2020年

7月

2020/7/16 熊本へ支援物資届ける 日本笑顔プロジェクト 豊山仏青が後方協力

熊本県人吉市に運ばれた支援物資(6日) 災害の復興支援を行う日本笑顔プロジェクト(林映寿代表=小布施町・真言宗豊山派浄光寺副住職)は熊本豪雨で被災した球磨郡あさぎり町に熊本支部を設置し、食料物資を搬送するなどの支援を開始した。林代表が会長を務めていた真言宗豊山派仏教青年会でも支援金を拠出して後方支援を行っている。

 支援物資は豊山派仏青とも災害協定を結んでいる石井食品株式会社の佐賀工場から陸路で搬送。6日に熊本県人吉市の避難所に食料・水・タオル・うちわ等を届けた。このほか、笑顔プロジェクトには県内外の企業から不織布マスク、スラックレール、コロナ対策製品の提供を受けており、これらも熊本支部へ送付した。

 避難所の「三密」を防ぐため、トレーラーハウス型仮設住宅の設置に向けて現地でのコーディネートも行っている。(一社)日本RV・トレーラーハウス協会の依頼を受けたもので、人吉市の災害対策本部と内閣府、熊本県らの連携をはかり、現地までの工事業者らの移動も調整している。現地への人の輸送は㈱AirXの協力のもとジェット機での移動を計画中だ。

 林代表の地元である長野県内でも被害が発生。長野市篠ノ井の真言宗智山派長谷寺では裏山の土砂が崩落し、8・9日に土砂搬出の重機ボランティアも行った。14日には石井食品の協力のもと、岐阜県下呂市での炊き出しや物資を搬送した。

 コロナ禍で県外のボランティア受け入れが難しい状況にあるが、様々な企業からの支援を受けている。林代表は「現地と企業とのマッチングが課題になっている」と話し、リモートでの支援を続けている。

2020/7/9 熊本豪雨 芦北町實照寺 土砂崩れ本堂全壊 

裏山が崩れ土砂で押し流されて全壊した日蓮宗實照寺本堂(芦北町) 4日に九州全域を襲った豪雨は特に熊本県南部に被害が集中。球磨川が氾濫し、全県で1500人超が避難したほか、孤立したため避難もできない集落もある。6日現在、49人の死亡が確認されている。球磨川に近い人吉市の寺院も浸水などの被害を受けた。また芦北町の日蓮宗寺院は裏山の土砂が崩れ本堂が全壊した。寺院被害はさらに広がると見られる。


 球磨川から100メートルほどの場所に立つ人吉市の浄土真宗本願寺派人吉別院(河村信昭輪番)では4日、床上浸水が発生し、境内は人の背中あたりまで水が広がった。職員の光吉恒照氏によると、出勤職員にけがなどはなかったが、書類などを2階にまで持ち運ぶ作業に追われたという。本堂は高床だったためかろうじて浸水せず本尊は助かった。納骨堂は浸水したが、仏具は高所に置いてあったため無事だった。

浸水した本願寺派人吉別院(人吉市) 6日午前、「門徒さんやボランティアさんが何十人も協力してくれて、どうにか水を外にかき出すことはできました」と光吉氏は話した。別院には、災害ボランティア団体の一般社団法人震災復興支援協会つながりが拠点を置き、市内各地へのボランティアに動いている。

 各教団の被害や支援は以下の通り。

【高野山真言宗】
 八代市の寺院で床下浸水。人吉市の檀信徒宅でも浸水被害。他の寺院でも裏山の崩落などの情報があるが大規模な建物被害の情報は7日現在で入っていない。目下、情報収集中。熊本支所や同青年会では福岡支所・高野寺に備蓄してあった水やアルファ米などの救援物資を人吉市の南光院に運搬。避難所などに届ける準備をしている。

【真宗大谷派】
 6日現在、熊本南組3カ寺から床上・床下浸水の報告。門徒の被害状況など情報収集中。

【本願寺派】
 6日午前の時点で、宗務所には人吉別院も含め8カ寺の被害が報告されており、うち2カ寺が本堂床上浸水。門信徒宅も21軒が被害に遭った。宗務所は4日、災害見舞タオル250枚を熊本教区教務所に送っている。

 球磨村の壽泉寺は高台にあったため大きな被害を免れ、避難所として住民を受け入れた。家屋の大半が水没した八坂市坂本地区の崇光寺も避難所になった。

【曹洞宗】
 熊本県人吉市の観音寺で床上浸水があったほか、同県球磨村の神照寺は避難所として開放しているが、孤立状態となっている(6日時点)。

【浄土宗】
 芦北町の来迎寺、相良村の深水寺で床上浸水、水俣市の西生院で床下浸水の被害が報告されている(6日時点)。

【日蓮宗】
 熊本県葦北郡芦北町の實照寺で4日、土砂崩れのために本堂、稲荷堂が全壊する被害があった。人的被害はなかった。ブルーシートで被害のあった堂宇を被うなどの支援が行われ始めている。地元の熊本県青年会などによる支援が9日に始まる。この他、福岡県内の1カ寺で境内地が一部崩れる被害あった。

2020/7/9 日光山輪王寺 石塚門跡が晋山 二社一寺の融和「意を尽くす」


晋山式で導師を務める石塚門跡 栃木県日光市の天台宗大本山輪王寺で6日、第86世石塚慈雄門跡(71)の晋山式が行われた。石塚門跡は「日光山は輪王寺のみならず、東照宮・二荒山神社を含めた二社一寺をもって一つの信仰となる霊山。今後も社寺の融和のために粉骨し、聖地日光のこれからの発展に少しでも寄与することができれば」と語った。

 晋山式は当初、3月に竣工した「三仏堂 平成大修理」の落慶に合わせる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大にともない4月中旬に日光山始まって以来の全面拝観中止にともない延期になっていた。

 晋山式は、新型コロナウイルスの感染防止を考慮して、規模を大幅に縮小。列席者を地元栃木教区の寺院、そして日光東照宮、日光二荒山神社の両宮司などに限り、厳かに営まれた。

 皇室や歴代門跡の位牌を奉安する御霊殿で天台座主の代理として村田庸田・栃木教区宗務所長が石塚門跡に任命書を授与。続いて歴代の輪王寺門跡の名が記された法燈相承譜に署名を行い、開山勝道上人や宗祖伝教大師をはじめとする先師の宝号を唱え、感謝を表した。

 石塚門跡は表白で「先徳が護持された法燈を受け継ぎ、天下国家の安寧と当山の護持のため、一隅を照らさんとす」と寺門興隆を誓った。

 その上で1250有余年にわたる日光二社一寺の神仏習合の歴史を強調。「伝教大師の忘己利他の教えを体し、ことさら社寺の融和に意を尽くし、三者一体となって世界遺産・聖地日光のさらなる発展に寄与せん」と晋山の決意を表した。

 石塚門跡は昭和24年、輪王寺一山安養院に生まれる。中央大学文学部英文科卒。大正大学仏教学部卒。栃木新聞社を経て、昭和54年から輪王寺に奉職し、財務部長、堂務部長、執事長を歴任。昨年12月21日、新門跡に就任した。20年ほど前から病気により視力を失っている。

2020/7/9 ウィズコロナの時代を生きる 加藤眞三氏(慶応義塾大学看護医療学部教授)

 新型コロナウイルスは世界的に感染拡大が続いており、終息を見通すことは困難になっている。ワクチン開発にも時間がかかりそうだ。医学者の加藤眞三氏は「文明の転換期」に起きた現象だと指摘する。

加藤教授はじめに
 2019年12月に中国・武漢市より発生した新型コロナウイルス(COVID-19)感染症は急速に世界に広まり、欧米先進諸国の医療に大混乱をもたらし、国境封鎖や国内での移動や集会の制限、株価の暴落、多くの失業者など、市民生活に大きな影響を与えている。

 インドやブラジル、中東、アフリカなど発展途上国でも広まり始め、被害がさらに拡大している。このパンデミックの影響は一時的なものとして終わると考えるより、文明の方向を大きく変えていく可能性を秘めているものと考える必要があろう。ここでは、新型コロナウイルス感染症がもたらす影響とその後の社会について考えてみたい。

新型コロナウイルス感染症の特徴
 新型コロナウイルス感染症は、潜伏期間が長く、無症状や軽症の人が多く、無症状であっても感染力があり、高齢者や基礎疾患などのリスクをもつ人では重症化をもたらし、致死的にもなるという特徴を持つ。無症状や軽症の人が自分の感染に気付かずに多くの人と接触し感染させるため、予防対策を難しくしている。

 このウイルスはRNAウイルスであり急速に変異をとげるため、ワクチンや治療薬が開発されてもすぐに効かなくなる可能性がある。ウイルス感染でつくられた抗体も数ヶ月単位で減少することが報じられており、ワクチンでつくられた抗体は、変異したウイルスではより強い病原性をもたらす可能性も指摘されている。

 これらのことから、新型コロナウイルス感染症が短期間に終息する可能性は低く、コロナによる外出自粛は紆余曲折をへながらも2022年まで続くだろうと予測されている。ウイルスの終息を期待するのではなく、ウイルスと人類が共生する覚悟が必要なのだ。

新型コロナウイルスがもたらす変化
 コロナウイルス感染の重症化は、高齢者と、高血圧・糖尿病・肥満、慢性肺疾患などの慢性病をもつ患者でみられる。高齢化と肥満が進み、メタボの時代を迎えている先進諸国で重症化例が多く、食生活や運動による健康生活の実現が何よりも大切であることを告げている。

 もう一つの重要な感染対策は、感染者との接触の回避である。わが国では、三密をさけること、自宅での自粛生活、ソーシャルディスタンスが強調されてきた。そして、学校や会社への通学や通勤も制限され、緊急事態宣言によりオンライン授業やリモートワークが急速に普及することになった。

オンライン授業とリモートワーク
 慶應大学でも、4月中旬から講義はWebExやZoomをつかったオンラインで始まった。7月末の期末試験の一部や実習などでは、対面授業となるが、大教室で行われていた講義はすべてオンラインとなった。

 オンラインミーティングのソフトや、授業のお知らせや資料を配付するオンラインのシステムは、慶應大学には既に準備がされていたが、殆ど使われることもなく埋もれていた。しかし、このパンデミックで、一気にオンライン授業へと移行した。

 大教室で行われる知識伝授の講義には、オンラインに多くのメリットがありそうだ。学生も熱心に授業を受け、意外なほどに評判も悪くない。

 ゼミ形式の少人数の授業でも、オンラインの方がむしろ意見を出しやすく対話をすすめる場が可能となった。オンラインでは全員が一律に学習をすすめるのではなく、個別に選択する授業も可能となる。今後、オンラインとリアルをどのように配分するのかが課題となるだろう。

 同様に、会社勤務も、業種によってリモートワークが一気に増えている。会社員の中には、リモートワークの方がむしろ効率よく仕事が進むという人もいる。満員電車での通勤時間を節約できるメリットも大きい。リモートワークが日常になっていけば、土地代の高い都心に本社やオフィスを構える必要性が再考されるだろう。

文明の転換点にコロナパンデミックは現れた
 安宅和人氏(慶應義塾大学教授)は、人類の文明はこれまで都市への集中と効率化という方向で進んできたが、コロナは人類をクローズ(密閉)からオープン(開放)へ、密から疎へと開疎化を誘導し、人類の文明にとっての一大転換点になるだろうという。

 もちろん、その転換は、単にコロナウイルスだけがもたらすわけではない。20世紀の後半から、時代を変える徴候や変化が様々な局面でおきていた。科学万能・物質中心・専門家中心の世界への不信から、科学や技術は市民が利用するものとしてとらえ、こころや魂を重んじる世界への移行が進もうとしていた。利己主義と競争の社会から利他主義と連帯の社会へ、中央集権の管理社会から地域の自律する市民社会へ、大量生産・大量消費と環境破壊の社会から素材を活かす手作りが尊ばれ、持続可能な社会への模索がすすんでいた。

 ICT(情報コミュニケーション技術)やSNS(ソーシャルネットワーク)の発展は、政治家や官僚、専門家による情報の独占を許さなくなり、科学技術の進歩が、横の繋がりを強化し、水平な情報の伝達をうみ、人間関係を水平なものへと変化させている。AIやロボット技術の進歩は、単純作業や型どおりでこなせる仕事、奴隷のように働かされてきた仕事から労動者を解放することになる。

 このような文明の転換期にコロナウイルスのパンデミックが出現したことを考えると、これからのコロナウイルスと共に生きる社会の方向性が明らかになっている。
 

かとう・しんぞう/1980年慶應義塾大学医学部卒業、85年慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程(内科学専攻)単位取得退学、 医学博士(慶應義塾大学)の学位取得。85年米国ニューヨーク市立大学マウントサイナイ医学部内科研究員、90年都立広尾病院内科医長、94年慶應義塾大学専任講師 (医学部内科学) 、05年同大学看護医療学部教授(慢性期病態学、終末期病態学)。著書に『患者の生き方』『患者の力』(春秋社)など。

2020/7/9 真宗大谷派 人権部局でパワハラ「重く受け止める」  


 真宗大谷派(京都市下京区・本山東本願寺)は5月15日付で、同和問題や非戦・平和活動、ハンセン病、男女平等などの人権問題全般を扱う専門部局「解放運動推進本部」の職員2人が部下1人に暴言を吐くなどのパワーハラスメントを繰り返し行ったとしてけん責処分にした。同派は6月29日付で、以下のコメントを発表した。

 「本件は、解放運動推進本部の職員から相談を受けたパワーハラスメント事案であり、これまで宗務所に設置するハラスメント防止委員会において、真摯に対応してまいりました。既に、委員会による調査と事実確認の結果、パワーハラスメントに該当する事案として判定いたしております。/宗派において差別問題を課題とし、人権尊重を推進すべき解放運動推進本部において、このような事案が発生したことは誠に遺憾であり、大変重く受け止めております。/今後は、ハラスメントの未然防止に努め、より良い職場環境の構築に力を尽くしてまいる所存でございます」

 大谷派では、ハラスメント防止委員会を常設。職員の相談を受けて調査を実施する体制を整えている。内部と外部に相談窓口を用意し、職員研修などの際に周知している。

2020/7/2 大正大学地域構想研 寺院へのコロナの影響 仏事・収入源…不安明らかに

 
 大正大学地域構想研究所・BSR推進センター(東京都豊島区)はこのほど、HPに「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」(5月7~24日)の集計結果を発表した。「現時点で個々の寺院が抱える不安や課題を集約、可視化する」ことを目的とするアンケートに、517人が回答。多数の寺院が檀信徒の感染防止対策による法務・行事の変更に苦慮し、檀信徒も葬儀・法要への参加に悩んでいる実態が明らかになった。

 設問は全13問。「葬儀の変化」では88・6%が「会葬者の人数が減った」、41%が「一日葬など葬儀の簡素化」と回答。「火葬のみ(炉前読経もなし)で葬儀を実施せず、忌明・納骨法要から行いたいという依頼があった」「市が一つの部屋の会葬者を10人以下にするよう通達している」などの自由記述があった。

 「法事の変化」では87・8%が「法事自体の中止や延期」、86・7%が「参列者の人数が減った」とし、自由記述には「コロナで収入が減ったので、御布施を減額要求されている」という声も。「葬儀や法事の際の特別な対応」では「こまめに換気」(79・9%)「間隔をあけて席を配置」(79・1%)などに加え、マスク着用や消毒液設置など通常の対策の徹底が多く、「法話をなくすなど時間の短縮」(21・1%)もあった。自由記述には「オンライン法要の実施・提案」(7件)や「当面の間、訪問しての日々の法要は自粛する旨を寺側から周知した(希望者の法要は行う)」があった。

 「収入の減少」の理由では、「住職(布教使)の主たる収入源であった他寺へ赴いてお説教をする場が2月中旬以降、ほぼ全滅している状況」という切実な声も。活動の変化では「近隣の子供たちのための集まりを全て中止にしている。その代わりに、困窮世帯や母子向けに無料食品配布を行うようになった」があった。
 
コロナ感染の相談も
 自由記述には、「コロナで身内を亡くした親族から、隔離後、初めて会ったのがお骨になった姿なので、どのように受け止めてよいか分からない」「親がコロナで亡くなったが、家族が濃厚接触者で自宅待機なので、遺骨を受け取りに行けない。葬儀もできないので、お寺で遺骨を預かってほしい」という悲痛な声や、「自分自身がコロナで亡くなった場合の葬儀の仕方に関する相談」などがあった。

 コロナ禍による今後の社会の変化では、「法事は不要不急との概念が定着するのが心配である」「墓のない信徒寺のため、行事の中止がご縁の切れ目にならないか不安がある」「オンラインの常態化を危惧」といった不安が複数挙げられた。「宗教法人も持続化給付金の対象にしてほしい」という要望をはじめ、宗派・本山に歳出削減による末寺の負担軽減策を求める声も目立った。

 そしてこんな決意も。「こんな時期だから僧侶は行動しなければならないと思う。お寺はいつの時代もどんな状況でもハッピークラスターな場所であるべきと考える」

2020/7/2 真宗大谷派本山東本願寺 大谷暢裕新門首が初勤行

 
門首として初めて宗祖御真影像に仏飯を供える新門首 京都市下京区の真宗大谷派本山東本願寺(真宗本廟)で1日午前7時から、大谷暢裕第26代門首(68)の就任勤行となる晨朝法要が阿弥陀堂と御影堂で営まれた。前日に第25代門首を退任した大谷暢顯前門(90)も出仕。僧侶や門徒約100人が参列し、心を合わせて新たな「御代始」となる念仏を称えた。

 暢裕門首と暢顯前門は阿弥陀堂での勤行を終え、宗祖親鸞聖人の御真影像を奉安する御影堂に移動。暢裕門首が御真影像に門首として初めての「お給仕」を行い、仏飯を宝前に供えた。

 法要後、参列した僧侶は「前門は就任以来約24年、門首として道を求めてこられた。その法灯が受け継がれ、今日、新しい歴史が始まった。新門首にも前門のように門徒の先頭に立って教えを聞き伝えていただきたい」と感激。福岡市から来た門徒は、「一生に一度のお勤めに参加させてもらった」と法悦を口にした。

 暢顯前門と暢裕門首は退任・就任にあたり、以下のコメントを発表した。
 暢顯前門「いついかなる時も、皆さまとともに聞法し、皆さまとの交わりに支えられて門首としての務めを何とか今日まで果たすことができた。連綿と受け継がれてきたお念仏のみ教えが、未来永劫にわたって相続されていくことを心から念願しつつ、生涯聞法の一路を辿らせていただきたい」。暢顯前門は、今後も折に触れて法要に出仕するという。

 暢裕門首「思えば10年ほど前、鍵役、開教司教のお話をいただき、2014年には門首後継者に選定いただいた。ブラジルで育ち、何も分からず不安を抱えながらであったが、多くの方々にお支えいただき、今日まで歩みを進めることができた。この上は、皆さまとともに同朋社会の実現に身命を賭し、世界中に南無阿弥陀仏のみ教えを届けるべく、力を尽くしてまいる覚悟」

職員の感染確認で変更 退任儀式を急遽中止に
 大谷派は6月30日、宗務所事務職員1人の新型コロナウイルス感染が29日夜に確認されたと発表した。これにより、当日午後3時半から予定されていた暢顯門首の退任勤行で御真影像の御厨子の扉を閉める「御扉閉(みとへい)」が急遽中止に。翌1日も暢裕門首が御真影像の扉を開ける「御代始・御親(ごしん)開(かい)」を行わず、通常の晨朝法要になった。

 感染が確認された職員は参拝者対応業務を行っていなかったため、一般参拝に支障はない。当該職員在籍の事務所と施設は消毒の上、当面閉鎖。濃厚接触の可能性がある職員は自宅待機中だ。

 宗務所では全職員の健康観察と感染予防策の徹底を改めて指示。「今後は保健所の指導等に基づきながら、引き続き感染拡大抑制に努め対応してまいる」としている。

2020/7/2 動画布教は何をもたらすのか 内藤理恵子氏(善通寺勧学院専門研究員・宗教学) 

 新型コロナウイルスによって葬儀や法事が縮小したのは周知の通り。そしてオンライン化が一気に加速し、寺院でも情報発信に忙しい。葬儀のネット中継も試みられている。「ネット布教」の現状と課題を宗教学者の内藤理恵子氏が解説する。


内藤氏コロナ禍における葬送の変化
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、転がる石のように人々の生活様式が変わり、意識も変わってきた。葬儀や法事の省略、極度な小規模化についても、テレビや一般紙などでも取り上げられるニュースとなっている。しかし実際には、新型コロナの影響をさほど受けておらず、葬儀や法事も以前と変わりがないケースや地域もある。

 気になるのは、マスメディアがあたかも「全国的な傾向」であるかのように、コロナ禍による葬儀や法事の簡略化をセンセーショナルに報道することだ。「葬送儀礼が一変した」という印象が広がることで、人々の葬送儀礼に関する常識が変わっていき、その結果として、日本人の死生観が変わる一因ともなる。もともと希薄化の傾向があった「イエの宗教」という意識も失われ、人々は個人的に思想の探究を始めるか、もしくは虚無的な死生観を持つようになるだろう。

葬儀のネット配信と、僧侶のYouTuber
 宗教者がこのような状況を打破すべく、積極的にインターネットを通じて情報発信、特に動画配信をしたいという気持ちは理解する。しかし、それがどのようなインパクトをもたらすのかは検討されているのだろうか。

 たとえば、寺院に出向くことが身体的に困難(闘病中で外出が難しいなど)な檀信徒にとって、タブレットやスマホで法話に触れられることは僥倖だろう。僧侶による写経や坐禅などのネット講座もステイホームに一役買える。バーチャルリアリティ(仮想現実)を活用する向きもあり、寺院の建立が困難な地域や海外に向けての布教という新しい可能性も出てくる。また、葬儀や法事のインターネット生中継は物理的に参列できない人に貴重な機会を与えるものであり、全体的には宗教者によるネット動画配信は肯定的に受け入れられている向きが強いといえるだろう。

 しかし、そのような機会の創出と、僧侶の「主な活動」としての動画配信者になることは意味が異なる。インターネットは基本的に「無料」の世界であることを忘れてはならない。たとえば私たちが便利な機能(検索など)を無料で使用できるのは、そこに掲載されている広告で収入を得るというモデルが設計されているからだ。他にも、基本は「無料」にして手軽にアクセスさせ、肝心なコンテンツには「課金」させるよう仕向けるモデルもある。

 一方で、読経や法話を無料配信している日本の僧侶は、それらがもし仮に「主な活動」になった場合、どのように伽藍の維持につなげていくのだろうか。ネット布教が成功したと仮定しても、よほどの知名度まで発展しない限りは動画の広告収入を寺院護持につなげることは難しい。初動は好調だった僧侶YouTuberの動向を追ったところ、数ヶ月で再生数が激減した事例もある。会費制のオンラインサロン形式にしたとしても、運営は茨の道であろう。配信者の母数が増えれば無意味な競争も起こりがちになる。

 私自身、SNSで情報発信するようになって10年経つが、インターネットの世界は想像を絶する厳しさである。肩書きなどは、ほとんど役に立たない。ゆえに、これまでの法話のスタイルをそのままコピーする形式で僧侶がインターネット放送しても、それが有効とは限らない。ネットの世界は流行の移り変わりも早く、消費されてしまう。そうはならないためのネットの活用法もあるはずで、それを模索する時期に差しかかっている。

 現実の寺院での法話には、伽藍の静謐な空気、香り、僧侶の凛としたたたずまい、何より大勢の人が一心に僧侶の話に耳を傾けているという一体感がある。ここでしか聴くことができないという切実さも相まって、心の奥に届く。いま思えば、秘仏開帳も人間の心理を活用した先人たちの知恵の結晶である。普段、なかなか手が届かない存在だからこそ、人は希少な機会を得ると、それを心に刻もうとする。本尊を撮影禁止にしている寺院が多いのも納得できる。対して、無料の動画配信は、すべてをフラットにしてしまうだけに「人々の心に届けたいものがかえって届かない」という事態を招きかねないだろう。

何を発信しないか
 また見落としがちなのが、知らないうちに自らの首を締めるような配信スタイルだ。ラフな私服による法話や、内輪話の暴露などはプラスとは思えない。僧侶の読経(朝のお勤めや年忌法要)をフリー音源化するような形式も出現している。葬儀や法事をネット中継するのであれば目的が明確で問題は少ないが、読経の無料配信をやみくもに行うことは、布教として成立するのだろうか。規制やルールで縛ることは、宗教者の個性を消してしまう一面を持つが、一歩立ち止まって考えるべき時期が来ているように見受けられる。

 いま日本の仏教界が模索すべきは「ネット配信に向いている情報とは何か」と共に「配信に向かないものとは何か」を見極めることである。

ないとう・りえこ/1979年愛知県生まれ。南山大学大学院人間文化研究科宗教思想専攻(博士課程)修了。博士(宗教思想)。著書に『あなたの葬送は誰がしてくれるのか』『誰も教えてくれなかった死の哲学入門』など。現在、善通寺勧学院専門研究員。

2020/7/2 真言宗豊山派 次期総長に鈴木常英氏

 真言宗豊山派(星野英紀宗務総長)の第153次宗会臨時会(川田興聖議長)が1日、東京・大塚の宗務所で開かれた。次期宗務総長の候補者選出の議案が提出された今宗会は、新型コロナウイルスの状況を踏まえた特例措置として委任状が採用され、議案は参事会へと付託された。宗会終了後に参事会が開かれ、次期総長に鈴木常英氏(集議、東京都葛飾区・金蓮院住職)が決まった。

 宗会冒頭で川田議長は星野宗務総長と協議し「今次宗会に限り、特例として委任状を採用する」と説明。宗会議員30人中8人が出席し、22人の委任状により宗会が成立した。上程された議案第一号「真言宗豊山派宗務総長候補者選出の件」は参事会に付託されて、153次宗会臨時会は閉会した。

 川田議長、岩﨑榮勝副議長、田中量教・総務常任委員長、酒井杲胤・教務常任委員長、参事の島本誠永議員、吉田真澄議員、長﨑勝教議員、佐藤眞隆議員の8人による参事会が行われ、満場一致で鈴木氏が選出された。議決後に、浅井侃雄管長に報告。宗務所に待機していた鈴木氏本人にも確認して了承を得た。参事会後に川田議長、岩﨑副議長が記者団に報告した。

 鈴木氏は昭和24年(1949)生まれ。東京都葛飾区・金蓮院住職。7月6日に新内局を発足させる。任期は4年間。

6月

2020/6/25 禅とウィズ・コロナ時代の生活様式 「命を守る」原点意識し分断克服せよ


石井教授 新型コロナウイルスによる感染を防止するために3密(密閉・密集・密接)の回避が早くから指摘された。さらに日々の生活のあり方も見直さざるを得ない。禅の立場から駒澤大学の石井清純教授に新たな生活のあり方について執筆いただいた。

 稿を認めるに当たり、新型コロナウイルス感染症対策のため、日夜最前線で努力されている医療従事者各位に心より感謝の意を表します。

 道元の『正法眼蔵』は、難解な禅思想の書として知られるが、その中には「洗面」や「洗浄」(お手洗いの作法)といった、日々の生活における注意事項を記した巻も存在する。そこには、精神的な「清め」といった記述だけでなく、極めて細かな作法も記されている。

 たとえば、「歯を磨くときは舌の表面もきれいにしなさい」(「洗面」巻)や、お手洗いで用を済ませた後は、「灰と石を使って、包丁の錆を研ぎ落とすように掌を三回洗い、さらに土を使って三回、洗剤を使って一回洗い、最後はきれいに水で流しなさい」(「洗浄」巻)など、驚くほど詳細に記述されているのである。

 これは、「日常生活の重視」という禅修行の基本理念を示したものと捉えられるが、その背景には、集団で厳しい修道生活を行う禅の修行道場にあって、いかに病の流行を避けるか、という動機があったと考えられるのである。

 本年5月、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、厚生労働省より「『新しい生活様式』の実践例」が公開されたが、その内容は、まさに、この教説を想起させるものであった。

 「よって、みなが禅僧のような生活をせよ」ということではない。このような生命の維持に有効な生活習慣が、いにしえに示され、すでに日本の多くの人々の意識に根付いていたことが、いまの日本の状況に反映されているのではないか、ということを申し上げたかったのである。

 古代から中世にかけて、民間布教に携わる僧侶は、医療や建設土木などの先進技術を持ち、教えとともにそれを全国に普及させた。先に見た衛生観念もまた、当然、伝わり定着していたと考えて良かろう。

 現在の日本は、新型コロナウイルス感染症による死者の数は、他国に比して非常に少ない。これは、第一に医療関係の方々のご努力によるものであるが、それに加えていくつかの要素が考えられるという。

 山中伸弥教授は、これを「ファクターx」と呼び、ホームページ「山中伸弥の新型コロナウイルス情報発信」において分析されている。その中に、やはり「手洗、入浴」などの高い衛生意識が候補として挙げられている。また、6月に厚生労働省より発表されたコロナウイルスの抗原検査では、抗原を持つ人はわずか0・3%という、他国と比べてかなり低い数値であったという。これは、現時点で、日本人が、強い行動規制なしに有効な感染防止行動を取ることができていた可能性を示すものといえるのではないであろうか。

 いま、多くの規制が緩和されている。その中での今後の課題は、いかにその意識を継続させるかということになろう。もちろん、経済の復興も極めて重要な課題であり、その両立を目指す社会が必要となってくる。第二波を最小限に食い止め、人々の生活を後戻りさせないためには、現状を把握し、創意工夫を凝らして柔軟に対処していく気持ちが大切になってくるのではないであろうか。

 難題ではあるが、現在の状況を見ると、それぞれの業界・職種で、さまざまな手法を新たに創造し、持続的対応へと向かっているように見える。これを禅では「柔軟心(にゅうなんしん)」と呼ぶ。
 
 世界規模で蔓延する新型コロナウイルス感染症への対策は、それゆえ境界を越えたものでなければならない。しかし、拡大阻止のためには、個人や地域、国を越えた交流を止めなければならない。まさに大いなる葛藤の中に在るといえる。

 このような「強制隔離」から発する孤独と、連帯の必要性との葛藤について、元外交官の東郷和彦氏は「新型コロナウイルス禍の人類は今、明確な分水嶺に立っている」(『エルネオス』2020年5月号)において、「自然との共生、禅思想等、日本人が育んできた思想的、生活的伝統の中から、いま世界に発信できるものを再構築する」ことが日本の役割ではないかと述べられている。

 この「禅思想」とは、東郷氏が常々発信されている「十牛図」を意識したものであろう。氏は、そこから「和(やわらぎ)の外交」を提唱されてもいる。

 その思想は、自ら構築したものに固執することなく、本質を見直してそこからより自由で深い生き方を構築するというものとされる。捨てるとは、獲得したものに固執しないこと。そして、原点を見直し、最終的に「入鄽垂手(にってんすいしゅ:街中で人々のために働く)」にたどりつく。上からモノを見ることなく、「いま」を見極めながら、全体の利益のために積極的かつ柔軟に行動せよ、というのである。

 現在の私たちは、「命を守る」という原点をもう一度意識せざるを得なくなっている。その原点を意識しながら、ウイルスによる物理的な分断を克服し、新たな行動様式を創り出していくために必要とされるあらゆる手段の中のひとつとして、禅的思考も活用していただければ幸いである。

いしい・せいじゅん/1958年東京生まれ。駒澤大学仏教学部卒、同大学院博士後期課程満期退学。駒澤大学・禅研究所所長。元学長。2000年にはスタンフォード大学客員研究員を務めた。専門は禅思想研究、特に道元禅師の著述を総合的に研究。著書に『禅問答入門』(角川選書)、『道元―仏であるがゆえに坐す』(佼成出版社)、『禅ってなんだろう?―あなたと知りたい身心を調えるおしえ』(平凡社)など。

2020/6/25 大谷派宗議会 大谷暢顯門首に感謝 24年にわたり新宗憲を体現

 
 真宗大谷派の第69回宗議会常会(17~19日)の開会式で、30日に退任する大谷暢顯門首(90)が門首として宗議会での最後の挨拶を行った。「約24年の長きにわたり、務めさせていただくことができた」と感謝の言葉を述べるとともに、「新型コロナウイルス感染症により、被害を受けられた全ての方々に衷心よりお見舞いを申し上げる」と話した。

 但馬弘宗務総長は事前に配布した施政方針演説で「門首継承」について語り、退任する大谷暢顯門首の事績を振り返った上で、「1996年7月31日から現在に至るまで、『僧侶及び門徒の首位にあって、同朋とともに真宗の教法を聞信する』という新宗憲の定めのもとでご就任いただき、日々その職務を全うされてきた」と感謝。「お東紛争」を経て、新宗憲を体現してきた足跡を回想した。

 来年6月11日に宗憲制定40周年を迎えることから、「このたびの門首継承式は、本廟留守職の伝統を確かめ、『教法聞信』『本廟護持』の象徴たる門首と私たち一人ひとりとの関係を確かめる大切な儀礼式として執り行う」と表明。7月1日に就任する大谷暢裕新門首が居住する真宗本廟境内(内事部建物南側)の門首公邸造成については、宗務審議会「門首公邸建設に関する委員会」で検討を進めると報告した。

 新羅興正議長が開会式で、退任する大谷暢顯門首に宗議会を代表して謝辞。「ご就任以来、我々僧侶と全門徒の先頭に立って」真宗本廟を護持してきた姿に「多くの僧侶・門徒が励まされてきた」と述懐し、今後の同朋会運動の推進やコロナ禍の中での信仰生活などの課題を挙げた上で「24年間お示しいただいたお姿を議員一人ひとりが憶念」しながら課題に取り組んでいく決意を表明した。(続きは紙面でご覧ください)

2020/6/25 宗教法人、公益法人でなくなる? 日宗連がHP掲載 持続化給付金めぐる経緯

 
 新型コロナウイルス対策として減収した事業所に最大200万円を給付する持続化給付金の対象から宗教法人が除外された。支給対象となるよう政府などに要望してきた日本宗教連盟(日宗連)は23日、HPに与党自民党に伝えた要望や経緯などを掲載。公益法人から宗教法人が外されかねないという危機意識がみえる。

 4月9日、自民党からコロナ禍に対して宗教界の意見や要望を求められ、日宗連は同17日「要望」を提出。小規模宗教法人の苦況を記しながら、この頃に打ち出された持続化給付金について、「宗教法人が公益法人等として支給対象となるよう、要望します」と述べ、行政機関にも除外することのないよう周知を求めた。

 この時、持続化給付金の制度が明らかになるのはまだ先であり、日宗連が念頭に置いていたのは雇用調整助成金がその一つであった。宗教法人が雇用しているアルバイトや職員の休業手当が助成金の対象となるものだ。同じ4月17日、文化庁宗務課は「宗教法人も対象」となると情報発信。宗教法人は助成金の申請が可能と認められた。

 持続化給付金の制度が明らかになると、財団やNPOといった公益法人が対象となるのに対して、宗教法人は除外された。そこで焦点となったのが「公の財産の支出又は利用の制限」を規定する憲法89条の解釈である。前段では宗教に公金を支出しないと規定。後段でも慈善や博愛の事業(民間の公益法人)には公金を支出しない、となっている。

 日宗連は、持続化給付金の対象に他の公益法人等が含まれるのであれば、宗教法人だけが外されるのは疑問だとしている。宗教法人を除外するのであれば、他の公益法人も同様にすべきと主張。こうしたことを政府機関に説明し理解を求めてきた。すなわち、他の公益法人は「合憲」となり、宗教法人のみが「違憲」になるという指摘だ。

 日宗連関係者は「個々の宗教法人が申請するかしないか、あるいは給付金を下さいという話ではない。最初から除外というのは、宗教法人は公益法人ではないと言っているのに等しいのです。それは宗教に公益性はないということにもなりかねないのです」と話した。

2020/6/25 臨済宗妙心寺派 『人権ハンドブック』刊行 僧堂・本末関係・沖縄…問題を論点整理

 
関連法規など資料面も充実した妙心寺派の『人権ハンドブック』 「専門道場のような閉ざされた空間での人間関係は、一層深刻な『いじめ』を生むことが懸念される」―臨済宗妙心寺派宗務本所がこのほど発刊した『人権ハンドブック―いま私たちが向き合うべき人権問題』にこのような文言が記された。修行僧は殴られて育つもの、というような仏教界の陋習を改める動きが進みそうだ。
 
 同書では僧堂での暴力を人権問題だと直視し、徹底して排除している。編集委員の河合宗徹氏(兵庫県・成徳寺住職)は「ここは今回、少し踏み込んで書いた部分。お坊さんは封建的な意識がまだあり、修行僧に人権などいらない、僧堂で人権を守ると修行にならないといった考えの人がまだ多くいます。しかし、それはとんでもない勘違い」と指摘。暴力がなければ指導できないという考えを根本的に問い直す必要があるという。

 未だに旧本寺が旧末寺に隷属関係を強いることもあるとし、これも人権問題の一つだとしている。差別戒名などの部落差別や、昨年、ネット上で僧侶がヘイトスピーチを書き込んだ問題、大逆事件で獄死した峯尾節堂を擯斥した負の歴史への反省も記されている。

 『ハンドブック』は教団内部の人権問題だけでなく、現代社会の人権問題を網羅し論点を整理した。部落差別、外国人差別、自死者とその家族の人権、拉致問題、多様な性的指向への配慮、直近の事象で言えば新型コロナウイルス感染者・医療者への差別問題も取り上げている。

 「沖縄問題」の項目では、日本の米軍基地の7割が沖縄県に集中している事実、そして米軍基地の騒音や環境汚染、事故などで沖縄の人々の権利が侵害され続けているとし、日米地位協定の不平等性にも踏み込む。河合氏は「沖縄というと政治問題の話が取りざたされますが、まさに人権問題だと言えます。それを僧侶に知ってほしい」といい、日本に復帰してまだ50年も経っていない中で、沖縄の複雑な歴史が忘れられかけていることに危機感を抱いての執筆だったと明かす。

 妙心寺派は2001年に『人権Q&A』を刊行、2010年に新版を出したが、時代の推移に伴い2年前から人権擁護推進委員会が抜本的に改訂・編集を続けてきた結果が『ハンドブック』に結実。「前回はQ&A形式でしたが、今回はテキスト形式なので読んですんなりと論点が分かるように工夫しています」と河合氏。アメリカで始まった「ブラック・ライヴス・マター」を受け、世界的に人権を守る動きが高まっている中、他教団にも参考になる面は多いだろう。

 なお、「はじめに」では「この本に収載された人権に関する考えや意見は、現代社会における大まかな方向性を示したものですので、必ずしも本派としての公式見解というわけではありません」とし、あくまでも現代社会で何が問題になっているかを宗侶が考える材料だとしている。(B5判・184頁。非売品)

2020/6/18 本願寺派宗会 コロナ対策 予算1億9千万円増

  
マスクを着け簡潔に挨拶する石上総長 浄土真宗本願寺派(石上智康総長)の第316回臨時宗会(浅野弘毅議長)が10日から12日まで、京都市下京区の宗務所に招集された。新型コロナウイルス拡大防止のため会期を1日で切り上げた2月宗会で提出されなかった今年度予算案を審議するもので、一般会計約53億7千万円ならびに各種特別会計を原案通り可決した。

 石上総長は挨拶で、コロナ禍の状況に対応して「念仏者としての声明」の発信、メッセージポスターの発表、宗務所におけるウェブ会議の開催などを行っていると述べ、一般寺院への支援として「寺院教化助成費」ならびに本願寺出版社商品購入券の交付を盛り込んだことも説明。コロナ危機により激変するであろう時代において伝道教化のあり方や人材育成、持続可能な宗門のための人事施策や業務精査の必要性を訴えた。

 寺院教化助成費は賦課金告知額のうち第1種(寺院賦課金)、第2種(僧侶賦課金)の2割を助成費として交付するもので、このために3億8千万円を計上。全寺院(約1万カ寺)に本願寺出版社商品券1万円分を給付するために1億円を計上した。財源は寺院振興金庫の回付金を充てている。今年度の第1種・第2種賦課金の歳入予算は約19億円。

 これら寺院支援策により予算は昨年度比約1億9千万円の増額となった。一方、コロナ禍に伴う行事・研修などの中止や会議のオンライン化により、ほとんどの項目の予算は昨年度より減少している。本山本願寺から宗派への回付金も昨年度から2億5千万円減少し約10億円となった。総局はより綿密に本願寺との協調を図り、懇志を増やせるような方策を検討していく。

 審査会は1日目午後から2日目全日にわたり行われ、活発に議論が交わされた。特に2月宗会で2023年まで延長されたあそかビハーラ病院への運営助成(今年度は特別会計で6千万円を計上)については、議員から早急に安定した経営を求める厳しい意見も出た模様。運営にあたる(一財)本願寺ビハーラ医療福祉会と総局が密接に連携を取り、透析医療などの可能性を検討した上で、2020年内に新たな医療事業計画をの立案を予定。近日中に医療関係者と会談を行って方向性を定めていく。

 今議会では全員がマスクを着用。壇上にもプラスチック製の衝立が設けられた。「三密」を避けるために採決時以外は約半数程度の出席になるように運営され、最終日の採決時には78人中70人の議員が出席した。

2020/6/18 大谷派宗会 持続可能な宗門へ改革 30教区→25教区体制に移行


 真宗大谷派の宗会(常会)が17日、京都市下京区の東本願寺しんらん交流館に招集された。但馬弘宗務総長は、少子高齢化が進む中での「持続可能な宗門ビジョン」を示し、行財政改革の断行を表明。第4回全国門徒戸数調査を2022年2月に実施予定とし、「(2023年に迎える)宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要後は経常費御依頼額(宗費)を相当額減じていく方向に舵を切らねばならない」と述べた。

 2018年度の経常費御依頼の収納は56億2975万7855円(107・2%)。6年連続で全30教区完納となった。2020年度の経常費御依頼総額は52億5301万4千円。4月30日現在の収納額は47億9207万9938円で、慶讃懇志金の収納は10億240万3818円となっている。

 2020年度予算では、「願い予算」から「実態予算」への転換を実施。一般会計予算総額は経常部・臨時部を合わせて80億7100万円で、前年度予算比4億9900万円減額した。冥加金・礼金・懇志金等の収入の減退傾向を加味し、歳入を抑制して計上するなどした。

 行財政改革の柱として進める「教区・組の改編」では、7月から岐阜高山教区(2教区合併)・九州教区(日豊・久留米・長崎・熊本・鹿児島の5教区合併)の2新教区が発足。新教区の教務所と教務支所での人件費が削減されることから、両教区の今年度経常費御依頼を減額することになり、岐阜高山教区は200万円、九州教区は1266万円の減額となった。

 両教区の発足で、全30教区から全25教区体制に移行。2023年までに17教区体制にすることを目指す。教区改編の取り組みを加速させるため、全国の経常費御依頼額を2022年度まで毎年5千万円減額。来年度には外部識者も交えた「宗門構造刷新会議」(仮称)を設置し、宗門機構の統合・再編を検討していく。

 今宗会の会期はコロナ禍で短縮したため3日間。総長・財務長演説をはじめ2018年度諸決算、2020年度諸予算、早急な可決を要する条例案を事前に送付し、議場での審議は最小限にとどめた。

2020/6/18 コロナ禍 寺からの発信、より重要に 谷晃仁氏(全日本仏教青年会・天台宗僧侶)


谷理事長 新型コロナウイルス禍に対して定時にお寺の鐘を撞く「祈りの鐘」を呼びかけ、実践してきた全日本仏教青年会(全日仏青)。祈りと実践の両面からアプローチしている。谷晃仁理事長(天台宗)は「他者を排除してはいけない」と説く。

 新型コロナウイルスの影響で私たちの周りでもオンラインやソーシャルメディア(SNS)を使った取り組みが始まっています。全日仏青の加盟団体の活動でいえば曹洞宗や臨済宗妙心寺派の青年会がオンライン坐禅を行っています。全日仏青ではゴールデンウイーク期間中に様々な業種や個人に感謝や敬意、賞賛など10の想いを込め、夕方5時に一斉に寺院の鐘を鳴らす「祈りの鐘」を呼びかけ、その様子をSNSに投稿してもらいました。「祈りの鐘」はこれまで以上に多くの青年僧が参画してくれました。

 SNSを使った僧侶の発信は年々増えていますが、個々の寺院の活動発信は多くなかったと思います。私自身もお寺で拝んでいる姿というのは、普通の活動という意識もあり、SNSで発信するという発想がなかった。ところが新型コロナによって、春のお彼岸が中止になったり縮小したことで、法要をSNSで発信するようになりました。お寺に直接来る檀信徒は高齢の方も多いので、SNSの発信が全ての方に届くわけではないのですが、普段お寺に来ることが少ない若い世代には、見えにくいお寺の活動、私たちの姿を見てもらうチャンスになったのではないでしょうか。

 寺院にとっては、葬儀・法事の縮小があり、中長期的にみても危機感は強いです。コロナによって法事や葬儀ができなかったことで、「次もやらない」という感覚が生まれてしまわないか。仏事を通した信仰がなくなる危機感があります。寺院からの「発信」をより増やしていく必要があるでしょう。同時に不測の事態に備えた寺院運営を各寺の住職が心がけていないといけません。
 
 天災は避けることはできません。しかし、起きたとしても必ず「新しくて良いもの」が生まれると私は思っています。阪神淡路大震災の時は「ボランティア元年」といわれ、東日本大震災ではさらにその活動が拡充しました。災害を乗り越えた分だけ、私たちの社会が成熟していく。今回も困難を乗り越えるための「助け合いの心」が日本だけでなく世界中で生まれています。「忘己利他」の教えのように、実際にこれまで多くの災害時に、人間の善き面が発揮されてきたと思います。

天台仏教青年連盟が各寺院を巡礼して行っている「新型コロナウイルス災害早期終息並びに罹災者安穏回復祈願木札巡礼法要」。谷理事長も参画 一方で、医療従事者や宅配業者、その家族に対して、感染リスクが高いことを理由に排除するような動きもありました。新型コロナの感染を恐れるあまりの行き過ぎた行為です。リスクの高い業種にある方々は、本人たちも十分にそれを知り、苦労して対応しているはずです。そのうえに自分だけでなく、家族が責められてはやり切れないでしょう。不安な思い、家族を守りたいという気持ちは大事にしながらも、自分の中の正義感を建前にして、相手の生活や人生を思いやることなく傷つけてはいけない。とてもシンプルですが「自分がされていやなことはしない」ことを実践する。応援・協力して、協働していく方法を考えていかないといけません。

 私は僧侶になってすぐ、地元の群馬教区で人権啓発委員を務めました。これを機に多種多様な人権問題を考えることができました。様々な方に出会い、知識を得て、マイノリティの方々の困りごとや価値観を知ることができました。「自分とは違う」という理由で他者を排除してはいけないと学びました。自分の行いは善いことも悪いことも因と縁となって返ってきます。誰かを排斥すれば私や私の周りに同じことが返ってくる。自業自得です。
 全日仏青ではSDGs(持続可能な開発目標)に継続的に取り組んでいます。このなかでもジェンダー不平等や差別問題の解消が目標となっています。「男性だから」「女性だから」「障害があるから」というカテゴリーに分け、固定された概念で人を評価するのではなく、個々人の持つ個性を見る。仏教でも「一切衆生悉有仏性・山川草木悉皆成仏」、全ての人に仏さまの種があると考えますが、個々の人が持つ仏性を見出していくことが大切なのだと思います。

 今回、自粛生活を送る中で、自分たちの生活が多くのものに支えられていることに気づいた方も多いと思います。私たちは関係性の中に生きていることを再確認し、日々の僧侶としての活動を見直す機会になりました。

 私の自坊では法事の人数を15人に制限しています。農村部のため親戚付き合いも多い土地柄で無理を聞いてもらっています。そんな地域にあって、今年4月に営んだ葬儀で、遺族の方が「(故人が)親しかった友人に顔を見てもらいたかった」と話されました。遺族の方の思いは、コロナが終わって日常が戻ったとしても残ります。この気持ちを和らげるための努力をしないといけません。私たち宗教者が日常に慣れることなく、檀家さんをはじめ様々な悩みや不安を持つ人の思いを真摯に受けとめ、聞き、和らげる。宗教者としての務め、根本の部分に立ち返るきっかけになりました。


 たに・こうにん/1976年生まれ。全日本仏教青年会理事長。群馬県前橋市・天台宗永福寺住職。前天台仏教青年連盟代表。群馬教区人権啓発委員(平成19年~現在)。

2020/6/18 高野山真言宗 初の保護規程に向け 寺族婦人意識調査を実施 寺からの給与無し52% 


 高野山真言宗(添田隆昭宗務総長)は1日付で、寺族婦人保護対策小委員会が昨年末に実施した「寺族婦人意識調査」の結果報告書を宗内寺院に送付した。「寺族婦人保護施策案の早期実現」を目指して、寺族婦人会会員2527人を対象にアンケート調査を行い、61%に当たる1549人から回答を得た。その結果、寺院からの給与所得の有無や各種年金の加入状況、将来の生活設計に繋がる資金の有無などの割合が判明。概して、寺族婦人を取り巻く不安定な経済環境が明らかになった。設問は8項目。

 寺族婦人の経済的な生活実態を問う設問④「給与所得の有無と年金加入」では、当該寺院からの「所得有り」は48%で「無し」が35%、「寺院外での給与所得有り」が17%となった。「寺院内で一定の役割を果たしながらも所得に結び付いていない寺族の割合」は、「寺院外での給与所得者」(年金生活者含む)を合算すると52%となったことから、「寺族給与体系整備が進まない厳しい寺院運営の実状が窺われる」とした。(続きは紙面でご覧ください)

2020/6/11 曹洞宗 宝慶寺、申請見送る 僧堂活性化策 新基準で25僧堂申請


 曹洞宗が進める専門僧堂活性化策の一環で、新運営基準のもと設置認可が必要となった各僧堂の申請が締め切られ、25僧堂が届け出た。対象外となる両本山僧堂を除く26僧堂中、1僧堂が申請を見送った。認可の可否は来年10月末までに出す。

 僧堂の維持と僧侶の資質向上が課題となる中、釜田隆文前宗務総長が打ち出した僧堂活性化策で、両本山僧堂を除く全僧堂の設置認可が2022年9月末に一斉に取り消される。設置の再認可を求める僧堂は3月末までの1年間に申請書を提出した。

 申請しなかったのは、福井県大野市の宝慶寺専門僧堂。同寺によると、田中洋一堂長が体調不良で退任するなどした影響で、提出を見送った。22年10月から運営停止となるが、「その後再開単するかどうかは検討している」とした。

 この間に申請した25僧堂に対し、書類審査や現地視察を実施した上で、認可の可否は来年10月末までに決める。申請しなかった僧堂や設置が認められなかった僧堂に関しては、掛搭僧全員と面談した上で、安居継続を希望する場合はほかの僧堂へ移籍できるよう調整する。

 宗制や各堂則、慣習などをもとに明文化した新たな運営基準では、僧堂に常在する指導者の配置や掛搭僧の人数、履修学科目、試験などについて定めている。僧堂の設置認可に関してはこれまでにも事例があり、昭和50年代と同30年代にも行っているという。

 同宗では、釜田前総長が就任した2014年以降、僧堂の活性化を重要課題に掲げている。設置認可のほか、補助金増額や僧堂共通の教本作成、暴力問題再発防止への取り組み、傷害保険の宗門負担などを実施。安居前の研修会開催も検討中だ。

 補助金は、新たに掛搭する新到1人につき5万円の給付金を新設。従来の奨学金は分配基準を見直した上で増額し、最大で1人17万円を給付している。

 人口減や少子高齢化の進行などで修行僧は減少傾向にあり、専門僧堂の掛搭僧数は全体で500人ほどという。両本山僧堂が300人近くを占めるため、26僧堂で約200人となる。

2020/6/11 チャイルドライン速報データ コロナ関連相談が激増 人知れず悩む子どもたち 久間泰弘氏に聞く チャイルドラインふくしま事務局長・曹洞宗僧侶  


 新型コロナウイルス感染拡大防止のため全国の公立学校が休校となっていたが、6月に入り大部分で再開された。2月末の休校要請から3カ月。この間、学校に行けず自宅で過ごす子どもたちの悩みは、人知れず深まっていた。

 18歳までの子どもたちの悩みを電話やインターネットのチャットで傾聴し、相談に乗るボランティア「チャイルドライン」。その全国支援組織である認定NPO法人チャイルドライン支援センターは5月27日、「新型コロナウイルス感染症に関連した子どもの声」の速報データを公表した(同センターのHPで閲覧可能)。休校要請のあった2月末日から4月末日までの2カ月間で、コロナに関連した相談が激増していることが報告されている。

 福島県の「チャイルドラインふくしま」で事務局長を務める久間泰弘氏(曹洞宗龍徳寺住職)は、「8割がコロナ関連の悩み相談になった感じです」と話す。悩みは多岐にわたるが、まず多かったのは休校で学業に対する不安。進学や就職がどうなるのかという声や、学校から自宅学習用に出される課題が多量でこなしきれないことへの困惑がある。

「学校が開いていなくて、一人で過ごすこと自体が、慣れていない子どもには大きなストレスになります」と久間氏は指摘するが、その一方で「いじめを受けている子どもからは、学校が休みになってほっとした、ずっと休校がいい、という相談もありました」ともいう。両面の声があることを認識して対応を考えていく必要性があるようだ。

 親も子どもも長時間家にいることで家族関係がしっくりいかなくなっているという相談もあり、久間氏はDVや虐待の発生も強く懸念する。先述の支援センターの速報データの中では「親もコロナのことでイライラしていてうざい」「親が仕事が休みで収入が減ってケンカしてる」などの声が挙げられている。

 もちろん「自分も感染したのではないか」といった健康面での相談も多い。感染者や医療者が差別される事件も全国で相次いでいるが、久間氏は「自分が差別されたという相談は今のところありませんが、そういう差別を耳にして傷ついた、という相談は受けました」という。センシティブな時期の子どもにとって、皆が助け合わなければならない時なのに差別が起きる、というのは耐えられないだろう。福島県民が、原発事故によりいわれなき差別・迫害を受けてきた記憶もまだ生々しいのかもしれない。

 「宗教者としては、檀信徒や地域の人の苦しみや困っていることを共有していくことが大切。そして差別はいけないことなんだ、と発信していくことが必要になってくると思います」と、久間氏は語る。

 受け手ボランティア 育成講座は通信で
 チャイルドラインへの相談件数の増加は4月に顕著で、4月1日から15日までの半月で全国の相談電話は2万7500件かかってきた。昨年同期に比べ約1万2千件増えているという。にもかかわらず相談に応じる全国の事業所がコロナで閉鎖されてしまい、実際に応じられた電話件数は大きく減少した。「これは本当に申し訳なかったことです」と久間氏は話す。

 この状況下では相談受け手のボランティア養成も課題。チャイルドラインふくしまでは毎年行っている、対面での養成講座を通信講座に切り替えて行うこととした。「思春期の性について」「子どもの発達障害」「いじめに遭っている子どもとの向き合い方」「インターネット世界の子どもたち」など、現代の子どもの悩みを受けるためのスキルを専門家から教わる。久間氏は「通信講座ですので県外の方でも希望されるならぜひ」と呼びかける。申し込みはHP(www.cl-fukushima.org)へ。

 全国各地のチャイルドライン事務所でもオンライン講座を開設している。

2020/6/11 WCRP日本委 1年延期 ACRP東京大会 庭野会長と植松理事長を再任へ

 
 人事と2019年度事業および決算報告を主な議案とする(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の第32回理事会が書面による方法で行われ、8日までに全理事からの承認を得た。庭野日鑛会長(評議員会議長・立正佼成会会長)と、植松誠理事長(日本聖公会首座主教)の再任が内定し、今月23日の評議員会で正式決定する。報告事項では、10月の第9回アジア宗教者平和会議(ACRP)東京大会の延期を発表。今月下旬に行われるACRP執行委員会(オンライン)を経て決まる。11月のWCRP創設50周年式典も延期された。

 日本委員会人事の評議員(任期4年)では、井上日修(日蓮宗瑞輪寺貫首)黒住宗晴(黒住教名誉教主)宮本惠司(妙智會教団法嗣)の3氏が退任。新たに齋藤賢一郎(妙智會教団理事長)持田貫宣(身延山久遠寺総務)の2氏が就任した。

 理事(同2年)では3氏が退任し、深田惠子(円応教恵主)宮西修治(日枝神社宮司)宮本泰克(妙智會教団事務局長)3氏が新任となった。

 事業報告では、今年2月以降の研究会や学習会などが新型コロナウイルスの影響で軒並み延期や中止となったことが明らかになった。

 新型コロナの影響で新年度の事業計画も変更となった。東京オリンピック・パラリンピック後の10月11日から16日までのACRP東京大会は、受け入れ団体である日本委員会として延期を提案し、ACRP執行委員会で承認される見通しだ。来年10月中の開催を予定。大会テーマは「行動するアジア宗教共同体―包摂的で平和なアジア」だが、「新型コロナウイルスの課題は国際的にも、人類的にも大きい。現在、テーマが再考されている。アフターコロナあるいはウィズ・コロナという観点からのアジア宗教者の連帯といった形に書き換えられるだろう」(篠原祥哲事務局長)とテーマが再検討されているとした。

2020/6/11 全日仏理事会 新理事長に戸松義晴氏 事務総長に大谷派の木全氏

 
戸松理事長木全事務総長 (公財)全日本仏教会は10日、書面による理事会を開き、任期満了となる釜田隆文理事長(曹洞宗)の後任理事長に前事務総長の戸松義晴氏(67、浄土宗)を選出した。事務総長は元真宗大谷派参務の木全和博氏(68)が就任した。任期は2年。これにより第34期執行部が決まり、本格的なスタートとなった。新型コロナウイルスにより来年10月に延期された第44回全日本仏教徒会議・島根大会が今期の重要行事となりそうだ。

 前日の評議員会を経て加盟団体の中から新任6人、再任2人、継続12人の全20人が第34期理事に就任。そして全会一致で戸松氏が選出された。同じく理事の木全氏が事務総長に選ばれた。

 本紙の取材に戸松理事長は、新型コロナウイルスによる社会全般への影響を指摘しながら、「新しい生活様式が求められている。寺院と檀信徒という伝統的な関係も変わらざるを得ないかも知れない。しかし、見直すべきところは見直し、良き伝統は残していきたいと考えている」と話した。

 加盟団体と同様、新執行部はコロナ対策が優先されそうだ。

 【戸松義晴理事長略歴】とまつ・よしはる/昭和28年(1953)5月東京生まれ。慶應大学卒、ハーバード大学大学院神学校修士課程修了。浄土宗総合研究所主任研究員。国際医療福祉大学特任教授。文化庁の宗教法人審議会委員。全日仏第29期と33期の事務総長を務めた。世界仏教徒連盟(WFB)執行役員。自坊は東京都港区の心光院。

 【木全和博事務総長略歴】きまた・かずひろ/昭和26年(1951)10月生まれ。獨協大学経営学部卒業後、大谷大学文学部真宗学科編入。大谷大学大学院修士課程修了。大谷派名古屋別院勤務後、宗会議員(7期)、参務(4回入局)を歴任した。自坊は名古屋市中川区の寶泉寺。

2020/6/4 持続化給付金 宗教法人は対象外に 法の下の平等か政教分離か 宗教界の賛否分かれる

 新型コロナウイルス対策として日本宗教連盟(日宗連)が政府与党や関係省庁に宗教法人を対象に加えるよう要望していた持続化給付金。それらを含めた第2次補正予算案を検討する5月27日の自民党総務会で宗教法人は対象外とされた。そのまま同日の政府閣議決定となった。この間、是非をめぐり法の下の平等と政教分離の間で賛否が分かれた。

 営業自粛等により多大な影響を受けている事業者に最大200万円を給付する持続化給付金は、新型コロナ対策の目玉の一つで、中小企業のみならず公益法人や組合なども対象に含まれている。だが、経済産業省が作成した文書では、風俗営業、政治団体と共に宗教団体は対象外とされていた。

 コロナ禍後、日宗連加盟団体がアンケート調査を行ったところ、主に小規模法人から経営苦況の回答が多数寄せられたという。そこで「財団法人やNPO法人などと同じ公益法人である宗教法人だけが対象外というのはおかしい」として給付対象に宗教法人を加えるよう日宗連は4月から関係省庁や政党を訪れ要請した。一方で災害時に宗教施設が避難所となったり、復興の中心になるなど公益性を有していることも伝えた。

 これを受け、与党の自民党内では宗教法人を加えられるか前向きに検討。この経緯を知った日宗連も手応えを感じていた。しかし、憲法上の政教分離規定が立ちはだかった恰好になった。日宗連関係者は「政府与党の決定を受け入れるだけ。加盟団体から声が上がってこない限り、再び要請することはないと思う」と話した。

 宗教法人当事者は賛否が分かれた。賛成派は日宗連の主張にほぼ同意。反対派は政教分離の原則論のほか、「宗教活動や建物などは非課税。財務書類の提出を免れている法人もある。困ったから税金を投入してください、というのはどうか」(関東の僧侶)という意見が寄せられた。

 持続化給付金の対象外となれば、各教団や本山の支援が次善の策となりそうだ。


宗教法人に詳しい本間久雄弁護士(僧籍取得者)の話 
 憲法89条は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と規定しています。

 ただ、「慈善、博愛の事業」を目的とするNPO法人は対象と明記されていますし、学校法人も対象から外されておりません。宗教法人についてあえて除外するのは法の平等という観点から疑問です。

 政教分離といっても宗教に対する関わり合いが一切禁じられるわけではなく、関わり合いが相当とされる限度を超えるもののみが政教分離違反とされています。有名な津地鎮祭事件判決は、「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為」が政教分離違反であるとしています。持続化給付金の目的は、厳しい経営環境にある事業者の事業継続を支援して、事業者及びその従業員の生活を守るというものであり、世俗目的だと言えます。

 そして、仮に、持続化給付金の対象に宗教法人が含まれた場合、特定の宗教法人のみを対象とするのではなく、宗教法人全般を対象としているとともに、給付は臨時的一時的なものであり、給付金の額も運営費の一部に過ぎないことに鑑みると、宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になる行為であるとは言えないと思います。

 したがって、持続化給付金の対象に宗教法人を含めても政教分離違反にはならないと思います。

 とはいえ、宗教活動には法人税が課税されていませんので、持続化給付金の対象から宗教法人を除外すべきとの世論感情は分からなくもないですし、宗教活動=事業との認識を国民に植え付け、宗教法人への持続化給付金支給から宗教法人課税の議論が巻き起こりかねない恐れがあります。

 ただ収益事業については、宗教法人は法人税を納めておりますので、収益事業の赤字分については持続化給付金の対象としてもハレーションは少ないのではないかと思います。

2020/6/4 国際NGOからみた新型コロナ 山本英里氏 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)事務局長


山本氏 新型コロナウイルスの感染拡大は地球規模に及び、国際NGOは、内に外に様々な課題に直面している。アジアで難民支援や教育支援を行っているSVA(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)も同様である。山本英里事務局長は直面している3つの課題を提示する。

 米国ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の5月31日のデータによると新型コロナウイルス(Covid-19)の感染は、世界・領域188カ所に拡大、感染者は600万人を超え、死者はおよそ37万人に及ぶ。現時点で感染者の多い地域は米国、欧州、南米、インドを中心とする南アジアに続き、中東、アフリカでの拡大が懸念されます。

 日本では今年1月16日に最初の感染者が確認されました。これを受け、SVAではそのおよそ1カ月後に事務所運営の方針を、在宅勤務、オンライン会議への切り替え、国内外の出張の自粛などに踏み切りました。月を追うごとに事務所出勤者数を減らし、4月に緊急事態宣言が発令される頃には1~2名の出勤者以外は、全員在宅勤務となりました。事務所(東京都新宿区)は閉鎖状態になったものの、いかに事務所機能を維持させられるか職員が一丸となって内部整備を進めていきました。

 日本国内における職員の感染への安全配慮や感染拡大予防はもちろんですが、私たちはこの時、支援をする各支援対象地域の感染拡大の傾向を注視しながら、日本の事務所が海外事務所への後方支援を途絶えさせないことに注力しました。

 3月末時点で、海外の6事務所のうち、ロックダウンなど政府が何らかの移動制限を発令した国はネパール、アフガニスタンの2カ国、自粛要請などがラオス、ミャンマー、カンボジアの3カ国でした。タイ側にあるミャンマーの難民キャンプとミャンマー側国境の一部の地域は入域禁止となりました。

 NGOを取り巻く環境は急激に変化し、私たちは主に3つの課題、①援助不足による途上国の課題の深刻化、②先進諸国も危機の当事者となり内向化が進み他国への支援への関心が薄れること、③新たな課題の始まりとこれからの支援の在り方―に直面しています。

 不衛生な生活環境
 1つ目の援助不足による途上国の課題の深刻化は、途上国に対する新型コロナ対応の不足、新型コロナの影響による貧困課題の深刻化が挙げられます。もはやグローバル課題となった新型コロナの感染拡大防止に、国連のグテーレス事務総長は「途上国で数百万人が感染すれば新型コロナウイルスは突然変異するリスクがあり、ワクチンが開発されても効かなくなる」として、途上国への支援を訴えています。

 多くの国では新型コロナ以前に、不衛生な生活環境や医療の未整備などによる下痢症状から子どもたちが命を落とすような状況の中で、感染予防や感染者に対する医療整備は喫緊の対応が必要とされています。感染はもとより、それ以外の病気の対応も不十分になりかねません。

 ネパールの各地方自治体の町長、村長に物資を渡している様子(SVA提供)また、ロックダウンや資金難などにより、新型コロナ対応以外の支援の滞りも大きな懸念です。SVAが長年支援しているタイのミャンマー難民キャンプではキャンプ内の入域の禁止、活動の中止などにより、難民の方々が取り残された状態になっています。長期にわたるキャンプ生活に加え、通常社会との遮断された生活の中で感染に対する不安を抱える難民の人々へのケアが必要となっています。さらにSVAが長年行ってきた教育支援活動においても、学校閉鎖が長引けば培ってきた教育の基盤が揺るぎかねません。

 2つ目には、途上国での支援のニーズが高まる中で、新型コロナは先進国にも襲いかかり世界的な経済危機を招いています。日本においても新型コロナの影響で経済的打撃を受けた人々も多く、これからこのウイルスと共存していく社会の在り方はまだ確立されたとは言い切れません。誰もが当事者でもあるこの状況はかつて経験したことのない事象であり、他国のことにまで目を向けてられないという気持ちになりがちです。しかし、新型コロナへの対応やポスト新型コロナの社会の復興はもはや国別の課題ではなく、グローバルな課題であることを再認識する必要があります。

 そして3つ目には、新型コロナによる新たな課題が生じていることに目を向ける必要があります。国によっては、貧困層を中心に感染が拡大したことにより、さらなる貧富の拡大、そして差別が助長されるという悪循環が引き起こされています。アフガニスタンでは、感染予防のための啓発活動は非ムスリム的行為であるというプロパガンダが一部で発せられている他、感染して亡くなった場合通常の葬儀が取り行われないことに対しての偏見があるため、感染を伏せて欲しいという要望が医療現場で相次いでいるといわれています。

 宗教的儀式や伝統文化の継承など人間の尊厳や価値が揺るぐことは社会不安を引き起こしかねません。ポスト新型コロナの感染予防や防止策が優先される新しい社会が形成されていくなかで、改めて社会の在り方を考えさせられます。

 こういった状況の中で、SVAでは、日本国内、ネパール、アフガニスタンにおいて緊急支援活動を実施しています。非常事態下での生活が長引けば長引くほど子どもたちのストレスは蓄積されます。

NGOの役割とは
また、感染拡大前より社会において孤立しがちな外国ルーツの子どもたちや家庭に事情のある子どもたちを中心に絵本を通じた活動を提供しています。ネパールでは、学校を医療隔離施設として使用するための設備提供を行った他、アフガニスタンでは感染予防の移動制限により職を失い、日々の食糧の調達がままならない帰還民、国内避難民の人々に食糧や衛生用品の配布支援を行っています。

 今後は、学校閉鎖が長引く中で、オンライン教育が盛んに行われているものの、ネットにアクセスができない人々との教育格差がすでに現れています。格差の拡大を招かないための支援が急務とされています。

 新型コロナ下での支援活動は、職員の安全確保など極めて難しいのが現状です。「今私たちが新型コロナを理由に飢餓に苦しむ人々を見捨てたら私たちの役割は何なのか」。アフガン人職員が発した言葉です。

こういった状況下にこそNGOの役割が最大限発揮できることが新型コロナと共存していく新しい社会の構築には不可欠だと考えています。

やまもと・えり/静岡県浜松市出身。2001年にインターンとして公益社団法人シャンティ国際ボランティア会に入職以来、タイ、アフガニスタン、パキスタン、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、カンボジア、ネパールでの教育支援、緊急救援に携わる。昨年より事務局長とアフガニスタン事務所長を兼任。

2020/6/4 真言宗豊山派 43年ぶり総合調査の報告書発刊 4割超が檀家減少と回答


 真言宗豊山派(星野英紀宗務総長)が昨年実施した総合調査(宗勢調査)の集計結果の報告書ができた。調査は昭和51年(1976)以来で43年ぶり。調査から正住寺院は65.1%で7割を切った。5年間で檀家の減少があったとの答えは45.8%にのぼった。寺院の年間収入では、300万以下が38.1%で4割近くになる一方で、1千万円以上は27.8%となり、過疎・少子化や寺院格差の現状が浮かび上がる結果となった。


 調査票は寺院票(記名式)、同(無記名式)、教師票、住職配偶者票、檀信徒票の5種類。回収率は無記名式の寺院票が85.9%、教師票が76%、住職配偶者票が83.8%、檀信徒票が77.5%となった。

 正住寺院数は1472カ寺(65.1%)、兼務寺院762カ寺(33.7%)。寺院所在地の都市区分は、「大都市」が10.8%、「中都市」が17.6%、「小都市」が43.4%、「町・村」が27.4%。小都市が多数を占めた。

 人口増減については、64.4%が「減少している」と答え、「過疎指定地域」に該当すると答えた寺院は8・3%。檀家数は「50戸以下」が29.1%で最も多く、「51~100戸」20.2%、「101~200戸」18.8%となった。

 過去5年の平均収入額では「100万円未満」が最多の17.1%だが、次いで「500万~1千万円未満」12.7%、「1千万円~2千万円未満」12.2%、「2千万~5千万円未満」11.4%が高い割合となった。

 収入の増減では44.4%が5年前に比べて減少したと答えた。檀家が「減少した」は45.8%、「変わらない」は34.9%、「増加した」は10%。「過疎・人口減少が寺院に影響を与える」は79.8%で、このうち4割近くが「すでに影響がある」と答えた。

 過疎・人口減少への「宗団の対策」として期待することは、「教化活動の充実」が最多で806票、次いで「寺院合併の推進」709票、「共済制度の充実」652票。「人口移動に関連して知りたい事柄」の設問では「墓じまいの相談への対応」が939票で最も多く、「トラブルのない離檀の手順」(558票)や「離檀檀家が移住先で豊山派寺院に入檀しやすくする制度」(484票)への要望も多かった。

2020/6/4 新シリーズ 寺族・考 歴史と宗制からみる現在 ① <曹洞宗編> 

 
 「出家教団」を維持する日本仏教の中でも、その色合いが強い禅宗。「寺族とは何(誰)か」。曹洞宗は最近までこの問題を巡り変遷を重ね、平成27年(2015)、新たな寺族の定義を施行した。議論が続いた背景にどんな課題があったのか。定義の変化や保障制度を辿りつつ、寺族の位置付けを探った。

世襲を前提
 同宗の制度上で、「寺族」の言葉が初めて出てきたのは昭和12年(1937)の「寺族保護規程」。住職の死亡後、資格のある寺族が次の住職となる手続きを進めることを促す内容で、残された寺族の保護につながるという現代に通じる考えが見られる。

 続いて終戦前年の同19年(1944)に「寺族得度規程」が定められた。住職が出征するなどして不在となった場合に、寺族を速やかに代役に立てられる緊急措置的な制度だったという。特に有髪のまま得度が受けられるのを認めるもので、配偶者ら女性の法務執行を意識した規程だった。

 寺族とはこのように配偶者ら家族を指していたようだ。戦後、宗教法人法が施行された翌年(1952)に定めた「寺族規程」では、「住職の配偶者又は近親者で、現にその寺院に在住するもの」とあった。

 こうした戦前の規程は、寺族を保護する制度のように見えるが、「保護されているのは寺族ら当人でなく、寺院の世襲制というシステムが保護される対象だったのでは」との見方を示すのは、同宗の寺族問題を研究する女性と仏教・関東ネットワークの瀬野美佐氏だ。寺院の継承に有益な手段として、寺族という言葉は少なくとも制度上では世襲と関連して、言い換えればそれを前提に出てきたと考えられる。(続きは紙面をご覧ください)

※新シリーズ「寺族・考」は不定期掲載です。

5月

2020/5/28  全日本仏教徒会議 10月の島根大会延期 1年後の開催を決定 

 
 10月2(金)・3(土)両日、松江市の島根県民会館で開催予定だった第45回全日本仏教徒会議・島根大会が新型コロナウイルスの影響により、1年ほど延期することが決まった。26日に開催された全日本仏教会(全日仏)の書面決議による理事会で報告された。昭和28年(1953)の高野山大会(和歌山)以来、大会延期は初めてと見られる。

 新型コロナの世界大流行により国際的なイベントが相次いで中止や延期になり、おおよそ2~3年ごとに開かれる全日本仏教徒会議の行方が注目されていた。島根県仏教会の清水谷善圭会長は、4月下旬、全日仏と相談の上で決断したと明かした。

 島根大会は神仏習合の地である特色を活かして「異文化理解と共存―仏の心を稽古する」を大会テーマとしている。基調講演やパネルディスカッションなどが企画され、講師やパネリストも決まっていた。1年後の大会でもほぼ踏襲される。日程は来年10月1日(金)2日(土)の2日間。

 島根大会後の次期大会に関しては、山梨県仏教会が名のりをあげ、全日仏に依頼書を提出。令和4年(2022)中に日蓮宗総本山・身延山久遠寺を主会場に計画していたが、今回の延期で山梨大会の開催時期は再調整されそうだ。

 なお現在の理事は今理事会で任期(2年)を終える。6月、評議員会に続いて新理事による理事会が開かれ、第34期理事長と事務総長が決まる。慣例では、理事長は浄土宗から、事務総長は真宗大谷派から選任される。

3年前の福島大会で島根大会をアピールする清水谷氏(2017年10月) 準備もできず4月下旬決断
苦悩の内を打ち明ける島根県仏教会会長で大会長の清水谷善圭氏(天台宗清水寺住職)の話

 突如とした新型コロナウイルスの発生で、オリンピック開催が延期された頃から仏教徒会議の開催も危ういのでは、と実行委員の頭に過ぎっていました。しかし、秋には収束するだろうとの淡い期待もあり、決断しかねていましたが緊急事態宣言下、一切の行動の自粛が呼び掛けられ、しかも景気の後退が顕著となり、これでは大会経費の募金が頼みづらい、集まっての準備も出来ない環境に諦めがつき、4月下旬全日仏事務局と相談の上、延期を決断した。

 会員の意欲や熱意が冷めるのを恐れ、まず次の日程と開催会場を決めようと会場を押え、令和3年10月1日・2日に開催することを決定。全日仏会長、講師の先生方にも延期のお詫びと共に明年の日程をお伝えして一応の承諾を得ることができ、今は自由に動ける日が来るのを首を長くして待っているところです。

2020/5/28 真言宗豊山派 次期管長に浅井侃雄氏


浅井次期管長 真言宗豊山派(星野英紀宗務総長)は6月13日に田代弘興管長が任期満了を迎えるのを受け、管長推戴委員会を12日に東京都文京区の宗務所で開き、次期管長(総本山長谷寺化主)に浅井侃雄(かんゆう)氏(78)を選出した。任期は6月14日から4年間。総本山長谷寺への入山式を6月15日に営む。

 浅井氏は昭和16年11月生まれ。埼玉県越谷市・金剛寺住職。昭和62年から宗会議員、その後財務部長、総務部長を務め、平成16年から宗務総長。総本山長谷寺評議員、事務長、宗機顧問などの宗内要職を歴任。平成21年に密教教化賞を受賞した。

2020/5/28 進むオンライン学術大会 7月印度学仏教学会が初の試み


 新型コロナウイルスにより大学授業のオンライン化が進行しているが、日本印度学仏教学会(下田正弘理事長)は18日、7月4・5日の第71回学術大会をオンラインリモート会議で開催するとHPで発表した。16日の理事会で正式決定した。6月6・7日の「宗教と社会」学会の第28回学術大会もオンラインでの開催となる。9月の日本宗教学会第79回学術大会は、予定通り駒澤大学(世田谷区)開催で準備を進めている。

 印度学仏教学会の学術大会の会場公は創価大学(八王子市)。250人以上が全国から集い研究を発表する予定だった。しかし、緊急事態宣言発令後、「大学や研究機関において活動が著しく制限」(発表文書)されており、オンライン開催を決定。「取りうる最善の可能性を選択し、会員が一致協力することによって、この困難を乗り越え、次世代に向けてあらたな未来を開いてゆくことができるものと確信しています」とも述べ、「新鮮な経験」(同)となりそうだ。

 オンライン発表が不可能な人に対しては、原稿をウェブ上に掲載してレヴューを行うなど代替手段による発表を、例外的に認めるという。

 喫緊に迫った「宗教と社会」学会(矢野秀武会長)の学術大会は東洋大学(文京区)が会場校だったが、大学側の「学事日程(開場使用)が不透明」となったことも一因だという。すでにオンラインのプログラムが発表されている。

 9月18日から3日間、駒澤大学で行われる日本宗教学会(山中弘会長)の学術大会は、予定通り準備を進めるが、「今後の感染拡大の状況によっては、開催規模の縮小、開催中止になる可能性があります」(4月21日文書、HP)としている。

 例年、5月か6月に研究大会を実施している日本近代仏教史研究会(岡田正彦会長)は3月末に、10月か11月に延期するとHP上で発表している。また状況によっては次年度に延期する可能性があるとしている。

 新型コロナの感染予防として3密(密閉・密集・密接)を回避しなければならず、各種研究会もオンラインで行われるケースが増えた。また会場となる大学がキャンパスを閉鎖したり入校者を制限している中での大会開催は実際上困難だ。緊急事態宣言の解除後は、大学側の判断にも左右される。

メリット=遠隔地から参加容易、デメリット=入室制限の厳密さ
 寺田喜朗・大正大学教授(宗教社会学)のコメント Covid-19の影響で、学会の学術大会もオンライン開催がトレンドとなっている。ICT(情報通信技術)対応が遅れていた日本の研究者にとって強烈な喝となっており、今さらながら習熟に追われる日々である。

 オンライン開催のメリットは、海外を含めた遠隔地からの参加が容易となり、移動・宿泊の費用・労力、大会開場費のスリム化が可能となる点が挙げられる。デメリットは、セキュリティとクオリティの問題がある。前者は、入室制限(チェック)の厳密さをある程度犠牲にしないとスムーズな学会進行に支障が生じる。後者は、プレゼンテーターのICT対応とオーディエンスの情報環境(通信障害)の問題が懸案となる。また質疑応答・議論の質の確保は、司会者のICT技術の習熟・力量に依存している。

 運営側は、マニュアルを作成し、有料アカウントを購入し、司会者に一律に操作を覚えてもらう要請をする。これらの負担もデメリットと言えるが、これをテコにICT技術に馴致すればメリットになる。

2020/5/28 サバイバル コロナ後に備えよ! 100年後存続できるよう知恵絞れ 上田二郎氏(副住職兼税理士・元マルサ)

 

元マルサ(国税局査察部)という異色の経歴を持つ上田二郎氏。縁あって寺院に入ったものの、それまでの世界とはまるで違った。戸惑いながらも改善すべきところは改善し、護持すべきものは護持する姿勢を貫いている。そして新型コロナ後を見すえて、今から備えよと訴える。


 寺報で促す「墓じまい」
 筆者は昨年3月、本紙に「30年後の寺院はどう変わっているのか?」と題し、終活ブームで「墓じまい」や仏壇の処分をする人が急増している現状を寄稿した。少子高齢化の影響で後継ぎがいない世帯が増えているほか、都市部に住む子どもが田舎の墓を移すケースもある。

 一部の観光や不動産で潤う寺院と違い、檀家寺の多くは檀家が減って困窮し、荒れ果てて無住寺と化す。人口減少社会では尻つぼみにならざるを得なく、無縁墓の整理を寺の負担としないためには家族状況をしっかり把握し、後継者がいない檀家に対しては、寺院側からの積極的なアプローチが必要だ。

 ふと自坊を見渡すと、一見して無縁となったと思われる墓があって、問題が山積していることに気づいた。悩んだ挙句、寺報に「墓じまい」を載せると、連絡が途絶えていた檀家から離檀の申し込みがあった。聞けば、妻の実家の墓を継いだが、年を取って墓参できない。嫁ぎ先の長男(独身)が墓守をしていたが、死亡して夫に回ってきた。しかし、夫が死んで守る者がいないなど、仕方のないケースばかりだ。

 結果的に寺報が離檀を促したのかもしれないが、放置されるよりはましで、空いた墓地の再利用を考えられる。数年かけて整理し、他の檀家に墓の移動を納得してもらえば、ある程度の大きさを確保して有効利用できる可能性が広がる。

マスク着用などを訴えている都内の桐ヶ谷斎場の貼り紙 一日葬どころか直葬が主流に
 ここ10年で葬儀が大きく変わった。ほんの少し前まで、葬儀が終わって骨上げを済ませ、その後、本堂に戻って改めて初七日をしていた。それが、式中初七日が主流になったと思ったら、今度は通夜がなくなって、一日葬が当たり前になってきた。

 筆者は、人口減少社会にあって、遺族だけに向かっていては檀家減少を食い止めることができないとの思いから、通夜のない葬儀はしないと指導してきた。簡単に省略できるなら、今まで何のためにやってきたのかと疑問を持つ人もいるだろう。

 ところが、新型コロナの影響で状況が一変した。先日行った斎場では、たった2件だけがひっそりと一日葬をしていた。顔見知りの葬儀社は「斎場から、できるだけ通夜をしないよう指導され、60~70%が直葬です」と顔を曇らす。昨年の寄稿では30年後の寺院の景色を想定していたのだが、コロナによって一気に直葬が主流になってしまったようだ。

 アフターコロナで危惧しているのは、直葬の日常化だ。出番が炉前での読経だけになれば、信仰心を養う機会はない。葬儀を支えてきた世代の旅立ちが、直葬ではあまりにもかわいそうであるだけでなく、親族の絆を確認する場が失われつつある。

 想送式「お坊さんのいないお葬式
 最近登場した「お坊さんのいないお葬式」はその名のとおり、僧侶を呼ばないお別れパーティーだ。僧侶への布施を排除して、食事や思い出動画の作成などに充てる。コンセプトで「なぜ葬儀は仏式なのか。高額な布施は必要なのか」と従来の葬儀に疑問や不満を持つ層に訴えかける。

 一方、コロナを逆手に取って、リモート葬儀や法事を呼びかけている業者もいる。派遣手数料が減った苦肉の策なのかもしれないが、民間企業は抜け目なく収益の機会を探る。

 これらの動きに対し、泰然自若としているのか、身動きが取れないでいるのか分からないが、仏教界の動きが見えてこない。
 
 今こそ、本堂葬を考えるべき
 コロナが終息しても葬儀の縮小化は避けられない。経済が低迷して費用が抑えられ、家族葬すらできなくなる可能性もある。結果、香典返しや祭壇で利益を得ていた葬儀社が困窮する。斎場は荼毘にふすためだけの場所になるだろう。

 今こそ、本堂を檀家に開放するべきではないか。厳粛な本堂葬儀が、民間が手掛けるお別れパーティーと比べ物にならないことは言うまでもなく、集う檀家の子や孫たちの信仰心を育む。

 世代交代によって、僧侶を排除したお別れ会が広がっていくことは避けられず、食い止めるには、従来の葬儀を支持する葬儀社と連携して伝統を守る防衛ラインを構築するしかない。斎場使用料の負担がなくなれば、檀家としてのメリットが生まれる。

 選ばれる僧侶 布施に見合う葬儀
 従来の価値観では計り知れない葬儀ビジネスが生まれ、日本人が長く守ってきた葬儀スタイルを根底から揺さぶっているが、動きを止めるのはすでに遅きに失した。座して待つだけでは寺院の未来はない。人材育成は急務だが、世襲制が限界にきているのかもしれない。民間業者では、会社や従業員を守るために、親族以外の者に後継者を託す動きが加速している。

 人材確保に乗り出した宗派もあり、退職者に僧侶の道を開いた。退職者を出家させて修行をしてもらえば即戦力になる。

 もともと社会経験を積んでいるため、基本教育の必要がないばかりか、厚生年金に加入していれば食うには困らない。そして、退職者は老後の生きがいを見つけ、社会貢献をすることができる。

 新型コロナが追い打ちをかけた今、改めて檀家寺が100年後にも存続できるよう、宗派を超え、仏教界全体が知恵を絞って考える必要があるのではないだろうか。
 
 檀家寺が立ち行かなければ、お盆行事の灯が消えてしまうかもしれない。お盆のない日本の夏が来ないことを祈るばかりだ。
 
 うえだ・じろう/1964年生まれ。首都圏寺院の副住職。東京国税局採用後、税務署勤務のほか査察部(マルサ)を体験。著書に『マルサの視界』『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』など。本名と寺院は非公表。

2020/5/28 シリーズコロナ禍の寺院 宗教者たち 寺院の公的支援 弁護士と行政書士に聞く

 コロナ禍による葬儀や法事、月参りなどの縮小・中止で、一般寺院の布施収入が激減している。当面の運営資金にも行き詰まる寺院が出る中、持続化給付金などの公的支援金が中小寺院にも支給されるのか、政府による最終調整の行方が注目される。コロナ禍は、運営面でも中小寺院の課題を浮き彫りにした。当面の苦難を乗り切り、今後に備えるには何をすればよいのか。宗教法人の実務を専門とする弁護士と行政書士に聞いた。

 コロナ禍が檀家制度の崩壊を一層促進し、今後の寺院運営に大きく影響する事例が出ている。

西口弁護士 檀家数約300軒の和歌山県内の寺院は、4月中の葬儀・法事がゼロ。そうした中、檀家が菩提寺の知らないところで葬儀をしていたことがわかった。コロナ不況で家計が苦しくなった檀家が、「今の経済状態では菩提寺のお布施の額は払えない」として、インターネットで見つけた低料金の葬儀社に依頼。派遣されて来た僧侶から戒名ももらっていた。結局、菩提寺は遺骨の埋葬を認めざるを得なかったという。

 コロナ禍で進んだ月参りの減少や葬儀の極端な簡素化が通常化すれば、多くの寺院が立ち行かなくなると懸念される。兵庫県南部ではコロナ禍で寺院運営に行き詰まった住職が、将来を悲観し寺から出て行ってしまった事例まで発生したという。

 主に阪神地域や和歌山県内の寺院から相談を受けている西口竜司弁護士(神戸市垂水区・神戸マリン綜合法律事務所)は、「会社勤めなどの兼業をせずに住職専業で暮らしていける規模の寺院が、コロナで大きな影響を受けている」と指摘。「法事や月参りがゼロという寺は少なくない。兼職も収益事業もせず、仏事のみで成り立っている普通のお寺を救済するセーフティネットがない」と話す。

田村行政書士 西口弁護士への相談の多くは、「当座の運転資金を調達するために金融機関から融資を受けたい」という切実な内容。だが田村実貴雄特定行政書士(同区・田村行政書士事務所)は、「金融機関からすると一般的な寺院は現金商売で運転資金の概念がなく、担保価値も不明確なため原則融資の対象外。仮に融資を受けられたとしても、会計年度内の収入で償還できない額の借入や伽藍や境内を担保に入れる場合、1カ月間の公告や宗派への承認申請などの手続きが必要で、時間がかかる。融資条件によるが、現状では住職個人の資産を担保に入れて融資を受け、お寺に寄付するしかない」と言う。(続きは紙面をご覧ください)

2020/5/21 興亜観音建立80周年・終戦75年 怨親平等の例大祭執行 コロナ終息も祈願

 
山内行脚の後、本堂に向かう伊丹住職(左) 旧陸軍大将の松井石根将軍(1878~1948)の発願により怨親平等の精神のもと、日中戦争(昭和12年)で倒れた両軍の戦没者を供養する熱海市伊豆山の興亜観音。建立80周年を迎えた今年の例大祭は18日午後、伊丹妙浄住職を導師に営まれた。新型コロナウイルスの影響により興亜観音奉賛会役員ら関係者のみが参列。終戦75年の節目にあたり平和を祈ると共に、コロナ終息も願った。

 心配された雨はやみ、関係者は本堂前に距離をとりながら参席。伊丹住職は団扇太鼓を手に庫裏を出発し、お題目を響かせながら険しい山道を経て本堂へ。表白では、日中戦争・大東亜戦争戦没者や東京裁判刑死者7人の名前を一人ひとり読み上げ、さらに殉難法務者への追善であることを奏上した。

昭和15年(1940)2月に開眼された赤銅色の興亜観音 法華経の方便品・如来寿量品・普門品(観音経)・陀羅尼品を読誦。観音経は全員で唱和し、順次焼香した。再び表白を口にした伊丹住職は、松井将軍の辞世の歌の一つ「世の人に残さばやと思う言の葉は自他平等に誠の心」を紹介。さらに新型コロナに対して、「日本人の底力を示す必然、多大にあり」と読み上げ、終息を祈願した。法要後には、参列者に感謝の言葉を述べた。

 建立80周年事業として、防犯の観点から①本堂境内の防犯防災整備関連工事、②山門建立関連工事、③崇敬者ご位牌供養関連工事を計画していたが、新型コロナにより来年に延期するという。

2020/5/21 持続化給付金 宗教法人も? 政教分離で慎重論も根強く

 
 新型コロナウイルス対策として経済産業省が今月から申請受付を開始した「持続化給付金」の対象に宗教法人を追加する案が浮上している。持続化給付金は、営業自粛等により特に大きな影響を受けている事業者に対して最大200万円を給付するもの。経営が厳しい小規模寺院を念頭においているとされているが、一方で憲法の政教分離の観点から慎重意見も出ている。

 今月9日付の「申請要領」では、大企業を除く中小法人(企業)のほか、医療法人・農業法人・NPO法人などを対象としているが、宗教法人・宗教団体は含まれていない。不給付要件の中には風俗営業や政治団体などと共に「宗教上の組織若しくは団体」と明記されている。

 今月13日、テレビ東京のニュース番組で、政府が「新たに中小の法人を対象にする方向で最終調整に入った」と報道した。「コロナの影響で葬儀などが大幅に減り、経営が苦しい寺などが増えていることが背景にある」とも述べている(ネットでも視聴可能)。その後、これに関する報道はない。

 この前後、日本宗教連盟(日宗連)の事務局サイドが関係省庁や各政党に宗教法人を追加するよう要望を伝えた。葬儀減少や自粛の長期化等が寺院経営を圧迫。アンケート回答で、そうした事情を考慮した日宗連加盟団体は、公益財団・社団やNPO法人などが給付対象とされ、同じ公益法人の宗教法人が外されていることを疑問視。さらに「対象外とされた風俗業や政治団体と宗教団体が同列視されている」ことにも苦言を呈したという。

 しかし宗教団体への公金支出は憲法違反の疑いがあるため、「政教分離の観点からいっても慎重であるべきだ」(日宗連役員経験者)という声は根強い。「仮に可能にするには政教分離に抵触しない、新たな枠組みが必要ではないか。そうすると給付時期は遅れる」との意見も。また法人会計の専門家は「小規模寺院では、帳簿類が整っていない場合がある。収入が減ったことをきちんと証明できるかどうか」と手続き上の問題点を指摘する。

 複数の日宗連関係者は、東日本大震災以降、宗教施設の公共性や宗教の社会貢献への関心が高まっているとし、「寺院だから、神社だから、教会だからといって排除されるのはおかしい。災害時にはそれぞれ地域社会に根ざした活動をしている。他の公益法人は給付対象なのに、宗教法人だけ外されるのはおかしい」と話す。

 宗教法人が給付対象になるかどうかは高度な政治判断に委ねられることになりそうだ。近いうちに結論が出ると見られている。

 憲法第20条(信教の自由)第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、 又は政治上の権力を行使してはならない。

 第89条(公の財産の支出又は利用の制限)公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、 教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

2020/5/21 新型コロナが突きつけた諸課題 持続可能な循環型社会の創生へ

 
国会近くで団扇太鼓を叩くことができない、と苦笑する日蓮宗僧侶で宗教者九条の和世話人の小野文珖氏。新型コロナウイルスをめぐる諸現象と共に、その裏で国民生活に欠かせない種苗法が“改悪“されようとしていることに警鐘を鳴らす。


 百年ごとの人類の試練
 1719年―ペスト・世界大流行 フランスのマルセイユからパンデミック。
 1819年―コレラ・世界大流行 インドのカルカッタからパンデミック。
 1919年―スペイン風邪・世界大流行 アメリカのカンザス州陸軍基地から第1次世界大戦中のヨーロッパでパンデミック。一説には約1億人の死者との推計も。 2019―新型コロナ・世界大流行 中国の武漢からパンデミック。2020年5月5日現在、感染者約352万人、死者約25万人。

 100年ごとに人類に襲いかかる疫病の試練は、地球の自然淘汰の意思か? しかし、そのウイルス禍の災厄を乗り越えて人類が繁栄してきたのも歴史の事実である。人間の智慧と共助で、疫病の苦難をくぐり抜けて今日に到っている。人類が助け合えば新型コロナウイルス「COVIDー19」の大嵐に耐えていけるはずである。それを信じたい。
 
 ウイルスとの共存
 「疫病史観」という用語があるくらいに、人類にとって疫病流行は重大な歴史的転換点になっていたのである。小説家村上龍氏に異色作『ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界Ⅱ』(幻冬舎)がある。今から24年前の作品だが、当時の京都大学ウイルス研究所長の畑中正一氏が「21世紀の黙示録である」と解説している。小説の中にこのような一節があった。
 〈ウイルスの多くは宿主と共存して生きている。ヒュウガ・ウイルスも恐らくそのようにして、虫とかコウモリとか鳥とか動物の中にいたのだろう。生態系に強いストレスがかかると、ウイルスと他の生物との平衡状態が変化する。温暖化によってウイルスの繁殖範囲が拡がり、都市が生まれ広がることによってウイルスを宿した小動物が集まり、ヒトに感染するウイルスを持つ動物、たとえば豚やアヒルや犬や鶏などをお互い近くで飼うことによって遺伝物質の交換が容易になりその結果ウイルスが突然ヒトに出くわし、出現し、襲うわけだ〉

 ウイルスは生きているが、「生物」ではない。細胞を持たず、自分を自力で複製できないから、細菌でもなく、生物でもない。0・1マイクロメートル以下のタンパク質の殻なのだ。ただその中に遺伝子があり、他の生き物の細胞に寄生して増殖する。

 ヒトが地球の森林を切り開き、動植物を育て、町を作り、国を広げていく過程で、眠っていたウイルスが突然変異して襲ってくるのである。ペストやコレラや天然痘がそうだった。
 文明を捨てるか、それとも「種痘」のようなワクチンを発明し自らの体にウイルスを取りこみ、共存するか。ウイルスは生物ではないから消滅させることはできない。

 生死の優先順位
 このまま医療崩壊したら、イタリアのように社会が死の選択に迫られると思う。今まで日本では、「高齢者を救え」というような方向で対応されているように感じる。テレビで、若者に向かって、「あなたのおじいさん、おばあさんの命が危ないから」と訴えているのをしばしば耳にする。しかし、私は異議を申し立てたい。「若者を救って」欲しい。

 今年、私は72歳になる。生老病死の仏教の真理から言えば、滅相に近づいている。この無常の世で無事老いを迎えられたのだ。東洋的な見方をすれば、70歳は古来稀(まれ)なのだ。

 医療機器や時間や人手が足りなくなったら、70歳以上は寿命に任せ、60代より下の世代の人たちの命を選び取って欲しい。コロナ後の世界の復興は並大抵ではないはずだ。全く今までと異なった世界を創り上げなければならないかもしれない。結果としてこのようにウイルス蔓延の世界を作ったのは、私たち世代の責任だ。もう取り返しがつかない。未来を構築するのは「高齢者」ではない。次の世代だ。この災厄を凝視して、持続可能な循環型社会の創生に「人類」として尽力して欲しい。

 自家採種の禁止
 コロナ禍の陰に隠れて、国民に知らされずに、この国の「かたち」が変えられようとしている。政府は3月3日「種苗法改正案」を閣議決定し、国会に提出。2021年4月施行を目指している。18年の主要農作物種子法廃止から、食品の農薬残留基準緩和に通ずる政府の姿勢で、水道法改正(水質基準緩和)、森林法改正(民間企業参入)等々の現政権の「グローバリゼーション」「新自由主義」を謳い文句とする「新しい日本」の国づくりが着々と進んでいるのである。その根本に憲法改定がある。

 農協を定年退職した友人と日本の農業問題について学習していると、明日の日本に恐怖を感ずるほど不安が募る。「農山漁村文化協会」が、今国会で採決されようとしている種苗法改正案に、「農家の自家増殖(自家採種)『原則禁止』に異議あり」と反対の声をあげているが、コロナ対策の声にかき消されている。

 農作物387種にわたって農家が勝手に種を採り栽培すると、10年以下の懲役もしくは1千万円の罰金という法律である(東京新聞では登録品種8100超許諾必要)。コロナ禍で見過ごされようとしているが、持続可能な社会に向けたパラダイムシフト構築のためにも“改悪”させてはならない。

 おの・ぶんこう/1948年生まれ。日蓮宗栗須祖師堂(群馬県藤岡市)堂守。宗教者九条の和世話人。群馬諸宗教者の集い代表。

2020/5/21 医療従事者の悩み傾聴 WCRP日本委が後援


世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は8日、新型コロナウイルス感染症の治療にあたる医療従事者の精神的ケアのために立ち上げられた「感染症と闘う医療従事者の話を聴く会」を後援することを発表した。

 同会は、感染症診療に関わる医療従事者が様々な精神的苦痛や困難を抱えている状況を受けて、在宅医や臨床宗教師らが世話人となって発足。心理専門職(公認心理師、臨床心理士)、認定臨床宗教師、スピリチュアルケア師がインターネットのテレビ電話システム「ZООM」を使用して医療従事者の悩みを傾聴する。

 対象となる「医療従事者」は医療機関で働く人すべてを指し、職種は一切問わない。医師や看護師等の医療専門職だけでなく、事務職や清掃職など医療機関に勤める全員を対象としている。

 5月1日から傾聴活動を開始した。傾聴は基本的に単回で終了するが、状況に応じて最大5回まで無料で利用できる。個別相談とグループトーク(準備中)の2種類があり、同会のサイトから申し込みができる。

2020/5/14 コロナ禍 仏教系大学一人2万~10万円 学生に支援金 オンライン授業のため環境整備として 


仏教系大学の学生に対する支援金(主にネット環境整備費として) 新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が5月31日まで延長された。各大学ではオンライン授業に切り替え、その環境整備費用として支援金を給付しており、仏教系大学でも同様に学生への緊急支援が行われている。2万円から10万円の範囲で、5万円支給が多い。また困窮する学生のための奨学金を設定したり、他の奨学金を紹介したりしている。

 関東地方では、都内の大正大学(学生数約5千人)は総額4億5千万円の新型コロナ対策臨時基金を開設し、学生のインターネット環境整備などのため1人当たり5万円を給付するほか、最大30万円まで授業料を減免する。

 駒澤大学(約1万5千人)、立正大学(約1万人)も1人当たり5万円の修学支援金を給付。武蔵野大学(約9千人)は全学生・院生に、後期学費からの5万円減額という形で1人当たり5万円の学修支援金を給付。東京、埼玉、千葉にキャンパスを置く淑徳大学(短大部含め約5400人)1人当たり5万円を、神奈川県横浜市の鶴見大学(短大部も含め約2800人)は1人当たり10万円を給付する。

 関西では京都の龍谷大学が著しく経済上の困難を抱える学生に最大10万円を給付する「経済支援奨学金」を新設。オンライン授業導入に伴い全学生(付属平安中高の生徒も含む)に一律3万円給付を決定している。

 花園大学(約1700人)は緊急修学支援奨学金を創設し、1人当たり5万円を給付する。佛教大学は通学課程(約6200人)に5万円を給付するほか、パソコン(PC)の貸与などを支援。

 大谷大学(約3400人)も同趣旨で学修支援金として、学部生と大学院生に一律5万円を今月中に給付する。同大独自の奨学金制度として、教育後援会家計急変奨学金(給付型)や教育後援会特別貸与奨学金(貸与型)も用意している。

 大谷派系の京都光華女子学園は大学・短大・院生(合計約2100人)に1人当たり5万円、高校・中学・小学生には3万円給付のほか、PCの無償貸与を決定した。浄土宗系の京都文教大学(約2千人)は1人当たり3万円の給付を検討している。

 大阪の本願寺派系の相愛大学(約1200人)がネット環境整備のために1人当たり3万円。和宗の四天王寺大学(短大部も含め約4200人)は一律ではないが、保護者の家計が急減した600人までを対象に5万円を給付。40人までを対象とする30万円の修学支援奨学金を新設した。

 中京地方では愛知学院大学(約1万1千人)がネット環境整備支援として1人当たり10万円を給付する。浄土宗系の東海学園大学(約4400人)は5万円、大谷派系の愛知文教大学(約420人)も5万円を給付する。

 福井県越前市にある真宗誠照寺派系の仁愛大学(約1200人)は全学生に2万円を給付するほか、自宅以外から通学する学生に家賃補助として1人当たり3万円を給付する。

2020/5/21 持続化給付金 宗教法人も? 政教分離で慎重論も根強く

 
 新型コロナウイルス対策として経済産業省が今月から申請受付を開始した「持続化給付金」の対象に宗教法人を追加する案が浮上している。持続化給付金は、営業自粛等により特に大きな影響を受けている事業者に対して最大200万円を給付するもの。経営が厳しい小規模寺院を念頭においているとされているが、一方で憲法の政教分離の観点から慎重意見も出ている。

 今月9日付の「申請要領」では、大企業を除く中小法人(企業)のほか、医療法人・農業法人・NPO法人などを対象としているが、宗教法人・宗教団体は含まれていない。不給付要件の中には風俗営業や政治団体などと共に「宗教上の組織若しくは団体」と明記されている。

 今月13日、テレビ東京のニュース番組で、政府が「新たに中小の法人を対象にする方向で最終調整に入った」と報道した。「コロナの影響で葬儀などが大幅に減り、経営が苦しい寺などが増えていることが背景にある」とも述べている(ネットでも視聴可能)。その後、これに関する報道はない。

 この前後、日本宗教連盟(日宗連)の事務局サイドが関係省庁や各政党に宗教法人を追加するよう要望を伝えた。葬儀減少や自粛の長期化等が寺院経営を圧迫。アンケート回答で、そうした事情を考慮した日宗連加盟団体は、公益財団・社団やNPO法人などが給付対象とされ、同じ公益法人の宗教法人が外されていることを疑問視。さらに「対象外とされた風俗業や政治団体と宗教団体が同列視されている」ことにも苦言を呈したという。

 しかし宗教団体への公金支出は憲法違反の疑いがあるため、「政教分離の観点からいっても慎重であるべきだ」(日宗連役員経験者)という声は根強い。「仮に可能にするには政教分離に抵触しない、新たな枠組みが必要ではないか。そうすると給付時期は遅れる」との意見も。また法人会計の専門家は「小規模寺院では、帳簿類が整っていない場合がある。収入が減ったことをきちんと証明できるかどうか」と手続き上の問題点を指摘する。

 複数の日宗連関係者は、東日本大震災以降、宗教施設の公共性や宗教の社会貢献への関心が高まっているとし、「寺院だから、神社だから、教会だからといって排除されるのはおかしい。災害時にはそれぞれ地域社会に根ざした活動をしている。他の公益法人は給付対象なのに、宗教法人だけ外されるのはおかしい」と話す。

 宗教法人が給付対象になるかどうかは高度な政治判断に委ねられることになりそうだ。近いうちに結論が出ると見られている。

 憲法第20条(信教の自由)第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、 又は政治上の権力を行使してはならない。

 第89条(公の財産の支出又は利用の制限)公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、 教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

2020/5/21 新型コロナが突きつけた諸課題 持続可能な循環型社会の創生へ

 
国会近くで団扇太鼓を叩くことができない、と苦笑する日蓮宗僧侶で宗教者九条の和世話人の小野文珖氏。新型コロナウイルスをめぐる諸現象と共に、その裏で国民生活に欠かせない種苗法が“改悪“されようとしていることに警鐘を鳴らす。


 百年ごとの人類の試練
 1719年―ペスト・世界大流行 フランスのマルセイユからパンデミック。
 1819年―コレラ・世界大流行 インドのカルカッタからパンデミック。
 1919年―スペイン風邪・世界大流行 アメリカのカンザス州陸軍基地から第1次世界大戦中のヨーロッパでパンデミック。一説には約1億人の死者との推計も。 2019―新型コロナ・世界大流行 中国の武漢からパンデミック。2020年5月5日現在、感染者約352万人、死者約25万人。

 100年ごとに人類に襲いかかる疫病の試練は、地球の自然淘汰の意思か? しかし、そのウイルス禍の災厄を乗り越えて人類が繁栄してきたのも歴史の事実である。人間の智慧と共助で、疫病の苦難をくぐり抜けて今日に到っている。人類が助け合えば新型コロナウイルス「COVIDー19」の大嵐に耐えていけるはずである。それを信じたい。
 
 ウイルスとの共存
 「疫病史観」という用語があるくらいに、人類にとって疫病流行は重大な歴史的転換点になっていたのである。小説家村上龍氏に異色作『ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界Ⅱ』(幻冬舎)がある。今から24年前の作品だが、当時の京都大学ウイルス研究所長の畑中正一氏が「21世紀の黙示録である」と解説している。小説の中にこのような一節があった。
 〈ウイルスの多くは宿主と共存して生きている。ヒュウガ・ウイルスも恐らくそのようにして、虫とかコウモリとか鳥とか動物の中にいたのだろう。生態系に強いストレスがかかると、ウイルスと他の生物との平衡状態が変化する。温暖化によってウイルスの繁殖範囲が拡がり、都市が生まれ広がることによってウイルスを宿した小動物が集まり、ヒトに感染するウイルスを持つ動物、たとえば豚やアヒルや犬や鶏などをお互い近くで飼うことによって遺伝物質の交換が容易になりその結果ウイルスが突然ヒトに出くわし、出現し、襲うわけだ〉

 ウイルスは生きているが、「生物」ではない。細胞を持たず、自分を自力で複製できないから、細菌でもなく、生物でもない。0・1マイクロメートル以下のタンパク質の殻なのだ。ただその中に遺伝子があり、他の生き物の細胞に寄生して増殖する。

 ヒトが地球の森林を切り開き、動植物を育て、町を作り、国を広げていく過程で、眠っていたウイルスが突然変異して襲ってくるのである。ペストやコレラや天然痘がそうだった。
 文明を捨てるか、それとも「種痘」のようなワクチンを発明し自らの体にウイルスを取りこみ、共存するか。ウイルスは生物ではないから消滅させることはできない。

 生死の優先順位
 このまま医療崩壊したら、イタリアのように社会が死の選択に迫られると思う。今まで日本では、「高齢者を救え」というような方向で対応されているように感じる。テレビで、若者に向かって、「あなたのおじいさん、おばあさんの命が危ないから」と訴えているのをしばしば耳にする。しかし、私は異議を申し立てたい。「若者を救って」欲しい。

 今年、私は72歳になる。生老病死の仏教の真理から言えば、滅相に近づいている。この無常の世で無事老いを迎えられたのだ。東洋的な見方をすれば、70歳は古来稀(まれ)なのだ。

 医療機器や時間や人手が足りなくなったら、70歳以上は寿命に任せ、60代より下の世代の人たちの命を選び取って欲しい。コロナ後の世界の復興は並大抵ではないはずだ。全く今までと異なった世界を創り上げなければならないかもしれない。結果としてこのようにウイルス蔓延の世界を作ったのは、私たち世代の責任だ。もう取り返しがつかない。未来を構築するのは「高齢者」ではない。次の世代だ。この災厄を凝視して、持続可能な循環型社会の創生に「人類」として尽力して欲しい。

 自家採種の禁止
 コロナ禍の陰に隠れて、国民に知らされずに、この国の「かたち」が変えられようとしている。政府は3月3日「種苗法改正案」を閣議決定し、国会に提出。2021年4月施行を目指している。18年の主要農作物種子法廃止から、食品の農薬残留基準緩和に通ずる政府の姿勢で、水道法改正(水質基準緩和)、森林法改正(民間企業参入)等々の現政権の「グローバリゼーション」「新自由主義」を謳い文句とする「新しい日本」の国づくりが着々と進んでいるのである。その根本に憲法改定がある。

 農協を定年退職した友人と日本の農業問題について学習していると、明日の日本に恐怖を感ずるほど不安が募る。「農山漁村文化協会」が、今国会で採決されようとしている種苗法改正案に、「農家の自家増殖(自家採種)『原則禁止』に異議あり」と反対の声をあげているが、コロナ対策の声にかき消されている。

 農作物387種にわたって農家が勝手に種を採り栽培すると、10年以下の懲役もしくは1千万円の罰金という法律である(東京新聞では登録品種8100超許諾必要)。コロナ禍で見過ごされようとしているが、持続可能な社会に向けたパラダイムシフト構築のためにも“改悪”させてはならない。

 おの・ぶんこう/1948年生まれ。日蓮宗栗須祖師堂(群馬県藤岡市)堂守。宗教者九条の和世話人。群馬諸宗教者の集い代表。

2020/5/21 医療従事者の悩み傾聴 WCRP日本委が後援


世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は8日、新型コロナウイルス感染症の治療にあたる医療従事者の精神的ケアのために立ち上げられた「感染症と闘う医療従事者の話を聴く会」を後援することを発表した。

 同会は、感染症診療に関わる医療従事者が様々な精神的苦痛や困難を抱えている状況を受けて、在宅医や臨床宗教師らが世話人となって発足。心理専門職(公認心理師、臨床心理士)、認定臨床宗教師、スピリチュアルケア師がインターネットのテレビ電話システム「ZООM」を使用して医療従事者の悩みを傾聴する。

 対象となる「医療従事者」は医療機関で働く人すべてを指し、職種は一切問わない。医師や看護師等の医療専門職だけでなく、事務職や清掃職など医療機関に勤める全員を対象としている。

 5月1日から傾聴活動を開始した。傾聴は基本的に単回で終了するが、状況に応じて最大5回まで無料で利用できる。個別相談とグループトーク(準備中)の2種類があり、同会のサイトから申し込みができる。

2020/5/14 コロナ禍 仏教系大学一人2万~10万円 学生に支援金 オンライン授業のため環境整備として 


仏教系大学の学生に対する支援金(主にネット環境整備費として) 新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が5月31日まで延長された。各大学ではオンライン授業に切り替え、その環境整備費用として支援金を給付しており、仏教系大学でも同様に学生への緊急支援が行われている。2万円から10万円の範囲で、5万円支給が多い。また困窮する学生のための奨学金を設定したり、他の奨学金を紹介したりしている。

 関東地方では、都内の大正大学(学生数約5千人)は総額4億5千万円の新型コロナ対策臨時基金を開設し、学生のインターネット環境整備などのため1人当たり5万円を給付するほか、最大30万円まで授業料を減免する。

 駒澤大学(約1万5千人)、立正大学(約1万人)も1人当たり5万円の修学支援金を給付。武蔵野大学(約9千人)は全学生・院生に、後期学費からの5万円減額という形で1人当たり5万円の学修支援金を給付。東京、埼玉、千葉にキャンパスを置く淑徳大学(短大部含め約5400人)1人当たり5万円を、神奈川県横浜市の鶴見大学(短大部も含め約2800人)は1人当たり10万円を給付する。

 関西では京都の龍谷大学が著しく経済上の困難を抱える学生に最大10万円を給付する「経済支援奨学金」を新設。オンライン授業導入に伴い全学生(付属平安中高の生徒も含む)に一律3万円給付を決定している。

 花園大学(約1700人)は緊急修学支援奨学金を創設し、1人当たり5万円を給付する。佛教大学は通学課程(約6200人)に5万円を給付するほか、パソコン(PC)の貸与などを支援。

 大谷大学(約3400人)も同趣旨で学修支援金として、学部生と大学院生に一律5万円を今月中に給付する。同大独自の奨学金制度として、教育後援会家計急変奨学金(給付型)や教育後援会特別貸与奨学金(貸与型)も用意している。

 大谷派系の京都光華女子学園は大学・短大・院生(合計約2100人)に1人当たり5万円、高校・中学・小学生には3万円給付のほか、PCの無償貸与を決定した。浄土宗系の京都文教大学(約2千人)は1人当たり3万円の給付を検討している。

 大阪の本願寺派系の相愛大学(約1200人)がネット環境整備のために1人当たり3万円。和宗の四天王寺大学(短大部も含め約4200人)は一律ではないが、保護者の家計が急減した600人までを対象に5万円を給付。40人までを対象とする30万円の修学支援奨学金を新設した。

 中京地方では愛知学院大学(約1万1千人)がネット環境整備支援として1人当たり10万円を給付する。浄土宗系の東海学園大学(約4400人)は5万円、大谷派系の愛知文教大学(約420人)も5万円を給付する。

 福井県越前市にある真宗誠照寺派系の仁愛大学(約1200人)は全学生に2万円を給付するほか、自宅以外から通学する学生に家賃補助として1人当たり3万円を給付する。

2020/5/14 ハンセン病史と新型コロナ 酒井義一氏(ハンセン病首都圏市民の会事務局長・真宗大谷派僧侶)

 新型コロナウイルスに伴う偏見や差別が指摘されている。専門家会議も感染者や医療従事者への偏見に警鐘を鳴らしている。かつてハンセン病患者に対して国は隔離政策をとってきた。それが廃止されたのは1996年である。昨年7月に判決が確定したハンセン病家族訴訟原告団をサポートしてきたハンセン病首都圏市民の会事務局長で真宗大谷派僧侶の酒井義一氏から提起いただいた。


大谷派総長のメッセージが記載された酒井氏自坊の掲示板 5月3日、お寺で永代経を行う予定でした。門徒さんが集い、法要を勤め、法話があり、食事を一緒にするというものです。若い頃は苦痛でしたが、今では楽しみになっています。どうしても催したかったので、講師の先生にはぎりぎりまで待って頂きました。しかし事態は改善せず、中止を決めました。自分自身、とてもショックでした。

 自然災害の場合は、被災地があり、被災された人を支援するということがあります。そこには炊き出しや後片づけ、交流や出会いの機会があります。

 ところが今回の新型コロナはお手上げです。日本だけでなく世界のすべての人々が当事者だからです。ウイルスの性質上、ボランティアに出かけ、顔を突き合わせて相手の思いを聞き、こちらの思いを届けるということが難しい。その点では、直接治療にあたる医療従事者には、本当に頭が下がります。その方々に偏見・差別が及んでいる現実は、とても痛ましいことです。

 ハンセン病と新型コロナウイルスは状況が異なるので同列に扱うことはできません。しかし偏見や差別が出てくる背景には、いくつかの共通したパターンがあるように感じています。


 たとえば「よく分からない」ということ。ハンセン病もそうでしたが、新型コロナウイルスについて、そのすべてが解明されているとは言えません。そこには無知があります。はっきりしない情報のなかで、勝手に負のイメージを広げてしまうことがあるのでは。

 それから「怖れる」。人間は本能的に怖れを感じると自分の身を守ろうとします。自己防衛本能があるからです。しかし、その自分を守るという思いが、時に暴発する。そして、差別が起こる。排除すべきは菌であるのに、必要以上に人間を排除しようとしてしまうのです。根底にあるのは怖れとか守るという思いではないかと思います。 

 それから、「ひとくくりにする」傾向もよく似ています。「ハンセン病の患者」「コロナウイルス感染者」と。たとえば、現在はほとんどの場合が感染者は数字で発表されています。人権上当然ではありますが、その向こうには名前を持った一人ひとりの人間がいて、苦しみや悲しみや辛さがあるというところまでは見えてきません。ひとくくりにすることによって、そこにいる人間が見えなくなっているのではないでしょうか。

 そのことを私は「ひとくくりの罠」と表現しています。ハンセン病の場合、「ハンセン病患者たち」とひとくくりにするところから差別が現れてきた。典型的な事例が元患者たちの宿泊を拒否した熊本での事件(2003年)でした。すでに完治しているにもかかわらず、宿泊拒否を容認する〝善意〟の人の中にあるのは、「ハンセン病の患者たち」とくくってしまう姿勢です。

 3年前、神奈川県の障がい者施設で19人が殺害された事件がありました。犯人は「意思疎通のできない障がい者は、いなくなればいい」といった旨の発言をしています。人間性・違い・人格など、それらを無視して「障がい者は」とひとくくりに見てしまい、差別や偏見の心が暴発して人間を襲ったのです。歴史も状況も違いはありますが、差別や偏見が生じる構図は、ハンセン病も新型コロナも同根だと感じています。

 私たちに必要なのは、ウイルスに対する正しい認識や理解ですが、それだけではない。自らの中にある様々な課題や闇に気づいていくこと、そして相手を人間として見つめるまなこを持つことが、大切なのではないでしょうか。

 ウイルスに関して私の先輩である大阪・南溟寺住職の戸次公正さんが寺報(「法蔵魂」5月号)でこんなことを書いています。

 〈バイキンマンは「ばい菌」です。それは敵ですが、実はアンパンマンだってイースト菌という菌がないと作れないのです。世の中からばい菌がいなくなればいいのか?というと、そうはいかない。ばい菌がいなくなると人間も生きていけなくなる。人間は常にばい菌やウイルスとたたかいながら、それで免疫ができて共に生きていける。〉

 バイキンマンもアンパンマンも菌がないと生きていけない。人間も乳酸菌などのたくさんの細菌が体内に生きています。コロナウイルスを根絶すればこの問題は解決するのか。そもそも根絶はできるのかというと、難しいようです。ウイルスとの共生は専門家も指摘しています。

 ここに親鸞の世界と非常に近いものを感じます。敵と思うような自分にとって都合の悪いことを帳消しにして日常に戻るのではなく、悪を包み込みながら、それらを善に変えなしていく、それらの意味を見いだしていく道を歩む。免疫の考えと似ていると思いませんか。

 経済的な面でしんどい上に精神的な過酷さを誰もが共有しています。この現実を乗り越えようという言葉もありますが、乗り越えるというよりも、この辛さや孤独を無駄にしない。この現実から何かを学んでいく道を歩むことが、すべての人に問われていることだと思います。(談)

さかい・よしかず/1959年東京生まれ。真宗大谷派存明寺(世田谷区)住職。国立ハンセン病療養所多磨全生園(東村山市)にある真宗報恩会の駐在布教使を30年以上務める。ハンセン病首都圏市民の会事務局長。自坊で子ども食堂を実施しているが、新型コロナによる緊急事態宣言以降、休止している。

2020/5/14 インタビュー 心をも蝕む 新型コロナ 増える相談、足りない相談員 孤立者の声 只管傾聴せよ! 篠原鋭一氏(自殺防止ネットワーク「風」理事長、曹洞宗長寿院住職)に聞く


 新型コロナウイルスは肉体だけの病ではなく、感染・非感染を問わず人間の心を蝕んでいた。NPO法人自殺防止ネットワーク「風」理事長で曹洞宗僧侶の篠原鋭一氏(75)はそう指摘する。そして仏教者に「只管傾聴」を訴える。
 
――お寺の状況はいかがですか。
 「通常のお寺としてやるべき法事はしていません。先日も葬式がありましたが、家族葬でした。仏事は極端に縮小し、お寺さんとの交流も極力控えている。お寺が集まる教区の会議や護持会もキャンセルしている」
 「長い間、自殺防止の相談活動をしているので、いまは結構電話相談が増えている。条件はさまざまですが、死ぬとか死にたいとか。先日、取材でテレビ局が来寺した。放映後には見た人からの相談が増える。いまはそれに追われているところです」


――仏教界や僧侶は何ができるでしょうか。
 「医療従事者は命をかけてあれだけの活動をされている。行政の人たちもいろいろされている。翻って僧侶は何ができるだろうか。コロナに関しては医療や経済、教育といった専門知識がなければ応えられない問題も確かにある。けれども、坊さんはそれに応える必要はないと思うんですよ。専門家ではないんですから、ひたすら聴くこと、只管傾聴です。相手は何か話したくてしょうがないんだから、思いの丈をぶつけて下さいと。少々怒鳴ってきたって、そりゃそうだと思ったらいいんです。閉塞感と窮屈な状況に追いつめられているんですからね。サンドバッグになることです。一通り話し終えると相手の声が明るくなる。スッキリするんです」

 「最初にお聴きするだけですよと断ってもいい。そうなんですね、私も辛いんですよと言いながらひたすら聴き続けることです。テレビを見たお坊さんから、私も参加したいという反響があってそれは嬉しかった。相談を受ける人は不足しているので、お寺でもできる」

 「お寺としては、お寺に来てお茶を飲みましょうと誘えないのが辛い。でもこういう時にこそ、坊さんから声をかけていく。手紙であれ、電話であれ、檀信徒との関わりを確認するいいチャンスじゃないのかな。お元気ですかとか、お盆に会いましょうねとか。結果的にお盆ができなくなってもいい。ハガキ一枚出してほしい。ハガキを書く時間はあるのですから。多少、お節介と思われるぐらいがいい」

※インタビューの一部を掲載。詳しくは紙面をご覧ください。

4月

2020/4/30・5/7合併号 WCRPとPNND共同会合 核軍縮の努力延期させず 宗教者と国会議員 共同提言を作成


オンラインで開催された合同会合 4月27日から米国ニューヨークの国連本部で予定されていた核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が新型コロナウイルスの影響により延期されたが、「核軍縮の努力は延期されてはならない」と世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会と、国会議員からなる核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本は27日午前、都内の参議院議員会館を主会場にオンラインで合同会合を開催。共同提言文について検討し、「核兵器に関わる国際情勢が、本年ほど危機的状況にある年はない」と警告した。提言は日本政府に提出される。

 具体的な提言は①核抑止政策の検証、②核廃絶と核兵器禁止条約、③喫緊の課題の3点。
 
 ①では「核兵器使用の敷居が低くなりつつある可能性」があるとした。さらに「核の誤爆、盗難、事故の可能性の高まり」を指摘した上で、「本当に人々の生命や生活を守るために必要な政策が一体何なのかについて検証されるべき」としている。
 ②では、3年前の国連の会議で採択された核兵器禁止条約に現在81カ国が署名し36カ国が批准。「近い将来の条約発効が見込まれている」とし、「我々は、日本政府が、本条約支持へと即座に方針転換できないまでも、この条約が発効後1年以内に招集される『締約国会合』にオブザーバーとして出席することを強く望みたい」とした。
 ③では、「ヒバクシャ国際署名」活動に敬意を表する一方で、AI(人工知能)ロボット兵器や宇宙空間の軍事利用、新たなミサイル開発に警鐘を鳴らし、「昨今の状況に対して倫理的、人道的な責任を宗教者と国会議員は痛切に自覚し、これらの防止に向けた役割を果たすものである」と決意を表明している。

2020/4/30・5/7合併号 寄稿 新型コロナ後の文明 若麻績敏隆氏(画家・浄土宗善光寺白蓮坊住職)

 ゴールデンウイークに先立ち、東京都は「いのちを守る ステイホーム週間」を打ち出し、この標語は全国に広がった。そして、どの都道府県でも新型コロナウイルス感染拡大防止に努めている。昨年の台風19号で甚大な被害を受けた長野県の若麻績敏隆氏(浄土宗僧侶)が医療現場への感謝と共に災害と地球環境の観点から提起する。


 新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、1年前には誰もが想像だにしなかった惨状が、世界各地に広がっています。4月21日現在、全世界の罹患者は250万人にも達し、死者数は17万人を超えました。日本でも罹患者は1万人を超え、死者数も180人を超えています。多くの人々が自宅待機を余儀なくされる一方で、過酷な医療現場で昼夜を問わず命がけで救命にあたられている医療関係者の方々、そして、人々の日々の暮らしを維持するために、様々な職場で懸命に働いて下さっている方々には心よりの感謝を申し上げたいと思います。 
   
 今回の新型コロナウイルスによるパンデミックの状況を見ると、私は改めて、私たちの文明が大きなターニングポイントにさしかかっていることを感じずにはおれません。今回のウィルスがこれほどの世界的流行になったことは、地球温暖化やゴミ問題などと同様に、現代の科学文明が大きく影響していると言われています。もともと中国の武漢周辺の風土病にすぎなかったこの病気は、世界中に張り巡らされた航空網によって、一気に世界全体に拡散してしまったのです。

 グローバリズムの影響は、日本国内でも、近年目覚ましい、インバウンド観光などで顕著です。グローバリズムそのものは、すべてが否定されるべきものではありませんが、弊害を含めて再検証する必要があるでしょう。

 ここのところ、地球温暖化が原因とされる強大な台風が、毎年のように日本列島を襲い各地に大きな被害をもたらしています。昨年の秋、私の住む長野市では、令和元年東日本台風と命名された台風19号のもたらした大雨によって千曲川の堤防が決壊し、広範な地域での浸水被害がおきました。2人の方が亡くなり、被災家屋は3600棟に及びました。

あっけなく無価値に
 私は発災の2日後から、友人の寺でゴミ出しや泥かきの手伝いを行いましたが、膨大な量のゴミが、ゴミ置き場を瞬く間に埋めていくことに、大きな衝撃を受けました。それぞれの家庭の大切な家財や思い出の品が、一夜にして泥だらけになり、放られてうずたかく積まれていく様は痛々しくもありました。それは、まさしく無常の理を示しており、文明の生み出した多くのものの価値が、あっけなく無価値になる過程を示していました。その姿を見ながら、現代文明の作り出すものは、最終的にはゴミになってしまうのだという思いを強くしました。

 数日後、私は、会期終了間際の塩田千春展を見るために東京・六本木の森美術館に足を運びました。巨大な空間を覆い尽くす繊細にしてかつ豪快な、糸を用いたインスタレーションの数々は、私に非常に強い印象を残しました。会場を進むと「小さな記憶をつなげて、」という、恐らくは作家お気に入りのままごとに使うような家具や用具のミニチュアの数百はあろうかというものが、床に並べられて互いに糸で結ばれた可愛らしいインスタレーションに目が引きつけられました。

 私はしゃがみ込んで、しばらくはその極小の魅惑的な世界を楽しんでいましたが、突然、被災地で目にした泥だらけの家財の姿がそこにオーバーラップして見えたのです。その時、作家には大変失礼なことですが、「この愛らしい作品たちもいつかはゴミになってしまうのだろう」と私は思いました。そして、インスタレーションの向こう側のガラス越しに無数に広がるビル群に目を転じたとき、「ああ、この巨大な街もまたいつかはゴミになるのだ」との思いがこみ上げて、背筋がぞっとするのを感じました。

 私たちは、万物の霊長として、何の疑いもなしに、その欲望を実現するステージとして自由に地球の様々な場所を移動し、巨大な街をつくり、様々なものを作ってきました。そして、そのために、莫大な化石燃料や危険な原子力を利用してきました。

 ところが、私たちは、そうした際限のない行為が、我々人類の健康をも含めて、母なる地球環境に看過できないダメージを与えていると、気づき始めました。昨年、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが国連で行った衝撃的なスピーチが、多くの人の共感を生んだのはご承知の通りです。

 この1年、日本では台風によって各地に大きな被害がもたらされ、オーストラリアでは山火事によって広大な面積の森林が焼失しました。北極圏では、温暖化によって広範の永久凍土が溶け出し続け、メタンガスなどの温室効果ガスとともに、閉じ込められていた病原菌やウイルスが放出される危険性も指摘されています。

 残念ながら日本は、今もなお、東大の鈴木宣弘教授が指摘する「今だけ金だけ自分だけ」の文明に飲みこまれているように見えます。一方で、大人の強欲さを叱った若きグレタさんの主張する「足ることを知る」「謙虚な」生き方とは、仏教がずっと大切にしてきた生き方でもあります。

 私たちは今回のパンデミックを機に、グローバリズムを含む現代文明のあり方を検証し、様々ないのちの共生を目指した持続可能な新しい文明のありかたをこそ模索したいものです。

わかおみ・びんりゅう/1958年長野市生まれ。東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。浄土宗善光寺白蓮坊住職。東京や長野などで絵画の個展を開催。現在は日本仏教看護・ビハーラ学会会長。

2020/4/30・5/7合併号 コロナ禍の寺院・宗教者たち 

 
東京都港区 大谷派了善寺 百々海真住職
聞法は不要不急か
 真宗大谷派了善寺(東京都港区)の百々海真住職(54)は新型コロナウイルス感染拡大で外出自粛などが求められる中、自坊で毎月開く法座を見送った。「聞法は不要不急か」―。休座の知らせを聞いた参加者からの続けてほしいとの声に葛藤する。

 めったなことで休まなかった。が、こだわるのも執着になると、さしあたり4月の開催中止を決めた。話し合った総代ら役員たちは、それでも2割が継続を望んだ。

 参加する半数近くが門徒でない。そのうちの一人で、50歳代の参加者から連絡があった。会社員のこの女性は感染症流行後も毎日電車で通い、以前と変わらない環境で働いているという。「こういうときこそお寺は大事なのに」と、法座を続けてほしいと訴えられた。

 「世界中が生老病死の苦しみに直面し、いつも法話で伝える諸行無常がより身近に感じられる事態が起きている。いま拠り所となる仏法を聴聞しなければ」と百々海住職。しかし、一方でそうできない現実に迫られる。

 「少数でも法座を望む声にどう応えられるのか」。胸のうちの葛藤を漏らす。なるべく機会をつくろうと、これまでも一部で行っていたテレビ会議システム「ズーム」を利用した法座の開催も参加者らに案内した。

 「仏法は人から人へ相続されてきた。人と会うことを避けるこの状況が続けば、いずれ寺院のあり方にも影響が出てくるはずだ」。危機感を募らせる。

 心配はほかにもある。緊急事態宣言が全国に拡大された。葬儀や法事の縮小、延期が相次ぎ、事態収束の見通しは立たない。「このままでは、営業自粛の店などと同じように寺院の運営も立ち行かなくなる。教団は宗費減額などの見直しを考えるべきでは」と語った。



静岡県下田市 日蓮宗了仙寺 松井大英住職
小さな発信を開始
 現在、自坊の檀信徒の一人が濃厚接触の疑いで自宅待機中です。接触できないため、足りないものを聞き、手作りの食事も含め送る準備を整えています。私の町では飲食店を助けるためのウェブサイトが立ち上がりました。私もメンバーとなっており、一日おきにテイクアウトで食事をしています。市民の一人ひとりが助け合おうと動き出しています。

 自坊への葬儀の依頼数は増えていますが、感染した方の葬儀はまだありません。新型コロナウイルスへの対応として、葬儀はマスクを着用し、3密をつくらない、十分な距離を空ける、規模を縮小するなどの対応をお願いしています。もちろん導師である私も最後までマスクを着用します。

 家族葬が基本となり、先日は80人収容できる会場でしたが、6人で行いました。弔問した参列者もマスク着用、飲食はなし。受付で焼香し、そのまま帰るという形となりました。従来のような告別式形式の葬儀はこれからもっと減っていく。新型コロナウイルスが、少人数で行う家族葬をさらに後押ししていくことになるでしょう。

 法事でも本堂を開け放ち、入り口に消毒液、マスクがない方のために予備のマスクを用意。遠隔地の方は自宅に居てもらい、こちらで同時刻に法要を務めています。葬儀や法事の時間が短くなる中で、今後もご遺族に合わせて法話でしっかりと教えを説くことが重要になると思っています。

 私個人でも新型コロナについてSNSなどで発信することを始めました。フェイスブックやインスタグラム等でハッシュタグ(#わたしはあなたにうつしません #あなたも人にうつさないで #わたしはあなたを信じます)を付けて、メッセージを投稿しています。

 この発信の目的は、「不安な人々に安心を与えること」です。残念ながら、仏教界から社会への発信がまだまだ少ない。たとえスモールスタートであっても、この危機に僧侶が一般の方々と立ち向かっていくことが必要だと考えています。

2020/4/30・5/7合併号 コロナ禍終息を祈願 東大寺に諸宗教者が集い 祈りのメッセージを発信


宗教者7人が互いに距離を保ちながら大仏殿前で共同発信した 新型コロナウイルス禍の早期終息と罹患者の回復、亡くなった人々の供養のために、4月1日から大仏殿・盧舎那大仏の宝前で「正午の祈り」を始めた華厳宗大本山東大寺(奈良市)。宗派・宗教の垣根を越えて、各寺社や教会、自宅などで毎日同時刻に祈ることを呼びかけている。その声に全国の宗教者らが呼応。24日には仏教や神道、キリスト教の代表者が大仏殿前で共同発表を行い、コロナ禍の終息を願う祈りのメッセージを発信した。

 東大寺は同日から感染防止のため、当面5月31日まで大仏殿に入堂しての拝観を停止。代わりに中門付近からの「遙拝」とし、参拝者が大仏の尊容を堂外から拝せるように観相窓と本殿正面の扉を開けた。宗教者7人は大仏を遥拝した後、2㍍間隔で並び、報道陣とも距離をとって一人ずつ思いを語った。その様子はSNSで生配信された。

 東大寺の狹川普文別当は「他の人々の命を守るために(外出)行動を自粛し祈り続ける。(SNSを視聴している)皆さんも自宅やそれぞれの場所でお祈りいただきたい」と要請。高野山真言宗総本山金剛峯寺(和歌山県高野町)の添田隆昭執行長は「1200年前の弘法大師の時代も長い日照りや疫病があり、大勢が亡くなることがしばしばあった。弘法大師はその度に弟子たちを率いて祈った。万灯万華会の願文にある『最後の一人まで救い尽くすのが自分の願いである』という大師の願いを引き継ぐ者として、この願いを現実世界に実現することに力を尽くしたい」と表明した。

 金峯山修験本宗総本山金峯山寺(奈良県吉野町)の五條良知管領は「場所は違っても時を同じく同じ想いで祈っていけたら、それぞれの心が強くなる」と激励。カトリック大阪大司教区芦屋教会の川邨(かわむら)裕明主任司祭は「毎日一人で誰もいない聖堂の中で祈っているが、祈りを通していろいろな人と繋がっている実感がある」と話した。

 東大寺の鎮守である手向山(たむけやま)八幡宮の上司延禮(かみつかさのぶひろ)宮司は「一日も早く平和な日常に戻れるように」、臨済宗妙心寺派圓照寺(奈良市)の萩原道秀門跡も「ウイルスに一人ひとりの人間性を試されているような気がする。閉ざされた絆が皆様と繋がり、世界中が笑顔になる日が来ることを祈っている」と祈念。東大寺の橋村公英執事長は「祈りの力を支えにして、思いやりの行いを」と呼びかけた。

 疫病など社会不安が蔓延した1300年前に、聖武天皇の発願によって建立された盧舎那大仏。「大仏造顕の詔(みことのり)」には、分け隔てなく一人でも多くの人に協力を求める聖武天皇の祈りが込められている。東大寺の上司(かみつかさ)永照教学執事はこの歴史に言及し、「小さな祈りでも集めていけば大きな祈りになる。それが顕現しているのがこの大仏殿。強い祈りが強い行動に繋がっていく」と期待した。

2020/4/23 緊急事態宣言 全国に拡大へ 特定警戒の13都道府県 全寺院の40%存在

 
新型コロナウイルス感染拡大を防止するため政府は今月7日の緊急事態宣言の発令に続いて16日には対象区域を全国に拡大した。実施期間は5月6日まで。当初の対象となっていた7都府県に北海道・茨城・石川・岐阜・愛知・京都の6道府県を加えた13都道府県は「特定警戒都道府県」に指定された。13都道府県には全国寺院の4割にあたる約3万4千カ寺が存在。京都府内では拝観停止に踏み切る寺院が相次いでいる。

 安倍晋三首相は17日の記者会見で「最低7割、極力8割の接触削減を実現できない限り、1日当たりの新規の感染者数を大きく減少に転じさせることは困難」と改めて外出自粛を強く要請した。

 4月末からのゴールデンウィークに対して「感染者が多い都市部から地方へ人の流れが生まれるようなことは、絶対に避けなければならない」「全国的かつ急速なまん延を確実に引き起こすことになる」と警告した。

 仏(宗)教界の宗務行政面を司る教団本部ではほとんどの職員の勤務態勢を変更し、業務停止や出勤者の縮減・交替・時差出勤などの対応をとっている。テレワークや自宅勤務に移行したところもある。

 寒冷地域では5月連休中に月遅れの花まつり(釈尊降誕会)を実施する寺院は多いが、長野・善光寺は5月5日予定の花まつりの中止を発表した。他の行事に関しても人との接触を削減し、果敢線拡大防止の観点からはそうせざるをえない。

 特定警戒13都道府県には3万4千カ寺があり、全寺院の約40%を占める。また2千カ寺以上ある全国14都道府県のうち、特定警戒に該当するのは10都道府県におよんでいる。これらの地域では葬儀・法事などの縮小や延期が余儀なくされそうだ。実際、首都圏では通夜を行わないケースが増えているほか、「直葬が6~7割ほどではないか」(首都圏の住職)という分析もある。

 関西圏では月参りが盛んだが、檀信徒の希望を聞いて、泣く泣く中止した寺院もある。総じて減少傾向で、継続している場合でも「消毒液やマスクは必須」(関西圏の住職)。僧侶・檀信徒とも対策が必要となる。
 新型コロナウイルスは、日本独自の仏教文化や葬儀文化に多大な影響を及ぼしている。

2020/4/23 興福寺放生会 生態系配慮し在来種を放流 

 
モツゴ200匹が猿沢池に放流された 奈良市の法相宗大本山興福寺で17日、猿沢池に魚を放流し、殺生を戒め生命に感謝する伝統行事「放生会」が営まれた。今年からは生態系に配慮し、猿沢池にもともと棲む在来種を放流することとした。

 例年は金魚2千匹ほどを放流していた放生会。一般の参列者も多い行事だが、魚類学者の間では近年、生態系保護や遺伝子汚染の観点から金魚を放流することを疑問視する声が高まっていた。金魚は鮒を人工的に改良したもので自然界にはなく、海外では侵略的外来種と認定されていることもある。

 興福寺は批判に真摯に耳を傾け、近畿大学農学部の北川忠生准教授に相談し、猿沢池の生態系調査を行った。北川准教授によると猿沢池の魚種はほとんどがコイ科で体長10センチほどのモツゴという魚。このほかシマヒレヨシノボリ、スジエビがいたという。

 一方で外来種としては中国・朝鮮半島を原産とするタウナギが発見された。なお、毎年放流している金魚は全く発見されず、捕食されたものとみられる。

 興福寺僧侶が一言観音堂で読経供養し、タライの中に入ったモツゴ約200匹を猿沢池に放流。スロープを使って魚体に傷をつけないよう優しく放した。新型コロナウイルス対策として一般参列者による放流はとりやめ、僧侶だけで行った。

 森谷英俊貫首はこの行事は仏教が本来尊ぶ命の平等性に基づいて行われているものであり、法要自体は変えずに生態系に配慮する放流にしたと説明。猿沢池から外来種が発見されたことについては「良かれと思って放したり、あるいは面倒くさくなって捨てる人もいるのでしょうが、そうしたことが生態系の破壊の出発点となる危険性はあります。それはなくしていかなければいけません」と語った。

 放生会は興福寺だけでなく多くの寺院・神社で行われており、北川准教授は興福寺の配慮が宗教界に波及することを期待。「(外部の河川や湖沼に繋がっていない)お寺さんの敷地の中にある池でだけやるには金魚でも構わないこともあるかもしれませんが、外部と繋がっている所でやるのは生態系を守るよう配慮してほしい」

2020/4/23 比叡山延暦寺 143年ぶり戸津説法中止 明治10年以来 


 天台座主への登龍門と呼ばれ、滋賀県大津市下阪本の東南寺で毎年8月21~25日に営まれる戸津説法の中止が決まった。宗祖伝教大師の忌日6月4日に天台宗総本山比叡山延暦寺の宗祖御廟・浄土院で勤修される長講会(ぢょうごうえ)でその年の説法師が森川宏映座主から指名されるが、長講会が新型コロナウイルス感染防止で中止となったため。戸津説法の中止はコレラが蔓延した明治10年(1877)以来、143年ぶり。

 毎年5月末、京都市左京区の平安神宮で天台座主を導師に延暦寺一山僧侶が出仕して営まれる「桓武天皇報恩平安神宮法要」も中止になった。

 比叡山上では在山住職が通常の祈願や回向に加え、新型コロナウイルス早期終息祈願法要を続けている。

2020/4/23 寄稿 新型コロナウイルスの導く世界 玄侑宗久氏(作家・臨済宗妙心寺派僧侶)

 

 緊急事態宣言の対象区域が全都道府県に広がった。不要不急の外出自粛をはじめ県境を越えての移動も抑制されることになる。しかしウイルスは国境や県境を容易く越える。マクロとミクロの視点から作家で僧侶の玄侑宗久氏が、新型コロナウイルス現象を読み解く。

 ここ十年ほど、人類にとっての災厄が続いている。東日本大震災での地震、津波、原発事故は未だ復興半ばだが、その後も世界中で自然災害が多発、激甚化し、戦乱に劣らない死者を出しつづけている。

 今回世界中を席巻している新型コロナウイルスは、そうした災厄の中でも極めつけと言えるだろう。多くの自然災害は、行政の力と住民同士の連帯によって乗り越えつつある。放射能の拡散では多くの孤立を招いたが、それでも孤立した人々同士は連帯し、励ましあって生き延びてきた。しかし今回の災厄の最大の特徴は、その連帯が許されないことではないか。

 もしも絶対神が存在し、この地球上で起こることを睥睨しているとするなら、我々はいかなる試練を与えられ、どんな教訓を学べと迫られているのだろう。

 地域性や国柄まで無化するほどの行き過ぎたグローバリズムがまず浮かぶ。古来、グローバルな交易はさまざまな悪弊をも運んだ。シルクロードは絹を欧州に運び、その影響で日本にも仏教や西域の文物をもたらしたが、同時にインド発と思われる天然痘も東西に運んだ。平城京にも天然痘が流行し、藤原一族など多くの死者を出したのである。

 また中世にはモンゴル帝国の西への拡大に伴い、交易も活溌になったが、中央アジア発と思えるペストもネズミと共にヨーロッパに運ばれた。欧州ではローマ帝国時代に次いで二度目のパンデミックに見舞われ、黒死病と呼ばれた奇病は原因も分からず、三百年ちかくに亘って欧州全体の約三分の一の人々が死亡したとされる。

 そこから人は、「メメント・モリ(死を想え)」という敬虔な生き方と、どうせ儚い人生なら、という快楽主義とに別れた。ルネッサンスにおける回帰の思想も、その流れの中で生まれてきたものだが、大切なのは、それでも神が創った世界の完全な法則を信じようとするアイザック・ニュートンが万有引力の法則を発見し、科学の先鞭をつけたことだろう。つまり、敬虔な神への信仰が科学を生みだしたのである。

 科学はやがて産業革命を経てさまざまな技術を生みだし、技術は人間の欲望と結びついて走りはじめた。そして行き着いたのは不都合なものは取り除き、自然さえ使役しようという世界ではないだろうか。科学技術は神の鬼子だったのである。

 おそらくこの地球に生きるには、恰度いい技術の頃合いがあったはずだが、技術じたいにブレーキはなく、どうしても行き過ぎる。我々はもはや神の思惑を遙かに越えた地点まで来てしまい、大切な玩具を失った子どものように途方に暮れているのではないか。

 哺乳類や鳥類に限らず、今や人間はあらゆる生命を踏みにじり、利益を追求しつづける。街中で30 年ぶりに山猫を見たという情報があったが、ヒトの行動自粛は他の動物には恩恵なのだろう。限りある地球資源の中で「右肩上がり」の経済が可能だと信じ込み、そのためには外国人労働者も雇い、GDPだけは下げるまいとする。おそらく神の座も動物の居場所も、永くGDP様に捧げ続けてきたのだ。

 今回の件を、各国首脳は戦争に喩えるが、発端は「目に見えない世界」からの反撃かもしれない。前回は放射能という有能な部隊が遣わされたが、計測で見破られる弱みがあった。しかし今回のコロナウイルスは無敵である。あるかないかも分からず、ならばあるものとして接しようという人間同士に差別を生みだす。自ずと人々は分断され、人間の強みである連帯の力が発揮できない。ならばどうするのか、それが今回の試練だと、忘れられた神が呟いているような気がする。

 「メメント・モリ」。再びその言葉が大きく響く。

 仏教徒とすれば、釈尊が「土中の虫の殺生になる」と農耕を禁じた豊かな想像力を想わずはいられない。スプーン一杯(5グラム)の土には、虫どころかおよそ50億個もの細菌(バクテリア)が生きている。自分の腸内にも、約3万種類、数では百兆個から千兆個、重さにすれば2キロ㌘ちかい細菌が我々と共生しているのだ。ビフィズス菌や乳酸菌など、都合のいい菌ばかりを優遇し、その他を一括りに殺生する抗菌社会は、同時に土中の細菌たちもコンクリートで殺し尽くしてきた。目に見えないそんな命たちの怨念こそ、生物かどうか判らないウイルスの正体ではないか。

 仏教的に考えれば、やはり天然痘に襲われたこの国を緩やかに纏めた「華厳」の思想、奈良東大寺の毘盧遮那仏こそが求められているように思える。すべての「雑華」がそれぞれに咲いて距離を保ったまま繋がり、その全てが光明の中にある世界。宗教的行事や空間もクラスターとして危惧される現在、それは思想として個々をつなぐ微かだが頼もしい希望である。

 積み重なった怨念に勝とうなどと思わないほうがいい。ましてウイルスを挟んでいがみあっていては怨念の思う壺。今はとにかくGDPや戦いの気分を忘れ、群れずに「独りを慎み」、「知足」の暮らしを続けて共生の道を探るしかない。廃仏毀釈や先の戦火からも甦った宗教者たちの「離れて繋がる力」に期待したい。思えばそれらは仏教サンガの目指した「和合」の基盤だ。生活基盤を守るため、感染の怖れを圧して働くエッセンシャル・ワーカーへの感謝も忘れてはなるまい。

げんゆう・そうきゅう/1956年福島県三春町生まれ。慶応義塾大学中国文学科卒。臨済宗妙心寺派福聚寺住職(三春町)。『中陰の花』で第125回芥川賞を受賞。新刊に『なりゆきを生きる』(筑摩書房)。仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞(2012年)。政府の東日本大震災復興構想会議の委員を務めた。

2020/4/16 知恩院御影堂が落慶 法然像の御遷座法要営む

門跡の見守る中、宮殿に運ばれる上人像 浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)は13日、9年にわたる平成大修理工事が終わった国宝・御影堂に元祖法然上人御影像を遷座する「落慶御遷座法要」を伊藤唯眞門跡の親修により営んだ。本来なら盛大に行われるはずだったが、新型コロナウイルス感染症の発生状況を考慮し一般参拝客には非公開で行われた。

 御影堂は間口45㍍、奥行き35㍍の威容。念仏の声がいっぱいに響く中、輿に乗せられた尊像が一山僧侶により法然上人御堂から厳かに運ばれ、宮殿の中に安置された。阿弥陀経の読経などで上人を讃え、1639年の再建から380年目の大修理が成満したことを祝した。

 伊藤門跡は垂示で、「生きた本堂になりました。こんな喜ばしいことがあるでしょうか」と感激を披瀝。ウイルスで世界中が異様な事態になっている中「いかに平静がありがたかったことか」とも述べ、念仏を称えることで平静さを取り戻し、己も他者も慈しんでほしいと願った。

 井桁雄弘執事長は感染症対策のための規模縮小は「断腸の思い」だったが、知恩院850年の中で初めての出来事で、きちんと寺史に残しておくべき記念となる法要だとした。

 14日に「落慶御遷座披露法要」、15日には「落慶御遷座宗門慶祝法要」が営まれる予定だったがいずれも中止。団体参拝の受け入れも5月は中止とし、6月から10月までとした。今後は9月26・27日に建築・伝統技術の面に着目したイベント「お念仏と御影堂大修理―信仰と匠の技に触れてみよう」、10月25日に落慶御満座法要が予定されている。

2020/4/16 教団本部 勤務形態を変更 緊急事態宣言受け 業務停止や7割削減など

 
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。7都府県(東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・福岡)を対象に7日、緊急事態宣言が発令されたが、その後も感染者が続出している。政府は人との接触を7割から8割削減するよう訴えている。7都府県にある教団本部でも業務形態を見直している。曹洞宗と真言宗豊山派は業務停止を発表し、立正佼成会はすでにテレワークに移行している。

 不要不急の外出及び3密(密閉・密集・密接)を避け、自身の感染回避と他人に感染させないことが求められている。安倍首相は会見で人との接触を抑制するよう呼びかけたが、実行するには難しいとの見方もある。

 各教団では、宣言前から一定の対応がとられてきたが、宣言後はより具体的かつ実効性を意識した対応となってきている。曹洞宗と豊山派の業務停止はその典型だ。「曹洞宗宗務庁は宣言の発令時より全役職員の出勤を控えさせ、業務を停止する対応をとることといたしました」とHPに掲載。豊山派もHPで「緊急事態宣言の解除まで宗務総合庁舎(宗務所)を閉鎖いたします」と述べている。

 円覚寺や建長寺など本山寺院と一体化した教団では、閉鎖は難しく、シフト変更しながら勤務を続けている。
 
 2月から段階的に対応を発表してきた立正佼成会は3月中旬からテレワークに移行した。こうした出勤を伴わない自宅での作業は他教団でも行われている。また政府が打ち出した7~8割の接触削減要請を受けて真如苑と孝道教団は出勤者を7割削減した。概ね政府が発表した5月6日まで続ける予定だ。首都圏の教団職員は「ウイルスを封じ込めるには移動を制限しなければならないので、政府の方針に沿って取り組んでいる。これによって早期の終息を願いたい」と話している。

2020/4/16 コラム 「NO!3密」の実行を 身・口・意の三密の実践も

 小池百合子・東京都知事は新型コロナウイルス感染防止行動の要として、感染リスクが著しく高まる①換気の悪い密閉空間②多くの人が密集する場所③近距離での密接した会話―を徹底して避けるよう要請している。この「NO!3密」を実行すれば大幅に感染リスクを減らせるといい、政府が緊急事態宣言を発令した今、その順守が一層強く求められている。

 「3密」と聞いて、真言密教の「三密」を想起した人は少なくないと思われる。身に印を結び(身密)、口に真言を唱え(口密)、心に本尊を観じれば(意密)、行者と本尊が一体となって、この身このままで仏になれるという、即身成仏の悟りを成し遂げる実践的な教えである。

 中世の『弘法大師伝』には、諸宗派の高僧たちと宗論を行った空海が即身成仏の奥義を証明するために、手に印を結び、口に真言を唱え、心に大日如来を念じて、「たちまち金色の蓮台に坐した大日如来になった」とする説話が展開されている。

 避けなければならない「NO!3密」の「密閉・密集・密接」を確実に実行するには、ややこじつけになるが、「NO!3密」を口で唱え、心にイメージし、体で行うことが必要である。感染防止には自分自身が感染してしまうリスクを避けることはもちろん、身近な人たちを感染させない気配りも極めて重要だ。ここで各人が「NO!3密」と「三密」の両方を強く意識して「感染防止の化身」になっていれば、格段に感染防止行動を実行しやすくなるのではないか。

 我々は一致団結して、この新しい感染症との戦いに勝たねばならない。それには「NO!3密」のいずれか一つだけの感染防止策では弱い。「3密」と「三密」の両方を実践して一人ひとりが「感染防止の化身」となり、新型ウイルスを打ち負かそうではないか。(K・Y)

2020/4/16 寄稿 新型コロナウイルスと今日の問題 末木文美士氏(国際日本文化研究センター名誉教授)

  
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて今月7日、安倍首相は緊急事態宣言を発令し、外出自粛を要請。WHO(世界保健機関)は3月11日に新型コロナのパンデミックを宣言した。感染拡大が収まらない状況は現代人に何を問いかけているのか。仏教学者の末木文美士・国際日本文化研究センター名誉教授に寄稿いただいた。

 新型コロナウイルスの感染症は短期間に想像をはるかに超える拡大で、世界中に大きな被害をもたらしている。過去にも14世紀ヨーロッパのペスト、百年前のスペイン風邪などが、世界に甚大な被害を及ぼしたが、今回のコロナは、それに輪をかけた深刻な被害を及ぼすのではないかと心配される。それは、今日の歴史的、社会的状況と関連する。

 最近十年ほどにさまざまな自然災害が著しく深刻化している。2011年に東日本大震災が起こった。それは同時に原発のメルトダウンを引き起こし、いまだに解決しない多くの問題を抱えている。その時は「想定外」と弁明されたが、その後、夏の異常高温、台風の強大化など、毎年のように「想定外」が起こり、「想定外」が必ず起こることを想定しなければならなくなっている。例えば今、首都直下型地震が起きたり、富士山の爆発が起こらないとは限らない。コロナの終息が夏以後にまで長引けば、台風の被害と重なることはほぼ確実だ。

 自然災害の激化は、地球温暖化をはじめとする地球環境の悪化と密接に関わっている。マイクロプラスチックは海洋汚染だけでなく、人間の健康にも深刻な影響を及ぼす。そうした事態は人災としての性格を強く持つ。人間の科学文明の発展が、かえって人間の住む世界を破壊していく。コロナは一見そうした動向と無関係に見えるが、ウイルスは抗生物質の多用に伴って進化して毒性を強くする。それに加えて、世界中に張り巡らされた交通網が感染の広がりを容易にしている。やはり文明の発展に伴う人災的な面を無視できない。

 チェルノブイリの原発事故の時、設備や従業員の質の低いソ連だから起こったと、他人事と見ていたのが、同じことが日本でも起こった。コロナウイルスも、中国の衛生観念が遅れているから流行したなどという説も流れたが、先進国のはずの欧米でそれ以上に広がっている。科学が進めば災厄が減るわけではない。逆に災害は巨大化してきている。原発や遺伝子操作など、科学の進歩は一歩間違えば、とんでもない結果を招く。科学的合理性が人類の幸福をもたらすという楽観的な進歩的歴史観はもはや通用しない。人類は再びバベルの塔を築こうとしてきたのではないか。それが報復を招いているのではないか。

 コロナ禍は、同時に深刻な世界的な経済的停滞を招き、その影響は想像もできない。日本の戦後を振り返ると、高度成長が1970年代に一段落した後、再びバブルで踊り、1990年代以後の停滞を招いた。2012年に登場した第二次安倍内閣は、アベノミクスと称して景気の浮揚に努めたが、思うような成果を上げられなかった。少子高齢化で大きな経済発展は望めない状況にもかかわらず、いわばカンフル注射のような無理を重ねることになった。

最後はオリンピックを頼みとしたが、次々と問題が生じ、ついに延期になった。このまま中止になれば、その経済的損失は計り知れず、V字回復など到底望めない。コロナで世界中の経済活動が停滞したために、温暖化物質の排出が減少し、地球環境は改善されたという。そのことは逆に言うと、通常の経済活動では、環境の悪化は止められないということでもある。

 こうした状況に対して、それに対応できる新しい思想は形成されていない。1980年代には、長い間主流だった近代的合理主義の限界が明らかにされ、90年代になると、冷戦の終結で、それまで大きな影響力を持っていたマルクス主義唯物論が後退した。だが、それに代わるだけの思想はない。小泉純一郎首相の「自民党をぶっ壊す」や、安倍晋三首相の「戦後レジームからの脱却」の掛け声は勇ましいが、ぶっ壊したり脱却した後どうなるのか、未来への展望を持たない。

 放射能とウイルスは、どちらも目に見えず、それだけに恐ろしい。可視化でき、明晰に捉えられるものだけの存在を認めてきた近代の合理主義は、見えざるものの逆襲を受けている。しかも、ウイルスは生物と無生物の二分法が通用しない隙間的なものだ。ウイルスとの戦いに勝つなどということはあり得ない。今ある程度抑えられたとしても、またもっと力の強いウイルスが現われるであろう。見えざる他者としてのウイルスとどう付き合うか、ということが問題だ。ワクチンはウイルスを滅ぼすのではなく、ウイルスを無毒化して共存する手法だ。

 見えざるものへの恐れは、近代思想が隠蔽してきた死や死者の問題を改めて呼び起す。死んですべてが終わるならば、死後この世界がどうなろうと構わないことになる。自分たちだけが利益を得ればいいというのだ。だが、そのつけを未来に回してよいのか。死後のこの世界のことも責任をもって考えなければいけないのではないか。死後も責任が続く死後責任、あるいは死者の責任ということは、今日の私たちに突き付けられた大きな課題である。

 個人の問題だけでない。これまで問題にされてこなかったが、人類が滅びるということも、あり得ないことではない。というか、いずれいつかはそのような時がやってくるだろう。恐竜の絶滅のようなことが人類にも起こるかもしれない。あるいは複合災害で日本沈没や、首都壊滅のような状況がないとは言えない。

 もちろんそんなことばかり考えていても始まらないが、個人が老齢化するのと同じように、人類もまた次第に高齢化状態へと進んでいるのではないか。それは決して否定的な意味だけではない。個人が老年に達したからと言って、暗いことばかりでなく、老後だからこその豊かさを味わうこともできる。ただ、若い頃のような体力任せの無理はきかない。それと同じように、人類もまた、強引で力ずくの闘争ではなく、文明の成果を共有しながら、持続可能な未来を構築していくべきではないのか。

 仏教の世界観によれば、人類どころか、この宇宙もまた滅び、やがてまた生成されるという。そんな大きなスケールの世界観に思いを致しながら、今の人類のあり方、個人のあり方を考え直すことも必要のように思われる。
 
すえき・ふみひこ/1949年生まれ。博士(文学)。東京大学名誉教授。専門は仏教学・日本思想史。近著に『日本思想史』(岩波新書)、『日本の思想をよむ』(角川ソフィア文庫)。

2020/4/16 永平寺・總持寺 両大本山僧堂 マスク着用し修行

  
 新型コロナウイルス感染症の広がり受け、曹洞宗の両大本山僧堂は掛搭者にマスクを着用させるなど感染対策を進めている。通常通り修行を続けているものの、大勢が修行生活をともにする環境のため、拝観や面会を止めて外部との接触を避け、集団感染の発生防止に努めている。

 大本山永平寺(福井県永平寺町)の安居者は現在約160人。マスクを着用して修行生活を送る。手洗いや消毒を徹底するとともに、雲水らが座る間隔を広くとり、換気も十分に行っているという。2月1日の早い段階から参禅・参籠の受け入れを中止している。

 県内で3月下旬に感染経路不明の感染者が確認されたのを受け、4月1日から一般参拝者の拝観を山門までの外拝観のみとし、本山内拝観を停止した。緊急事態宣言後の8日からは安居者の外部との接触を避けるため、面会も止めている。

 大本山總持寺(横浜市鶴見区)の安居者は現在約130人。同寺でもマスクを着用した上で、手洗いや消毒、換気を徹底するなどして修行を続けている。

 2月15日から檀信徒の研修道場やセレモニー会場などとして利用される三松閣を除き、修行僧らの案内を伴う境内の拝観を休止。緊急事態宣言前の7日からは、墓参や生活道路としての利用者以外の一般参拝も休止した。三松閣は午前9時から午後3時までに時間を短縮して運営している(通常は午前7時から午後5時)。

2020/4/9 新型コロナ 議会を短縮化 各宗派議会 限られた時間で審議 

 新型コロナウイルス感染症の広がり受け、曹洞宗の両大本山僧堂は掛搭者にマスクを着用させるなど感染対策を進めている。通常通り修行を続けているものの、大勢が修行生活をともにする環境のため、拝観や面会を止めて外部との接触を避け、集団感染の発生防止に努めている。

 大本山永平寺(福井県永平寺町)の安居者は現在約160人。マスクを着用して修行生活を送る。手洗いや消毒を徹底するとともに、雲水らが座る間隔を広くとり、換気も十分に行っているという。2月1日の早い段階から参禅・参籠の受け入れを中止している。

 県内で3月下旬に感染経路不明の感染者が確認されたのを受け、4月1日から一般参拝者の拝観を山門までの外拝観のみとし、本山内拝観を停止した。緊急事態宣言後の8日からは安居者の外部との接触を避けるため、面会も止めている。

 大本山總持寺(横浜市鶴見区)の安居者は現在約130人。同寺でもマスクを着用した上で、手洗いや消毒、換気を徹底するなどして修行を続けている。

 2月15日から檀信徒の研修道場やセレモニー会場などとして利用される三松閣を除き、修行僧らの案内を伴う境内の拝観を休止。緊急事態宣言前の7日からは、墓参や生活道路としての利用者以外の一般参拝も休止した。三松閣は午前9時から午後3時までに時間を短縮して運営している(通常は午前7時から午後5時)。

2020/4/9 新型コロナで緊急事態宣言発令 対象7都府県に1万9千カ寺


 安倍晋三首相は7日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令した。7都府県が対象となり、期間は5月6日までの1カ月とした。首相は会見で人との接触を7~8割削減するよう訴えた。首都圏の教団本部や本山寺院ではテレワークや時差出勤などにシフトしている。

 対象となる地域には、東京2865カ寺、埼玉2260カ寺、千葉2999カ寺、神奈川1898カ寺、大阪3389カ寺、兵庫3270カ寺、福岡2374カ寺の1万9055カ寺ある(平成30年版『宗教年鑑』、非法人含む)。これらの地域では葬儀や法事、仏事など全般の見直しが迫られる。また人が集まる際には密閉・密集・密接を避けなければならない。

2020/4/9 東大寺が祈りを呼び掛け 新型コロナ終息願い 毎日正午にそれぞれの場で


大仏殿壇上での勤行。初日の1日に営んだ狹川別当(東大寺提供) 華厳宗大本山東大寺(奈良市)は、新型コロナウイルス感染症流行の早期終息をともに祈ろうと、全国の寺社や教会への呼び掛けを始めた。時間だけを合わせて各地でそれぞれ勤めることを提案している。

 森本公穣庶務執事が2日に自身のツイッターに、寺社などへの呼び掛けを投稿。同寺は3月の修二会で、感染流行の早期終息と感染で亡くなった人の追福菩提を、大導師の諷誦文に盛り込んで期間中に祈り続けた。今月からは毎日正午に大仏殿壇上で、狹川普文別当らが交代で勤行を営んでいる。

 森本執事は、「外出や行事などの自粛が求められ、お参りできない人もいる。それならば、時間を合わせてそれぞれの場所で祈ることができないか」と話す。同じ状況であろう寺社や教会にも呼び掛けた。投稿翌日の3日には一般の人だけでなく、総本山金峯山寺(奈良県吉野町)など10カ寺以上から、賛同の声が寄せられたという。

 投稿したツイートでは、「時間だけの『密接』です。お互いの気持ちを『密集』させて、『密閉』されたような社会の雰囲気を吹き飛ばせたらと思います」と、感染拡大を回避するために提唱された「3密」を前向きに言い換えている。

2020/4/9 緊急寄稿 新型コロナ 新しい祈りとケアの形 島薗進氏(上智大学グリーフケア研究所所長)


 新型コロナウイルスの流行で、クルーズ船やチャーター便帰国者を除く患者数が200人を超えたのは3月1日である。4月1日にはそれが1693人に増加している。だが、それがどのぐらい危機的な状況なのか、政府発表や専門家会議の報告を聞いてもよくわからない。

 しかし、感染者が増えれば重症者が増える。重症者が増えれば、死に至る可能性のある人を救いきれず、医療機関は危機的な状況に見舞われる。死者が増えれば、今度は葬儀に関わる人々が困難に陥る。3月半ばには医療機関からの苦しい訴えが聞こえるようになり、やがて遺族や葬儀の現場からも嘆きの声が伝わるようになった。

 激務が続くなか、いのちを救えないという苦難に加えて、感染者に接すれば自らや周囲の人々も死の病に襲われる危険がある。死の床に家族が立ち合うことも限定されてしまう。葬儀本体も火葬場での儀式も略され、最後のお別れの対面もできない。

 宗教者やボランティアがそこに関わろうとしても、そもそも人同士の接触を避けなくてはならないからできることが限られている。では、何ができるだろう。まずは感染を広めないために社会的な距離をとることが重要だ。

 ついで、オンラインでのコミュニケーションで代替することが求められる。これは慣れるのに時間がかかる。だが、これによってある程度気持ちが通じ合い、理解が深まることは可能だ。それでは何が足りないかを見極めながら、推進していく必要があるだろう。


 阪神淡路大震災では「心のケア」という言葉が広まったが、東日本大震災以後、好ましいケアの姿勢として、「寄り添い」とか「傾聴」という言葉がよく用いられた。新型コロナウイルス肺炎ではどのようなケアのあり方が見えてくるのだろうか。

 オンラインでの寄り添いや傾聴があるとして、それはどのような形をとるだろうか。また、グローバルな規模での災厄に向き合うとき、どのような祈りの形があるだろうか。おたがいを支え合い、痛みを察し合うどのようなやりとりが見えてくるだろうか。

 すでにメディアの報道やSNSのなかでそのようなやりとりが現れ始めている。イギリスでは午後8時に前線で健闘する人たちのために拍手する時間が始まった。新しい祈りの形といえる。必ずしも「宗教」や「儀礼」という形をとらず、新たなわかちあいの様式が生み出されている。批判的吟味も含めて、新たな様式に学んでいく必要があるだろう。

2020/4/9 比叡山延暦寺 不滅の法灯 4つに分灯 伝教大師の心を全国へ 来年6月の1200年大遠忌に向け

 
「法灯」全国行脚に向け、根本中堂で分灯式を厳修 来年6月に迎える伝教大師最澄1200年大遠忌を機に進められている「伝教大師最澄1200年魅力交流」(主催=同委員会・天台宗祖師先徳鑽仰大法会事務局)。この活動の象徴として、伝教大師が1200年前に「明らけく 後の仏の御世までも 光りつたへよ 法のともしび」と人々の安寧と平和を願い比叡山の一乗止観院(現在の根本中堂)にともした「不滅の法灯」が全国を行脚する。その分灯式が2日、滋賀県大津市の天台宗総本山比叡山延暦寺・根本中堂で営まれた。

 新型コロナウイルス感染防止のため、公募した特別招待客200人の参拝を中止。僧侶と関係者ら約40人が出仕・参列して営まれた。小堀光實・比叡山延暦寺執行は、「この苦しい時を耐えるエネルギーとして、人々への安寧の証として連綿とともし続けられてきた法灯を分灯させていただく」と挨拶。杜多道雄宗務総長を導師に法要を厳修した。

 厳かな読経の中、本尊薬師如来の宝前から「不滅の法灯」が中陣に運ばれ、伝教大師最澄1200年魅力交流委員長の鳥井信吾・サントリーホールディングス㈱副会長と同副委員長の加藤好文・京阪ホールディングス㈱CEO、同じく三日月大造・滋賀県知事、同委員の西脇隆俊・京都府知事によって全国4地区を巡る灯籠4基に分灯された。

 杜多総長は法要後、「『不滅の法灯』こそ、心を照らす仏の智慧の光明の象徴」と表明。法灯の全国行脚で、「未曾有の新型感染症の蔓延により傷ついた人々の心に希望の火をともし、『忘己利他』『一隅を照らす』の旗印を高く掲げ、助け合い支え合ってより良く生きることのできる社会の一日も早い到来を訴えてまいる」と話した。

 今月から14カ月間をかけて全国4地区の寺院を巡る予定だった「法灯」行脚のスタートを「1~2カ月遅らせる」(杜多総長)ことになり、しばらく分灯を比叡山に奉安。今年は戦後75年の節目であるため、沖縄・長崎・広島を回る「法灯」行脚は今月から出発する。

 分灯前には、ロックシンガーで比叡山親善大使の森友嵐士氏がイメージソングを熱唱。「法灯」行脚への期待を込め、「この灯りが全国に届けられることで、互いを思いやる強く優しい心に導かれるように。ノーレイン・ノーレインボー」と語った。

2020/4/2 花まつり ほとけさまの絵コンクール 心と人が幸せになるように

 
大﨑凛子さん(小3)の作品(最優秀賞) 大阪青少年教化協議会(大青協)が毎年、花まつりに合わせて公募する「ほとけさまの絵コンクール」の受賞作がこのほど発表された。最優秀賞に選ばれたのは白象に乗った誕生仏をかわいらしく描いた大﨑凛子さん(小3)、蓮の花の上で禅定する様子を上品に表現した高橋愛月さん(小5)、藤の花の下での穏やかな微笑がどこか詩的な三星優汰くん(小5)の3作品である。

 大東良弘会長(融通念佛宗本覚寺住職)は「のびのびと自由にお釈迦さまの姿に触れていただき、そのありがたさが感じられ、心が温かく幸せになるようなもの、を基準に選考しています」と語る。もちろんコンクールであるため技術や構図の取り方なども審査点だ。仏画家で選考委員の久保田聖淳氏は真宗寺院の生まれ。大青協の仏画教室で講師を務めている。

髙橋愛月さん(小5)の作品(最優秀賞) 絵を描くためにはきちんと花まつりの由来やお釈迦さまの生涯を調べなければできない。お寺に行って和尚さんに話を聞いたりアドバイスを受けたりすることもあるだろう。自主的に仏教について学んでいく教育的な面もあるイベントというわけだ。

 大青協は1965年結成。地道に講演会などを開き教化活動をしてきたが、なかなか子どもたちに仏教に触れてもらう機会を作るのが難しかった。そこで、絵のコンクールなら自然に仏教に興味を自然に持ってもらえるし、花まつりにも親しめるのではないか。そういう思いで2006年度から開始し、14回目を数える。花まつりに合わせた絵画公募企画は珍しい。入賞者には賞状と副賞の図書カードが贈られる(最優秀賞1万円、優秀賞5千円、特別賞3千円相当)。

三星優汰くん(小5)の作品(最優秀賞) 全国の仏教系小・中学校に案内を出し、公募雑誌にも情報を掲載して広報。また月参りで適齢期の子どもや孫がいる家庭を訪れると直接勧めているとのことで、この辺りは月参りが根付いている大阪らしい。当初は応募総数100点ほどだったが、今年は259点に上った。過去には400点を超えた年もあった。さらには釈尊入滅の地であるインドのクシナガラから届いたこともあった。

 毎年、大阪市仏教青年会の主催する花まつり子ども大会で作品の展覧会を行っているが、今年は市仏青の花まつり自体が新型コロナウイルスの影響で中止となったため、入賞作の発表のみ行われた。

 大東会長は「お釈迦さまは人が幸せになる方法をお悟りした方。皆さんが笑顔でいられ、健康で過ごせるように願っておられる方です。しんどいこともあるとは思いますが、頑張って、腐らずにお釈迦さまの教えを胸に生きていってほしいですね」とメッセージを贈る。

2020/4/2 花と過ごす花まつり 供え、飾り、舞い、プレゼント

  
 釈尊の誕生を祝う降誕会に「花まつり」の名がついたのは明治34(1901)年。ドイツに留学していた仏教青年たちが当地で降誕会を開催するにあたり、ドイツ語で「ブルーメンフェスト(Blumenfest=花まつり)」と名付けたことから始まった。その後、日本でも「花まつり」の名は定着し、現在まで各地で行われているが、その名にちなんで花と過ごす一日でもある。花をプレゼントしたり、花御堂を飾ったりと、各寺・団体の取り組みを紹介する。新型コロナウイルスの影響で「花まつり」も中止や縮小となっているが、こんな時でも花は咲く。花と共に過ごすことで心安ませる時を過ごしつつ、ウイルスの終息を願いたい。

富山県黒部市・善巧寺 
廃棄の花弁を利用 10万本のチューリップ飾る 

花びらを空高く投げる子どもたち(善巧寺提供) 富山県黒部市の浄土真宗本願寺派善巧寺(雪山俊隆住職)で開かれる「花まつりマルシェ」。廃棄されるチューリップ農家の花弁を用いて境内を飾り付け、訪れる500人もの参拝者を楽しませる。

 児童劇団「雪ん子劇団」の創設で知られる先代の故隆弘氏が昭和50年代に、門徒の球根農家で捨てられる花弁で境内を飾る花まつりを始めた。この30年間ほどで農家が激減し、現在は同県の入善・朝日両町の2農家から花をもらう。それでも毎年10万本近いチューリップの花弁が集まる。

 花まつりは4月中~下旬の日曜日に開く。前日に地元の園児や小学生、婦人会員ら約30人とバスで花をつみに行き、寺院に戻って飾り付ける。今では子どもたちが楽しみにする恒例行事となっている。

 手をつないだ人や合掌をかたどったパネルをつくったり、参道に飾ったりして境内が華やかに色づく。誕生仏に供えられるのはチューリップだ。この日は飲食店や雑貨店など多くの出店が並び、リトミックやゲームなどの催しでにぎわう。

 関係者だけで行っていたが、5年ほど前から「花まつりマルシェ」として門戸を開いた。初参りや七五三も合わせて行い、毎年約500人が訪れるという。「長く滞在してもらえるよう気を配っている」と雪山住職。「せっかくお寺に来てくれたのだから、仏さまとの時間をゆっくり過ごしてほしい」と話す。

 新型コロナウイルスの影響で、今年の花まつりの一連の行事は開催を見送った。


曹洞宗静岡県第一宗務所青年会
4月8日、何の日か知って! 25年続く街頭花配り
 曹洞宗静岡県第一宗務所青年会(県東部の小山町から島田市まで)は毎年4月上旬、「花配り」の活動を管内の駅前など街頭で行っている。「4月8日はお釈迦さまの誕生日です」と道行く人に呼びかけ、幟を立てて、カーネーションやチューリップ、薔薇など色とりどりの花をプレゼント。「争いのない平和な社会にしましょう」と書かれたチラシもセットだ。花御堂をしつらえて甘茶の提供と灌仏もあり、まさに「和顔愛語」の実践となっている。

 曹洞宗静岡県第一宗務所青年会は1993年発足。初代会長の故・武藤英明師(全日本仏教青年会事務局長)が釈尊降誕について多くの人に知ってもらいたいと「花配り」を考案して以来の行事である。切り花だけでなく、花の種や植木鉢のこともある。花は各寺院出入りの花屋から購入したり、お寺で育てたものだったりとさまざま。

 「多くの人に喜んで受け取ってもらえ、本当にありがたいと思い続けています」と松本揚裕会長は感謝する。仕事中の社会人や、学校帰りの高校生など、4月8日が何の日か知らない若年層も、袈裟を着たお坊さんが花を渡すことで「エッ、お釈迦さまの誕生日なんですか!」とビックリしながら受け取るといい、狙いは成功のようだ。

 ただし残念ながら、今年は新型コロナウイルスの影響で花配りも中止となった。「何とか早く終息してくれることを願い、来年こそはまた笑顔で配りたいですね」と松本会長は話す。

東京都大田区・永寿院
いのちをありがとう 大事な人にチューリップ

見頃を迎えた永寿院のピンクチューリップ 東京都大田区の日蓮宗永寿院(吉田尚英住職)では、2013年から花まつりにちなみ、ピンクのチューリップを贈り合う「いのちをありがとうキャンペーン」を推進している。

 チューリップの原産地は、釈尊の生誕地に近いトルコから中央アジアにかけての地域。同キャンペーンは、釈尊誕生の際に生きとし生けるものすべてが命を喜び、祝ったという花まつりの故事に由来し、大事な人にピンクのチューリップを贈ることで生かされている「いのち」を思い起こす日にしてもらう試みだ。

 永寿院では「花まつり」「ピンクのチューリップ」「お釈迦さま」に加え、日蓮聖人とのコラボも企画。大田区の観光協会と連携するお会式ツアーの参加者約50人に、キャンペーンの趣旨が分かるミニ絵本と球根を渡している。

 毎年、チューリップの球根を配布し、昨年までに約1万2千球が配られた。池上のボーイスカウトの協力によりプランターにも植えられ、大本山池上本門寺の参道や大堂の階段などに配置して、参拝者の目を楽しませきた。永寿院でも本堂の階段などでチューリップを育てている。

 「日本人は恥ずかしがる人が多いのか、花を贈るのはなかなか定着しないですね。それでも、チューリップが咲くと、境内や本堂に人が来てくれます。お会式や花まつりはお檀家さん以外の人にアピールする良い機会。お寺の雰囲気を知ってもらえれば」と吉田住職。

 今年は、新型コロナウイルスの影響で残念ながら本門寺や永寿院の花まつりは中止になった。吉田住職は「キャンペーンはあきらめずに続けることが大事。来年またやります。少人数でも、お寺と繋がる人が増えていけばありがたい」と話した。

2020/4/2 花まつりエッセイ 仏典の草花から地球環境へ 岡田真水・兵庫県立大学名誉教授 


 昔、お釈迦さまが王舎城の迦蘭陀竹林にいらっしゃった時、那羅聚落に疫病が起こって、たくさんの人が亡くなりました。人々は競って諸天善神を勧請して、疫病の終息を祈りましたが、病の勢いは一向に衰えませんでした。

 そんな頃、一人の仏教信者が人々にこう言いました。「仏さまはこの世においでで、命あるものたちを安らかにおまもり下さいます。私どもは心を合わせて『南無仏陀』とお称(とな)えして病苦の患いから救われるようお祈りしましょう」


「勧令修善」
 これを聞いた人々は皆口々に「南無仏陀」と称(とな)えて「仏さま、どうぞ憐れとお思いになって、私どもの疫病の苦しみを除いて下さい」と祈りました。

 それを知った仏さまは修行者たちを連れてその聚落にいらっしゃって、人々に善行をすることを勧められました。すると疫病は退散し患いはなくなったのです。

 この話は3―4世紀に成立した『撰集(せんじゅう)百縁経』という経典に記されています。日本でも3世紀中頃突然、古墳寒冷期と呼ばれる気候変動の時代に入ったことがわかってきました。この現象は中国でも起こり、4世紀には匈奴やフン族、ゲルマン大移動がはじまります。歴史を大きく変えた時代でした。

 先の物語の中で重要なのは、疫病を終息させたお釈迦さまの教えが「勧令修善」であったということです。気候変動で民族大移動となると、さぞ血腥い争いが起き、食料の奪い合いやひとり占めがあっただろうと想像できます。しかし、その時代こそがわが国では多くのため池が造られ、力を合わせて苦難を乗り超えた時でした。分け合えば、カツカツでも多くの人が生きのびられますが、奪い合えば全滅してしまう。苦難の時こそまわりの人々と心を合わせ、お互いを思いやって、共に生きることをめざさなければなりません。

 『撰集百縁経』の物語は、心を一つに仏に祈り、苦しい中で善を修めた人々が、疫病の退散した時に、仏をお招きしてもてなしたことを記録しています。街をきれいにして、香りのよい水をまき、様々な美しい花を散らしたとあります。

 『法華経』に出てくる仏への十種の供養も、最初に記されるのは「華」です。お釈迦さまが御誕生された時には、七宝七茎の蓮華が生え、諸々の妙花が天から降ったと『過去現在因果経』は伝えました。このように、華花は仏さまと深いつながりのあることが説かれてきました。

草木国土悉皆成仏
 『撰集百縁経』第5巻には、娑羅の花をつみ編んで華の首飾りを作り仏さまに捧げた人が生まれかわって美しい天人となった物語がありますし、さらに第7巻には、お供えの花が萎んでしまったのをしまつする功徳まで記されています。その物語はこの様です。

 昔、毘婆尸(びばし)仏が涅槃にお入りになった時、槃頭末帝(ばんずまてい)王はそのお骨を収めた塔を建てました。この塔の前を通りかかった人が、お供えされた花が萎んでしまっていることに気づき、これを抜いてきれいに拭きそうじしました。この功徳により、この人は命終して生まれかわり、やがてお釈迦さまに巡り合って、うるわしい威徳比丘となったということです。

 わたくしは、お供花には「きれいに咲いてくれてありがとう」と声を掛けています。お水をきらさぬよう努め、このようにめでますと、花も元気に咲き続けてくれるようです。そしていよいよ生を終える時がきたら、心から感謝して、「今までほんとうにありがとうございました」と合掌し礼拝してしまつしています。仏さまに命をささげてくれた花は貴いと心底思うからです。

 花も木も大切な我々の仲間。草木国土悉皆成仏と祈り続けてこられたことを、今また思い起こす時です。今年の釈尊降誕会には、疫病の終息を祈りつつ、一層心を込めて花供養をしたいと考える今日このごろです。

おかだ・しんすい/1954年生まれ。東京大学大学院修士課程修了(インド哲学)。哲学博士(ドイツ・ボン大学)。兵庫県立大学名誉教授。環境宗教学の提唱者。岡山県瀬戸内市の日蓮宗妙興寺修徒。編著に『小さな小さな生きものがたり ―日本的生命観と神性』(昭和堂)など。

2020/4/2 京都仏教会 景観保全に寄付金 市に参拝者の真心届ける

 
門川市長から感謝状を受け取った有馬理事長 満開の桜と歴史的景観が調和する春の京都。そうした古都の風情を守る京都市の取り組みの一つに、「京都の優れた景観を保全し形成する事業基金」(平成2年度創設)がある。この事業に賛同している京都仏教会(有馬賴底理事長)は今年度1年分の募金152万7558円を寄付。中京区の市役所で3月27日に受納式が開かれ、有馬理事長(臨済宗相国寺派管長)から門川大作市長に目録が贈呈された。

 同基金は、歴史的建物の修理や山の保全事業への補助に充当される。京都仏教会から同基金への寄付は初。有馬理事長は、「京都の景観を守る意識が社会に広がるきっかけになれば」と期待した。

 寄付金の内訳は鹿苑寺(金閣寺)と慈照寺(銀閣寺)から各50万円、各寺院に寄せられた募金が約53万円。門川市長は、「豊かな自然と歴史に育まれたのが京都。寄付金には(募金した)皆さんの真心がこもっている。景観保全政策にしっかりと取り組んでいきたい」と感謝した。

 京都仏教会では金閣寺と銀閣寺、清水寺など十数カ寺に募金箱を設置。参拝者に「京都の文化財や歴史的景観を守り伝える京都府・市基金」への支援を呼びかけている。

 市は世界遺産の寺社などを視点場に指定。市の景観保全検討会には、仏教会から長澤香静事務局長が参加している。

 さらに京都仏教会では約10年間、京都府の「文化財を守り伝える京都府基金」に毎年40~50万円寄付。今年度は約60万円を振り込んだ。今後は毎年、府市両方への募金を行っていくという。

2020/4/2 日蓮宗 信行道場の延期決定 初の外国語道場は来年

 
 日蓮宗(中川法政宗務総長)は3月25日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日蓮宗教師となるための修行道場である令和2年度の信行道場について第1期・第2期を延期すると発表した。同日に宗務院で開かれた内局会議で決定した。

 第1期信行道場(4月15日~5月19日)と第2期信行道場(5月27日~6月30日)の開設は、第3期信行道場(8月5日~9月8日)が開設できた場合に、その後の期間を利用して開設する方針だ。現在、どのような形で開設が可能なのか検討に入っている。

 延期となった第2期と並行して開設を予定していた外国語(英語)による初の信行道場は中止し、来年から実施する。第1回僧道林(6月1日~5日)も中止することが決定された。

 栗原啓允教務部長は「ギリギリまで検討したが、延期の決断となった。道場生の健康管理と医療体制が万全でない状況では開設はできない」と苦渋の決断であったことを明かし、「年内すべての信行道場が中止となれば、入場予定者の機会をすべて奪うことになる。延期してでも開設する努力を尽くしていく」と語った。

 しかし、現行の実施方法では第3期以降も開設困難となる場合も想定されている。本紙の取材に中川総長は「日蓮宗教師になるために何が必要か、誰もが認める形で修行ができれば今の形態にこだわらない。身延山と連絡を密にしつつ、どのような形なら開設ができるのか関係所管に検討するよう指示した」と明かし、状況によっては、宿坊などへの入場者の分散など修行形態に変更を加える可能性も示唆した。

 信行道場は、日蓮宗教師となるための修行道場で、宗制により総本山身延山久遠寺に開設することが定められている。期間は35日間。現在は年3期開設され、教師となるためにいずれかの期を修了する必要がある。道場の開設期日は宗務総長が定め、特別の場合は短縮又は延長することができる。

3月

2020/3/26 何度も使えるマスク配布 念法眞教女子寮で修道生らが手作り

 
       マスクを手に取る信徒 新型コロナウイルス感染拡大の影響でマスク不足が続く中、大阪市鶴見区の念法眞教総本山金剛寺(桶屋良祐燈主)では、洗えて何度でも使えるマスクの配布を始めた。女子修道生と縫製奉仕の信徒らの手作りで、不安の中にある信徒に向けた手書きのメッセージや感染防止に役立つイラストも添えている。

 桶屋燈主からの「新型コロナウイルスの薬はなく、マスクがなかなか出回らないので、信徒さんは不安に思っていらっしゃる。少しでも安心してもらえるように、マスクを作って、頂いてもらいなさい」という指示を受け、15日夜から女子修道生がマスク作りを開始。教務本庁での勤務後、女子寮で1日平均3時間、12人が参加して作成し始め、縫製奉仕の信徒も加わるようになった。

 女子修道生らはまず親先生(開祖小倉霊現初代燈主)に、「このマスクを使ってくださる信徒さんが、いつも明るく元気で過ごしていただけますように」と祈願。念法眞言を唱えてから作業を始めている。

 初めに型紙を作成して、ガーゼ生地の布を裁断。ひと針ひと針、眞言を唱えながら心を込めて縫う。出来上がったら、100度の熱湯消毒を10分。干して乾燥させてからアイロンを当て、耳にかけるゴムを一つずつ付ける。その後、マスクを透明な袋に入れて密封。メッセージカードと共にラッピングして完成となる。

 メッセージカードには、繰り返し使ってもらえるように熱湯消毒の仕方を可愛いイラストで添え書きしてあり、手書きのメッセージも同封している。

 手作りマスクは20日午前、祈願本堂の本尊宝前にお供えした後、寺務所前と本山教区事務所に置いて配布。計83個が30分でなくなった。

 女子寮では今後も制作を継続。本山教区信徒からも「本山に参拝できなくても、自宅でできるので、ぜひお手伝いさせていただきたい」という声が上がっているという。本山ではマスクの型紙と裁断した布を渡し、作業の輪を広げていく方針だ。

2020/3/26 障がい者19人殺害 やまゆり事件 植松被告に死刑判決 専門家のコメント


事件直後のやまゆり園には献花する市民が相次いだ(2016年7月30日撮影)。現在は取り壊されて建物は存在しない  平成28年(2016)7月26日、神奈川県相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」で障がい者19人を殺害し、職員を含む26人が重軽傷を負った事件。犯行に及んだ植松聖(さとし)被告(30)に横浜地方裁判所(青沼潔裁判長)は16日、求刑通り死刑判決を言い渡した。植松被告は公判中、障がい者への偏見を持ち続けた。今回の事件と判決は宗教者にとってどのような意味を持つのか。仏教福祉の専門家と障がい者施設を運営する僧侶にコメントをいただいた。


類似事件の予防にならず 他者を尊重できる社会を
清水海隆氏(立正大学社会福祉学部教授・日蓮宗僧侶)

 3月16日、相模原市・やまゆり園事件に判決が言い渡された。3年半前に障がい者施設の入所者・職員45名を殺傷した元職員の植松被告に対し、横浜地方裁判所は求刑通り死刑判決を言い渡したのである。しかし、この事件を何とも気の重い事件と考えるのは、筆者のみではないであろう。と言うのも、人の生命を殺傷したという事実に加えて、被告が裁判を通して障がい者を差別するような言説を連ね、障がい者の人権や生命までもを否定するような言葉を発し続けていたからである。

 このような状況の中で、裁判長は「酌量の余地は全くない」として、死刑判決を出しているが、これについては、多くの人々が望んでいた判決であるとの関係者のインタビューコメントも伝えられている。

 死刑制度の是非を別にすれば、45名の人命を殺傷したという事件の重大さはもちろん、逮捕後に被告が継続的に見せた無反省な態度からは、極刑もやむを得ないという思いは、大多数の国民の懲罰感情にかなう結果と言って差し支えないであろう。

 しかし、死刑判決は植松被告に対する懲罰であり、類似事件を予防することにはならないことは容易に予想することができよう。このような悲惨な事件が2度と起きないようにするためには、他者をいかにとらえるか、さらには多くの異質な存在をいかに受容していくのかを日常的に考えることが大切であり、近年の言葉で言えば多様性を尊重できる社会となるべく努力しなくてはならない。個々人がさまざまな存在を認めあう社会の実現にむけて、特に宗教者には折に触れて声をあげ、説教をするなど、大きな役割を担ってほしい。

 そして、一歩一歩の積み重ねによって個々人の考え方が変わった時、社会全体が多様性尊重型社会へと変化し、今回のような独りよがりの事件の起こらない社会となるではないだろうか。その道のりは遠い。まず一歩から始めたいものである。

極端な考え 理解できず 損得勘定と無縁な人たち
住田福祉氏(障がい者支援施設「尚恵学園」理事長・豊山派僧侶)

 植松被告は何故あんな人間になったのか。施設で働こうと考える人は自分ができることで役に立ちたい、という前向きな気持ちで始める人が多い。彼が極端な考えを持つようになり多数の障がいのある人たちを殺傷したのは、全く理解できない。

 今の社会は損得勘定ばかりが目立ち、心の問題が蔑ろにされている。障がい者や高齢者を社会の負担と捉え、長生きを「社会問題」として考えていないだろうか?

 斯様な社会が植松被告のような考えの人間を生み出したように私は思う。日本人は政治への関心は薄く、総じて選挙の投票率は低い。ちなみに私の施設の利用者は必ず選挙には行き、今までに棄権をしたことがない。たとえ字が書けなくても白票で投票する。これは国民としての権利と義務だと思うからだ。 

 被告は障がいの重い人の順から殺害したと聞いた、障がいの軽重をどう判断するのだろうか。日本では、まだまだ障がい者への差別や偏見があります。今もって障がい者施設を建設しようとすると住民の反対運動が起こることがある。だから辺鄙な場所に施設を造ることになる。やまゆり園の入所者は事件後、やまゆり園から出て神奈川県内の他のグループホームに分かれて生活を始めました。すると表情が穏やかに変わったと受け入れをした施設の友人から聞いた。

 日本は経済大国となった割に、世界の幸福度ランキングは低いまま。「先立つものはカネ」だと思っている人が多過ぎる。本当にそうだろうか?

 私の師に障がい者福祉の父と言われる糸賀一雄先生がいる。先生は「この子ら世の光」ではなく「この子ら世の光」にするべきだと説き続けた。《を》と《に》の位置を変えただけなのに思いは真逆だ。この仕事を続けてきて48年が経つ今もその言葉は新鮮に響き、迷えばそこに立ち返る。

 仏教は身につけてきた余計なものを一枚ずつ剥がしていくことを教えている。私は純粋無垢で損得勘定など無縁な彼らと毎日接していますが、彼らから学ぶことが本当に多い。 

 皆さんにはこの問題に関心を持ち続けてほしい。やまゆり園事件をどう感じるのか、考え続けてほしい。自分には関係のない話と思っていてはいけない。将来、いや、いつ当事者になってもおかしくないのだから。(茨城県土浦市、観音寺・神宮寺住職)

2020/3/26 緊急寄稿 新型コロナ 宗教者の姿が見えず 困窮者に寄り添い、献身者に激励を ワンチームに宗教者も 天谷忠央氏(元新日本宗教連合会事務局長)


 東日本大震災やオウム事件を思い出す。突然の新型コロナウイルスの来襲。右往左往する人と社会。まだ有効な治療法も見つからず、感染症の拡大も止まらず先が見えない状況。そんな中で、身の危険も顧みずに防護服を着て闘っている医療従事者たち。危機感をつのらせた安倍政権がついに特措法を成立させた。国民の行動にさまざまな制限をかけたことで、国民生活や経済活動に大きな影響が出始めている。

 目にも見えず触って確かめることもできないウイルスの正体。今のところはお手上げ状態である。こうした地上の有様を神仏はどうご覧になっているのか。まさか、寺や教会に閉じこもり、嵐が過ぎるのを待っているわけではないだろうが、それにしても、神の愛や仏の慈悲を説く宗教者の姿が見えないのはなぜだろう。感染症が起きても、政治の側も医療の側も、また一般の国民も、宗教の必要性を感じてはいない。しかしそんな議論はともかく、反省を込めて、宗教者は行動に出る時ではないか。

 新型コロナウイルスによって突き付けられているのは、人と社会における信頼の問題である。ほんらい社会は、信頼と共同で成り立つはずなのに、このままでは不信感が増大し、たがいに支え合い助け合うという、当たり前の倫理が失われるだろう。いや、すでに人と社会は、善き倫理を喪失していたのかも知れない。今が大切な時である。分岐点である。

 ウイルスが悪いのではない。将来とも絶滅することもない。病気感染よりもっと恐ろしいのは、不信感の増大拡散が、社会を崩壊させる事態に発展することである。

 宗教団体は、人びとの尊い布施と国の法律で支えられている。それが何のためなのか、宗教者は知っているだろう。困った人に寄り添い、心の痛み悩みを救うのは、宗教者の責務であり、使命である。それぞれの宗教には、檀家の人や信者がいる。その中から感染症の患者さんが出たかも知れない。そんな人たちの心の嘆きや悲しみ、怒りにも耳を傾けねばならない。

 また、医療従事者も政治家もいるし、中小企業の経営者もいるはずで、かれらの努力や献身を称え激励の声をかけたい。それこそが、人としての宗教者の真心である。

 ラグビーが教えてくれたワンチームの精神、すなわち信頼と共同参画社会に、宗教者も参加しようではないか。祈りだけでは、新型コロナ感染を断つことはできない。

2020/3/19 新型コロナ 議会を短縮化 各宗派議会 限られた時間で審議 


 4月から始まる新年度予算や事業を審議する各宗派の宗会・宗議会・代表会。宗政のなかで最も重要な会議であるが、2月~3月に集中する各宗議会は新型コロナウイルスで短縮の傾向がみられた。2月26日に安倍首相が感染拡大防止のため今後2週間、全国的なスポーツや文化イベントの自粛を要請。翌27日には3月2日からの公立学校休校を要請し、学校は休みに入った。こうした経緯もあり、各宗議会は短縮されたりした。高野山真言宗は延期を発表したが、日程は決まっていない。

 新型コロナに関する情報は日々更新されているが、2月中頃までは各教団とも大きな行事等の見直しはなかった。しかし感染拡大が明らかになるに連れ対応に迫られた。

10 日に招集された日蓮宗宗議会でマスクを着用して登壇した中川法政宗務総長マスク姿で登壇した浄土真宗本願寺派の石上智康総長 議会をみると2月18日招集日の天台宗・妙心寺派・智山派ではほぼ例年通りの日程となった。やや事態が見えてきた2月24日招集の曹洞宗宗議会は例年より1日短縮したほか、5月に北海道で予定していた梅花流全国大会の中止を鬼生田俊英宗務総長が発表した。

 首相からの自粛要請後の招集となった本願寺派は全員がマスク姿で議場に入り、1日で閉会。今月2日招集の浄土宗と、10日招集の日蓮宗と豊山派も期間を短縮して閉会した。

 新型コロナの特性から密閉空間や飛沫感染の恐れがある対面的なあり方は避けなければならず、議会や委員会は限られた時間と空間での審議となった。すべての教団に影響を与えた今回のようなケースは極めて珍しい。

2020/3/19 緊急寄稿 寺院は今できることを 真言宗智山派薬王寺 倉松俊弘(住職・医師)


 3月13日、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症をパンデミックと表明しました(現地時間)。3月15日現在で、世界116カ国・地域に広がり患者数は14万人以上、死者は5300人を上回ります。

 また、日本では14日に新型コロナウイルス感染症に関して「緊急事態宣言」を出せる改正特別措置法が13日に成立し、14日から施行されました。世界中が何とかして拡散を防ぐために様々な手段を取っています。

 我々僧侶も現実的に葬儀・法事・宗教行事などをどうしたらよいか悩みます。実際に寺院や檀信徒からも相談を受けます。

 この新型コロナウイルスの感染様式は、飛沫感染と接触感染であり、特にクラスターを起こすには、①換気の悪い密封空間、②人が集中する場所、③近距離での会話――この三つの条件が揃うことにあります。我々の職場はこの条件に当てはまるところも多くあります。

 私はこの三つの条件を逆手に取ることで感染の危険性を少なくすることができるのではないかと考えます。一つには、可能な限り窓、ドアを開放して換気を行うこと。二つには、檀信徒の席間隔を可能な限り十分に取ること(飛沫感染の場合、約2㍍といわれています)。職衆の間隔も十分に取ることです。三つ目は、皆さんで心経など経典を読誦するときには鼻音あるいは黙読をすることです。

 客殿や待合室などでは、接触感染が起こる可能性があります。感染者や不顕性感染の方がいた場合は、テーブル、椅子、ドアなどにウイルスが付着します。新型コロナウイルスは付着物上でも2日間以上、9日も生存したとの報告もあり清拭消毒をよくすることが大切です(麻疹ウイルスなどは数時間で死滅します)。感染者(潜伏期間は1―12・5日で多くは5―6日とされており注意を要しますが)や不顕性感染者の診断が十分にできない今は、感染疑いの方、体調がすぐれない方にはご遠慮をして頂くことも考えないといけません。いずれにしても粛々と心を込めて檀務を行うことです。

 このパンデミック状態が落ち着くには、この感染症の治療法が確立すること、あるいは予防ワクチンが開発されることであり、しばらくはこの状態が続くので、うまく付き合うことしかできません。いろいろな社会的、精神的問題も生じてきます。この状況下では我々宗教家に何が出来るのかその真価を問われることにもなります。

 四法印(諸行無常、諸法無我、一切皆苦、涅槃寂静)、今改めてその意味を考えさせられています。 合掌(栃木県鹿沼市)

2020/3/19  宗会シーズン 日蓮宗・真言宗豊山派


【日蓮宗】  
 日蓮宗の第116定期宗会が10・11日、東京都大田区の宗務院に招集された。新型コロナウィルスの感染防止に努め、4日間の会期を短縮。中川法政宗務総長は宗門として新型コロナ対策を講じる必要性に言及した。修法・加行所について恒常的検討を行う修法会議の設置をする修法規程中改正案や令和2年度予算案など全議案が可決・承認された。(続きは紙面をご覧ください)

【真言宗豊山派】 
 真言宗豊山派(星野英紀宗務総長)の第152次宗会通常会(川田興聖議長)が10・11日、東京都文京区の宗務所に招集された。宗派予算関連など7議案が承認されたほか、緊急動議により議員提案の発議第一号「真言宗豊山派規則規程検討の件」が上程された。(続きは紙面をご覧ください)

※紙面では、大覚寺派、醍醐派の宗会記事も掲載しています。ぜひ紙面をご覧ください。

2020/3/19 金沢大乗寺から日立鏡徳寺へ 仏舎利奉安法要を厳修


東山主㊧から仏舎利を受け取る山田住職 石川県金沢市の曹洞宗大乘寺(東隆眞山主)で11日、恪護する仏舎利を茨城県日立市の鏡徳寺(山田崇三住職)に譲り渡す「仏舎利奉呈式」が執り行われた。仏舎利は京都市の平安佛所で彫像中の鏡徳寺の本尊釈迦牟尼仏の胎内に納められる予定。

 この仏舎利は1992年7月、東山主が大学の同窓である故・黒田武志氏(横浜善光寺住職)とタイのワット・パクナムを拝登した時に特別に譲られた真骨15粒のうち3粒。鏡徳寺の大野徹史副住職が大乘寺で長年修行し役寮を務めている縁からこのたびの譲渡が実現した。

 東山主は「茨城県でも有数の立派なお寺である鏡徳寺様のご本尊として、現代日本の大仏師である江里康慧先生により仏像ができる、その胎内に仏舎利をお納めし遺徳を追称えするのは、こんなに嬉しい、ありがたいことはありません」と喜んだ。タイと大乘寺をつないだ功労者である黒田氏の行動力も賞賛した。

 山田住職は「ご本尊として釈迦牟尼仏を新しくお迎えするのは先代住職からの念願でした。そこに仏舎利が納められることになるとは本当に望むべくもないことで、嬉しくてびっくりしています」と東山主に感謝。「浪江町など、被災地の方で(避難・移住して)檀家になりたいと仰ってくれている方もいるので、そういう方々の願いや祈りを大切にしてお祀りしていきたい」と、東日本大震災が発生した日に奉呈された仏縁にも感慨ひとしおの様子だった。

 本来は鏡徳寺からも多数の檀家が参列するはずだったが、新型コロナウイルスの影響で鈴木邦壽氏、今橋武久氏の2人の総代が代表して参列した。鈴木氏は「国宝級になれる仏様ができて感激しています」、今橋氏は「檀信徒として本当に誇りに思います」と感激していた。

 江里氏は「仏教がインドから広まり世界宗教になったのは仏舎利が分けられていったから。ずっとそのことに思いを馳せて参列させていただきました」と語った。仏舎利は23日に平安佛所で胎内に納められる。完成は秋ごろで、その後、来年1月から京都伊勢丹の中にある美術館「えき」で一般公開される。

2020/3/12 核燃料サイクル停止求め提訴 宗教者211人「命をつなぐ権利」主張 

東京地裁に向かう原告団と弁護団 核といのちは共存できないとして、仏教・キリスト教・神道などの諸宗教者・信仰者211人が青森県六ヶ所村にある再処理工場(核燃料サイクル事業)の運転停止を求めて9日、東京地方裁判所に提訴した(宗教者核燃裁判)。訴状では、過酷事故の際の多大な影響のほか、幸福追求権の重要事項として「いのちをつなぐ権利」を明記し、使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物といった核のゴミを将来世代に押しつけてはならないと主張している。

 原告団は「原子力行政を問い直す宗教者の会」(宗教者の会)のメンバーら。仏教96人、キリスト教109人、神道1人、無所属5人の211人。原告団共同代表は、長年にわたり原発問題に取り組んでいる中嶌哲演氏(福井県、真言宗御室派明通寺住職)と岩田雅一氏(青森県、日本キリスト教団牧師)。

 東京地裁前には原告団と弁護団が揃い集会を開き、今裁判への決意と意気込みを語った。訴状提出後には司法記者クラブで会見を開き、続いて参院議員会館で意見交換会を催した。

 原告団共同代表の中嶌氏は、核燃料サイクル事業の主体である日本原燃株式会社(本社・青森県六ヶ所村)を被告としていることに「日本原燃は、沖縄電力をのぞく日本の9大手電力会社と日本原子力発電会社が出資した会社」だと説明。「日本の原発は北海道から四国、九州まで例外なく過疎地に押しつけられている。電力はそのブロックの大都市圏で消費され、電力会社が産みだした放射能の固まりをすべて青森県の六ヶ所村に押しつけている。この有り様を東京地裁で解明して頂きたいと思っている」と、原発が不均衡な地域格差のうえで成り立っていることを告発した。

 弁護団長の河合弘之氏は、原発推進理論の中心にある核燃料サイクル(永久燃料)論の要(かなめ)である再処理工場に異議を唱えることは非常に重要だと指摘。破綻している論理だとも述べた。河合氏は「日本の核燃料サイクル構想の肝にナタを打ち込む、非常に重要な訴訟だと思っている」と解説した。

 原発は東電福島第一原発事故が証明したように過酷事故が起きた場合には、「国を滅ぼしかねない大惨事になり、多くの国民が苦しむことになる」(河合氏)とした。こうした観点から宗教者による原発訴訟を評価。「宗教者が立ち上がったことに意義がある。現世の人の幸せだけでなく、後世の人たちの幸せも祈り実現させる義務が宗教者にはある。もちろん、神仏に祈るのも大切だが、将来世代のことを考えて裁判所に請求することも大事」と話した。

 同じく弁護団の井戸謙一氏は、今訴訟の特色である「命をつなぐ権利」について説明。訴状では「人類の一員として次世代に生命をつなぎその幸福を実現する権利」(自分のDNAを子孫に残すことを含むが、それに限られず人間社会を持続可能な状態で引き継いでいくこと)と定義している。

 井戸氏は「生命の本質は、DNA(=いのち)を次世代につないでいくことにある。つないでいった将来のDNAが使用済み核燃料によって危機に瀕してしまうことは、私たちのDNAをつないでいく権利を侵害するもの。裁判ではこれを主張していく」と述べた。

 「宗教者の会」では、2年前の松山全国集会で司法への働きかけが必要ではないかとの意見が提起された。これまで行政や電力会社などに働きかけてきたが、司法に対してはなされていなかった。その後、他の団体や弁護士とも意見交換した上で今回の提訴となった。

2020/3/12 東日本大震災から9年 山元町・徳本寺 大般若転読で復興祈願“法要が毎年のスタート”

 
徳本寺で大般若経転読による復興祈願法要 東日本大震災から9年を前に、宮城県亘理郡山元町坂元の曹洞宗徳本寺(早坂文明住職)で8日、復興祈願と慰霊法要が営まれた。約25人の檀信徒が供養と復興への祈りを捧げた。

 徳本寺では檀信徒が143人、兼務する徳泉寺では74人の217人が犠牲になった。法要は震災発生時刻となる午後2時46分に梵鐘を9回鳴らして始まった。大般若経600巻を転読して復興を祈願し、檀信徒は香を手向けて供養した。

 法要後に挨拶にたった早坂住職は「多くの尊い命が失われました。幸い私たちは何とか命をいただき、復興に向かって一生懸命力を尽くしております。お寺の掲示板にも書きましたが『死ぬこと以外はかすり傷』、そのぐらいの思いで9年間を尽くして来られたと思う」と振り返り、「9年の節目ではあるが、我々の日常は続いていきます。それぞれの場でご精進し、亡くなった人から『よくやっているな』と言ってもらえるよう過ごしていただきたい」と語りかけた。

 津波で夫を亡くした女性は毎年法要に参加し、「ここからスタートなのだという気持ちになる。心を支えていただき震災から生き抜いてこられた」と感謝し、「主人と共に亡くなった方のご冥福をお祈りしたい。自分もまた(お寺の行事に)参加することで一歩でも二歩でも進みたい」と話した。

 法要に先立ち「やまもと語りベの会」の渡辺修次会長が講演。当時、中学校校長だった渡辺さんは生徒4人が亡くなったことに無念さを滲ませ、「今日は4つのお寺で線香をあげてきた。同じようなことが起きても死者を出さないような取り組みをしたい」とし、防災知識、災害の怖さを次世代へ伝えようと呼びかけた。
 
 本堂・庫裡等が全て流失した徳泉寺(山元町笠野)の本堂(25坪)・客殿(48坪)が再建された。毎年徳本寺と合同で復興法要を行ってきたが、今年は3月11日から15日まで、落慶法要を含む「徳泉寺復興感謝祭5DAYS」を開催する。

再建された徳泉寺。11日から復興感謝祭を執行 早坂住職は建物が全て流出した中で奇跡的に発見された本尊を「一心本尊」と名付け、震災翌年から一心本尊への納経として「はがき一文字写経」(一口5千円の納経料)を呼びかけて寺院再建を始動。「はがき写経」には8年間で全国47都道府県の全てから延べ2270人の志納があった。「徳泉寺のことも私のことも知らない方が託してくれた。その方たちに応えていかないといけない」と心を新たにする。

 徳泉寺が建つ地は災害危険区域で居住ができない地域となり、新たな寺院の在り方も模索する。「今までのこと(法務)もちゃんとやる。それとは別なこともできればいい」。その試みとして復興感謝祭では音楽コンサートや写経会・坐禅会、ボランティア体験などの催しを企画した。11日には、早坂住職が作詞した復興支援の歌「まけないタオル」の作曲・歌を担当した本願寺派僧侶で歌手のやなせななさんのコンサートも行われる。

 「明日という日が続いていくと思いながら淡々と粛々とやっていく。1年目や2年目には言えなかったこと。そういう言葉がいえるようになった9年の歳月がある」と早坂住職。「毎年が節目であり、毎年がスタート」と話す。

2020/3/12 静岡市・一乗寺が休校対応 読書やゲーム 本堂を開放 地域住民から差し入れも

  
開放的な本堂に多彩な本やゲームが揃う 学校が急に休みになって、遊ぶ場所もなくて寂しい。そんな子どもたちはお寺においで―新型コロナウイルス対策として、全国の公立学校に休校要請が出されたことを受け、静岡市清水区の曹洞宗一乗寺(丹羽崇元住職)は4日から「臨時の寺子屋」として本堂・境内を開放し、無償での一時預かりを実施している。

 急な休校に保護者が戸惑い、図書館や映画館などの施設も休館する中、お寺が預かるのは大好評。初日、2日目こそ少なかったが、多い日には10人を超える子どもが訪れ、ゲームやお絵かきなどで遊びまわり、読書や映画鑑賞をしている。読書家の丹羽住職の趣味を反映し、本は絵本、漫画から哲学書まで多彩に揃う。簡単なおやつも用意した。

 丹羽住職は行政が通知するように「自宅待機」が基本的には最善策としつつも、共働きやシングルのように自宅待機が難しい家庭もあるため、一時預かりを決断。当初は午後1時から5時半までの時間だったが、保育士の友人の協力もあり午前中から受け入いれるよう拡大。また小学生限定のつもりではあったが、勉強をさせてほしいとやってきた中学生の女子も受け入れた。もちろん感染症対策に配慮し、医師や保育士などの協力で一時預かりの「ガイドライン」を作成。問診票の記入や手洗い、消毒、うがいは義務付け、体調不良あるいは感染症の疑いがある児童は利用できない。

 昨年、一乗寺は本堂の修復工事を終えた。丹羽住職は「何かあった時の避難所、サードプレイスとなることで、地域に恩返しをしたかった」という。これまでも寺フェス、寺カフェなどで広く檀信徒や地域住民に寺を開放してきたが、丹羽住職は「そういう時だけ『開かれたお寺』をアピールしても、こういう時に沈黙していては整合性がないと思いました」と語る。幸い、檀信徒から反対もなく、「それどころかパン屋さんが焼き立てのパンを差し入れてくれたり、美容師さんが消毒液を提供してくれたりと、皆さんが助けてくれて感動しています」。

 ちなみに一乗寺の3代前の住職は曹洞宗管長を務めた故・丹羽廉芳禅師。「廉芳禅師も70年前、このお寺に学童疎開の子どもたちを受け入れたんです。その志を継ぎたかったというのもあります」と、丹羽住職は微笑む。

2020/3/12 緊急寄稿 コロナ「歴史的緊急事態」を受けて 富田富士也氏(教育・心理カウンセラー)

 
 恐怖や不安に襲われる悩みは固有なものです。他人や過去と比べたりするものではなく常に「今、ここ」でじたばたしたくなるのが「未曽有の苦しみ」です。

 新型コロナウイルスの感染状況について安倍首相は9日の国会で「歴史的緊急事態」と耳慣れない言葉を答弁されました。それこそ11日には満9年になる東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の日々が、常磐沿線に住み続けている私にはよみがえってきます。また戦中・戦後を生きぬいてきた高齢者には75年前の10日が東京大空襲であったことを改めて想起されることでしょう。

 そして「歴史的緊急事態」から逃れる手立ても、特権も専門的知識も持たない庶民の私たちはどのようにその渦中を生きのびてきたのでしょうか。自分たちの「生命の安全」も頭に入れて負託したはずの国や政府から「不要不急」「濃厚接触」の自粛生活を「要請」されても事態が鎮まなければいつまでも「あなた任せ」にしているわけにもいきません。国や政府や専門家の人たちも本をただせば私たち庶民と同じ“業”に揺れる一人の人間だったのです。

 凡夫の私たちが万策尽きた時に避け難い「未曽有の苦しみ」といかに向きあえばいいのか。良寛さんの“極意”の一言が浮かんできます。

 「災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。是はこれ災難をのがるる妙法にて候。」

 なるほど。心に覚悟ができそうです。ところが襲ってくる「未曽有の苦しみ」にまたじたばたしてうつ的にもなるのです。ただこの苦悩を深めると人とのつながりを感じとれない寂しさ、孤独感にあたったりするのです。つまり「人は一人では生きていない」という感覚をわずかでも取り戻すことが「歴史的緊急事態」を機縁にしてじたばたする心を鎮める“妙法”と受けとめたいのです。互いにじたばたする関係を通して人は人とつながり「今、ここ」に思いやる心を育てていくのです。「陽性」「陰性」と人の存在まで分けたとき、それは自ら排除の心を生み出し、あらゆる縁者とのつながりを見失っていくことになるのではないでしょうか。

 「家族も参加をやめたら、と言うので次のワークショップは見合わせます」。こんな受講者からの連絡もあったので面接も延期することにしました。“家族の歴史的緊急事態”にある母親に電話をしました。母親が驚嘆します。

 「夫も私も子どもも外出自由です。家族間の濃厚接触も本からないので気にしていませんでした。私たち家族は互いに気になる関係になっていなかったのですね。子どもの不登校にじたばたしている私でよかったのですね」

 「未曽有の苦しみ」を「時節」と受けとめて、じたばたする胸の内を対話で鎮めている母親です。

2020/3/5 新型コロナ 高野山 異例の宗会延期

 
  新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。安倍首相が3月2日から公立学校の一斉休校を要請したこともあり、教団行事の中止や延期が広がった。高野山真言宗は異例の春季宗会延期を発表した。(3月3日現在)

【高野山真言宗】
 高野山真言宗は2月28日、2日の耆宿会と3~7日の春季宗会の延期を決定。3・4月中の行事や会議、巡回布教などはほぼ延期・中止にした。4月3日の得度式は執行。同24~26日の東京別院結縁灌頂は中止。5月3~5日の高野山結縁灌頂は3月中に判断する。

※紙面では各宗派の対応を掲載(続きは紙面をご覧ください)。

2020/3/5 緊急寄稿 新型コロナウィルス肺炎への対処法 とげぬき地蔵尊高岩寺 来馬明規氏(住職・医師)


 新型コロナウイルス肺炎が猛威を振るっている。本稿では手短に「周知されていないが重要」と考える二点についてお伝えしたい。

喫煙者が肺炎の犠牲に
 喫煙者は様々な感染症の弱者であり「タバコ大国」の中国でも大勢の喫煙者が今回の肺炎流行で犠牲になっている。 喫煙者はインフルエンザ、ノロウイルス、MARSなどに2〜6倍ほど罹りやすく、重症化しやすいことがよく知られているが、新型コロナウイルス肺炎も同様である。

 中国の最新の大規模成績によれば、喫煙者は健常者に比べ重症化率・致死率が3倍超である(2月28日付NEJM誌)。習慣的な喫煙は気管支・肺に持続的な炎症を起こし、これにウイルスによる炎症が重なって容赦なく肺を破壊する。アイコス等の新型タバコはそれ自体が致死的な肺炎を起こすことが知られているが、紙巻タバコと同様に無数の有害物質が含まれていることになんら変わりはなく、肺炎重症化の対策にはならない。

 喫煙者は狭い喫煙所で不特定多数と濃厚に接触しながら、せっかく付けたマスクを外し、汚い手でタバコを吸うため、喫煙行為による感染機会の増加も懸念される。

 このようななか、筆者はあらためて、喫煙する読者に即時卒煙をお勧めする。肺炎の重症化リスクは直ちに改善しないかもしれないが、「吸うのをやめたのでマスクを外さない」だけでも有意義だろう。

 このような喫煙者の被害は額面通りに報道されないが、タバコ産業の広告塔になっている我が国のメディアには事実上の報道統制が敷かれているといってよいだろう。

手肌を保湿して手洗い
 感染予防対策はインフルエンザと同じである。こまめに手を洗い、手の全ての表面をこすり洗って清潔を保ち、汚い手で眼・鼻・口を触らないことである。しかし、頻回の手洗いで皮膚が荒れると感染のリスクは逆に高まってしまう。

 手を荒らさないコツは「キレイに洗った直後の濡れたままの手」に少量の清潔なワセリンを擦り込みながら乾かすことである。手が乾いてから塗っても効果はない。また、読者には意外であろうが、安価なワセリン以外のあらゆる保湿剤、クリームには皮脂を破壊する界面活性剤が含まれており、推奨されない(これも商業メディアでは強調されない)。

手洗いは仏法!
 道元禅師は『正法眼蔵』「洗浄」で手洗いの意義を「仏国土を清浄にし、仏国を荘厳に飾るため」と強調する。手洗いで身心を清潔に保つことは、「自利利他」「自他不二」の実践となることが、このご時勢に、筆者には改めて感じ取れる。

 肉眼では見えないウイルスが我々を翻弄し、アジアの人々が「疫病の初発地出身」という理由で差別されていると聞く。人智を超えた疫病と対峙し、あらためて現代仏教のありようが問われているように思われる。

 仏法、さとり、ご縁に功徳。見えないものを扱う仏教の力が、医科学とは違った切り口から、見えない相手を克服する一助になることを願っている。

2020/3/5 宗会シーズン 本願寺派 宗会を一日で閉会 / 浄土宗 議案は上程、一般質問は見送り

 
議場に入る全員にマスクの着用が求められた宗会 浄土真宗本願寺派の第315回定期宗会(浅野弘毅議長)が2月27日、京都市下京区の宗務所で開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、来年度予算案の提出を見送り、宗会を同日に閉会した。19年度で終了する予定だったあそかビハーラ病院(京都府城陽市)への助成を23年度まで延長することなど2議案を可決した。定期宗会が1日で終わるのは139年間の宗会史上、解散を除き初めて。(続きは紙面をご覧ください)



執務方針を述べる川中総長 浄土宗の第123次定期宗議会(村上眞孝議長)が2日、京都市東山区の宗務庁で始まった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、会期を3日間に短縮することを決めた。20年度予算案のほか、宗務行政機構改革に伴う各種委員会の統廃合に関する議案など全55議案を提出。一般質問の実施は見送られた。

 宗務庁の入り口で検温を行い、体温が37・5度以上ある場合に入構を禁じた。この日は、70人の議員や職員ら全員に発熱は認められなかった。手指の消毒を徹底した上で、議場ではマスクの着用が求められた。自前の手袋をはめた議員もいた。

 伊藤唯眞浄土門主は、法然上人が浄土宗を開いた当時も疫病が流行していたが、そのみ教えが人々の希望となっていたに違いないと述べた上で、「いつでも人々が希望に向かって生きられるよう光を絶やしてはいけない。それは全門葉の使命だ」と呼び掛けた。

 村上議長は感染拡大を防止するため、一般質問を取り止めて会期を短縮したと説明し、質問に立つ予定だった9人の議員に謝意を述べた。短縮の期間については、「臨時予算が組める3カ月以内に、流行が収まっているとは限らない。事態悪化の可能性も考慮し、宗務庁の運営がストップしないようにと決断した」と話した。(続きは紙面をご覧ください)

※紙面では、曹洞宗、智山派、妙心寺派、天台宗の宗会記事も掲載しています。

2020/3/5 幻の朝霞大仏物語 戦争で鋳造中止 梵鐘は供出 東武鉄道創業者 根津嘉一郎が計画 

朝霞大仏パネルと郷土史家の有永克司氏 東武鉄道で東京まで直通する埼玉県朝霞市。陸上自衛隊駐屯地がある街として知られるが、ここに大仏を建立する計画があった。昭和8年(1933)、東武鉄道創業者の根津嘉一郎(1860~1940)が計画し、鋳造寸前まで進んだのである。しかし、太平洋戦争により、大仏が日の目を見ることはなかった。まさに幻の大仏が朝霞大仏だった。その歴史を追う。

 朝霞市の郷土史家である有永克司氏は朝霞大仏研究の第一人者だ。有永氏が代表を務める「基地跡地の歴史研究会」は毎年、研究パネル展を開催しており、今年は2月15・16の両日に朝霞市立図書館で開いた。戦後、米軍が駐留したキャンプ・ドレイク基地の歴史が中心だったが、朝霞大仏についてのパネルもあり、膨大な資料も閲覧できるようにした。

 根津嘉一郎といえばそのコレクションが根津美術館になっているほど仏教美術に造詣があり、高野山に鉄道を通したこともある。そんな根津が大仏建立を発願したのは不思議ではない。有永氏は「根津さんは仏教による人格の陶冶を目指していたようです」と語る。根津は大仏建立に先立ち、現在の武蔵大学グラウンド(朝霞市幸町)の辺りに5万坪の土地を取得し「根津公園」とする。昭和10年(1935)には約4㍍の巨大な梵鐘が鋳造された。

 もちろん、根津にとっては個人的な仏心だけでなく、経営的な戦略もあったはずだ。朝霞市の真言宗智山派東円寺、新座市の臨済宗妙心寺派平林寺といった名刹と、朝霞大仏を結ぶ環状線も構想されていたようだ。根津は『婦女界』昭和10年9月号の随筆で「むづかしい法話や、厳格な修行などで、佛教の深奥に達するのも結構だが、佛様を拝みながら遊び、遊びながら信仰心を養ふといふ方法も、一般の人にとつては必要だらう」と書いている。今風に表現すれば仏教テーマパークを作ろうとしたのだろう。(続きは紙面をご覧ください)

2月

2020/2/27 新型コロナウイルス 教団行事直撃 中止や縮小が相次ぐ 


 新型コロナウイルスの感染拡大が教団行事を直撃している。曹洞宗は5月に札幌市で予定していた梅花流全国奉詠大会の中止を明らかした。立正佼成会は重要行事の一つである3月5日の創立82周年式典を中止。教団や団体では研修会や講演会なども軒並み中止や延期、縮小となっている。収束が見通せないため行事の見直しはさらに進みそうだ。各教団や寺院ではマスク着用や消毒液の使用など防衛策を講じている。

 各教団の対応
【天台宗】
 滋賀県大津市の天台宗総本山比叡山延暦寺では職員のマスク着用を推奨し、事務所や会館、諸堂などに消毒用アルコールを配布し設置。現在、中止にした行事などはないが、今後も状況を注視して対応していく。

【高野山真言宗】
 和歌山県内で感染者が複数確認されたのを受け、高野山真言宗総本山金剛峯寺がある高野町では、感染予防策として宿坊などの旅館業をはじめ土産物店などの販売業、飲食業などの接客を伴う事業所にアルコール消毒剤を4カ所で配付。金剛峯寺から管轄各施設、宿坊協会から各宿坊寺院に配られた。
 宗務所では手洗い・うがいとマスク着用、こまめに消毒することを職員に通達し、感染防止を徹底。参拝者向けに高野町観光協会からの注意喚起ポスターとチラシを、山内各所に掲示した。チラシは日本語・中国語・英語で作成。現時点で金剛峯寺主催の法会や行事の中止・延期予定はないが、「状況を見て判断していくことになる」(広報)。

【真言宗智山派】
 総本山智積院では参拝者らとの接触の多い総合受付と拝観受付でマスク着用と手洗い、消毒を徹底。智山専修学院生や役職員も手洗いなどの防止策を徹底している。来山者用の消毒液も境内各施設入口に設置している。

【真言宗豊山派】
 今後予定の各種委員会・講習会を縮小する方向で検討中。大本山護国寺(東京都文京区)は4月5日の花まつりの稚児行列を中止。僧侶による灌仏会法要は執り行う。

【浄土宗】
 宗務庁に消毒液を配置。職員に対し、通勤時や来客、受付業務の際にマスク着用を励行。感染が分かった場合は出勤停止。全国教務所や総大本山、宗議会議員に行事開催時のマスク着用や行政のガイドラインに従うなど注意喚起する文書を送付。
 保育協会・社会福祉協会の職員向け帰敬式(2月)、東京教区吉水講の詠唱奉納大会(増上寺、3月6日)等を中止した。

【浄土真宗本願寺派】
 2月19日付でホームページに「感染症対策について」を掲載。消毒液を配置していることや受付で職員がマスクを着用していることを告知。現在のところ建物閉鎖や法要・行事の中止予定はないことも知らせている。

【真宗大谷派】
 本山東本願寺の参拝接待所や大谷祖廟等では職員もマスクを着用して対応。各窓口・カウンターには消毒液を配置。4月20~22日に東本願寺で開催予定の第13回世界同朋大会の中止を決定した。

【臨済宗妙心寺派】
 宗務本所に消毒液を配置。花園会館職員はマスクを着用。無相教会称号取得者講習会中止(2月25・26日、3月7・8日)。

【曹洞宗】
 5月27・28日に札幌市で開催予定の梅花流全国奉詠大会を中止。宗議会初日に鬼生田俊英宗務総長が発表した。3月7日の自死者供養の会「祈りの集い」、3月6日の全国曹洞宗青年会主催の精進料理教室を中止。
 大本山總持寺も3月8日に予定されていた東日本大震災追悼行事「祈りの夕べ」を中止した(3月11日の震災発生時刻の追悼法要は行う)。

【日蓮宗】
 宗務院伝道部国際課では今月13日から18日までミャンマーで予定していたスタディーツアーを中止した。
 宗務院は20日、全国74管区の宗務所にFAXで「管内にて多くの方々が集まるイベントや行事等の参加や開催を企画・予定されている場合には、最新情報にご留意の上、対応するよう宜しくお願い申し上げます」と注意喚起を行っている。

【立正佼成会】
 2月22日から3月末まで教団内の大規模な集会(式典や集合教育等)の中止を決定。3月5日の創立82周年式典も。

【真如苑】
 国内本部支部での法要、集会など、すべての行事を2月21日から3月5日まで原則中止または延期することを決定。

2020/2/27 東大仏青100周年講演・対談 「もんじゅ」命名にOB関与 縁起の自覚深め「共成」提言


木村氏㊧、蓑輪氏が100年歴史を振り返り対談 東京大学仏教青年会(蓑輪顕量理事長・東京大学教授)は15日、東京都文京区の同会会館ホールで創立百周年記念講演・対談を開催した。1919年に創立し、昨年100周年を迎えた同会の歴史、会を支えた先人、社会的な意義などを東大名誉教授の木村清孝氏と蓑輪理事長が語り合った。

 対談は「東大仏青の百年」と題して。木村氏は発足時の功労者として法学部教授で熱心な仏教徒であった小野清一郎氏(1891~1986)の尽力をあげ、東大仏青が「一大乗の仏教精神による仏教運動であった。当時、いわゆる大正デモクラシーの時代にあって、真実の日本文化を再建するという大きな目標があった」と指摘。学生寮の設立、関東大震災の救援活動、無料法律相談などの活動を紹介した。

 様々な東大仏青のOBの名前があがるなか蓑輪氏は印象に残っている人物として動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の職員で浄土真宗寺院出身の関根瑛應氏に言及。福井県敦賀市の原子炉「もんじゅ」「ふげん」の命名について、関根氏が当時の東大印度哲学研究室の宮本正尊氏に相談し、「もんじゅ・ふげんという名をお出しになったと、直に聞いた覚えがある」と回想した。親交のあった木村氏は「ずっと原子力関係の仕事をなさっていて、人類のために良いエネルギー源だと信じていた。数年前に亡くなったが、その前に『自分は間違っていたのか』という悔いを持たれたように思う」と晩年のエピソードを紹介した。

 最後に蓑輪氏が今後の仏青活動の目標について質問。木村氏は「地元において地道な意味のある活動」としたうえで、台湾などにみられる「現実の社会を良くしていく」活動も要望。「世界的にSDGs、持続的な経済発展を柱としたゴールが目標になっている。しかし、ハピネスという心の問題を柱に考えないといけない」とし、縁起の自覚を深め、真なるものを求めて共に行動していく「共成」を提言した。

2020/2/27 宗会シーズン 天台宗・曹洞宗・妙心寺派・智山派


【真言宗智山派】  
 真言宗智山派の第130次定期教区代表会(池田英乘議長)が18~20日、京都市東山区の総本山智積院内宗務庁に招集された。芙蓉良英宗務総長は施政方針演説で、令和2年度に第10回総合調査を行うと発表。人口減少社会・過疎対策の一環として教師の実数調査を4月から実施し、過疎・荒廃寺院の運営管理に関する相談体制も拡充すると表明した(続きは紙面をご覧ください)

【曹洞宗】 
 第134回曹洞宗通常宗議会(須田孝英議長)が24日、東京都港区芝の宗務庁に招集された。昨年12月に公示された新級階を受けての級階賦課金は1点あたり148円で、2007年以来161円だったが13年ぶりに変更となっている。総点数は2205万点と前年より約230万点増えており、前年度予算比で9100万円増の32億6千万円となっている(続きは紙面をご覧ください)

【天台宗】
 天台宗の第146回通常宗議会(中村彰恵議長)が18日から20日まで、滋賀県大津市の宗務庁に招集された。不慮の災害により主要建物に被害があった場合に復興支援金を支給する「天台宗被災寺院教会建物復興支援規程」ならびにその支援費を全寺院から収納する規程など、全議案を原案通り可決、承認した(続きは紙面をご覧ください)

【臨済宗妙心寺派】
 臨済宗妙心寺派の第138次定期宗議会(真常紹天議長)が18~20日、京都市右京区の宗務本所で開かれ、約9億6千万円とした2020年度通常会計予算案など全11議案が可決された。栗原正雄宗務総長は施政方針演説で、「財政がいよいよ逼迫してきた」と述べ、内局の特別職手当を減らすなどして歳出削減を実施。20年度通常会計予算は歳入歳出ともに前年度比約2・2%減の緊縮予算とした(続きは紙面をご覧ください)

2020/2/20 日蓮宗大本山誕生寺 初のお題目サミット開く 降誕800年を翌年に控え広宣流布を共に誓願


法華経、お題目の実践を誓い日蓮聖人に報恩の誠を捧げたお題目サミット 日蓮聖人が生まれた千葉県鴨川市小湊でお題目を奉ずる出家・在家の教団が一堂に会して「第1回お題目サミット~ともにお題目を唱えよう」が16日、日蓮宗大本山誕生寺(石川日命貫首)で開催された。来年の降誕800年を前に日蓮聖人の誕生を祝し、賛同する12教団・寺院の代表者とともに約1300人が「南無妙法蓮華経」とお題目を唱え、広宣流布と世界平和仏国土顕現に向けて精進することを誓った。

 小雨が降る中、各教団の代表者によるお練り行列が総門から始まり、仁王門で各代表者を出迎えた石川貫首が列の最後尾に合流。境内では、万灯供養や纏(まとい)のほか、雨に負けまいと団扇太鼓に合わせた唱題が行われ、代表者らを迎えた。

 祖師堂では、各代表者が一人ずつ焼香。続いて満堂の参加者とともに「御降誕800年という尊い仏縁を得てお互いが仏使としての自覚を深め共に助け合い、今後も南無妙法蓮華経の広宣流布と世界平和仏国土建設にむけて精進していくことをお誓い申し上げます」と誓願文を読み上げた。

 石川貫首は挨拶で参加した各団体に御礼を述べ、「お題目をお唱えするすべての教団は、本仏釈尊から特命を受けた地涌の菩薩に他なりません。今こそお互いが手をとりあって、法華経、お題目、南無妙法蓮華経の実践をもって報恩の誠を捧げたい」と話した。

小雨の中、山門前の石段を昇る参加団体の代表 場所を近くのホテルに移して開かれた会議の部では、サミットの提言として同寺の角濵監鏡執事長が登壇し、お題目を奉ずる教団が社会問題に関心を持ち、各教団で問題に取り組んでいることに感謝。「子どもの貧困問題、家庭問題、地球問題、今も疫病の問題が起こっている」と指摘し、そうした社会課題について意見を交わすためにも今後もサミット継続を提言した。

 「お題目サミット」は日蓮聖人降誕800年を来年に控え、誕生寺の石川貫首が発案。「お題目をお唱えするすべての教団が教義・主義の垣根を超えて純粋な気持ちで日蓮聖人が弘めたお題目をもって、誕生の地である小湊に集い、100年に一度という千歳一遇の時を得た人々でお題目を捧げ日蓮聖人の御降誕をお祝いする」との趣旨の下、お題目を奉ずる教団に呼びかけられた。

 一昨年ほど前から各教団への趣旨説明など準備を始め、呼びかけた約40団体の内、15団体から賛同を得た。

 当日は各団体内の行事と予定を調整できた12団体・寺院(国柱会・思親会・真生会・大慧會教団・日本山妙法寺大僧伽・日蓮宗大本山池上本門寺・佛所護念会教団・福聚の会・妙智會教団・立正佼成会・日蓮宗総本山身延山久遠寺・日蓮宗大本山誕生寺)の代表者がお題目の聖地・小湊誕生寺に集った。

2020/2/20 核燃料サイクル差し止めへ 来月9日 宗教者200人が東京地裁に提訴 

 核燃料サイクル事業(青森県六ヶ所村)の運転差し止め求めて超宗派の宗教者が3月9日、東京地方裁判所に提訴する。第一次原告は今月15日で締め切られ、約200人が登録した。原告団は、核といのちは共存できないという立場から憲法判断を求める。原発は倫理に反し、次世代にツケを残してはならないという思いも共有されている。

 原告団は「原子力行政を問い直す宗教者の会」(宗教者の会)のメンバーら。仏教89人、キリスト教101人、その他が約10人の構成だが、さらに原告を募っていく方針。略称は宗教者核燃裁判。原告団の共同代表は、中嶌哲演氏(福井県、真言宗御室派明通寺住職)と岩田雅一氏(青森県、日本キリスト教団牧師)。

 被告は、核燃料サイクル事業の主体である日本原燃株式会社(本社・青森県六ヶ所村)。原発で発生した使用済燃料からウランとプルトニウムを取り出して再利用する事業を行っているが、危険性が極めて高い。政策が変われば軍事転用される恐れもある。

 原告団は、原発や原子力法制は主権者の権利を保障する日本国憲法に違反していることや、使用済み燃料・放射性廃棄物を後世に残すことは、宗教者、信仰者としての倫理性に反すると主張している。

 宗教者の会は2年前の松山全国集会で司法への働きかけが必要ではないかとの意見が提起され、昨年1年をかけて会合を重ね、他の団体とも意見交換しながら準備してきた。そして原告団の募集を行い、来月9日の提訴日が決まった。午後1時30分に東京地裁前に集合。提訴書類の提出後、弁護団が記者会見を行い、引き続き会場を移して決起集会を行う予定。

 環境と未来を破壊
 宗教者核燃裁判原告団共同代表の一人である中嶌哲演氏(真言宗御室派僧侶)の話
 いわゆる「国策民営」の原発推進でありながら、大都市圏の繁栄のために過疎・辺境の地にいずれの原発群を押しつけたり、多くの被ばく労働者を生み出してきました。その核燃サイクルの最終的なツケが本州最北の青森県に回されていることに、私たちは心痛と倫理的な責任を感じざるを得ません。

 かつて「国策」として進められた植民地支配や侵略戦争に対して、仏教者や各教団がどのように関わったのかという反省も、私たちは踏まえています。

 「フクシマ」が実証しているように、人間の一切合財を奪うだけでありません。生きとし生けるものや全環境とその未来を破壊するのです。原発と核燃サイクルの廃止を、倫理的・仏教的に問い直し、訴えて参りたい。

2020/2/20 第37回庭野平和賞 韓国の法輪師に贈呈 南北対話や難民支援活動 

 
第37回庭野平和賞を受賞した法輪師 宗教協力を通じて世界平和に貢献した個人や団体に贈られる庭野平和賞(公益財団法人庭野平和財団=庭野日鑛名誉会長〈立正佼成会会長〉・庭野浩士理事長=主宰)の第37回の受賞者に、韓国の在家仏教教団浄土会の創立者で禅師の法輪(ポンニュン)師(66)が選ばれた。「地球上に浄土を実現させる」ために、様々な団体を立ち上げて朝鮮半島の平和構築や難民支援、環境保全などに取り組んできた功績が評価された。

 法輪師は1953年4月11日、韓国蔚山(ウルサン)広域市蔚州(ウルチェ)郡生まれ。16歳の時に曹渓宗で出家し、35歳で浄土会(ソウル市)を創立。韓国を中心に信者約8千人が利他行の実践による仏道修行を行い、法輪師と共に戦争や紛争、自然災害や環境破壊に端を発した苦難の中にある人々の救済に取り組んでいる。日本国内にも4カ所の活動拠点がある。

 浄土会内に設立した各団体で社会貢献。2004年設立の「平和財団」では米朝対話や南北対話を推進し、1999年設立の「グッドフレンズ」では北朝鮮難民や中国への脱北者らを支援、1993年設立の「JTS」では北朝鮮・インド・フィリピン・インドネシアなどの貧困者支援を展開している。特に北朝鮮への1万トンのトウモロコシの支援や、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプへの10万台のコンロの提供など、非政府組織の特性を活かした活動を続けている。

 法輪師は受諾メッセージを寄せ、「飢えや無教育、過酷な貧困の背景に戦争や紛争が横たわっている」と指摘。「私たちが相互理解や他の人との違いを理解した上で、世界の諸宗教が共に平和のために協働すれば、今日世界中で起きている紛争や戦争を大幅に削減することができる」と述べ、今回の受賞を「平和への取り組みに向けた宗教指導者の皆様方との結束を高める」ものとした。

 庭野理事長は京都市内で17日に開かれた記者発表会で、テレビやYouTubeなどで分かりやすく仏教の教えを発信している法輪師の一面を紹介。一般市民向けの講演をして様々な質問に平易に答えるなど、韓国内では最も著名な僧侶の一人であると話した。

 同賞贈呈式は6月3日午前10時半から、東京都港区の国際文化会館で挙行され、賞状と顕彰メダル、賞金2千万円が贈呈される。同4日には京都市内で記者懇談会を予定。受賞者は125カ国・約600人の識者に推薦を依頼し、宗教者8人の国際委員から成る選考委員会で決定される。

2020/2/20 大谷大 茶葉使ったビール開発 フィールド先の魅力を商品化 

   
醸造所運営の卒業生が完成させたビール フィールドワークに通う京都市北区の山間部・中川地区の茶葉を使って、大谷大(同区)の学生らがビールを開発した。人口減や過疎化が進む同地区の活性化につながればと期待を込める。14日に発売した。

 北山杉の産地として知られるが、同地区の人口は現在300人を切り、高齢化率は約60%と高い。社会学部・志藤修史教授のゼミでは、答えの出ない過疎化の課題を探ろうと、2015年から同地区に通い始めた。掃除を手伝ったり、行事に参加したりするなど交流を続けている。

 そんな中、かつて山仕事の最中に飲まれたお茶を復活させる取り組みに協力。自家用に栽培されてきたため、品種改良されていない古来のままの品種に近いという。「まんま茶」と名付けられたこのお茶を通して同地区を広く知ってもらおうと、ビールの商品化を企画した。

 開発は、同大卒業生で障がい者の就労支援を行うクラフトビール醸造所を運営するNPO法人「HEROES」(上京区)の松尾浩久理事長に依頼。独特の風味があるまんま茶をさわやかな飲み口に仕上げた「京都・中川まんまビーア!」が完成した。学生が摘んだ茶葉約5キロを使って約320リットルが造られた。

 同地区の社会福祉協議会の水田隆一会長は、「お茶がビールになるとは想像もしなかった。嬉しい」と喜んだ。売り上げの一部はゼミの活動費として、中川地区の魅力発信などに使う。

 330ミリリットル瓶が660円。500本限定で、HEROESが手掛ける「西陣麦酒」のオンラインストアで買える。醸造所併設のバーのほか市内の2店舗で生ビールも飲める。今年の茶葉でも醸造する予定だ。

2020/2/13 日中禅文化交流協会 中国にマスクを緊急発送 

 
 国際(日中)禅文化交流協会(大谷哲夫会長)はコロナウイルスが猛威を振るう中国を気遣い、1月28日にマスク500枚を湖北省仏教協会に寄付。続けて薬品等も発送した。

 同会は湖北省仏教協会と親密な関係で、これまで武漢市で禅林墨跡・仏画展などを共催してきた。武漢大学で講演した経験もある大谷会長は「老朋友の危機に黙ってはおれません」とマスクを集めて緊急に発送。中国で今、一番求められているのはマスクで、生産が追い付かず価格は高騰している。1月下旬は日本でもマスクがほとんど品切れ状態で集めるのは難しく、「もっと多く送りたかったのですが」と鈴木潔州幹事長は語る。

 同会では今春、中国僧侶の来日に合わせた交流が多数予定されていたが現時点ではすべて中止。5月には山東省への訪中も予定されているが、様子を見るという。

 6日に緊急役員会が開催され、一日も早い復旧の祈念と、病死者の追悼のための「コロナウイルス終息祈願法要」が25日午後4時から大谷会長の自坊・長泰寺(東京都新宿区市谷佐内町11)で営まれることが決定。日中友好を願うなら僧侶・一般問わず参加は自由となっている。

 中国在住の同会会員によると「お寺さんはどこも山門を閉ざして参詣者の立ち入りが禁じられていますし、もちろん法要などもできません。政府は人が集まることに神経を尖らせている」といい、寂しい状況になっている模様。例年、中国の寺院は旧正月(春節)で境内に人が押し寄せるが、省政府は感染拡大を恐れ閉門勧告を出し、中国仏教協会も全土の寺院に通達を出した。

2020/2/13 相次ぐ災害 支援体験を共有 有効性増す各方面との連携 SVA・曹洞宗・全曹青・婦人会共催シンポ

  
連帯と情報共有の重要性が確認されたシンポ (公社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)、曹洞宗宗務庁、全国曹洞宗青年会、曹洞宗婦人会の4者共催によるシンポ「災害支援のこれから―共に学び、新しい未来をつくる」が4日、港区の東京グランドホテルで開催された。曹洞宗宗務庁が昨年これらの関係団体と災害協定を結んだことを受けてのもの。寺院が宗門・関連団体・一般団体と連携を図ることが地域の物心両面の復興に大いに益することが論じられた。約200人が参加した。

 大阪大学教授の稲場圭信氏が「災害時における寺院の役割」について基調講演。東日本大震災、熊本地震から一昨年の西日本豪雨、昨年の台風19号に至るまで、避難所として人々を助けてきた寺院の「ソーシャルキャピタル」(社会・地域における人々の信頼関係や結びつきは資源であるとする考え方)を強調。

 「宗教者が平常時から自治体や自治会、社会福祉協議会、NPO、ボーイスカウトなどの地域社会と連携しているところは災害時に力を発揮する」と述べ、防災の取り組みが日常の縁作りにもつながると提言し、協力を推進。東日本大震災の時に、避難所指定されていないなどの事情のため門を閉ざし被災者支援ができなかった寺が地域住民から強い反感を買った事例もあったと述べた。(続きは紙面でご覧下さい)

2020/2/13 節分会スケッチ 京都・聖護院門跡 山伏の法力で鬼を調伏


山伏と鬼の迫力ある対決 京都市左京区の本山修験宗総本山聖護院門跡では、3日午後1時から山伏追儺式が営まれた。宮城泰岳執事長が大勢の参拝者に、「生かされていることに感謝しながら、“自分さえ良ければ”という心の中の鬼を少しでも追い出していただきたい」と挨拶。勇壮なほら貝の音と共に山伏と福男・福女ら約30人が宸殿に入堂し、宮城泰年門主を導師に除災招福を祈願する節分会法要を営んだ。

 宮城門主の掛け声に続いて、山伏と福男・福女らが「福は内!」「鬼は外!」と唱和。怒声を発しながら勢いよく乱入してきた赤鬼・青鬼・黄鬼に豆をぶつけた山伏が錫杖を振り始めると、金棒を振り回して狼藉三昧だった鬼たちも衰弱。法力で調伏されて改心すると、参拝者からの「鬼さ~ん、お願いしまーす!」という声援を浴びながら福男・福女と一緒に福豆をまいた。

 豆まき終了後も、鬼たちは大人気。集まってきた参拝者の頭に金棒を当て、身体健全などの加持をしていた。

 豆まき式を終えた宮城門主は、「世界の人たちが穏やかに暮らせるようになるには、一人ひとりが心の中の鬼を追い出し、社会を浄化するような暮らしをしていくことが大切だ」と話した。境内では山伏が厄除開運の陀羅尼豆を授与。午後3時から採燈大護摩供が厳修された。(この他の寺院・教団の節分行事の模様は紙面でご覧下さい)

2020/2/6 全日仏 死刑廃止諮問「教義と相いれない」と答申 理事会〝廃止表明ではない〟

 
 (公財)全日本仏教会(釜田隆文理事長)は1月30日、東京・芝公園の明照会館で4月から始まる新年度の事業計画や予算などを主議案とする第27回理事会を開き、原案通り承認した。釜田理事長が3つの審議会に諮問した事項の答申が報告された。その一つ、死刑廃止について事前にマスコミで「仏教会、死刑反対表明へ」と報じられたため、理事から答申内容を確認する場面もあった。理事でもある戸松義晴事務総長は「これは死刑廃止の表明ではない」と釈明した。1千字弱からなる答申では「仏教の教義と死刑が相いれないことは明白」とし、いのちの問題として一層議論が深まることを期待している。 

 釜田理事長は2年前の就任後、第33期社会・人権審議会(佐々木基文委員長・高野山真言宗)に「死刑廃止について宗教者はいのちの尊厳と人権的見地からどのように捉えるか」を諮問した。昨年12月2日に答申書が理事長に提出された。

 答申書では「教義と死刑が相いれないことは明白」と明記。死刑をめぐる日本の現状や教誨師、更生保護、被害者遺族、加害者親族などに触れ、問題意識を共有した上で、死刑についての議論の深化を期待する内容となっている。ただし、冤罪(誤判)の観点からの言及はない。

 質疑では、岡野正純理事(孝道教団)が、「答申報告ということであって、今後の進め方について改めて事務総局で明らかにしていただきたい」と要請。戸松事務総長は「皆さまからいろいろご意見をうかがい、また事務局で検討して次回理事会に向けて具体的な対応を考えていきたい」と前向きに応えた。 
 
 松原功人理事(本願寺派)は、同日のマスコミ報道と答申を付き合わせ、「どうみても死刑制度に関して各宗派が問題を共有して議論を深めていこうという答申だと思う。それが『死刑反対表明へ』という見出しとなっている。新聞に『理事会で了承される見通し』とあるが」と質した。

 戸松事務総長は「死刑廃止の表明ではない。理事会で決議して、全日仏として仏教会全体で死刑廃止でいくんだということでもない」と述べ、答申にあるようにあくまでも宗教者や加盟教団が議論を深めるものだと位置づけた。

 理事長経験のある齋藤明聖理事(大谷派)は死刑反対表明記事がネットでも溢れていたことを報告し、「(答申後)直ちに声明を出すことはあり得ないのではないか」と意見。議論を深める一方策として、「例えばセミナー(一昨年12月の「死刑廃止を考える」)を冊子にしてお配りをするなど様々な手だてを尽くしながら、各宗派にも社会にも問題提起していくことに努めていただきたい」と要望した。

「殺」して死なせる「殺人刑」
 「福岡事件」で無実を叫びながら刑死した死刑囚の再審や死刑反対を訴えている生命山シュバイツァー寺(熊本県玉名市)の古川龍樹代表の話

 「釈尊よ、私の無実を聞いてほしい」。こう日記に綴っていた「福岡事件」の西武雄死刑囚は、28年間の冤罪の訴えも空しく処刑されました。裁判も死刑も人間が行うことですので冤罪が生まれます。仏との出会いで魂は救われても、死刑で命は奪われたのです。
 
 元来「生」と「死」は天から賜ったもの。「殺」は「生」を人間の力で奪うこと。死刑は、頂いた「生」を「死」ぬことではなく「殺」して死なせるのですから「殺人刑」です。「不殺生」の立場を貫いた上で、冤罪も含めた様々な死刑の問題に取り組むことが、一刻も早く仏教者に求められるのではないでしょうか。

2020/2/6 日蓮宗勧学院研修会 降誕800年の意義を検討 三奇瑞と三大誓願に関係性

 
降誕の意義から法華信仰を検討した日蓮宗勧学院の研修会 日蓮聖人御降誕800年の意義を考える日蓮宗勧学院研修会が1月24日、東京都大田区の宗務院で開催された。学階を有する4人の研究者が「法華信仰の〝今〟を考える」をテーマに教義と信仰から降誕800年の意義を討議した。

 勧学院では、降誕800年の意義について研修会で討議しており、今年で3回目。誕生寺への団参が進む中、来年の宗祖降誕800年の正当に向けて、その意義を宗内外に広く宣揚できる教義からの意義づけが期待された。中川法政宗務総長も冒頭の挨拶で期待を述べ、研修会を聴講した。

 岡田真水講学(兵庫県立大学名誉教授)は、「現代社会における日蓮聖人誕生譚の意義」と題して発表し、宗祖の誕生譚に登場する清水が湧き出し産湯に使われた「誕生水」、時ならぬ時に浜辺に青蓮華が咲いた「蓮華淵」、海面に鯛の群れが集まった「妙の浦」の「三奇瑞」に着目した。

 岡田講学は、天から水や花が降り注ぐ釈尊の降誕と宗祖誕生譚の三奇瑞を対比。三奇瑞には共通して地面や海底が関係し「地から湧く」ことが暗に示されており、「いずれもが地面から生じた稀有な、素晴らしいものであり、地涌菩薩の出現を象徴している」と指摘した。

 さらに、日蓮が主著の一つ『開目抄』の中で「我日本の柱とならん、我日本の眼目とならん、我日本の大船とならん」と記した三大誓願と誕生譚の三奇瑞を考察。三奇瑞の「誕生水」は湧き水の水柱、「蓮華淵」の青蓮華は目の比喩であり、「妙の浦」の鯛を見るための船を思わせるものとして、「三奇瑞は柱・眼目・船の三大誓願を象徴するもの」だとした。

 安中尚史講学(立正大学教授)は「近代における日蓮聖人御降誕の意義」と題して、降誕700年前後の日蓮門下各派の動向について発表。北川前肇勧学職(東京立正短大学長)は「日蓮聖人の『師自覚』について」、望月海慧講学(身延山大学教授)は「他宗教との比較から見る日蓮聖人御降誕の意義」を講義した。

 会場も含む討議では、「三奇瑞と三大誓願が結びつくのは目から鱗だった」「一般に向けた分かりやすい意義で誕生寺参拝のきっかけにできないか」などの意見が寄せられた。

2020/2/6 第55回京仏壇・京仏具展 人気アニメと初コラボ 家庭に仏壇を置くきっかけに 


アニメキャラと伝統的な仏像に見入る若い来場者 第55回京仏壇・京仏具展(主催=京都府仏具協同組合・田中雅一理事長)が1・2両日、左京区の京都市勧業館「みやこめっせ」で開催された。若者向けの初の試みとして、人気ゲームアニメ「なむあみだ仏っ!―蓮台UTENA」とのコラボイベントを企画。美男子風にアニメ化された仏像と伝統的な仏像の両方に見入る若い女性客やカップルの姿が目立つなど、例年とは異なる賑わいを見せた。

 京仏壇・京仏具の伝統を受け継ぐ15店が出品し、絢爛たる京文化の心と技を披露。組合独自の厳しい認定基準を満たした「京仏ソムリエ」がプロデュースした新作仏壇コンテストも開かれた。

 仏像彫りや金箔押し、彫金など、一流職人による実演と体験コーナーも。京仏壇クイズラリーも行われ、子ども連れなど大勢で賑わった。僧侶による「仏事よろず相談」コーナーもあった。

 「(仏壇・仏具展に来るのは)初めて」と語るアニメファンの女性(30代・市内在住)は、伝統的な仏像を熱心に鑑賞。「(アニメとコラボなので)良い機会やし、行ってみようと思って来た。こういうイベントはありがたい」と話した。

 田中理事長(㈱田中伊雅社長)は、「アニメとのコラボ企画のために関東地方から来た方も少なからずおられた」と手応え。「多くの人が仏像をご覧になった後に伝統的な京仏壇や京仏具を見て、伝統工芸の体験もされた。今回のイベントが、家庭に仏壇を置いて手を合わせるきっかけになれば」と期待した。

2020/2/6 大本山護国寺 新貫首に小林氏


 真言宗豊山派大本山護国寺(東京都文京区)の第54世貫首に小林大康氏が就任した。1月24日に宗派から任命された。新執事には関本隆人氏、院代には岡本教雄氏が就いた。

 小林新貫首は昭和15年生まれ、79歳。自坊は茨城県かすみがうら市の南円寺。平成5年に護国寺執事長に就任。このほか、宗内では宗会議員(平成7~15年)、茨城県第二号宗務支所長(平成15~19年)等を歴任し、平成18年から菩提院結衆。

 昨年10月に前貫首の岡本永司貫首が遷化し、その後任となった小林新貫首は「岡本永司53世貫首の後を継ぎ、しっかりと護国寺を守っていきたい」と抱負を述べた。

1月

2020/1/30 AIロボットと仏教(宗教) 対立ではなく共存の道 「三性の理」で善転を 上出寛子・名古屋大学未来社会創造機構特任准教授

 
 人工知能の急速な発展は、技術の進歩としての「善」という意味を持つ一方で、人間の尊厳を奪いかねない「悪」というイメージを持たれることも多いようです。人工知能の正体が明確ではないために、脅威と感じることがあるのかもしれません。簡単な説明をしておきますと、人工知能とは、情報が不足している状態で、全体の整合性を保ちながら大量の情報を処理し、適切に処理する能力(知能)を実現するコンピュータ・プログラムのことです(『人工知能―その到達点と未来』中島秀之・丸山宏編著、小学館を参考)。

 定型的な作業が多い事務員や窓口係は人工知能に取って代わられやすく、創造性や柔軟性を要するアーティストや医師の役割を人工知能が担うのは難しい、といった話もあります。このような話を聞くと、つい、自分の職種を勘案して、自分は大丈夫だろうか、と不安を抱いてしまうのは仕方のないことかもしれません。

 人工知能が人間の尊厳や役割を奪う、という不安は根源的にどこから来ているのでしょうか。結論を先取りしてしまうと、暗黙のうちに設定されている私たちの問題の立て方、すなわち人工知能 対 人間、という対立構造が、そのような不安を誘導しているのだと思われます。私たちはすでに、多くの自動機械と共生しながら生きています。計算機は私たちよりも早く正確に計算を行い、ブルドーザーは私たちよりも多くの重い物を一気に運搬することができます。

 どのような技術が発展しようとも、機械にしか出来ないこと、人間にしか出来ないこと、機械にも人間にも出来ること・出来ないこと、といった領域は存続し、その境界が時代によって変化するに過ぎません。にもかかわらず、取り立てて人工知能だけを人間と対立させる必要はあるのでしょうか。

 私たちは日常的に、自分が無意識に設定している前提について、気がつかないうちにそれをまっとうなことだと考えています。しかしながら上記の通り、人工知能と人間とをわざわざ対立させる絶対的な必然性は特にないのです。もちろん、状況に応じて必要な場合には、そのような問いの立て方をすることもあるとは思います。しかしながら、必要に応じてわざと人工知能と人間を対立させているのか、または気がつかないうちにその前提を当然と思い込んでしまっているのかは、全く異なります。

 人工知能に対する脅威論の根本も、問題の立て方について反省をしないまま、対立構造を当然のこととみなしてしまうことで、偽物の問題をより深刻化させている結果のようにも思えます。重要な点は、人工知能や人間に出来ることを真摯に見通し、私たち人間の持っている潜在的な可能性を十全に発揮する実践を積むことだと思います。

 幸いなことに仏教には、価値の三性の理という教理があります。三性とは、善・悪・無記のことです。無記とは「記する、すなわち、○または×をつける、ということをしない」という意味で、善や悪よりも上位の次元に存在する、絶対的価値を廃した概念のことです。技術も人間も、他のあらゆる存在も、そもそもは無記なのです。

 それが、自分にとって都合の悪い状況になると無記が悪として出現し、都合の良い場合には善として立ち現れます。この状況では、人間は自分の都合に振り回されているだけで、人工知能も簡単に悪になってしまいます。先ほど「幸いなことに」と書いたのは、私たちは主体的に心を制御することによって、この悪を一旦、無記に立ち返らせて、いくらでも善へ転じることができるからです。これは三性の理が私たちに気がつかせてくれる、大きな功徳だと思います。この技術を善転させる作法こそが、今の時代にさらに磨かれるべき、人間特有の能力ではないでしょうか。

 技術にも心にも、制御というものは一番の要です。自分の心が練り上げられていなければ、人工知能のような新技術にはいくらでも振り回されて、偽物の問題を悪化させることに一役買ってしまうことになります。無記のハタラキが強ければ、悪用された時の被害は大きく、逆に、悪用されない程度の技術であれば、善としても役に立ちません。精度の高い制御がなされた技術は、私たちの生活を大きく変化させるイノベーションとなります。一方で、それらを使う私たちの心が制御されてなければ、私たちの将来はディストピアです。技術の持つ善悪の可能性を見通し、善へと転じる作法を身に付け、実践することが期待されます。

かみで・ひろこ/2008年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。09年大阪大学大学院基礎工学研究科特任助教を経て,現在名古屋大学未来社会創造機構特任准教授。仏教哲学に基づくモノと人間の関係性について心理学的な研究を行う。近著に『今日、僕の家にロボットが来た。 ―未来に安心をもたらすロボット幸学との出会い』(共編著)、『ロボット工学と仏教―AI時代の科学の限界と可能性』(共著)がある。

2020/1/30 WCRP 11月京都で50周年式典 人身取引防止取り組みへ


 (公財)世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は28日、東京・杉並の立正佼成会法輪閣で第30回理事会と第19回評議員会を開き、人事をはじめ2020年度事業方針・事業計画・予算等を審議し、原案通り承認した。今年はWCRP創設50周年にあたり、第9回ACRP(アジア宗教者平和会議)東京大会後の11月24日、京都国際会館で記念式典を行うことが決まった。

 会議にあたり、植松誠理事長が挨拶。地球温暖化に危機感を募らせ、「リンダウでの世界大会でもかなり熱心に議論された。いままでは会議の席に水のペットボトルが置かれたが、今回はコップ。小さなところから取り組まなければならない」と呼びかけた。またACRP大会、50周年行事への協力を要請した。

 事業計画では、総合テーマを世界大会と同じ「慈しみの実践:共通の未来のために―つながりあういのち」と設定。ネットワーク化、啓発・提言活動、平和教育・倫理教育、人道的貢献、女性・青年による行動指針基盤とした平和活動など8項目を軸に展開する。

 50周年事業では、ACRP大会と記念式典のほか、ACRPをより行動中心の運動体を目指すための「フラッグ・シッププロジェクトへの参画・支援」や5年に一度の核不拡散条約(NPT)再検討会議への使節団派遣(4月26日~5月2日予定)、同時期に実施される日米宗教者パートナーシップ会合、日米青年交流(8月)、日韓宗教指導者交流(11月)、国際青年委員会(IYC)の受入と交流事業(7月)、記念出版などがある。

 また従来のタスクフォース(TF)の見直し時期となり、継承と新規の5TF(核兵器禁止条約批准・気候危機・和解の教育・人身取引防止・災害対応)が報告された。

 人身取引防止TFは、性的搾取や強制労働、臓器売買、子ども兵士といった問題に取り組む。日本ではほとんど報じられないが、国際社会の関心は高く、国際労働機関(ILO)によれば、4030万人に上る。


気候変動非常事態宣言を採択

 理事会・評議員会では気候変動非常事態宣言が採択された。「慈しみの実践:共通の未来のために」を掲げ、ドイツ・リンダウでの第10回世界大会の成果を踏まえながら以下の5つの実践を提示。①個人のアクション、②宗教コミュニティ・教団のアクション、③政治に対するアクション、④経済に対するアクション、⑤地球に生かされているという自覚を育む教育の充実。

 宣言のとりまとめに当たった薗田稔氏(秩父神社宮司・京都大学名誉教授)は、④に関して環境に配慮しない企業に融資している金融機関から預貯金を引き揚げたり、または熱心に取り組んでいる企業に投資する「ダイベストメント」の考えを提示。「環境問題に消極的な企業はないだろうと思うが、企業評価によって経済的な対応をすることも求められる」と述べた。

新事務局長に篠原祥哲氏

 5年にわたりWCRP日本委員会事務局長を務めた國富敬二氏(立正佼成会理事長)が退任し、総務部長の篠原祥哲(しのはら・よしのり)氏が新事務局長に就任した。

 新事務局長は理事会後の新春学習会で「前任の國富事務局長が導いてくださった事務局をしっかり引き継ぎ、WCRPの役割と使命を果たすために努力していきたい」と抱負を披瀝した。

 篠原氏は昭和46年(1971)10月4日東京都足立区生まれ。96年立正佼成会入職後、平和基金事務局などを経て05 年から世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会に勤務。11~15年WCRP仙台事務所長として東日本大震災の復興支援に従事。15~18年まで平和推進部長、18年から総務部長。現在、東京大学総合文化研究科人間の安全保障プログラム博士課程に在学中。

2020/1/30 妙心寺派 解散寺院に補助金支出 新制度後初承認 2カ寺に上限100万円ずつ 

 臨済宗妙心寺派の無住寺院対策委員会(委員長・小笠原秀典東漸寺住職)が21日、京都市右京区の宗務本所で開かれた。解散を望む寺院の解体費用などを宗派が補助する新制度で、2カ寺に補助金を出すことが初めて承認された。ほか1カ寺については、不適当として継続審議となった。

 申請があったのは3カ寺。現地調査の結果を踏まえ、適正か検討した。同委の答申を受け、重要事項を審議する統務局会議を経て正式に決定される見通し。新制度は2018年9月に施行された。1カ寺に対する補助金額の上限は100万円。

 補助金の支給が承認された寺院は、愛知県豊田市の駒山頂にある小馬寺。かつてこの地域は、塩などの物資を輸送する中馬に供給する馬の生産地で、同寺は馬の繁殖祈願や供養で信仰を集めた。現在、境内地には本堂の古材が残り、山門は倒壊寸前の状態。進入禁止のロープを張るなどして対応している。

 山中の一軒家などを取り上げるテレビ番組で放送され、興味本位で見物に来る人もいるという。兼務する同市の龍淵寺はダム建設に伴う移転で檀信徒が減少、厳しい運営であり、危険な建物は早急に解体したほうがいいと判断された。

 解体などの費用は約105万円。補助金100万円を支給し、龍淵寺が約5万円負担する。山門に設置する防護柵が約63万円、庫裏解体費が約35万円と見積もっている。小馬寺は龍淵寺に吸収合併される。(続きは紙面をご覧ください)

2020/1/30 大逆事件検挙から110年 管野須賀子墓前で勤行 


須賀子の墓前で焼香し手を合わせる参加者たち 東京都渋谷区代々木の正春寺で25日、「大逆事件の真実を明らかにする会」が開かれ、約70人が参加した。明治末に起きた大逆事件で処刑された12人の1人、管野須賀子(1881~1911)の墓前で勤行し、続いて各地で事件解明などを行っている9団体が昨年の活動を報告した。

 高知県中村市で活動する「幸徳秋水を顕彰する会」の田中全氏は、韓国の幸徳秋水研究者と交流が始まったことを紹介。交流の一環として、「第三の大逆事件」といわれる朴烈事件を扱った韓国映画「金子文子と朴烈」の上映の成功を報告した。

 大谷大学真宗総合研究所研究協力員の上山慧氏は、今年10月17~18日に開催される第五回大逆事件サミットの準備活動について報告し「現在、神戸の大逆事件関係者の岡林寅松、小松丑治の活動について学ぶ研究会を開き、理解を深めている。サミットをゴールではなく、通過点にするために努力していきたい」と話した。

 また、劇作家嶽本あゆ美氏は、今年3月21日に大阪の「管野須賀子を顕彰し名誉回復を求める会」が主催し、大阪・北区天神の天満教会で「彼の僧の娘」を上演することを発表。同教会は須賀子が受洗した教会である。獄死した高木顕明の娘(養女)加代子が送った波乱の人生を描く。

 同朋大学仏教文化研究所客員研究員の中川剛マックス氏は「今年は、大逆事件の検挙がはじまって110年。大逆事件を顕彰する会や研究会は近年各地で発足している。少人数でもこのような会ができることによって、新資料や新証言が発掘されている。さらなる研究成果に期待した」と話した。

2020/1/23 展望2020 生前から死後まで 委任事務の可能性 進行する家族の弱体化 契約家族が寺院を動かす 松島如戒・NPO法人りすシステム相談役、高野山真言宗僧侶

  
松島如戒・りすシステム相談役、高野山真言宗僧侶 我が国には「家族」とは何かを規定した法律はない。旧民法には明確に規定されていたのだが、戦後の民法改正で抜け落ちた。にも関わらず「家族」は人の生存に不可欠な存在で基礎的な共同体として機能している。

 しかし現在、その家族が量的にも質的にも弱体化している。戦後1世帯5人以上だったのが現在では2・2人、半数以下になった。もちろん世帯数イコール家族ではないが「家族」といわれる運命共同体の量的弱体化は明確である。

 たとえ配偶者でも、高齢になれば入院の保証や手術の同意書類にサインできない。ご存知だろうか。時代が変わったのである。社会では家族でなければできないことも多い。例えば医師が看取らず死亡した場合、警察は地の果てまで親族を探し求め身元を確認させる。こうした社会の変化により被害を受けている「家族弱者」とでもいう人々の切なる思いから、契約家族づくり運動は立ち上がった。

 私がこの活動に関わったのは1988年、縁あって東京・巣鴨に大分県庄内町の高野山真言宗の末寺、功徳院の東京別院を建立したことに端を発する。落慶法要の記念講演を、恩師である東洋大学学長などを務められた磯村英一先生にお願いし、その講演で強調されたことによるものであった。

 講演の趣旨は「新しい墓の未来像として今日の墓や先祖供養のあり方は21世紀のある時期大きく変わる。少子高齢化、非婚者の増加などの要因によって、血縁により墓を維持することが不可能になるだろう。その変化への対応策として他人同士、誰もが入れる形式の墓が必要になる。その墓を核にしたメモリアルコミュニティ作りを提案する」というものだった。

 1990年、先生のこのような教示により「もやいの碑」を建立し、今日の墓友の先駆けとして「もやいの会」を設立した。さらに1993年、毎月のもやいの会の勉強会で会員からの強い要望を受け、契約家族づくりのための仕組として生前契約受託機関を立ち上げ、名称を「りすシステム」(Living Support Service-Lissに由来する)とした。

 その仕組みは、遺言公正証書による負担付遺贈(民法1002条)と死後事務、生前事務委任契約に加え、2000年に施行された任意後見契約に関する法律による任意後見契約。そして葬儀の企画書等、医療と後見に関する意思表示書で構成している。

中高齢者向けの終活セミナーでりすシステムの説明を聞く参加者 死後事務受託からスタートしたが利用者の要望で生前事務の受託を始めた。最近は老人ホームや入院の保証、手術の立会いなどが急増している。2016年には、りすシステムを真似た同業者が経営破綻し、多額の預り金を毀損させる事件が起きた。国の機関である「消費者委員会」が調査し、国交省・厚労省・消費者庁の大臣に私が建議を発出するに至った。 

 2017年、生前契約によるサービスに「身元引受保証等高齢者サポート事業」という名称が付された。身元引受保証は難しい。ホームでも病院でも保証人に死亡後の身柄や荷物の引取りを求める。家族なら当然のことだが他人にとっては難題。そのためには死後のことを本人が決めて、費用も準備してもらわなければ保証人にはなれない。りすシステムは死後・後見・生前を切れ目なくサポートする仕組みがあるから確実な保証人として信頼を得ている。

 以上述べたような苦労を寺院が行えるのか、そして行うメリットはあるのか。寺院の業務として適格性、親和性が高いので、この活動を寺院活動として取り組むことは可能であるし、そのメリットもある。その際の障害になるものは何か。

 それは僧侶側の意識だと思う。僧侶の意識は変えられるか。寺は教え導くことを目的としているので、どうしても上から目線になり易い。生前契約の主役は檀家だ。一人ひとりが自分で自分の生き方死に方を決め、「自己決定」したことを公正証書による契約にする。その契約内容を寺は実行しなければならない。主客が転換する。そこが最も難しい。次に葬儀や法事よりずっと割の悪い仕事に耐えられるのか…。その点で「りすシステム」のような機関と寺院が提携する余地は十分にある。

 私は寺の仕事として、信徒の声に押されて契約家族づくり活動を立上げ今日まで育ててきた。その経験から、多くの寺院に21世紀型の檀信徒づくりとして、この運動に参画してほしいと願っている。

 明治維新までの寺は、人のくらし全般をサポートする存在だった。明治維新で寺に残されたのは「死」に関わることのみになった。維新から1世紀半。令和という時代は、江戸時代の寺を進化させたニューモデルが、寺院のあり方を先導する時代だと私は考えている。りすシステムは現在東京以外にも全国9カ所に支部を展開している。地域密着型の活動をしている寺院、僧侶の皆さんには寺院の社会的役割と生き残り戦略の選択肢の一つとして、ぜひご賛同いただきたい。


まつしま・にょかい/1937年京城生まれ。高野山真言宗僧侶。1988年に東京都豊島区巣鴨に高野山真言宗功徳院東京別院、すがも平和霊園を建立。日本社会の変化をいち早く捉え、1993年に任意後見・生前契約受託機関「りすシステム」を設立した。著書に『私、ひとりで死ねますか』(日本法令)や『死ぬ前に決めておくこと』(岩波書店)がある。

2020/1/23 1.17阪神・淡路大震災25年 身に染みた「絆」の力 神戸市佛 会長震災当時を回想 

 
読経中に犠牲者を悼み焼香する参列者 阪神・淡路大震災の発生から25年を迎えた17日、神戸市佛教連合会は兵庫区の法華宗本門流感応寺で犠牲者追悼法要を執り行った。金井孝顕会長を導師に市内の各区仏教会代表が出仕。僧侶と市民ら約50人が焼香し、犠牲者を悼んだ。

 会所となった感応寺は金井会長の自坊。全壊判定を受けたが、建て直さずに今も護持している。

 その朝、1階の寺務所で節分の準備をしていたところ揺れが襲った。本棚などは倒れず、「いつもの地震かな」と思う程度だった。表へ出ると、傾いた銀行や倒壊した建物が目に飛び込んできた。2階の本堂に駆け上がると、吊り下げ型の蛍光灯や内陣の天蓋は落ち、3階の庫裏も大きな被害を受けていた。

 すぐに本堂を片付け、住民が避難できる準備を整えた。約60人が身を寄せ、妻も被災者とともに避難生活を送った。困ったのはトイレだった。神戸高速線の大開駅近くの道路が陥没し、破裂した水道管からあふれた水を汲みに行き、トイレのタンクに注いで流した。
彼岸の頃まで避難生活は続いたが、目の前で夫と次男を亡くした母と長男の2人は8月まで納骨堂の空き部屋に住んだ。

 震災で身に染みたのは「絆」の力。「いざというときに大切さが分かる」と力を込める。近所の食堂や避難所となった小学校などは毎回食事を運んでくれた。さらに、地元自治会内で死者が出なかったのは、住民が力を合わせた救援活動の賜物だという。震災以降、これまで以上に自治会活動に積極的に参加している。

 磬子には震災時についた長さ約20㌢ほどのへこみ跡がある。「なぜついたのか分からない」。それほど大きな力が加わる原因が見当たらないという。「震災の教訓を伝えるために、修理せずに残している」

2020/1/23 臨床宗教師のあり方問う サービスや副業でいいのか 自身の宗教認識曖昧な例も 種智院大の松本峰哲教授 育成体験から懸念示す

  
「究極の方便としての臨床宗教師」を説く松本教授 大正大学綜合仏教研究所は16日、臨床宗教師養成課程の一環として公開講座「臨床宗教師の不都合な未来」を東京都豊島区西巣鴨の同大で開催した。講師は種智院大学教授の松本峰哲氏。松本氏は真言宗御室派の僧籍を持ち、種智院大学臨床密教センターで臨床宗教師育成の担当教員を務め、その体験から臨床宗教師のあり方に問題提起した。

 種智院大学では2016~18年度にかけ3回にわたる臨床宗教師養成講座を開き、20人ほどの臨床宗教師を輩出(19年度は休止、20年度再開予定)。しかしその中で松本氏は不安になったことも多々あった。大学にも「臨床宗教師になりたい」という相談はよくあるが、真言宗以外の宗教者や、宗教者ではない一般人からも問い合わせがあり、困惑したという。「あなたの宗派の大学でも取れるし、スピリチュアルケア師など宗教者じゃない人向けの資格もありますよ」と対応しても頑として聞かない人もいた。テレビや一般紙などで取り上げられるにつれこういった事態が起きた。

 臨床宗教師が一般層からは「病院のサービスの一環」と思われつつあることも危惧。「病院に行ったらお坊さんが無料で話を聞いてくれるなら、お寺なんか行かなくてもいい」と考えられてしまうと懸念した。

 一方で宗教者の側にも臨床宗教師を「副業」とする見方があると問題視。「臨床宗教師になると病院に勤めることができる」と収入源と考えるような声や、傾聴活動で「檀家を取られてしまうのではないか」といった誤解の払拭も課題となっている。

 活動の中で、自身の宗教の認識が曖昧になっている例もある。イスラームの臨床宗教師が傾聴活動の一環として患者とお地蔵さんを作っていたり、仏教僧侶の臨床宗教師が「絶対に天国に行けます」と断言した事例を挙げ、「こうなると宗教って何なのか、という話になってくる」。臨床宗教師が都合のいいオーダーメイド宗教、あるいは民間信仰のようになることでの「教義から逸脱した信仰の誕生を宗派(教団)の人は恐れている」とした。

 その上で、完全な私論と断った上で今後の臨床宗教師のあり方としては「それぞれの信仰を態度で示す」「倫理綱領を厳守し、自身の信仰に従って生きる『心のケアもできる宗教者』になってほしい。『宗教の真似事もできるケア従事者』ではだめ」など、自身の宗教と真摯に向き合い、資質を高める資格となるべきと提示。臨床宗教師の活動は「究極の方便」であるべきだとした。

2020/1/23 肉声消えて10年 「師弟不二」叫ぶ創価学会 「師」の教え不在の公明党 21世紀宗教と政治研究会① 箱根駅伝「出藍の弟子」あらわる 年末財務〝功徳は計り知れず〟 


 今年も創価学会・公明党の現状を読み解く新シリーズが始まります。

 創価学会は2020年を「前進・人材の年」と掲げ、師である池田大作氏は新年の歌を、「出藍(しゅつらん)の弟子と前進 万代へ 不二の勇気を託す嬉しさ」(「聖教新聞」1月1日)と詠んだ。“青は藍より出でて藍より青し”というように、出藍は弟子が師をまさることを言う。

箱根駅伝での創価大の活躍を報じる聖教新聞 同会にとって今年5月3日は「池田先生の第3代会長就任60周年」、11月18日は「創価学会創立90周年」と慶事が続く。先立つ1月2日、池田氏は92歳の誕生日を迎えた。ご長寿である。以前なら「聖教新聞」は誕生日にあわせて近影カラー写真を掲載したりした。しかし今年も1枚の写真も掲載されなかった。組織行事から池田氏の肉声が消えて10年が経過。最高幹部は「元気です!」と繰り返すものの、実際は、写真撮影にも耐えられないほど健康を害していると推察できよう。

 1月2日の誕生日に「出藍の弟子」が現れた。創価大学の駅伝メンバーである。第96回東京箱根往復大学駅伝競走に3年ぶり3度目の挑戦となった創価大学が、過去最高の総合9位となり、次回大会へのシード権(10位まで)を得た。

(中略)
 
 2010年5月を最後に公式の場から姿を消した池田氏。10年不在ながら「師弟不二」を強調してきた創価学会。一方、与党として集団的自衛権の行使容認に踏み切り、共謀罪成立にも協力し、池田氏が核兵器禁止条約を支持しているにもかかわらず応じない公明党。今年も二つの組織をウォッチしていきたい。

2020/1/9・16 展望2020 僧侶の資質向上と再教育 急速に進む変化に対応を(今岡達雄・浄土宗総合研究所副所長) 


今岡達雄・浄土宗総合研究所副所長ー僧侶の資質向上や再教育はなぜ必要なのか。
 わが国は超高齢化・少子化が進行し人口減少社会になりました。家族形態も核家族化ばかりでなく、さまざまな世代で単身世帯が増加しています。もう一つ重要なことは多様な価値観が許容される社会になったことです。このような社会変化は寺院活動の基盤となっていた寺檀関係に大きな変化をもたらしています。人口減少や世帯数の減少は檀家の減少をもたらし、価値観の多様化は祭祀の簡素化に向かっています。

 これまでの習慣化された社会の中での寺院活動から、急速に変化する社会に対応した寺院活動が出来る教団に変わる必要がありますが、そのためには人的資源が極めて重要であるといえるでしょう。つまり活動の中心となるのは教師であり、変化への対応には教師の資質向上が必要となります。

 教師資格の取得には一定水準の教学、布教、法式の知識と伝宗伝戒(加行)を受けることが必要です。しかしこれは教師としての最低限必要なレベルであり、教師資格取得後の不断の学習と実務経験の積み重ねによって一人前の教師になると考えられます。これに対応して僧階、教階、学階という階位を設け、それぞれ実務、教化、教学の業績を評価し階位の進叙を行ってきましたし、様々な講習会、研修会を開催して生涯研修の機会を設け教師の資質向上を図ってきました。

 近年あらためて教師の資質向上、生涯教育の具体的施策を行っているのには様々な理由があります。例えば、従来の仕組みでは受講の機会に恵まれない教師の方々が存在する。つまり法務以外の仕事を兼職しているという時間的制約、京都や東京といった都市部で開催される研修会には遠隔地からの参加が困難であるという空間的制約の問題への対応です。
また、最近の社会変化は急速に進むので、その変化へ対応した研修プログラムが必要となります。一人でも多くの浄土宗教師が生涯研修の機会に恵まれ、不断の資質向上を目指すことが出来るような施策が必要と考えます。

浄土宗教化研修会館として改修された源光院(京都市東山区)ー今、僧侶に求められるものは何か。また教団はどのようなバックアップが出来るのか。
 現代社会の中で浄土宗教師に望まれる教師像とはどのようなものでしょうか。まさにこの質問が研修プログラムの一つになっています。つまり、一つの典型的教師像を描くのではなく、現代社会には多様な教師が必要であり、教師一人ひとりが自らの教師像を意識し、学習し活動することが必要であると考えます。この研修プログラムの中では、教師が備えることが望まれる因子を8つ挙げています。詳しい説明を省きますので誤解される可能性もあるのですが、要約すれば以下の通りです。

①社会人としての一般常識がある
②僧侶として聖性がある
③信仰心があり、念仏実践者である
④浄土宗僧侶としての基礎能力がある
⑤死者儀礼を通じて檀信徒と共感できる
⑥寺院管理運営者としての知識と技能を持っている
⑦社会の弱者と共に生きることが出来る
⑧一般社会で必要とされる専門知識を保有している

 ここで提示した因子には、浄土宗教師の基本として不可欠な因子、住職になったら不可欠な因子、社会事業やボランティア活動の根源となるような因子、臨床宗教師のように医学・看護・介護などの専門知識が重視される因子もあります。
これらすべての因子を高いレベルで具備していることが理想ですがそれはかなり困難なことであり、各教師が自分自身がどのような教師になるかを意識することが重要と考えます。

 浄土宗では教化研修会館を開設し生涯研修のための様々なプログラムを開催しています。「教師研修会」は教師を対象にしたプログラムで全教師が受講することを目標にしています。「実践講座」は実務の研鑽の場で「布教編」「『選択集』編」「法式編」「『御法語』編」「ともいき編」「年中行事編」「寺院運営編」など、教師が具備すべき因子のブラッシュアップが目的です。

ーすでに寺院住職の立場にあるものは、資質向上をどのように心がけたらいいのか。
 浄土宗では、現実的な方法として世襲を柱にした寺院継承が行われています。それぞれの寺院の状況によって、伝宗伝戒を受けた直後に若くして住職になる場合もありますし、長い副住職経験を経て住職になる教師もいます。住職就任時点での実務経験や知識レベルは著しく異なりますし、実務上の問題解決能力にも大きな差があることは事実です。この問題を解決する方法の一つが生涯研修です。住職という職務に依らず教師には生涯研修が必要と考えます。

 いまおか・たつお/1948年千葉県生まれ、早稲田大学理工学部、同大大学院修了。(株)三菱総合研究所にて20有余年技術予測、需要予測等を担当、技術戦略部長で退職。1980年善照寺住職。98年浄土宗総合研究所入所、専任研究員、主任研究員を経て12年より副所長。研究実績に技術予測関連で『価値観の研究』『科学技術の進歩とその社会・経済との関連』。仏教関連では『社会変化と浄土教』『科学技術の進歩と浄土教』『生命倫理問題への浄土教団としての視座』。最近研究では『教化センター論』『僧侶論』『浄土教社会福祉論』など。


2020/1/9・16 TBSドラマ『病室で念仏を唱えないでください』 善立寺で制作発表会 僧医役の伊藤さん「深い縁感じる」

 
多数の僧侶も参加した制作発表会。前列左から余貴美子さん、ムロさん、伊藤さん、中谷さん、松本穂香さん、片寄涼太さん 僧侶で救命救急医師の「僧医」が主人公のTBS金曜ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(1月17日午後10時スタート)の試写会と制作発表会が9日、同ドラマの仏事監修を務める新倉典生氏の自坊、東京都足立区の日蓮宗善立寺で行われた。主演を務める伊藤英明さんをはじめ中谷美紀さん、ムロツヨシさんら主要キャストが登壇した。

 ビッグコミック(小学館)で連載中のこやす珠世さんの同名漫画が原作。主人公の「僧医」松本照円(伊藤さん)の奮闘する姿を通して、「生きることとは、そして死ぬとは何か」を問う医療ヒューマンドラマだ。伊藤さんは子どもの誕生、恩師の死などを経験し、「生と死という人生の岐路を感じている時に素晴らしい役をいただいたことに感謝をしつつ、深い縁も感じます」と今作への想いを明かした。毎日読経するなどの役作りをしたという。同僚医師を演じる中谷美紀さんは「本来は無宗教」だそうだが、「僧医」松本の人間味溢れるキャラクターや伊藤さんの演技に、「極楽浄土はもとより、地獄の果てまでお供したいという気持ち」と話した。

 見どころとして伊藤さんは「医療で人を救う側面だけでなく、患者と患者に関わる人に仏教を通して、何を残せるか、救っていけるか。一筋縄ではいかないですが」と述べ、エリート外科医役のムロさんは、「救おうとして救えなかったもの、遺された者たちがどう前を向いていくかが大事なところ」と話した。
 
 仏事監修を務める新倉住職は「仏教の言葉や僧侶の振る舞いは、人を苦しみから救うことが出来る。そんなことを感じてもらいたい」と話した。東北大学で臨床宗教師養成に携わる谷山洋三准教授がチャプレン監修を務めている。

2020/1/9・16 ひと 石塚慈雄氏 栃木県日光市・輪王寺第86世門跡 新しい形の供養営む

 
石塚慈雄・輪王寺門跡 世界遺産・天台宗日光山輪王寺(栃木県日光市)の石塚慈雄・第86世門跡(70)が12月26日、同寺本坊で就任会見を開き、「墓じまいの悩みに応える、全く新しい形の供養を営みたいと考えている」と抱負を語った。

 祈祷が主の同寺だが、「信者から少子高齢化で〝お墓や位牌をどうしたらいいか〟と相談を受けるようになってきた」。「永代供養や納骨堂ではない」新しい供養のあり方を検討しているとし、「2~3年後には具体化するのではないか」と話した。

 石塚門跡は昭和24年(1949)3月生まれ。一山安養院住職。中央大学文学部英文学科と大正大学仏教学部卒。栃木新聞社記者を経て昭和54年から輪王寺に奉職。財務部長や堂務部長など要職を歴任した。
 20年ほど前に病気で視力を失った。だがそうした苦難とは逆に自身を「ざっくばらん」と語る率直な明るい人柄が、多くの人を魅了している。

 そんな石塚門跡の観光振興策はユニークだ。「観光客が減って疲弊している」奥日光・中禅寺の愛染明王堂に俳優・加山雄三さんの「君といつまでも」の歌碑の建立を計画。「ここで撮影された映画で歌った愛の歌。年齢を問わずに様々なカップルが〝君といつまでも〟と愛を誓う名所にしたい」

 平成25年7月から停止している日光二社一寺(二荒山神社・東照宮・輪王寺)の共通拝観券については、「窓口でお金を払う方法はもう古い。海外の観光客にも対応できるキャッシュレスの拝観制度など新しい構想を温めている」と意欲。「拝観料設定の問題なども含めて春頃から本格的に話し合っていきたい」とした。

 新門跡は平成26年6月から運営トップの執事長を務めてきたが、2期目(1期3年間)の途中で門跡に就任することになった。門跡任期は5年間だが、「前(執事長時代)から続けてきたことの形が決まれば、早めに辞めてもいいかな」と微笑んだ。

 心配しているのは、一山15カ院のうち2カ院が兼務状態にあること。「後継者難が深刻になりつつある」との見解を示し、「一般の人から募集し、僧侶として養成していく時代が来ているのではないか」と話した。

 石塚門跡は小暮道樹門跡の任期満了を受け、日光山一山会議の推薦により12月21日付で就任。晋山式は3月末に平成大修理を終える三仏堂(本堂)の落慶法要と合わせて「夏頃になる」予定。

2020/1/9・16 僧侶を育てるということ 後継者育成の現状と未来② 


曹洞宗、人口ピーク後に増加も
 曹洞宗の教師資格新規取得者数は①1990年は183人、②2000年は223人、③2010年は281人と増加してきたが、④2018年では251人と減少した。日本が人口減少社会に転じた2008年は226人だった。人口のピーク以降も増えているのは注目される。教師補任者が増加した理由はいくつか推測できるが、一つには1995年宗議会で僧侶教師分限規程が見直されたことでの、取得要件の緩和が挙げられるだろう。人口増減と教師資格取得者数が必ずしも連動しているわけではないケースは興味深い。
なお、法階を備え、安居を終えても教師資格をすぐに取得しない場合もある。

直近では回復の妙心寺派 
 臨済宗妙心寺派では14ある法階のうち、法脈相承を証する「前堂」の一つ手前の位「首座」以上の法階が教師とされている。教師資格の新規取得者の統計がないため、僧侶となれる最初の法階である「沙弥」の取得者数から推移を見ることとした。①100人→②104人→③96人→④57人と減少傾向にはあるが、直近の2019年は大きく増加し、83人(今月10日現在)となっている。

 近年の「前堂」以下(沙弥から前堂まで5法階)の取得者数は、2015年の359人をピークに2016年267人、2017年238人、2018年238人と減少傾向にある。

智山派は尼僧割合アップ
 真言宗智山派は①63人→②74人→③→62人→④42人。2010年以降のここ10年ほどは他宗派と同様に減少傾向にあるが、一方で尼僧は①3人→②2人→③9人→④6人とやや増加傾向にある。全体が減少しているため、尼僧が占める割合は必然的に高まり、1990年で約5%だったのが2018年では3倍の約14%にまで伸びていることが分かった。

2020/1/1 新春エッセイ 森川宏映・天台座主 「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」


森川宏映 天台座主 新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、清爽の気みなぎる初春を迎えられたことと、お慶び申し上げます。

 さて昨年を振り返りますと、天皇・皇后両陛下の御即位、そして新元号「令和」が公布され新たな御代が始まりました。またラグビーW杯での日本チームの活躍や、ノーベル化学賞受賞など、日本国民にとって誇らしい出来事があり、国中に笑みが溢れたことは、真に喜ばしいことでした。

 しかし、その反面、悲しむべき出来事も多々ありました。国内では、7月のアニメ会社放火殺人事件、8月の九州北部での豪雨災害、さらには関東・東北地方を中心に襲った台風15号・19号による大災害がありました。こうした事件、災害にあわれました方々には衷心よりお見舞い申し上げます。

 その自然災害の原因とされる地球温暖化問題が、近年、私たちの生活を脅かすようになりました。

 私は比叡山の山林保護を志して農学部に進学し、卒業後は比叡山延暦寺で長年営繕管理に携わって参りました。比叡山には、山林を伝教大師のお衣と考えるゆかしい伝統がありますが、私も山林の仕事を通して、天台本覚思想が身についたと思っております。人間ばかりでなく、動植物、鉱物などあらゆる存在は仏性を持ち、成仏できるとする天台本覚思想の草木国土悉皆成仏という考え方こそ、仏教の中心思想であると思うのです。それこそ環境破壊の問題を解決できる糸口になろうかと存じます。

 また世界を見渡しても神仏に代わって経済発展こそを最高規範とし、加えて自国第一主義が蔓延し、人々は互いの慈悲の心を忘れているように見受けられます。そのゆがんだ状況が富の偏在と差別の増長を生み、負の連鎖となって人々を苦しめているのです。

 昨秋、ローマ教皇フランシスコ聖下が来日されましたが、わたくしも広島での「平和のための集い」に参列させていただきました。平成28年のバチカン以来の再会に、固い握手を交わし友情を確認しあいました。

 その平和メッセージでは、核兵器の使用を非難され、「真の平和とは非武装の平和以外にありえません」と述べられ、その強い姿勢に共感いたしました。神仏から授かった私たちの“いのち”を、人間が作り出した核兵器によって奪うことはあってはならないことでありましょう。

 社会での自分の立場を考え、人を思いやる心を持ち、行動や会話の前に今一度、神仏の思いに叶っているかを考えてみてください。人間ひとりで生きている訳ではありません。自然との共生、人との共生を考えて生活することが大切です。それが宗祖伝教大師最澄様が申された、「己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり」の精神を実践することになります。

 安寧の世界が一日でも早く訪れますよう、神仏のご加護を仰ぎ、皆様と共に行動して参りたく存じます。

 もりかわ・こうえい/大正14年(1925)10月22日愛知県生まれ。京都大学農学部卒。昭和11年得度。同25年延暦寺一山眞藏院住職に就任。平成11年11月から平成18年11月まで京都・毘沙門堂門跡門主。平成6年に戸津説法を務める。延暦寺副執行・天台宗宗議会議員(一期)・一隅を照らす運動会長・延暦寺学園比叡山中学校校長・延暦寺学園比叡山高等学校校長などを歴任。平成27年12月14日、天台座主に上任。

2020/1/1 真言宗智山派 芙蓉良英総長 再選 

  
再選した芙蓉総長 11月28日に発令された真言宗智山派の宗務総長選挙の立候補届け出が12月8日午後5時に締め切られた。立候補者は現職の芙蓉良英氏1人だったため、当選人に確定。令和5年に迎える「宗祖弘法大師ご誕生1250年慶讃事業の完遂」に向け、来年3月28日から2期目(任期4年間)に入る。

 立候補にあたり、選挙公報を発表。重点施策として、①現在進めている「慶讃事業の完遂」②ペーパーレス化とデジタル化、インターネット化の推進、出張不要の遠隔会議システムの構築などによる「一層の宗務の効率化」③サポート体制の拡充で兼業・兼職する住職の負担軽減を目指し、少子高齢化社会での寺院支援体制の整備も視野に入れた「教育と教化の更なる充実」④災害対策の充実やキャッシュレス決済による利便性の向上も盛り込んだ「総本山智積院の護持と興隆」などを掲げた。宿坊・智積院会館の新築と新活用案策定も進める。

 芙蓉総長は昭和31年12月15日生まれの63歳。東京都港区三田・大聖院住職。東京西部教区長や内局財務部長(2期)・総務部長など要職を歴任し、平成28年から現職。

2020/1/1 世連日宗委大会 地域の宗教施設結び SDGsを点から面へ 枡野俊明氏が提案 宣言文「地球ワンチーム」


相互理解によるグローバルなSDGs活動を期待した枡野氏 世界連邦日本宗教委員会(会長=田中恆清神社本庁総長・石清水八幡宮宮司)主催の第41回世界連邦平和促進全国宗教者・信仰者神奈川寒川大会が12月17日、寒川町の寒川神社を会場に開催された。「令和の平和への願い」のテーマのもと超宗派から200人余が参加した。
 
 開会にあたり、大会会長の寒川神社宮司の利根康教氏が挨拶し、神社の歴史や地域での活動を紹介。終戦70年の節目には寒川仏教会の12カ寺と共催で「平和祈願祭」を本殿で執り行ったとし、「異なる宗教であっても平和を希求する気持ちにはいささかの相違もないことを再認識することができた」と述べた。

 昭和40年代から携わってきた田中会長は、先達の一人である比叡山延暦寺の故葉上照澄長臈から賜った「打ち上げ花火じゃいかんぞ。始めたら一人になろうが、続けていかないと意味がないんだ」との言葉を紹介。そして「この教えを受けて今できることを考えて、多くの教団の方のご協力を得ながらこの大会を続けさせて頂いている」と協力に感謝した。

 特別講演は、曹洞宗僧侶で庭園デザイナーの枡野俊明氏(多摩美術大教授)が「相互理解と連携の推進」と題して。モノが溢れ、スピード化され、情報過多の中で心のよりどころを失っているのが現代社会だと分析。寺院においても檀家制度が「音を立てて崩れている」とした。

 庭園デザインの仕事を通じてさまざまな宗教と交流してきた体験を披露しながら、「宗教界全体で相互理解を活発にしていく必要がある。世界連邦日本宗教委がその中心となり、プラットフォームをつくっていくことが意義深いのではないか」と提案した。

 さらに「宗教の基本はその地域に根ざしていること。神社や教会やお寺。それらの点をどう結び付けて線や面にしてグローバル化させてくかが今後の課題であり、問題を共有化していくことが大事だ」と提起した。

 具体策として「誰一人取り残さない」との理念を掲げる国連のSDGs(持続可能な開発目標)に着目。各地で実践されているゴミを減らす活動や地球温暖化への対応、子ども食堂に象徴される貧困問題などを列挙し、「それぞれが点と点で行われている。つながりと連携を持って取り組んでいけば大きな面、大きな力になる」と相互理解ネットワークによるグローバルな活動を期待した。

 続いて、基調講演として外交評論家の加瀬英明氏が「世界が日本を待っている」のテーマで、新元号「令和」の意味や、海外では「神道=エコロジー」として受容されている事例などを話した。

 最後に、「一人ひとりが勇気を持ち、世界連邦という『地球ワンチーム』を信じて前進していくことができるならば、必ず世界の平和は訪れると確信いたします」と結ばれた大会宣言文を採択して閉幕した。

 大会に先立ち参加者は、本殿で平和の祈りを捧げた。


2020/1/1 東京茶道の本山・護国寺 仲麿堂・箒庵・三笠亭を公開


仲麿堂の内覧会でお堂や仲麿塚を見学した参加者 真言宗豊山派大本山護国寺(文京区)で12月12・13・16・17日に、茶道関係者や文化人らを招いて、仲麿堂・箒庵・三笠亭の内覧会が行われた。4日間で約120人が訪れた。

 大正・昭和期に実業家として活躍、護国寺の檀家総代を務め、同寺を東京茶道の本山とすべく尽力した高橋箒庵居士(1861~1937)。箒庵が奈良・阿倍文殊堂前にあった阿倍仲麻呂の招魂塚「仲麿塚」を買い取り、大正13年に護国寺境内に遷座させたうえ、自邸の小堂を移築して「仲麿堂」を建立。堂内には高村光雲に師事した彫刻家の内藤伸作の仲麿像が安置されている。仲麿堂にはその後、護国寺最初の茶室である「三笠亭」や小間の「箒庵」も設けられ、茶道の発展に寄与した。

 これまで裏千家の宗匠が堂守を務めて、茶道の稽古や茶会などで使用されてきたが、昨秋に急逝したため、護国寺の茶寮事務局が運営を引き継いだ。これを機に、広く一般にも公開することを企図し内覧会を開催。社寺と数寄屋と田舎屋が融合した貴重な建造物がお披露目された。

 茶寮事務局の伊澤元祐氏は「仲麿堂」の歴史を説明したうえで「茶室を利用して何ができるのか。みなさまのお知恵を拝借しながら、文化的なことで社会貢献ができないかなと考えている」と協力を呼びかけた。

 護国寺では毎年12月に高橋箒庵居士を偲ぶ箒庵忌法要を営むほか、護国寺慈善茶会も行われている。今年で53回目の慈善茶会は15日に開催され約700人が参加。茶券の売り上げは「読売光と愛の事業団」に寄付されている。


2020/1/1 僧侶を育てるということ 後継者育成の現状と未来① 教師資格新規取得者 各教団30年で減少傾向 

本願寺派の教師教修が行われる西山別院(京都市西京区)の研修道場 新時代の僧侶育成とは?
 過疎化と一極集中、少子高齢社会、葬儀離れなどが寺院や教団のあり方に影響を与え出してきている。主として社会的要因だが、他方で仏教界内部からは複数の共通課題が浮上してきた。例えば住職・僧侶(教師)の資質向上が挙げられる。事件や問題が頻発し、一部では教師資格取得後の再教育・再研修に力を注いでいる。もう一つが僧侶(教師)養成である。僧侶となるには動機(発心)があるはずだが、世襲化した今日ではさほど問題にならない。そうした中で後継者不足が続いている。各教団の教師資格の現状や新規教師数、僧侶育成の現場などをシリーズで追ってみたい。(続きは紙面でご覧下さい)

本紙調査 教師資格新規取得者数 各教団30年で減少傾向
 近年、寺院の後継者不足が大きな課題となっている。寺院住職・副住職となるには各宗派の「教師」資格を取得しなければいけない。実際に教師資格を得る僧侶は年間どれほどいるのだろうか。

 昨年、弊紙では平成仏教を振り返る企画のなかで各教団の寺院数、予算、教師数の推移を調査した。結果、平成30年で教師数に大きな変動はなく、平成の時代は増加傾向をみせていたが、今回改めて各教団の教師資格取得者数を調査した。その結果から、①1990(平成2)年、②2000(同12)年、③2010(同22)年、④2018の10年毎の4年分の数字を表にした。概ね各教団の教師資格取得者数は減少していることが分かった。(紙面では浄土真宗本願寺派・真言宗豊山派・日蓮宗・浄土宗の教師資格新規取得者数をグラフで紹介しています。続きは紙面でご覧下さい)


2020/1/1 災害復興と寺院 台風15・19号、東電福島原発事故、阪神淡路大地震 復興の今

  
 昨秋の台風15・19号の被害は広範囲に及び、現時点でもまだ復旧段階の地域がある。原発事故から9年を迎え避難解除のあった地域では過疎や高齢化、生活環境の整備などの課題を抱えながら復興への道を歩む。そして阪神淡路大震災からは25年を迎える。伽藍の再建を果たした寺院もあれば、途上の寺院もある。

 地震や津波、火山噴火など自然災害の多い日本列島。近年は、地球温暖化が要因と考えられる巨大台風や豪雨が毎年相次いでおこり、その被害が全国各地に広がっている。加えていうならば、全国に建設された原子力発電所もまた原発災害という大きなリスクをはらんでいる。災害への備えは、今後の寺院運営にも不可欠の要素となっていくだろう。各地の寺院の災害復興の今をレポートする。

倒壊した国指定重要文化財の「表門」の前で現状を話す岩間副住職 被災から3カ月 復興の目途立たず 
 9月9日に上陸し、大きな被害をもたらした台風15号。その後の台風19号もあり、3カ月経った今でも完全に復旧しているとは言い難い状況にある。聖徳太子が開基し関東最古の古刹である千葉県君津市の真言宗智山派鹿野山神野寺(山口照玄住職)も復興の目途が立っていないのが現状だ。

 台風が通過した朝、院代を務める岩間照種副住職(47)が目にしたのは、荒れ果てた寺の姿だった。境内全域も枝や枯葉で覆われ、岩間副住職は「まるで絨毯のようだった」と話す。寺のシンボルの一つであった国指定重要文化財の表門は、雨風をしのぐ鉄の保護屋根もろとも倒壊していた。

 「表門」の他にも道場半壊・宝物殿屋根損壊・奥の院半壊・本堂銅板別離・護摩堂半壊・太子講堂損壊・霊神塔損壊・九頭竜堂全壊・鐘楼堂屋根損壊・宿坊損壊・書院損壊…。全ての諸堂、伽藍に被害があった。現在でもお堂にもたれたままの倒木や応急処置のままのブルーシートが被害の大きさを物語っている。

 本堂と仁王門に比較的被害が少なかったのは不幸中の幸いだった。「お正月お参りしていただける本堂と仁王門は無事だった。御本尊が守ってくださったと思う」

 大きな被害があった堂宇は本堂を取り囲むように点在しており、「つむじ風か竜巻のようなものが起こり本堂の周りを通ったのではないか」と岩間副住職。文化庁の文化財担当職員が言うには「保護屋根と一緒にこの表門は一度持ち上がって、それから落ちている」と吸い上げられるような力が働いたようだ。それを示すように、書院の床板も下から突き上げられたように外れていたという。(続きは紙面でご覧ください)


2カ月を費やしようやく泥を除去した境内法事できず 兼務寺も被災
 「被災してから今に至るまで、葬儀も法事も一件もありません。檀家さんは『今は大変な時だから法事やめておこう』って気を遣ってくれているんでしょうね」

 10月13日未明、台風19号により千曲川が決壊して濁流にのみ込まれた長野市津野の曹洞宗玅笑寺の骨組みだけの庫裡で笹井義英住職(72)はそう語った。無理もないことだろう。被災から2カ月以上が経った今でも、この津野・赤沼地域に住民はほとんど戻れていないのだから。また、玅笑寺本堂は床もなく、仏事を行うどころの状況ではない。

 一気に境内に流れてきた高さ2㍍もの水に、なすすべもなかった玅笑寺。住職一家6人は皆、ヘリコプターで救出された。「何しろお寺を守らなければならないと思っていた」という笹井住職。避難所から戻ってきた10月15日、雨は止んでいたが、境内中が泥にまみれ、山門は大破、本堂の120枚の畳はすべて流され、多くの仏具や寺宝も行方不明となった。水に浸かった大般若経はとりあえず乾燥させているものの、ほとんど諦めている。笹井住職は「仏具だって未だに一つとして新しく買ってはいません」と、正直に苦衷を吐露する。本尊や位牌が高所に祀られていたため無事だったのが数少ない救いだった。「食料や水も備蓄していましたが、1階に保管していたのですべて流されてしまい何の役にも立ちませんでした」と振り返る。

 住職一家がヘリで救済されたニュースが流れ、SNSでも拡散されたことで全国から僧侶、一般ボランティアが駆け付けた。その数は「正確には覚えていられないくらい来ていただきましたが3千人は超えていますよ。本当にどうやって感謝の心をお伝えしていいかわからないくらい」。長野教区だけでなく、同じ曹洞宗というだけで、これまで特に付き合いがなかった各地の寺からもたくさんの青年僧が来てくれたという。人海戦術でまず、境内の泥をかき出し、床板を剥がし、がれきを集積する作業を続けた。おかげで12月上旬、泥はすっかりなくなった。連日入っていた県外からのボランティアも現在は週末のみとなった。(続きは紙面をご覧ください)

同慶寺のお盆法要には多くの檀信徒が参拝した 東電福島原発事故から9年 いわき市との往復生活 
 昨年11月25日、都内のホテル。バチカンのフランシスコ教皇(82)の前で東日本大震災被災者3人が、地震・津波・原発事故被災について述べた。その一人が僧服姿の田中徳雲氏(45)である。福島県南相馬市・曹洞宗同慶寺住職で、東京電力福島第一原発事故により避難生活を余儀なくされた。現在は、家族が暮らすいわき市と南相馬市を往復する日々が続いている。原発事故から間もなく9年。田中氏に現状を取材した。

 教皇の前でなぜ僧侶が?と思った人は少なくないだろう。「原町区(お寺のある地域に隣接)にあるカトリック教会の皆さんからの推薦でした。8月に入ったころです」。与えられた時間は2分。文案を練り原稿はバチカン側に提出し、スペイン語に翻訳され教皇に届けられる手はずである。

 ところが一波乱、二波乱あった。保守派バチカン官僚から意に添わぬ修正を求められたのである。心が折れそうになり、辞退を考えたりもした。しかし周囲の励ましもあって気を持ち直し何とか文面は落ち着いた。そこで気付かされたのは保守的なバチカンを改革しようとするフランシスコ教皇の一貫した姿勢である。教皇は就任時から「貧しい人たちのための教会」を掲げてきた。

 そして田中氏は原発事故と環境問題を重ね合わせてスピーチした。

 教皇は長崎と広島(共に11月24日)で核兵器廃絶を繰り返し訴えた。「核兵器の保有自体が倫理に反する」と言い切ったものの、核分裂による原子力発電については言及がなかった。それが、日本を離れ帰国中の機内で、原発について「完全に安全が保証されるまでは利用すべきではない」(11月26日、共同通信)と述べた。田中氏は「教皇さまのストレートなお言葉」だと受け止めている。(続きは紙面をご覧下さい)


11月に落慶を控える極楽寺本堂。入り口に立つ伊藤住職 二代にわたる悲願の再建 
 阪神・淡路大震災から25年を迎える今年、20年にわたる復興計画を成就させ、本堂の再建を果たした寺院がある。記憶の風化をいかに食い止めるかが課題となる中、現在も復興へ歩み続ける寺院や震災を語り継ぐ僧侶を取材した。

 今秋に落慶法要を控えるのは、神戸市長田区の浄土宗極楽寺。8年前に30歳で住職に就任した伊藤仁明住職(38)は、「この間、建て替えのことで頭がいっぱいだった」。4月に完成した真新しい本堂は鉄骨平屋建ての約121平方メートル。「人が集まってくれるように」と、伊藤住職の工夫がこらされる。

 1995年1月17日。目を覚ますと、倒れたタンスで身動きができなかった。救い出してくれた父の涼導前住職(68)ら家族は無事だった。激しい揺れでいったん抜けた書院の柱が倒れずにひっかかり、庫裏や本堂など建物の倒壊は免れた、と後に分かった。

 その日のうちに近所の住民が20人ほど寺に身を寄せたが、自宅より揺れると言って避難所の小学校に移っていった。「ショックだった」。当時中学2年生でどう過ごしたか記憶があいまいな部分もあるというが、その出来事は強く覚えている。

 本堂復興計画が始まったのは98年。庫裏は前年に新築した。本堂は修繕したものの、長くはもたないと総代らと判断。檀信徒はほとんど被災していたが、「これやったらうちもできる」と20年間の積み立てが始まった。

 「分からないことに答えられるよう元気なうちに住職を交代する」と以前から伝えられていた言葉通り、2011年、かつて同じ30歳で住職となった涼導前住職から引き継いだ。

 最も重視したのは耐震性。「檀家さんにもう恐い思いをさせたくない」と、耐荷重15㌧の本堂を完成させた。特徴は、靴を履いたまま上がれるようにしたこと。車いすやベビーカーでも気兼ねなく足を運んでもらいたいとの思いを込めた。

 「楽しみやね」と、心待ちにしていた落慶を前に亡くなった檀信徒もいる。その一方で、「もうお参りに来ないで」と離れた檀家もあった。「本当にやり遂げられるか。みんなが納得できるものが建てられるか」。伊藤住職はこの間、繰り返し自問した。

 6月に竣工式を終え、本堂は人が往来する以前の姿を取り戻しつつある。「震災が残した深い傷跡に苦しむ人はなお多い。ただ人が集まる寺ではだめだ。そのご縁から手を差し伸べられるようにしていきたい」(続きは紙面をご覧ください)


2020/1/1 戦後75年 教団の戦争責任と平和活動―懺悔と慰霊・追悼のはざまで―①

 平成6年(1994)6月、広島で行われた浄土宗の原爆犠牲者50回忌法要 令和2年(2020)は終戦から75年となる。戦争体験者の減少は続き、戦地まで赴いた世代はさらに少ない。戦争末期には国内の主だった都市は空襲に遭った。それは終戦当日まで続いた。沖縄では地上戦が行われ、多くの住民がいのちを落とした。広島と長崎の原爆投下からも75年を数える。しばしば宗教教団の戦争協力が指摘されるが、戦後の教団はどのように平和活動を担い、戦争の悲惨さを語り伝えてきたのか。各教団の取り組みを紹介する。

 総  論
 終戦間もない昭和22年(1947)5月5日、東京・築地本願寺で、前年に結成された日本宗教連盟とその加盟団体などを中心に「全日本宗教平和会議」が開かれた。議長を宗教学者の姉崎正治が務めた。この会議で発表されたのが、以下の「懺悔文」である。

 〈いずれの宗教も平和を本領とせざるものなきに拘らず、われらは昭和六年九月満州事変以来の軍国主義的風潮を阻止することができず、悲惨なる今次戦争の渦中に巻きこまれたことは、神佛に対し、祖国に対し、かつは世界の全人類に対し、慚愧に堪えないところである。今にして静かに思えば、われわれはかかる凄惨なる戦争の勃発する以前に、身命を賭しても、平和護持の運動を起し、宗教の本領発揮に努むべきであった。〉

 〈新憲法は世界に向って戦争放棄を誓約したが、この人類史上類いなき崇高なる理想の実現は、人間精神の改造による宗教的基礎に立ちてのみ可能なのである。われらは、ただに既往の過失を天下に陳謝し、頭を垂れて彼我戦争犠牲者に詫ぶるのみならず、茲に全日本宗教平和会議の開催を契機として、力強く平和国家の建設に挺身せんことを宣誓する〉

 時代的制約や要請があったとはいえ、戦時中、教団は飛行機献納や軍部慰問など色々な形で戦争遂行に協力してきた。終戦後、制約から解放されて、戦争を振り返る機会ができたのだろう。戦争を止められなかったことを懺悔し、戦争放棄を謳った新憲法を歓迎しているのがわかる。この2日前に新憲法が施行されたばかり。満州事変から約15年にわたった戦争に対する疲れや不安から新憲法への期待感が滲み出ている。

 この懺悔文が各教団や宗教者に浸透していったとは言い難い。もっとも都市部では空襲によって戦災に遭ったり檀信徒が離散したり、地方寺院では農地解放で経済基盤が弱体化したりと、日々の生活や寺院維持で精いっぱいだったに違いない。

 平和活動ではないが、戦没者供養・追悼は教団や本山で執り行われてきた。例えば、本願寺派は終戦1年後に戦没者追悼法要、真言宗豊山派は昭和29年(1954)11月、総本山長谷寺(奈良県桜井市)で五重宝塔落慶大法要の第二会において戦争殉難者・豊山派檀信徒慰霊土砂加持法要を営んでいる。

 平和活動として先駆的なのは昭和29年から取り組んでいる日蓮宗の立正平和運動があげられよう。ただし運動自体は昭和40年代頃には停滞していく。

 日蓮宗の場合、昭和34年(1959)、国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑が創設されてから欠かさず年8月15日に戦没者追善と立正安国世界平和を願う法要を続けてきた。昨年で60周年となる。

 その千鳥ヶ淵墓苑で毎年9月18日に全戦没者追悼法要を行っているのが浄土真宗本願寺派である。満州事変から50年の昭和56年(1981)に始まった。法要案内にある「法要の願い」文書で教団の戦争協力について「いのちを奪い、いのちの尊厳を踏みにじる戦争という行為に加担し、積極的に協力してきたのも、また私たちの教団の歴史です」と明記している。

 真宗大谷派は昭和12年(1937)の日中戦争から50年を迎えた昭和62年(1987)4月2日の全戦没者追弔法会にあたり、宗務総長名で戦争責任を告白した。その中で、「わが宗門は戦争を〈聖戦〉と呼び、『靖国神社ニ祀ラレタル英霊ハ皇運扶翼ノ大業ニ奉仕セシ方々ナレバ菩薩ノ大業ヲ行ジタルモノト仰ガル』といったのであります」と具体的である。

 曹洞宗は平成4年(1992)11月20日、宗務総長名で「懺謝文」を発表。「アジアの民族を侵略する戦争を聖戦として肯定し、積極的な協力を行った」と表明している。懺謝文が発表される背景には、『曹洞宗海外開教伝道史』の記述に誤った歴史認識があったと記されている。曹洞宗は当時、人権問題への取り組みから近代史の見直しを進めていた。この翌年、大逆事件に連座し刑死した内山愚童の名誉回復がなされた。

 臨済宗妙心寺派は2001年の9・11米国同時多発テロとその前に刊行された『禅と戦争』(ブライアン・ビクトリア著)が契機となり、同年9月27日、「臨済宗妙心寺派 第一〇〇次定期宗議会」名で発表された。戦争協力の事実を認め懺悔しているほか、同年ハンセン病訴訟で患者側が勝利したことにも言及し、「過去の国策による強制隔離のため誤った認識や偏見によって、その悲惨な生活を看過してきたことを懺悔し、お詫び申し上げるものであります」。
 
 市川白弦(1902~86)が仏教者の戦争協力を告発した『仏教者の戦争責任』(春秋社)を発刊したのが昭和45年(1970)。多くの人の共感を呼んだが、教団の動きは鈍かった。そして同書刊行から半世紀となる。(続きは紙面をご覧下さい)