中世日本研究所)、パトリシア・フィスター氏(同)、原田正俊氏(関西大学)が出席し、東京女子大学の森本あんり学長から表彰状と副賞が授与された。

 歴史に埋もれていた女性の姿を資料が不十分な中で丁寧に発掘、分析したこと、女性が率いた宗教空間が当時やその後の世の中でどのように受容されたかを探る方向性を打ち出していることが評価された。(続きは紙面でご覧ください)

2026/2/2

第1回梅原猛人類哲学賞 発表

写真家の志賀理江子氏 宮城を拠点に震災を撮る


志賀氏 仏教学や歴史学、芸術などジャンルを超えて挑戦的な学説を発表し続けてきた哲学者・梅原猛氏(1925~2019)を顕彰する(一財)梅原記念財団(京都市)は21日、第1回「梅原猛人類哲学賞」に写真家の志賀理江子氏を選んだと発表した。正賞のほか、副賞100万円の授賞式が3月に京都市内で行われる。

 この賞は「人類哲学」を提唱した梅原氏の遺志を継ぎ、既存の考え方に囚われず学術的・芸術的な冒険に成果を挙げた人または団体を年1回選んで授与するもの。今回選ばれた志賀氏は1980年6月、愛知県生まれ。2008年に木村伊兵衛賞、2019年に写真の町東川賞を受賞した気鋭の写真家で、宮城県石巻市に拠点を置き、漁師など民俗的共同体に深く入り込みながら東日本大震災以後の復興とその煩悶を撮り続けている。

 受賞にあたり「今はもう、天にいる梅原猛さん、少しの間でいい、あなたが生まれた宮城県にその魂を戻し、東北の地で繰り広げられる、東日本大震災後の復興政策がもたらした光景を今一度ご覧になってください。そして、梅原さんはどう思うのか、何をここから考えるのか、改めて私たちに語ってくれないでしょうか」とコメントを発表した。(続きは紙面でご覧ください)

2026/1/29
展望2026 ジェンダー問題と性暴力 沈黙しない仏教界になるために
寄稿 露の五九洛氏(落語家・天台宗僧侶) 


 近年、「ジェンダー」という言葉を見聞きする機会が増えました。ところが、仏教界を含め、その意味はまだまだ社会に浸透していません。なかには、政治的なキーワードや極端な思想であると誤解している人も少なくないようです。

 しかし、SDGs(持続可能な開発目標)の5番目の目標として「ジェンダー平等」が掲げられているように、これは決して政治的なものでも思想的なものでもありません。人類が持続可能な未来を生きるために、向き合うべき課題なのです。

 では、「ジェンダー」とは何でしょうか?これは「生物的な性別」=「SEX」とは異なり、「社会的・文化的に作られた性別」、いわゆる「男らしさ、女らしさ」のことをいいます。つまり、「ジェンダー平等」とは、「男らしさ、女らしさ」で人を縛らず、「その人らしさ」に目を向け、すべての人が性別にとらわれず能力を発揮できる社会づくりのことをいうのです。しかし、このような時代において、仏教界では依然として「性別による役割分担」が横たわっています。

 静かにお寺から離れる女性たち

 先日も、中年の女性から、「私の菩提寺ではまだ女性がお茶の御接待係だ」という悩みを伺いました。女性たちはお茶の接待をするのがイヤなのではありません。時代遅れな寺院社会にため息をついているのです。以前、このような出来事があったということを僧侶向けの研修会で話したことがありましたが、そのとき私に寄せられたのは「自坊でも御接待は女性の係だが、そんな意見は聞いたことがない」というものでした。しかし、多くの檀信徒さんは「お寺に意見を言うなんてとんでもない」と考え、口に出すことはしません。だからこそ、「そのような意見は出ていないから大丈夫」と安易に考えず、危機感を持ち、時代に合わせたアップデートを行うことが、お寺離れを防ぐために重要です。疑問を感じている人たちは、意見を言うことすら諦め、静かにお寺と距離を置いていきます。

 性加害への沈黙に世間は厳しい目

 また、たびたび報道される仏教界の「性加害」問題も、お寺離れを加速させています。社会的に「聖」とされる僧侶が性加害をすることじたいが世間に大きな衝撃を与えていますが、さらに、その問題に「沈黙」する仏教界に、厳しい目が向けられているのです。ではなぜ、加害が起こり、また沈黙が起こるのでしょうか?

 その原因の一つは、宗教界の「見えにくさ」や「密」にあると考えます。というのも、宗教施設では内面の課題や身内の問題などを一対一で相談することが多いですが、過去、私が相談を受けた案件では、相談者が相談相手である宗教者から一方的に好意を持たれ、抱きつかれたり、ストーカー被害に遭った、というものがありました。

 宗教界は性質上、閉鎖的な側面を持ちますが、そのような環境では、倫理的・社会的に逸脱した思考を持ってしまったとき、その思考を修正する機能が薄れてしまう場合も少なくありません。だからこそ、「加害者を処分して終わり」ではなく、加害が起こらないための仕組みを考えることも必要になってきます。

また、性加害問題に多くの僧侶が沈黙する背景には、「保身」があると言わざるを得ません。仏教界は、師弟関係だけでなく、血縁、法類といった〝密〟な関係がありますが、それが「しがらみ」となって身動きをとれなくなっている僧侶が多いと感じます。しかし、「しがらみ」はあくまでも私たちの言い訳であって、世間ではそれを「保身」と呼びます。その保身が仏教界の信頼を失っていくことに、一刻も早く気付いて欲しいのです。

 なぜジェンダーに積極的になれないか

 ところで最近、SDGsをテーマとしたお寺の催しが増えましたが、その多くは貧困問題や環境問題を取り扱っており、ジェンダー平等がテーマとなるものはごく僅かです。しかし、これは仏教界に限らずマスコミも同様で、SDGsを取り上げるテレビ番組でも、ジェンダーはなかなか取り上げられません。ここには、主催者や番組制作側の「ジェンダー平等への苦手意識」が影響していると考えられます。なぜなら、ジェンダーはすべての人に当てはまる課題です。一番身近な人権だからこそ、つい、「実際に男女平等になったら、これまで女性に頼んでいた役割はどうなるのか」といった、無意識の「自分の都合」が働いていると思われます。宗教者の人権研修会でも、性的マイノリティの方について学ぶ機会は増えましたが、ジェンダー平等は驚くほど取り上げられません。性的マイノリティの当事者の方の声を知ることもとても大切ですが、すでに自身が「当事者」となっている「ジェンダー平等」の課題から目を逸らさないことも、「正見」を説く仏教界に必要な心構えではないでしょうか。

 「性」とは、「心が生きる」と書きます。「性」で傷つく人をなくすためにも、沈黙しない仏教界になっていきましょう!


つゆのごくらく/1986年生まれ。落語家・天台宗道心寺住職。2005年、三代目露の五郎へ入門。テレビ朝日『ぶっちゃけ寺』等に出演。2025年、旧芸名「団姫(まるこ)」から「五九洛」に改名。自坊では悩み相談を行う。尼崎市男女共同参画推進員。